インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~   作:S-MIST

214 / 262
今回、ついにアラライルさんのところに“隕石雨”の報告が届きます。
同時に第3回外宇宙ミッションの影響で内政も外交もちょーーーーっと忙しくなってきました。
情報が沢山出てくる説明回みたいな感じですがご容赦を。


第202話 “隕石雨”の報告/変わり始めた地球の体制/届けられた船(IS学園卒業2年目の6月中旬~下旬)

  

 “首座の眷族”の辺境議員、アラライル・ディルニギットがその話を聞いたのは偶然に近かった。

 学生時代からの親友と、超光速通信で話をしていた時のことだ。

 

『アラライル。そちらはどうなんだ? なにやら色々聞こえてきているぞ』

 

 お互い出世を重ねた今でも、昔の気易さは変わらない。

 

『ふふっ。楽しくやっているよ。銀河の辺境に来た時はどうしたものかと思ったが、いるところにはいるものだね。見ていても話していても飽きない。此処に来る前は中央に行くのも良いと思っていたが、少し先延ばしにしても良いかもしれない』

『驚いたな。カラードとはそこまでの連中なのか?』

 

 親友から見たアラライルは、紛れも無い天才の部類であった。多少興味や面白さを優先する困ったちゃんなところもあるが、能力的には疑いようがない。その男がこんな事を言うくらいなのだ。本当に、相当な連中なのだろう。

 

『ああ。まるで何かの物語を見ているようだ。下らん奴らを相手にしているより、余程面白い』

『出たよ。お前の趣味優先問題』

『問題とは失礼な。精神的充足は人生にとって大事な事だろう』

『否定はしないが、巻き込まれる者の身にもなれ』

『おや? そんな事があったか?』

『私が日記をつけているのは知っているだろう。第一回から順に言ってやろうか?』

『お前は細か過ぎだ。もう少し大らかになった方がいいぞ』

『この日記は元々、お前にいつか貸し分を請求する為につけ始めたものだからな。今更止めんよ』

『私達、親友だよな?』

『親友だからこそ、貸し借りはしっかりするべきだろう』

 

 親友というよりは悪友かもしれない。類は友を呼ぶだろうか?

 だがお互いに話していて楽しい相手なのは間違いなかった。

 そんな楽しい話の中で、親友がふと思い出したかのように言った。

 

『ああ、そうだ。ちょっと耳にいれておきたい事がある』

『どうしたんだ?』

『最近、色々と疑わしかった多星間企業の物流が滞っていたのは知ってるだろう。その調査で辿り着いた先の星系がな、破壊されていたんだ。それも複数』

『破壊? 複数? どういうことだ?』

『言葉通りの意味だよ。調査で辿り着いた複数の星系にあったのはな、徹底的な破壊の痕さ。宇宙(そら)には推定数千隻の船の残骸と同じように残骸となっている複数のコロニー。惑星内にはオートメーション化されていたであろう工場。地殻が割れて地軸が曲がった影響で天変地異のような状態になっていて、正確な規模は分からんがな』

『何が使われたのかは分かったのか?』

 

 アラライルの脳裏に、幾つかの候補が過ぎる。

 

『どうやら隕石らしい』

『は? 嘘だろう?』

 

 その反応は尤もだと理解を示しつつ、親友は言葉を続けた。

 

『本当だ。ただし解析班によれば、衝突スピードは最低でも光速の80%以上。もっと高い可能性も示唆されていたが、まぁ圧倒的破壊力という意味では誤差だな。しかも1つじゃない。複数。いや、雨と表現した方が良いほど大量に。もし自然発生したものなら、到達前に何処かの文明圏で隕石警報が出ていてもおかしくないはずなんだが、近隣文明でそんな注意報は出ていなかった。だから誰かが人為的にだと思うんだが………。この状況、似ていないか? あのランクA文明が滅んだ時の様子に』

『そう、だな。もし人為的なら大変な事だな。それほどの事を行える連中が、人知れず活動しているという訳だからな』

 

