インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
お義兄様は平和な世界で生きて欲しいと願っていましたが、そのお義兄様自身の影響でそれが不可能に………。
はてさて、義妹ちゃん達の選択は?
因みに今回は義妹ちゃん達が全員(8人)出ます。そして元ネタ情報を記載していますが、検索する時は周囲に人がいないのを、よーーーーーく確認してからでお願い致します。
薙原晶に引き取られた8人の元生体パーツ候補の中で、最も有名なのは誰かと問われれば、間違いなくクロエ・クロニクルだろう。
IS学園に首席入学した実力の持ち主であり、3年生開始時点まで座学は常に首位をキープし続け、ISの実技訓練でもトップ5圏内を維持し続けている逸材だ。しかも入学当初ですら妖精のような美貌と均整の取れた四肢を持っていた彼女は、2年という月日を経て更に美しくなっていた。流れるような銀髪と端麗な顔立ち、人並な身長と双丘、くびれた腰から脚へと続く魅惑的な曲線という、同性異性を問わず誰もが振り返る程の美しさだ。
唯一の泣き所であった漆黒の眼球という他者にはない特異的な特徴も、義兄のパートナーである篠ノ之束博士の卓越した科学技術によって治療されている。
そして彼女の目が治療された翌日、カラードから発表があった。クロエ・クロニクルには篠ノ之束博士の手によるIS“
しかしクロエは、1週間後に行われたファーストミッションの結果で、自身の存在価値を証明してみせた。とは言っても、戦った相手は人ではない。宇宙人でもない。自然現象だ。クロエの専用機“
―――世間の反応は劇的であった。
何故なら“黒鍵”が登場するまで、稼働していた気象コントロール用ISは1機のみ。先日IS学園を卒業した布仏本音の
このため世間は、あっという間に手の平を返した。懐疑的な視線など無かったかのように、悪女という扱いも無かったかのように、褒め称える。勿論、欲深い者達がタダで褒める訳がない。褒めて褒めて調子に乗らせて、多くの困っている者達の為という大義名分のもと、沢山働いてもらおう。自国に都合の良いように気象コントロールをしてもらおう。そんな思惑が透けて見えていた。が、
―――パイロットが学生の間は、学生生活を優先させる。
これは布仏本音が
だが“
『お義姉ちゃん。疲れてるみたいだけど大丈夫?』
ファーストミッションが行われた翌週の土曜日。IS学園3年生寮。
クロエは同室者が出かけている寮の自室で、義妹達とテレビ電話をしている最中にそんな事を言われていた。因みに使われているテレビ電話はお義兄様がくれたもので、立体映像による多人数双方向通信が行えるタイプだ。
『ありがとう。でも大丈夫よ。ちょっと周囲の環境が変わってしまって、戸惑っているだけだから』
これまでも無かった訳ではないが、露骨なすり寄りが増えた。親しい友人達へのすり寄りも増えた。お義兄様や織斑先生を知る教師陣が真っ当な対応をしてくれているのが救いだが、これまで以上に隙を見せられないという緊張が、精神的疲労へと繋がっていた。
『何か手伝える事とか、協力できる事ってない? お義姉ちゃんって頑張り過ぎちゃうんだから』
優しい気遣いを見せているのは、
『大丈夫よ。こればっかりは自分で何とかしないといけないから』
『無理しないでね。愚痴なら幾らでも聞くから』
真理の言葉を嬉しく思いながら、クロエは聞き返す。
『私よりも、そっちはどうなの? こっちは寮生活だから外部の雑音はある程度遮断できるけど、そっちは通学でしょう』
すると少しばかり困っている、という返答だった。
『実は最近、四六時中マスコミに張り付かれているの。通学の時も、お買い物の時も、友達と遊ぶ時も。これまでもいたけど、もっと増えた感じ。それにこれまでいた人達は日常生活を邪魔しないように配慮してくれていたみたいだけど、新しく増えた人達は、こっちの都合お構いなしでカメラを向けてくるから、どうしようかなって。あとお友達を紹介したいっていう人も多くて』
続けられた真理の話によれば、
この話に、他の義妹達も次々と同意していく。更にはもっと露骨なものまであった。
