インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
昔はツンツンしていた彼女ですが――――――。
ユーリア・フランソワは、
美しい容姿の持ち主で、スッと通った鼻梁と頬から顎先への整ったラインは、多くの女性が羨むだろう。そして腰まである燃えるような赤髪と勝気な瞳が、気の強い美女という印象を周囲に与えていた。スタイルも美しい容姿に見合うもので、起伏に富んだボディラインは異性の目を惹きつけてやまない官能的な魅力を放っている。
性格の方は外見通り勝気で高飛車、猟犬になる前は多くの男に貢がせる女王様だったが、今では
尤も忠実とは言っても、
「しゃちょうぉ~。あ・そ・び・ま・しょ」
ユーリアは社長室に入ってくるなり、晶の腕に抱きつき、まるでペットのようにスリスリと戯れつき始めた。が、飼い主の反応は素っ気ない。
「仕事中だ」
「いいじゃない。どうせ社長に擦り寄ろうとするくだらない案件でしょ」
「クレイドルとマザーウィルに関わる案件だ」
「あら、なら仕方ないわね」
聞き分けよく離れた彼女は、デスク上のコーヒーが冷めているのを見つけた。
「社長、コーヒーお代わりいります?」
「頼む」
すると淹れ直したものを持ってきた彼女は、なんと社長室の応接用ソファで晶の仕事が終わるのを待ち始めた。ちゃっかり自分の分のコーヒーも準備しているあたり、居座る気なのは明らかだろう。そしてのんびりしている彼女を見て、晶はホットな話題を思い出した。
「ところでユーリア。昨日You○ubeにお前のファン作品がUPされてたけど、もう見たか?」
「見ました」
「採点は?」
「30点くらいですね」
「辛口だな」
「だって私はもっとキッチリ相手をぶちのめしてきたし、秘密を売り払う時は高値で売りつけてきたわ。特に男に貢がせるシーンなんて最低。貢ぐしか能の無い男に、あんなに甘い顔を見せたりなんてしません。下調べちゃんとしたのかしら?」
公開されてからまだ一日しか経っていないが、世間的には中々好評なようで、特に後半の猟犬になってからのアクションシーンはネット上で高い評価を受けていた。因みに本当かどうかは定かでないが、ISによる空中機動格闘戦のシーンでは、何処かの企業が提供したISを使って実際に空中戦を行い、後から編集でCGを被せたらしい。ファン作品の域を超えているような気がしないでもないが、ギャラが発生していないので“あくまでも建前上は”ファン作品という扱いらしい。
「じゃあ抗議するか?」
「いいえ。アレコレ言って騒がれるのも面倒だし、そんな事に時間を使うくらいなら社長と遊んでたいわ」
「ならもう少し待っていてくれ」
「はい。お待ちしています」
そうして15分程でやりかけの仕事を片付けた晶は、ユーリアに尋ねた。
「ところで遊ぶって、何をするつもりなんだ?」
「ダッキー*2を買ったから、社長も一緒にどうかと思って」
「ダッキーか。面白そうだな。場所は?」
「埼玉県。ヘリならすぐですね。因みに、もう荷物は積み込んであります」
カラードが使っているヘリは機体の両サイドに巨大な運搬用コンテナを持つF21C STORKだが、これには幾つかの派生機があった。今回ユーリアが準備したのは、コンテナの前半分が個室で後ろ半分が貨物室というキャンピング仕様のものだ。しかも個室は防音でベッド付きな上に、シャワーやトイレまで完備しているという充実ぶりだ。*3
「準備が良いな。なら後は2人に連絡して、行こうか」
「いいえ。エリザとネージュには、今日は私の番として話をつけています。社長がお望みでしたら呼びますが………呼びますか?」*4
「分かった。なら2人で行こうか」
「はい」
元女王様とは思えないほど嬉しそうな笑みを浮かべるユーリア。
こうして2人は、遊びに行く事にしたのだった――――――。
◇