 アラライルは親友に悪いとは思いつつも、苦労して深刻そうな表情を浮かべた。しかし、同時に思う。あいつら、やりやがった。無論、確証はない。物事の常として思い込みは危険だ。しかし真っ先に、あの2人の顔が浮かんだ。独力でスターゲート理論を構築した辺境の天才。その傍らで武力を担い「暴力は商品」と言い切るパートナー。

 親友が肯いて口を開く。

 

『取り合えず、今分かっている情報を送ろう。政治には、どんな情報が役立つか分からないからな』

『すまないな。助かる』

『良いってことさ』

 

 この後も暫しの間2人は話し続け、アラライルは通信を終えた後に貰ったデータを確認して思ったのだった。断片的な情報だが、壊滅した星系は“獣の眷族”の領域で動いていた勢力か、或いは繋がっていた勢力である可能性が高い。前者か後者かの特定は難しそうだが、関係があったというのは間違いないだろう。

 となれば、恐らく………これが「盤面ごとひっくり返して、相手の行動を強制的に変えさせてやらないといけない」の結果ということか。

 椅子の背もたれに体重を預けて天井を見上げながら思考の海に沈んでいく。

 

 ―――さて、どうする?

 

 普通に考えれば、これ程の事を行える勢力を放置するなど有り得ない。どんな手段を使ってでも制御下におくべきだろう。しかし、だ。唯一にして最大の問題は、アレを成したのは恐らく個人ということだ。篠ノ之束博士か薙原晶のどちらかは分からないし、コンビで行った可能性もあるが、どちらにしても組織の力ではなく個人の力の可能性が高いということ。

 そしてあの2人はやると言ったらやる。殴られたら殴り返す事も明言している。

 だからと言って対処を検討しないのは自身の主義に反するので、合法非合法を問わず脳内であらゆる手段を検討してみるが、どれも失敗した時の損害が許容範囲を超えてしまう。

 

 ―――ならば、どうするべきだろうか?

 

 これまでの言動から考えるにあの2人は一般的な法の範囲、法律論的な意味ではなく一般人が真っ当に生活する範囲を超えた相手に対しては極めて容赦が無い。だが逆説的に、そうでない相手には比較的温厚だと言える。

 ならば好き勝手にさせた方が、ある意味で銀河の為だろうか? “首座の眷族”の覇権という意味ではどうにかして制御下に置いた方が良いのかもしれないが、銀河辺境の安定という意味ではそちらの方が良いように思える。実際に海賊どもを狩っている事もあるし、場合によっては今回のような事をするとも分かった。

 次いで費用対効果、所謂コストについて考えてみる。自分達や他の文明で同じ事をしようとしたら、どれくらい手間と費用が掛かるだろうか? 簡単に計算してみるが………ちょっと呑み込めない数字が出てきた。

 そのまま額に手を当てて考え続け、アラライルは対応を決めたのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 一方その頃。地球。

 以前“獣の眷族”から特使として来ていたスノー・テールが、大使となって地球に赴任して来た事は、大きな衝撃となって情勢を突き動かしていた。

 何せ特使と大使では意味合いがまるで違う。

 地球と宇宙で多少の差異はあるにしても、特使とは基本的に最高権力者からの委託を受けて派遣される者で、正規の外交代表ではないので信任状や全権委任状を持たない。対して大使は外交使節の最高階級であり、派遣国を代表して駐在している文明と外交交渉を行う。

 つまり地球はランクAという遥かに格上の“獣の眷族”から対等な交渉相手として認められた―――――――――なんて事はある訳がなかった。

 いつもの公開されている会談で、スノー大使はハッキリと言ったのだ。

 

『現在カラードは統一政府の雛型という扱いで統一政府として発足している訳ではありませんが、こちらは統一政府と同等の組織と判断しています。従って何かしらの情報を地球文明に伝える時は、カラードに伝える事になります』

 

 政治に関わる者で、この意味を分からない者はいないだろう。地球上の全ての国や組織、国連や経済規模で言えば最大のアメリカなど全てを差し置いて、カラードを最上位に置いた、という意味だ。

 当然不満に思う者はいたが、賛同者は集まらなかった。

 主な理由は2つ。1つ目は先日公表された第3回外宇宙ミッションの真実だ。無論ある程度の情報は伏せられていたが、救助者の証言に加え、アラライルがいつもの会談の席で言ったのだ。