『私なんてこの前、友達の友達の友達の親が参加している企業パーティーに参加してほしいなんて言われたわよ。何が関係あるのっていう感じ』
ご立腹な感じで吐き捨てたのはアルベ・フィーリア*3。金髪ロングの子で、利発そうな表情と高い腰の位置、起伏に富んだ曲線は、どんな服を着ても見栄えするだろう。
『参加したの?』
クロエは尋ねた。
『まさか。プライベートな用事があるからって断ったわ』
『正解ね。そんなお誘いなんて危険だわ。みんなは大丈夫? しつこいお誘いとかされてない?』
他の子を見渡しながら確認すると、「困ってる事があるの」と切り出した子がいた。
リルナ・メフィールド*4。ふわっとした温厚そうな顔で、お尻辺りまで伸ばしている甘栗色の髪を緩やかにまとめている子だ。性格は外見とは裏腹に小悪魔で、スタイルの方も生意気そのもの。彼女にお義兄様の前で胸を鷲掴みにされたのは鮮明に覚えている。まぁそのお陰でお義兄様とゴニョゴニョな関係になれたのである意味で感謝はしているが、あの時の恥ずかしさは忘れていない。そんな小悪魔な彼女が困っているというのだから、どんな事だろうか?
『サウジアラビアの王子様から、パーティーイベントの招待状が来てるの』
『なにか関わりになるような事ってあったの?』
『直接はないわ。ただ、何度かみんなで写真撮影して雑誌に載ったじゃない*5。あれを見て一目会いたくなったらしいわ。本当か分からないけどね』
クロエの質問にリルナは肩を竦めながら答えると、真理が口を開いた。
『普通に断っちゃダメなの?』
『興味無いしお会いする理由も無いので行きませんって断ろうと思ったんだけど、世界最大の産油国の王族でしょ。何かお義兄様の役に立つ事もあるかもしれないと思ったから、まずはみんなに聞いてみようと思って』
するとクロエが答えた。
『そういう事なら、断って良いと思うわ。お義兄様何度も言ってたじゃない。私達をそういう事に使う気は無いって』
『そうなんだけど………ね』
リルナは何かを考えている様子だった。
『どうしたの?』
『いえ、ね。お義兄様は私達に平和な世界で、普通に生きて欲しいって思ってくれているし、そうなれるように色々なものを与えてくれている。でも可能なのかなぁって。あ、先に言っておくけど、お義兄様が悪いとかそういう話じゃないわよ。ただ、これからも私達を利用してお義兄様に近づこうっていう奴は沢山、そしてずっと出てくる。だから、なんて言ったらいいのかな? 私達はみんなお義兄様の役に立ちたいって思ってるけど、そうすると、私達を利用しようって輩とも関わる事になるだろうから、結局お義兄様を心配させちゃうなぁって』
これにクロエはハッとさせられた。専用機持ちとなりカラード所属となった自分とは違い、他の義妹達は選べる選択肢が余り無い。何故ならお義兄様の義妹というのは既に知られているため、何をするにしても、どんな道を進むにしても、多くの者が背後にお義兄様の姿を見るからだ。そんな中で一般企業に就職して、普通の生活などできるだろうか? 難しいだろう。ではカラードに就職するのはどうだろうか? お義兄様は良いと言うかもしれないが、義妹達は良しとしないだろう。何故なら今のカラードは星間国家の下地を作る為に、世界中から優秀な人材を募っている。そんな時に義妹全員がカラードに入ったりしたら、どんなに公正な採用試験だったとしても、絶対に完全に縁故採用と思われる。今文句を言う者はいないかもしれないが、そういう行為は後々お義兄様の足を引っ張りかねない。
ここまで考えたクロエは、ふと思いついた事を話し始めた。
『………思ったのだけど、お義兄様と
皆が肯いたのを見て、クロエは続けた。
『なら将来的に地球圏への旅行というのも有り得るだろうし………』
ここで長考。自身の言葉がキーワードとなって考えが纏まっていく。そして再び口を開いた。