訪れた川で、晶とユーリアはダッキーで川下りを楽しんでいた。2人とも初めてだが、持ち前の高い身体能力と息の合ったコンビネーションでパドルを動かして激流を下っていく。
「これは中々面白いな」
「でしょう!!」
水飛沫がかかり、2人ともずぶ濡れになっていく。だがそれすらも楽しい。そして川を下って流れが穏やかになってくると、2人はISを展開して上流にダッキーを持って戻り、再び激流を下り始めた。何度も何度も繰り返し、気付けば夕方だ。そして荷物の中に夕食の仕込みがあれば、この後の流れは決まってる。火を起こし、2人で料理を作っていく。メニューは鶏肉とトマトの煮込み、焼きリンゴ等々。一度火にかければ放っておいても勝手に出来上がる簡単なものだが、手間と味が比例するとは限らない。むしろ程よい空腹感がスパイスとなって反比例していく。
そうして良い匂いが漂い始めた頃、ユーリアが口を開いた。
「ねぇ社長」
「ん?」
「今日はこのまま―――」
「勿論だとも」
「やった」
無邪気に小さくガッツポーズするユーリア。
因みに2人がこんなところにいると知れたら野次馬やマスコミが押し掛けそうだが、その辺りの対策はしっかりと行われていた。
今回乗って来たF21C STORKは特別仕様機で熱光学迷彩を装備している上に、周囲にも同種の設置型装置がばら撒かれている。余程接近されない限り、発見される心配は無い。
このため彼女は何ら心配する事無く、焚き火を挟んで向かい合っていた席を晶の隣に移した。そして出来上がった料理を男の口元に運んでいく。所謂あーんというやつだ。何処ぞのラブコメ主人公なら、赤面して躊躇するような場面だろう。だが晶は美味しく頂き、お返しとばかりに相手の口元に料理を運んでいく。こうしてまったりとあま~~い時間を過ごしながら、ユーリアはふと思った。このままお楽しみタイムに突入するのも悪くはないが、折角自然の中にいるのだ。このシチュエーションを利用して、少し面白い事をしよう。
「社長。食事が終わったら、ちょっとレースをしませんか?」
「レース?」
「はい。ここから、そうですね。あの山の山頂まで、ISを使って制限高度10メートル以下での往復時間を競うんです。社長のNEXT相手だと性能差が有り過ぎるので、制限速度は時速500キロ以下。パイロットの腕だけで勝負です。妨害は射撃兵装は禁止、肉弾戦はありで」
晶はニヤリと笑った。こういう面白そうなのは大好きだ。
「いいぞ。一本勝負にするか? それとも三本勝負にするか?」
「一本勝負で」
「分かった。じゃあ、食べたら早速始めるか」
「はい」
そうして食べ終えた2人は、食後の腹ごなしとばかりにレースを始めた。
日も沈み暗くなった森の中という悪条件の中、巧みな機体制御とボディコントロールで迫る木々を避け、山頂目掛け最短距離を突き進んでいく。お互いに妨害はしていない。考え無しの妨害は容易くいなされ、自身を減速させるだけと分かっているからだ。
だから妨害するのは恐らく1回。決まればそのまま逃げ切れるゴール直前が勝負だろう。――――――とユーリアは思っていたが、折り返し前に腕の差が出始めていた。いつの間にか、背中を追う形になっている。
(やっぱり強い)
速いでも上手いでもない。機体制御だけを見ても強いという事が良く分かる。だが大きく離された訳ではない。
(まだまだよ!!)
集中してNEXTを追う。追い続ける。一瞬NEXTの機体挙動がブレる。しかし罠だとユーリアは見抜いていた。あんな見え見えのお誘いなんて乗ってやらない。やるならもっと上手く誘って欲しい。
この思いが通じたのか、残り行程1/4で晶が動いた。バレルロールで巨木を避わして、ユーリアとの間の障害物とした瞬間に急減速。ユーリアが最短最速コースで巨木を避わしたところで並び、腕を掴み、掴んだ腕を支点に円運動で進行ベクトルをコントロールして投げ飛ばしたのだ。
(うそっ!?)