 

『救助者を送り届けた各文明から、正式な感謝の言葉が届いている。今後何かしらのお礼をしたいとも』

 

 他の文明に認められているカラードを認めないという事は、「じゃあお前は何が出来るんだ?」という話に直結してしまう。取って代われる人材も組織も無いのだ。

 それでも、カラードが他文明との外交だけだったなら何かを言えただろう。だが此処で、副社長セシリアの荒唐無稽な無理無茶無謀の自殺行為と言われていた行いが効いてきた。世界の紛争・貧困地域への介入だ。アフガン、シリア、クルディスタン*1、リビア、イエメンの5ヶ所に限定してはいるが、何処の国も組織も出来なかった食料の安定供給とインフラの整備、同時進行で戸籍管理も行いつつ難民や貧困者を労働力として活用する事で単価の安い大量生産品を作り、仕事と給料を与える事で、徐々にだが生活が成り立つようになり始めていたのだ。

 そしてこういう事を行う時、古今東西どんな歴史でも必ず足を引っ張ろうとする勢力が蠢くものだが、何故か紛争や貧困地域にありがちなテロや犯罪件数は右肩下がりとなっていた。セシリアのサポートをする晶が、秘密裏に手を回していたからだ*2。丁度良い人材がいたので、「役に立っている間は生きていて良い」とだけ命令して放り出したら良い仕事をしてくれたのだ。無論、放り出した者だけの成果ではないが、相応に働いてくれた事は認めても良いだろう。

 この結果が、カラードは外交だけではないという強烈なアピールとなっていた。

 2つ目がスノー大使が持ってきた大使館、通称“宇宙(そら)の浮島”の存在だ。

 これは人類に宇宙との格差を強烈に認識させるものだった。何せ人類が宇宙建造物と聞いてイメージする、硬い外壁に覆われた物とは全く違う。直径8キロメートルにも及ぶ島を丸々浮き上がらせている上に、硬い建造材で覆う事なく島の生態系を維持しているのだ。島に降り立てば青い空には鳥が飛び、湖には魚がおり、森には自然の恵みの果実がある。これが宇宙という強烈な温度変化と放射線が降り注ぐ中で、硬い外壁に覆われていないオープンスペースで維持されているのだ。どれほどの技術格差があるか嫌でも分かるだろう。

 そんな遥かに格上の相手が、カラードを認めているのだ。加えて言えば、これでランクA文明。更に格上であるランクS文明“首座の眷族”も同じように認めているとなれば、下手な事を言える者などいない。

 このような情勢からカラードを統一政府と認める動きが決定的となった結果、事態が一気に動き出していた。動きが早かったのは身軽な小国で、将来に備えて国家機能の幾つかを統一政府に委ねようという動きが始まっていた。表向きの理由としてはカラードが介入している紛争・貧困地域で行われている戸籍管理システムが上手く稼働しているため、依頼料を税金という形で収めて戸籍管理を代行してもらう事で、行政をスリム化して出来た余力を他に回そうというものだ。しかし表があるなら裏もある。本当の思惑は安全保障にあった。常に大国の思惑に振り回されてきた小国にとって、大国ですらご機嫌伺いをしなければならないカラードは、新たな庇護者として魅力的に見えたのだ。そして国家機能の一部を渡している状態なら、万一の時も統一政府としての立場故に何らかの助力があるはず、という目論みがあった。小国なりの生存戦略である。

 これに晶は次のような発表で答えた。

 まず戸籍管理の代行依頼は受けるが、戸籍管理用データベース本体はカラード本社に置く、という方針だ。理由は治安が悪かったり汚職が多い国に本体を置いた場合、どれほど強固なシステムを構築したとしても、データが改竄される可能性を捨てきれないからだ。最終的には扱う人間の質である。だがこれでは自国のデータを自国の人間が管理出来ないという話になってしまうので、契約に幾つかの追加事項を盛り込んでいた。