『地球の地域ごと一般常識や文化といったものをデータベース化して、宇宙人さんが地球の事を理解し易くする会社なんて作ってみたらどうかしら? 将来、遠い未来か近い未来かは分からないけど、宇宙人さんが地球に来た時に、この会社のデータベースを見れば、ある程度は困らなく旅行を楽しめる。そんなデータベースなんてあったらお義兄様の助けになると思うの。だってほら、卒業式で言ってたじゃない。「できれば隣人と仲良くやっていきたい」って。そういうものがあれば、手助けになると思わない?』
すると、これまで余り喋っていなかった義妹の1人が口を開いた。
『お義姉ちゃんの意見に賛成するわ。それならどこかの一般企業に入る事もないし、荒事に関わる事もない。文化的な活動だから、お義兄様に心配をかける事もなさそうだもの』
『基本方針は賛成だけど、会社としての収益はどうするの? 赤字を垂れ流す会社なんて、逆にお義兄様の恥になるわよ』
別の義妹が、あえて否定的な意見を出した。会社なら利益を出さなければならないが、宇宙人が地球に旅行に来るようになるまでどれくらい掛かるか分からないし、それまで地球人相手のビジネスで凌ごうにも、地球人相手ではビジネスとしての強みに欠ける、という極々真っ当な考えからだ。
彼女の名はアスィーリア・ライト。長い金髪に整った容姿は意思の強さを感じさせ、程よく発育した双丘とくびれた腰、スラリと伸びた脚の脚線美は、誰が見ても美女と言うだろう*7。だが生体パーツ候補だった時は、彼女が一番壊れかけていた。それが今では普通の生活を送れるようになり、こうして意見を言う事もできるようになった。クロエは感慨深いものを感じながら、かなり大胆な案を提示してみた。
『世の中には基礎研究のように先行投資が必要で、それ単体では利益が出ないものもあるでしょ。これは、その類のものだと思うの。でもやっておいたら、後で必ず役に立つ。必須ではないかもしれないけど、あれば宇宙人さんが地球に来る時のハードルを下げられる。だからお義兄様に話して、出資してもらうのはどうかしら? 因みに大事なのはカラードの出資ではなくて、お義兄様の個人出資というところね』
メリットは色々とあった。自分達で会社を作ったなら、何処かの一般企業に就職しなくても良い。つまり就職した会社の駒として使われるような心配を、お義兄様にかけなくて済む。地球の文化を纏めてデータベース化する仕事だから、荒事とも無縁で、お義兄様の希望通り平和な世界で生活する事ができる。尤も利益を生むような会社ではないので、仮に出資してくれたとしてもお給料はそれなりだろう。だが以前お義兄様から生活費と称して、一括で相当な額を貰っている。多過ぎると言ったが、「俺に万一があった場合でも、お前達が困らないようにしておきたい」と無理矢理押し切られてしまった。日本の一般的なサラリーマンの生涯年収よりも多い額を、8人全員にだ。本当に、どれだけ大事にしてくれているのだろう。また出資元をカラードではなく、お義兄様個人に限定しようとしたのは単純な理由からだ。カラードからの出資なら、今後カラードが更に巨大になった時に、もしかしたら碌でもない奴が立場を使って干渉してくるかもしれない。だがお義兄様の個人出資なら、「経営的には無関係だからあなたに指図される覚えはありません」と強弁できる。言ってしまえばリスク管理の一環だ。
そんな事を思っていると、また別の義妹が口を開いた。
『でも文化のデータベース化って、ものすっごく範囲が広いよ。放課後とか休日を使ってコツコツやる程度じゃ、実用に足る完成度の高いものなんてとても出来ないだろうし、人を雇ったりしたら働く場所や機材も揃えないといけないから、凄く大がかりになっちゃう』
彼女の名は
『大がかりでも良いんじゃないかしら。だって宇宙人さんがそのデータベースを見たら、地球の事が分かるようなものでしょ。実用的なものにする為には、ある程度の規模も必要だと思うわ』
リルナが答えると、今度はアスィーリアが反応した。
『みんなちょっと待って。私達は経営の素人で、何か突出した能力がある訳じゃない。
『今の私達に強みなんてないわ。まずはそこを認めないと、先に進めないと思うわよ』