即座に空中で体勢を立て直し、投げられた先にあった巨木に着地。膝を十分に折り曲げ衝撃を吸収し、次の瞬間には投げ飛ばしたNEXT目掛けて跳躍。カウンターで飛び蹴りを叩き込もうとするが、甘かった。今度は脚を捕まれ、振り回され、もう一回放り投げられる。しかも投げられた先に着地できるような木々はない。巧みな機体制御で地面に着地するが、この時点で勝敗はついていた。ここから逆転できる可能性など無いし、出来たとしても手を抜かれた結果だ。満足できる筈も無い。
ユーリアは通信を入れた。
『やっぱり強いです』
『そう簡単には負けられないさ。でも思ってたよりも差はつかなかったし、前より強くなってると思うぞ』
『社長にそう言って貰えると嬉しいですね』
『世辞を言っても仕方がないからな』
こうしてちょっとしたミニゲームを楽しんだ2人は、ヘリの中でお楽しみな一夜を過ごしたのだった――――――。
◇
2日後の午前。カラードのハウンド専用オフィスルーム。
完全OFF日を経て
「――――――で、どうだったの?」
「勿論朝までたっぷりとに決まってるじゃない。むしろ社長を独占出来る日に、オールナイトじゃないとか有り得ないわ。貴女だってそうでしょ」
「当たり前じゃない。一晩かけてたっぷり愛してもらうわ。
「そうね」
言葉は少ないが、メンバーの2人は知っていた。
実はメンバーの中で彼女が一番尽くしたがりで社長を離さない人間なのだ。
尤もエリザに言わせれば、他の2人も同じである。団栗の背比べ、という言葉がピッタリだろう。
そうして暫しの間ガールズトークで盛り上がった3人だったが、一段落したところでエリザが2人に言った。
「あら、もうこんな時間。そろそろ行きましょうか」
今日は幕張メッセで武器の展示会があるのだ。最近は何処の企業も
「そうね」
「は~い」
「操縦は誰がする?」
「私がするわ」
エリザの問いに答えたユーリアが、オンラインでF21C STORKの飛行申請を出すと、機体が地下格納庫から地上へとリフトアップされ始めた。
カラードの地下格納庫は高度に自動化されているため、機体を発進位置につけるくらいなら自動で行えるのだ。
そうして3人がヘリに乗り、幕張メッセに到着した時の企業の対応は、VIPに対するものと同じであった。
薙原晶の直属の部下であり、賞金首狩りや
しかも彼女達は商品の購入に関して、
よって各企業とも、商品の売り込みに余念がなかった。
「こちらの商品は――――――」
「コストパフォーマンスは――――――」
「この性能は従来比の――――――」
等々。
ありとあらゆる謳い文句を駆使して、彼女らの興味を引こうとすり寄ってくる。
そんな中で強烈な売り込みをかけてきたのが、アメリカとロシア系の企業だった。
「ご存じとは思いますが、F-14 トムキャットはオービットダイブにも対応する最新型です。必要とあれば世界各地の如何なる場所であろうと即時展開するカラードのハードな任務にも耐えるでしょう。我々に、是非ともあなた方のお手伝いをさせて下さい」
パワードスーツのF-14は、アメリカ軍に配備されたばかりの最新型だ。運動性は第一世代機の撃震とは比較にならず、火力も専用武装の
これに対抗して、ロシア系企業の人間が声をかけてきた。
「ハウンドチームの賞金首狩りという仕事を内容を考えますと、例え無人機であろうと近接戦闘能力も重要なファクターでしょう。我が社のSu-27 ジュラーブリクなどは如何ですか」
勧められたパワードスーツは、両前腕部にモーターブレード、肩部装甲ブロック両端のベーンと膝及び下腿前縁にスーパーカーボン製ブレードエッジというガッチガチの超近接戦闘仕様だ。
両者を比較してみると、カタログスペック上の運動性能はほぼ同じ。手に銃器を持っての射撃性能も、ほぼ誤差の範囲内で収まっている。従ってどちらかを選ぶなら、オプションパーツによる汎用性か、近接戦闘能力のどちらを優先するか、という事になるだろう。
ここでエリザは2人に尋ねてみた。
「どちらが良いかしら?」
「私はF-14かな」
先に答えたのはネージュだった。チーム内で電子戦を担当する彼女にとって、F-14の汎用性、特に偵察機としても運用可能な柔軟性は魅力的だったのだ。
「アタシはSu-27ね」