 1つはデータベース管理用の人間を複数人、教育目的で自国から派遣してもらうこと。幾つかの技能試験をクリアして一人前と判断されれば、管理を任せるというものだ。

 1つは本社に管理用データベースを構築する資金や作業はカラード側で出して行うが、将来的に自国で管理したいなら、費用全額負担で可能ということ。内容的には極々真っ当だろう。カラード本社に作るからカラード側で資金を出して構築作業もする。自国でやりたいなら自国で資金も出して作業もやってくれ、というだけの話なのだ。決して不公平な内容ではない。実行出来るかどうかは別として。何故なら地下に篠ノ之束の自宅があるカラード本社周辺は、世界で最も強固なセキュリティが敷かれているエリアでもある。そこと同等のセキュリティエリアを構築するなど、大国であっても至難の業だろう。

 次に小国が最も望んでいるであろう庇護者としての役割については、カラードが直接関わる形にはしなかった。もしそんな事をしたら、カラードにはあらゆる要望が上がってくるだろう。振れば何でも出てくる打ち出の小槌*3を振るように、取り合えず頼んでみようという輩が大量に出てくるのは想像に難くない。結果として待っているのは、リソース枯渇による機能不全だ。もっと単純に言ってしまえば、便利屋扱いされて他に何も出来なくなってしまう。冗談じゃない。このため晶は、豊富な動員力を持つ委員会*4にやらせる事にした。領土問題や紛争調停が難しいのは周知の事実だが、委員会を構成する6か国(日本・アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・ドイツ)がちゃんと協力出来るなら、相応の事には対処出来る筈だからだ。

 これに対して、委員会は迅速な行動で応えた。

 内情を知る極一部にとっては驚くような事ではない。日本は更識が中枢にまで入り込んでいるし、ロシアの大統領は楯無の子飼いだ。フランスはシャルロットのお願いをデュノア社長のアレックスパパが全力で政府に伝えている。イギリスはセシリアと不仲という噂を否定する為にも、下手な行動は取れない。既に彼女と本国との力関係は完全に逆転しているのだ。ドイツは………ラウラを通して「何か出来ることない? もっと色々言ってくれて良いよ」と言ってくるくらいに好意的だった。ドイツにはドイツの考えがあるのだろうが、変わり過ぎだろう。こちらとしては嬉しいが。

 で、多少ゴネたのがアメリカだった。対外的にはすぐに賛同した事になっているが、内情は少し違う。今年の1月に大統領になった男はアメリカファーストでそいつが委員会に送り込んできた男もアメリカファースト。領土問題や紛争調停というのは苦労の割りにメリットが少ないので、もっと直接的に利権を確保できるところをやらせろと言ってきたのだ。しかし、それも長くは続かなかった。今年1月に交代したアメリカの元委員が、アメリカ国内でこの動きを公然と批判し始めたのだ。委員会でアメリカだけ世界の事を考えていない。今は将来に向けて役割をこなすべきだ、と。

 この動きは政治劇場に飽き飽きしていた国民に支持されたようで、アメリカファーストの大統領も意見を変えざるを得なかった。伝え聞く話によると、大統領は苦虫を噛み潰したような顔で、現在のアメリカ委員に賛同するように伝えたという。

 だがこうした事情を知らない一般人にしてみれば、委員会の動きは驚くべきものだった。特に国連であれば拒否権の応酬でやりあっていたアメリカとロシアが、パワーゲームに興じる事無く協力しているのだ。政治を知る者ほど、何事かと思うだろう。無論、これは1日や2日で結果が出るような話ではない。しかし行動として、明らかに国連の安全保障活動よりもスピーディかつ連携しようという意図が見えるものだった。

 世界の形が、徐々に変わり始めていたのである。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 こうした動きから1週間程が経った頃、“首座の眷族”から旧式の高性能ワープドライブ搭載艦*5が2隻、“獣の眷族”から至る所が壊れた中古の宇宙船10隻が届いていた。