否定の言葉を吐いたのは、ローズ・ピニラス。豊かなピンク色の髪に蠱惑的な微笑み。ボディラインは男好きするメリハリの利いたものであり、清く正しくというよりは男も女も手玉にとる悪女であり、義妹というよりは義姉というイメージが先にくるだろう*9。だがローズ本人は、義姉妹の長女はクロエしかいないと思っていた。生体パーツ候補という本当に怖かった時に見せてくれた芯の強さは、心の底から尊敬に値すると思っているからだ。彼女こそが、長女と呼ばれるに相応しい。
『認めて、どうするの? 結局、私達なにもできないの?』
『違うわ。認めるからこそ、お義兄様から借りるの。後戻りできないくらい盛大に。そして、そうね………10年後に利子をつけて返しましょうか。でも大変よ。お義兄様のことだから、返せなくても酷い事はしないでしょうし、今まで通り愛してくれると思うわ。そして、その様子を見た世間は必ず思うでしょうね。私達はぬるま湯の中にいるって。義妹という立場を使って贅沢三昧してるって。実際がどうであれ、ちょっと贅沢に見えるような事をしたら、そこを切り抜いて色々と言うでしょうね』
『じゃあ、どうすれば良いの?』
尋ねた真理に、ローズが答えた。
『簡単よ。お義兄様の義妹と呼ばれるに相応しい立場を築けば良い。そういう意味で、クロエお義姉ちゃんは上手く第一歩を踏み出したわね。だから今度は私達の番。で、お義姉ちゃんとみんなの話を聞いていて思ったんだけど、各国の日常を取材するような会社を設立するのはどうかしら? そして取材した日常をデータベースに組み込んで、こういう時はこういう行動をするとコミュニケーションが取り易くなりますよっていう感じで作っていくの。後、旅行と治安と現地のローカルな移動方法に宿屋、お土産、万一トラブルに巻き込まれた時に頼るべき機関………こう考えると色々必要な情報ってあるわね。その辺りの情報も付け加えていくのはどうかしら』
観光が盛んな国では、同じようなサービスが既に稼働している。このため一見すると、大した事のない取り組みに見えるだろう。しかしローズには、この取り組みを推し進めた先にあるものが見えていた。何故ならクロエお義姉ちゃんが言った「この会社のデータベースを見れば、ある程度は困らなく旅行を楽しめる」という内容には先程述べた情報の他に、国の対外的な評価や治安といったセンシティブな内容も必ず含まれるからだ。
そして全ての国のそういう情報を一元的に参照できるデータベースがあれば、宇宙人も使うだろう。尤も、初めは余り注目されないかもしれない。無駄な事業と言われるかもしれない。しかし宇宙人がこのデータベースを見て、信用できると思い、登録してある情報を参考にして行き先を決めるようになればどうだろうか? 価値が生まれる。そのデータベースを保有している会社の持ち主である義妹達も、お義兄様の義妹と呼ばれるに相応しい立場になれるかもしれない。
ローズがこんな事を思っていると、クロエが話を纏めた。
『今までの話を纏めると、取材を沢山するから設立するのはメディア系の会社ね。なら私達の立場はどうしようかしら? 共同経営者で実務面にも直接関わる? それとも大株主になって方針だけ決めて、後は誰かに任せる? お義兄様は私達に学校で学べる事はちゃんと学んで欲しいみたいだから、私としては大株主になって方針だけ決めて、実務はお義兄様に信用できる社長を紹介してもらう。そんな形が良いんじゃないかと思うわ』
全員が賛成したのを確認して、彼女は続けた。
『なら早速、お義兄様に話をしてみるわね』
そうして直通番号がコールされると、全員の前に新しい空間ウインドウが展開され、
『全員揃ってか。どうしたんだ?』
クロエが代表してこれまでの話をすると、お義兄様は意外そうな表情をした後、ニヤリと笑った。
『いいなそれ。これまで宇宙に出る為の準備ばっかりしてたけど、確かに今後交流が進んでいけば、そういう事態も有り得る。というか、そういう未来は想像しておかないといけなかったな。うん。やろうか。ああ、でも待てよ。カラードじゃなくて俺の金か。十分な初期投資には足りないな………ちょっと待っててくれ』
すると全員の前にもう1つ新たな空間ウインドウが展開され、ウサミミエプロン姿の束博士が映し出された。
『どうしたの?』