次いで答えたがユーリアだ。チーム内で前衛を担当する彼女は、無人機を使ってターゲットの逃げ道を塞いでおく、という使い方をする事が多い。その際に地形的な問題から混戦になる事も多いので、近接戦闘に強い方が使い勝手が良いのだ。
ここで普通なら、どちらを購入するかで悩むだろう。安い買い物ではないし、予算は有限なのだ。だが意見を聞いたエリザは悩まなかった。伊達にフリーハンドを与えられている訳ではない。
「ならF-14とSu-27を一機ずつフルオプションで購入するわ。今日すぐに持って帰りたいのだけど、用意は出来るのかしら?」
「「勿論です」」
「なら後でまた寄るから、準備しておいて下さい」
この光景を他企業のISパイロット達は、羨ましそうに見ていた。
たかがパワードスーツ2機程度と思う者はいるだろう。しかし申請・審査という手順を踏んでようやく与えられる者と、自ら考え自由に選べる者とでは天と地程に立場が違う。まして彼女達の買い物は、これだけではないのだ。
「ところでエリザ、アレって買っても良いと思う?」
ユーリアが視線を向けた先には、ドイツ航空機メーカーが作り上げた最新鋭戦闘機、
「買ってもウチじゃ使い道が無いじゃない」
「ちょっと思ったんだけど――――――」
ここでユーリアはコアネットワークに切り替えた。
(アレのメインウェポンである
例えばセシリア・オルコットの
(………確かに面白そうね)
(でしょう)
(でもアレくらいになると、流石に無許可では買えないわね)
最新技術が惜しみなく投入された
(しゃちょ~)
(どうした?)
(ちょっと欲しい物があるんだけど)
(俺に許可を求めるって、どんなのなんだ?)
(ドイツが作った
(おい)
(ダメ?)
(使い道が無いと思うんだが、なんで買おうと思ったんだ?)
ユーリアは先程エリザに話をした事を、もう一度話してみた。
(なるほど。対
(ありがとうございます)
(なに、仕事で返してくれれば良いさ)
(勿論です)
こうして許可を貰ったユーリアは、ドイツ航空機メーカーの出展ブースに近づいていった。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか」
対応したのは銀髪の髪を後ろに撫でつけ、キリッとした容貌が歴戦のビジネスマンを思わせる男だった。
「展示しているこの機体が欲しいのだけど、すぐに納品って出来るのかしら?」
「お客様がある程度の資金をお持ちという事は理解していますが、当商品は約3億マルクとなっています。幾らお客様と言えど、少々高額なのではないかと思うのですが」
「あら、財布の心配ありがとう。でも不要な心配よ。一括で払えるから」
周囲がざわめく。
特に他企業のISパイロット達の視線は嫉妬と羨望に塗れていた。
どのように使うかは分からないが、最新鋭機の購入権限など超エリートと言われる彼女達にすら与えられていない。それを元IS強奪犯という犯罪者が当然のように行使している。羨ましくないはずがない。嫉妬せずにはいられない。
だが食って掛かる者はいなかった。ハウンドチームは“
「そうでしたか。では何機購入なさいますか?」
「まずは1機。で、色々評価して使えそうなら追加購入を考えているわ」
「分かりました。では契約書を本社の方に送らせて頂きます。サインを確認次第、そちらに送らせて頂きます」
「ええ。それでお願い」
こうして購入された
◇
数日後の休日。
ユーリアはカラードの格納庫で、
シミュレーション訓練に来ていたようで、2人ともISスーツ姿だ。
なお2人が着用しているのは以前エリザがプレゼントした物であるため、学園指定の物より肌色面積が多い。
具体的な差異を挙げると、あかりんが着用しているISスーツはフライバックタイプで、肩甲骨から腕の付け根付近にかけての布地を少なくする事で、腕部の可動性向上が図られているタイプだ。もし何かに引っ掛かれば胸部装甲の側面が簡単に見えてしまうかもしれないが、ISのシールドシステムが稼動している限り、そのような事が起きる可能性は限りなく低いだろう。また脚の付け根付近も同様の理論に基づいて製作されているため、ISスーツのラインが鼠径部よりも上となり、必然的に臀部の布面積が少なくなっていた。