 前者は以前アラライルとの会談で話題に上がっていたもの*6で、将来的にカラード以外の人間にも外宇宙ミッションを行ってもらうつもりだが、機密の塊であるアリコーンには乗せられないため、カラード以外の人間を乗せる為に購入を打診していたものだ。ただしカラード以外の人間を乗せるのに、外部からカラードがコントロールしなければいけないという矛盾を孕んだ改造が施されていた。何故か? 理由は安全上の懸念ある。何せ人類はカラード以外外宇宙ミッションを行った事が無い。束博士しか実用的な宇宙船を造れない。国や企業が総力を挙げて、ようやく実用的な宇宙船の基礎研究段階なのだ。加えて言えばパイロットの育成方法も手探り状態である。これで安全に扱えると判断できる訳がない。よって“首座の眷族”は、宇宙での行動実績―――それも極めて高度な―――を持つカラードがコントロールするという条件で高性能ワープドライブ搭載艦を地球文明に渡したのだった。

 後者は以前スノーとの会談で話題に上がっていたもの*7で、宇宙戦争跡地から拾ってきた整備艦の最低限の機能回復が行えたので、修理機能の練習用として希望していたものだった。これでカラードのメカニックチームに、宇宙船の修理経験を積ませられる。そして船が修理出来たら、“首座の眷族”と“獣の眷族”の両方からパイロット育成用の人員が派遣される予定になっていた。始めはオンラインが主になるだろうが、教育が進めば直接指導に切り替わっていくだろう。各国からパイロット希望者を募るつもりだが派遣されてくる人員の関係上、どうしても多人数には出来ないので狭き門となるが、そこは諦めてもらうしかない。

 しかし前者については、少々フライング気味であった。というのも以前の会談で決まっていたのは、旧式であること、外部からコントロール可能であること、カラード側が要求仕様と費用を出すなら“首座の眷族”側で改装する、どのような船にするのかは見繕ってくれた船を見てから後日返事をする、という4点のみだ。

 にも関わらずいきなり完成品を送ってきたので、いつもの公開されている会談の席だったが束は言ってしまった。

 

『………アラライルさん。私、まだ要求仕様を送っていないのですが』

 

 するとアラライルはとてもイイ笑顔で笑いながら言った。

 

『ええ。私も受け取っていません。ですが契約違反ではありませんよ。これは契約の履行ではなくお礼の品ですから』

『お礼、ですか?』

『はい。先日各文明が何かしらのお礼をしたいと言っていた、という話の続きなのですが、先方も今の地球に何を送ったら良いのか迷っている様子だったので、カラードの購入希望を伝えてみました。そうしたら各文明からの共同出資でメンテナンス性と耐久性に優れる旧型モデルを送ろうという話になったようで、それをこちらで改造させてもらいました。因みに少し補足しますと、旧式ですが所謂ベストセラーと言われるモデルですよ』

 

 束は、いつものように斜め後方に立っていた晶にコアネットワークを繋いで話し始めた。

 

(1隻はNEXT(N-WGⅨ/IS)の浸食で調べて、問題が無ければ潜行戦隊に配備しようか。運べる人や物の量が増えるから色々やれそうだね)

 

 2人の会話なので多少言葉が省略されているが、意味は勿論通じていた。

 セカンドシフトしてN-WGⅨ/ISとなったNEXTは束の情報収集用端末としての機能も併せ持っており、その機能は左右の肩部に5本ずつある多目的テンタクルユニットにあった。対象に突き刺す事で、物理的に対象を浸食してデータを頂くという、電子防壁が全く役に立たない方法でのハッキングが可能になっているのだ。これを防ぐなら電子防壁ではなく、浸食を防ぐ為のナノテクノロジーが必要になる。アンサラーを超える莫大な出力に裏打ちされた浸食を防げるなら、だが。勿論、普通に刺して束のハッキングを中継する事もできるので非常に使い勝手が良い*8。また物理的な浸食である事を利用して、構造情報そのものを明らかにするという使い方も可能であった。

 つまり多目的テンタクルユニットを突き刺してしまえば、ソフトウェアのみならず構造情報まで全て丸裸にできる。そのデータがあれば、残り1隻も詳細に調べられる。もし違いがあったなら何か仕込まれている可能性を疑える、という訳だ。

 ただし唯一の欠点として浸食は不可逆であるため、やってしまうと対象物質の強度その他諸々が変わってしまい、本来の用途では使用不可能になってしまう、というのがあった。なのでコンピューターを浸食した場合、コンピューターとしての再利用は不可能という事だ。扱いに慣れたら可逆的にできるかもしれないが、現段階では不可逆であった。