『いや、今義妹達から今後必要になりそうな面白い提案を受けてな。俺の手持ちじゃ初期投資として足りなそうだから、束もどうかと思って』
『へぇ、どんなの?』
晶が説明すると、束は目をキラキラさせながら喰い付いた。
『いいね!! うん。そうだよそうだよそういう発想って大事。将来的に交流が発生するなら、そういう下準備があった方が何かとスムーズに進むんだよ。よく短絡的な金儲けとか権力欲に走らないで、そういうところに注目したね。偉い偉い。じゃあ、そうだね。取り合えず当座の運転資金として………ん~、取り合えず1000億円くらいあればいいかな? あと会社の箱物と信用できる社長さんはこっちで準備してあげる。じゃあ義妹ちゃん達、頑張ってねぇ~』
この後、“アースレポート・コーポレーション”という名前で会社が設立されるのだが、これによりクロエ以外の義妹達も“
なおちょっとした裏話だが、“信用できる社長”は更識から派遣された者であるため、公平性を装いながら実質的にはカラード側という立ち位置であった。
◇
そして少しだけ時が進んだ頃。
今日はいつものホテルに全員が集まり、皆で持ち込んだ食材で料理を作りながら雑談に花を咲かせていた。
「クロエお義姉ちゃんは最近どうなの?」
真理の言葉に、エプロン姿のクロエはお米を研ぎながら答えた。
「学園の中では平和にやってるわ。冗談でお姫様扱いして、王子様役をやろうとする人とかはいるけど、不愉快という程でもないし」
「外は?」
「それは貴女達の方が詳しいんじゃないの?」
「だよねぇ。でもクロエお義姉ちゃんなら仕方ないとも思っちゃうんだよね」
「大変なのよ」
「分かるけど、あのテレビ映像を見ちゃうとね」
クロエが気象コントロールしている時の映像は、テレビで繰り返し繰り返し放送されていた。何故か? 美女が祈りを捧げる事で、人が抗えない異常気象という大災害が治まっていく様が非常に神秘的で、人の目を引き付けて離さないからだ。そして同じ理由で布仏本音の映像も繰り返し放送されていたが、どういう訳か彼女の方は巫女さんというイメージが定着していた。
―――閑話休題。
「まぁ、専用機持ちになった時から覚悟はしていたのだけどね。そっちはどうなの?」
すると真理はパン生地を捏ねながら答えた。ノースリーブにエプロンという薄着なので、生地を捏ねる度に大きい胸部装甲が揺れてプルプルしているのが見える。が、羨ましくなんかない。ないったらない。今は昔と違って、大きさも形もバランス良く成長しているのだ。
「実は酷くなってるの。特にお友達を紹介したいって人がもっと増えてて」
「大丈夫? お義兄様に言った方がいいんじゃないの?」
「ううん。この位は捌けるようにならないと、今後が大変だと思うからいいの。護衛の人にも、お義兄様には報告しないでって言ってあるから」
護衛がそんなお願いを聞くはずもなかったが、本人がそう望んでいるので、晶は一応知らんぷりしていた。尤も執拗に紹介を頼んだ連中の下調べはキッチリ行い、いつでも処せるようにしていたが………。
「無理しちゃ駄目よ」
「うん。目標はローズかな」
「え? それは………う~ん。もう少し、淑女的な方が良いと思うのだけど」
悪女気質のあるローズは、敵、或いは邪魔と感じた相手には割と容赦ない性格をしていた。それでいて男好きする外見の美女なのだから始末が悪い。自分は大丈夫と思う愚か者が無数に吸い寄せられ、これまで何十人と願い叶わず散っていた。恐らく振った人数は義妹の中で一番多いだろう。
そんな事を思っていると、ステーキ用の肉を切り終えたローズがそーーーーーっとクロエの背後から近づき、ワシッと両胸を鷲掴みにして揉みながら口を開いた。
「クロエお義姉ちゃん酷いわ。私を目標にしたらいけないなんて。何がイケナイのかしら?」
「こ、コラッ!! や、ひゃぁん。やめ、止めなさい!!」
「え~、だって私って不良だもの。お義姉ちゃんの言う事なんて聞いてあげなーーい」
「こ、このぉ」
義姉妹故に容赦なく一本背負いでブン投げてやろうと思ったところで、ローズがスッと離れた。
「冗談よ。で、真理。見習うなら私じゃなくて、リルナの小悪魔なところにしなさい。貴女にはそっちの方が似合うわ」