これに対して、かなりんが着用しているISスーツは蒼を基調としたモノキニタイプで、正面から見た布面積はあかりんの物より多い。だがモノキニタイプだけあって背中は大きく開かれており、臀部の割れ目が見えそうなギリギリのラインまでカットされている。また胸部装甲の中央には、谷間が見えるような形で縦にカットされたラインがあった。
一般的に言えば、2人が着用しているのは色っぽいタイプと言えるだろう。そして受け取った当初は2人とも着用を躊躇していたが、エリザが「社長が喜ぶ」とそそのかした結果、シミュレーション訓練では着用するようになっていた。
「あ、ユーリアさん。ファン作品見ました。とっても格好良かったです」
「でも本当に、あんな事をしていたんですか?」
始めに喋ったのがかなりん。次いで言ったのがあかりんだ。
「ありがとう。でも、あんな事って?」
首を傾げるユーリア。色々と身に覚えが有り過ぎて、何を指しているのか分からなかったのだ。
「その、男の人に貢ぎ物をさせて、あんな事とか………」
「ああ。そっちのこと。気に入れば触らせてあげたし、お子様お断りな事もしたけど、貢ぐしか能の無い男にあんな甘い顔はしてないわ」
「じゃあ、晶くんとは?」
あかりんが興味津々といった感じで尋ねてきた。
「私達は社長の犬よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
実際には忠犬や愛犬としてトロトロになるまで可愛がって貰っているのだが、それは言う必要の無いことだった。尤もハウンドチームが只の部下と説明されて、素直に納得する者は少数派だろう。むしろファン作品という想像力と妄想力を強力に加速させる燃料のお陰で、二次創作ではかなり面白い事になっていた。
「え~。何も無いんですか?」
「無いわよ。むしろあなた達の方こそ、これから同じ質問を沢山されるでしょうね」
「「え?」」
2人の声が揃う。
「だってそうでしょう。あなた達はこれから社長の親衛隊になるのよ。もしかしたら私達と同じようにファン作品が作られて、沢山の人に色々と妄想されるかもしれない。いえ、かもしれないじゃなくて、確定でしょうね。そして自分が読んだら赤面もののロマンスな二次創作が作られて、それについての感想を求められるの。どう? 面白そうじゃない?」
2人はユーリアの言葉を理解するのに、暫しの時間を要した。
私達の? ファン作品? 二次創作? ロマンス?
単語が意味を成し、繋がり、脳が意味を理解していく。
―――ボンッ!!
2人は赤面を止められなかった。
今まで密かに妄想していた事を他人に妄想された挙句、作品化されて、感想を求められる!? どんな羞恥プレイだろうか!!
仮の未来を想像しただけで、2人はアワアワしてしまった。
「あ、あかりん。ど、どど、どうしよう!?」
「わ、私に言われても!!」
ユーリアはアタフタする2人を暫し眺めて楽しんだ後、悪党らしく甘美な毒を放った。
「良い事を教えてあげましょうか」
「な、なんですか?」
「どんなことですか?」
藁にも縋る、という感じだろうか。
2人の反応は速かった。
「実際に、社長に迫っちゃいなさい。そういう場面を体験しておけば、意外と慌てないものよ。大丈夫。社長なら優しく受け止めてくれるから。2年も同じクラスにいたのなら、分かるでしょう」
彼女の助言は、2人の心にスッと染み込んでいった。
そしてユーリアは2人が色々な事を意識する前に、わざとらしく話題を変えた。ここで後押しするよりも、ちょっと疲れさせて帰らせて、1人の時間に色々考えさせた方が効果的だと思ったからだ。
「――――――ああ、そうそう。丁度良い機会だから、今のあなた達がどの程度の腕か見てあげるわ。光栄に思いなさい。特別に、ハウンドの1人が訓練をつけてあげる」
言い終えるなり、ユーリアが緑の光に包まれた。
するとカラードの制服が
こうしてISスーツ姿になったユーリアは、2人に訓練をつけてあげたのだった――――――。
続く?
ユーリアさんの日常回。如何でしたでしょうか。
昔はツンツンしていたのに、今ではすっかりデレモード。
そしてじみぃに、クラスメイトに毒(?)を染み込ませるユーリアさん。
もしかしたら彼女が最後の一押しをしたのかもしれません。