 因みにNEXT(N-WGⅨ/IS)の外見は、ここではない別の世界(ACFA世界)で、アブ・マーシュが作っていたというホワイトグリントの後継機(N-WGⅨ/V)に酷似している。右首元にあったチューブ状のパイプが無い以外は、漆黒という機体色も含めて、ほぼそのままと言って良いだろう*9

 

(そうだな。しかし、送ろうと思ってた要求仕様の性能より随分と良いな。これはやっぱり、そういう事だよなぁ)

(だろうね。今回みたいな事を宜しくって事だろうね)

(まぁ、無理しない範囲でだな)

(うん。そうだね)

 

 尤も世間一般で言う無理とこの2人が言う無理は、控え目に言って結構な差があるのだが、それはまた別のお話である。

 

 ―――閑話休題。

 

 晶との会話を終えた束は、アラライルに送ってくれた人達にお礼を言っておいて欲しいと伝えた後、更に続けた。

 

『これと同じ船を2隻追加で購入したいと思います。どれくらいで納入出来そうですか?』

『おや? まだ使ってもいないのに、宜しいのですか?』

『スペックデータを見る限り、こちらが要求しようとしていた船よりも高性能ですから。それに同じ艦種とは言え、製造元が違えば色々と細かい差異もあるでしょう。今のカラードでは、運用するにあたりその小さな差異も結構な負担なのです。なので取り合えず同じ艦で揃えて、どれだけの事が出来るのかを色々試したいと思います。結果更に追加購入するか、或いは自分で改造するかは、まぁ、その時にまた考えたいと思います』

『なるほど。貴女はそれが出来る人でしたね。―――分かりました。1週間、長くても2週間掛からないでしょう』

『では、お願いしますね』

 

 こうしてアラライルとの会話を終えた束は、今度はスノーに話しかけた。

 

『こちらは予定通り、色々壊れた船が10隻。ありがとうございます』

『そちらが成した事を考えれば、もう少し大きい要求も通ったと思うのですが宜しかったのですか?』

『はい。練習材料こそが今必要なものなので』

『ふふ。では存分に練習して下さい。必要であれば追加で持ってきますので』

『あら、良いのですか?』

『構いません。一般市場に流れている中古船を持ってくる程度、さしたる手間でもありませんから。あとついでに確認なのですが、この修理事業、いえ、まだ事業と呼んで良いのかは分かりませんが、それなりの期間続くと思っても良いのでしょうか?』

『明確に期限を決めている訳ではありませんが、恐らくそれなりに。こちらとしては船に詳しい人間を育てたいので、今いる人間がある程度育ったら、人員を追加して人材育成の場に使おうかと思っていますので』

『そういう事でしたら今後カラード側がパイロット育成に使う船を一定数確保したら、余剰分で構いませんので、こちらに修理した船を売ってもらえないでしょうか? 無論安全基準はクリアして貰いますし、修理した船なので高額で、という訳にはいきませんが』

 

 束と晶の立場から見ると、壊れた中古船で修理の練習が出来て、出来が良ければ収入にも繋がるという美味し過ぎる話だ。それだけに裏が気になった。昔から言うだろう。タダより高い物は無い。美味しい話には気を付けろ。前払いの良い依頼には注意しろ、と。

 束が一瞬考える仕草を見せた後、ストレートに尋ねる。

 

『こちらからしてみれば美味し過ぎる話なのですが、理由は何でしょうか? こちらの技術レベルを考えれば、修理した船など安全基準を満たせても最低レベル。性能も最低。正直、これにお金をかけるくらいならそちらの文明で修理した中古船を買った方が遥かに安心して使えると思うのですが』

『普段使いであれば、言われた通りかもしれません。ですが最低限の性能で動く船というのは、それはそれで需要があるのです。これは恐らく束博士の方が理解し易いと思うのですが、実験的に作った物を試すのに新品は勿体無い。敢えて性能の悪い物を使いたい。なのでなるべく安く済ませたい、という事はありませんか?』

 