「駄目よ真理。小悪魔とか悪女は間違うと大変な事になるんだから。貴女はそのまままっすぐ純粋にね」
どちらが良いかは分からなかったが、真理は義姉妹がワイワイやってるこの雰囲気が大好きだった。
「じゃあどっちも見習って、TPOで使い分けられるようにする!!」
複雑な表情をするクロエに、面白そうな表情をするローズ。そこにジャムを持った
「なんだか面白そうな話をしているね」
「面白くないわ。ローズが真理を悪女にしようとしてるのよ」
すると比奈はクスッと笑った。
「も~。クロエお義姉ちゃんがそんな事を言うから、ローズは面白がってやるんだよ。ローズはお義姉ちゃん大好きっ子でかまって欲しいだけなんだから」
「あ、ちょっと、変なこと言わないの」
「変なことじゃないの。幾ら構って欲しくても、お義姉ちゃんに心配かけちゃダメでしょ」
犬の尻尾がしゅーんとなるように静かになる
「大丈夫大丈夫。悪女プレイでお義姉ちゃんを困らせて、お義兄様にお仕置きされたいだけって事はみんな分かってるから」
「そ、そんな特殊な性癖してないわよ」
「へ~、本当? この前の時は――――――」
「ちょ、ストップ!! 本当にストップ!! 冷静に聞くとすっごい恥ずかしいんだから!!」
ローズは両手でリルナの口を慌てて塞ぎ、何とか先を言わせない事に成功する。
2人がコントのような事をしていると、アスィーリアがお皿を持って近づいて来た。
「はいはい。じゃれてないで、サラダ盛り付けるから手伝ってね」
「「は~い」」
2人が盛り付けられたサラダを仲良く運んでいると、入れ替わるようにアルベがキッチンに来た。
「ねぇ真理。そろそろパン焼き始めても良いんじゃない?」
「うん。捏ね終わってるから、千切るの手伝って」
「オッケー」
2人は捏ねられた生地を千切って形を整え、オーブンに入れていく。
そうして皆が食事の準備を進めて暫しの時が経った頃、晶が予定より少し早く到着した。偶々手の空いていた唯乃が出迎える。
「お義兄様。お待ちしていました」
晶を出迎えた唯乃の白いエプロン姿は、新妻や若奥様と言える程に似合っていた。
「ちょっと早かったけど、大丈夫かな?」
「勿論です」
唯乃は話しながら極々自然な動作で晶のスーツの上着を受け取り、ハンガーにかける。そうしてリビングに案内して、料理を並べている途中のテーブルへと案内した。所作の一つ一つが丁寧で、清楚さを感じさせる。
「待っていて下さいね。もうすぐ準備が終わりますから」
「分かった楽しみに待ってる」
「はい。みんな腕によりをかけて作ってますから、楽しみにしていて下さい」
この後、料理が出揃ったところで始まった食事会という名の集まりは、アットホームでワイワイガヤガヤざっくばらんな雰囲気で、義妹達や晶にとってとても楽しい一時であった。
◇
少しだけ未来のお話。
“アースレポート・コーポレーション”は宇宙人に認知され、「地球文明圏に行くなら、まずはあそこのデータベースを調べてみろ」と言われるくらいに利用されるようになっていた。国ごとの一般的な文化や日常的なコミュニケーションで想定される無数のパターン情報が、宇宙言語に対応した視覚的に理解し易い3Dライブラリと共に準備されているからだ。このため地球文明圏を訪れる宇宙人、特にヒューマノイドタイプは相当な頻度で利用するようになっていた。また地球の各地方の言語にも対応しているため、地方への旅行、例えば日本からアメリカに行くような時も非常に重宝されていた。困った時に必要となりそうな情報が優れたユーザーインターフェースで検索し易い上に、サポートAIが様々な助言を行ってくれるからだ。
更に旅行と治安情報は不可分であり、安全な旅行には政治状況の把握も必要という考えから、“アースレポート・コーポレーション”は各国の政治状況を独自に評価するようになっていたのだが、辛口だが問題点をよく表しているというユーザーからの評価が多く、次第に政治方面でもこのデータベースはよく使われるようになっていく。
この結果会社の実質的な保有者である義妹達は、義兄の義妹として恥ずかしくないだけの地位や影響力を手にしていく事になるのだった。
続く?
分かり易いように義妹ちゃん達一覧。
本文中でも義妹ちゃん達の容姿などは描写していましたが、半オリキャラ沢山なので一覧があった方が良いと思い抜粋。
クロエ・クロニクル
原作登場キャラ。本作では義妹達の精神的なお義姉ちゃん。
唯一の泣き所であった漆黒の眼球は第179話にて治療済み。
原作ではロリ(?)だったが本作では成長しており、流れるような銀髪と端麗な顔立ち、人並な身長と双丘、くびれた腰から脚へと続く魅惑的な曲線という、同性異性を問わず誰もが振り返る程の美しさとなっている。
冬祭真理(ふゆまつり まり)
元ネタは冬月 茉莉(とうげつ まつり)。
長く艶やかな黒髪をお団子ツインテールにしていて、幼い表情とは裏腹にとても発育が良い。それでいて引っ込むところは引っ込んでいるという、大多数の女性が羨むようなスタイルをしている。
アルベ・フィーリア
元ネタはTony'sヒロインコレクション 「フェアリー★ガーデン」 アナベル。
金髪ロングの子で、利発そうな表情と高い腰の位置、起伏に富んだ曲線は、どんな服を着ても見栄えする素晴らしいもの。
リルナ・メフィールド
元ネタはシャイニング・レゾナンスのリンナ・メイフィールド。
ふわっとした温厚そうな顔で、お尻辺りまで伸ばしている甘栗色の髪を緩やかにまとめている子。性格は外見とは裏腹に小悪魔で、スタイルの方も生意気そのもの。
鳴美唯乃(なるみ ゆの)
元ネタはT2アート☆ガールズ 夢見る箱入り娘 鳴神唯乃。
あどけないが整った容姿に膝裏まである流麗で長い黒髪。人並な身長で、大き過ぎず小さ過ぎないバランスの良い曲線に、スラリと伸びた四肢をしている。
アスィーリア・ライト
元ネタはT2アート☆ガールズ 「星光の魔女見習い」アストレア。長い金髪に整った容姿は意思の強さを感じさせ、程よく発育した双丘とくびれた腰、スラリと伸びた脚の脚線美は、誰が見ても美女。
倉敷比奈(くらしき ひな)
元ネタは佐倉日菜 illustration by 深崎暮人。童顔で紫色の髪をシャギーロングで整え、後ろ髪を纏めてサイドテールにしている。そして真理と同じくとても発育の良い子。
ローズ・ピニラス
元ネタはピンクツインテバニーちゃん DX ver.豊かなピンク色の髪に蠱惑的な微笑み。ボディラインは男好きするメリハリの利いたものであり、清く正しくというよりは男も女も手玉にとる悪女であり、義妹というよりは義姉というイメージが先にくる子。でも義妹達のお義姉ちゃんはクロエしかいないと思ってる。ぶっちゃけ今話を書いてて一番筆が乗った子。
今回は義妹ちゃん達の掘り下げ回でした。
半オリキャラ沢山なので大変でしたが、ようやく義妹ちゃん達を全員出せて安堵&日常的なやり取りが書いてて楽しかったです。