 これは非常に理解し易い事だった。必要最低限の機能があれば良い特殊なシチュエーションというのは結構ある。そういう事なら安く買い叩けるカラードで修理した船は打って付けだろう。地球文明が真っ当な船を造れるようになったら見直しが必要だが、現状なら特に不利益も無い。

 

『なるほど。分かりました。では詳細は後ほど詰めるとして、可能な限りお安くそちらにお渡ししましょう』

 

 束の返答に、アラライルが乗ってきた。

 

『そういう話であれば、こちらも混ぜて貰えないかな。スノー氏が言ったような使い方は、相応に需要があるのでね』

 

 すると束が答えた。不安というか、一抹の疑念が脳裏を過ぎったのだ。

 

『あの、一応言っておきますが、私が修理する訳ではありませんからね。修理するのは一般人ですからね』

『無論分かっているとも。ただ、あのサイズの整備艦を僅か4320時間程度(半年程度)で、最低限とは言え機能復旧出来たチームが行うのでしょう? なら、期待が持てるというものです』

 

 アラライルの言葉は多少のリップサービスが入っているとは言え、概ね本心であった。何せ月近郊で修理されている整備艦は、地球の単位で言えば全長10キロメートルサイズ。それも戦争でブリッジが吹き飛び、主機関は爆発しなかったのが奇跡と言えるほどで再起動は不可能。全交換しかない。加えて攻撃を受けた船体右側面の機能はほぼ全損。双胴艦であったため左側の機能は比較的無事だが、ハッキリ言ってスクラップと大差ない。

 “首座の眷族”から修理用パーツと作業用重機を持ち込み、更にカラードのメカニックチームに色々教える為のメカニックチームを派遣しているとは言え、教えを受ける側の努力無くして4320時間で最低限の機能復旧など有り得ない。

 因みに束がメカニックチームに施した強化処置の効果があってこその結果だが、強化処置はあくまで強化であって、本人達が自身の努力で作り上げた土台があればこそでもあった。

 

 ―――閑話休題。

 

 随分な高評価に、束はメカニックチームの面々を思い出しながら答えた。

 

『期待されていると知れば、あの者達も頑張るでしょう。ですが期待とちゃんと修理できる事は別物なので、安全確認は厳しめでお願いしますね』

 

 この要望にアラライルとスノーは快諾すると、今度はスノーが口を開いた。

 

『ところで束博士。話は変わるのですが、1つ良いでしょうか』

『なんでしょうか?』

『いえ、我々“獣の眷族”の領域にスターゲートが通じると同時に、月に2つスターゲートが設置されたようですが、何処に繋がっているのですか?』

『ああ。そういえば色々あって、すっかり伝えていませんでしたね。2ヶ所とも、何ら手を加えない状態で海が存在している惑星近郊に繋げてあります。あと、どちらも同一星系内にガスジャイアント(巨大ガス惑星)があってヘリウム3が採取出来そうなので、核融合発電のハードルを下げられそうというのもありますね』

 

 第3回外宇宙ミッションにより内政と外交が一気に動き出していたため陰に埋もれてしまっていたが、月の南極にアンサラー5号機が投入され、それに伴い月の衛星軌道にはスターゲートが3つ投入されていた。1つが“獣の眷族”の領域に繋がるもので、残り2つが海の存在する惑星近郊に通じるゲートだ。

 これにより月のアンサラーは北極の4号機と南極の5号機で2機体制になり、衛星軌道では計6つのスターゲートが稼働状態となっていた。アンサラー1機で維持できるスターゲートは3つ*10なので、月のハブ化は取り合えず一旦終了となる。今後は星系間の移動や交易の要所として月やその周辺に設備を整えていく事になるだろう。

 

『なるほど。そうでしたか。ふむ………』

 

 ここでスノーは数瞬考え、言葉を続けた。

 

『提案があるのですが、宜しいでしょうか?』

『伺いましょう』

『それほど難しい話ではありません。今、カラードは“首座の眷族”とのみ資源採掘の契約を結んでいるようですが、それに“獣の眷族”も含めて頂きたいのです』

『それは流石に私の一存では決められません。契約の取り交わしは地球時間で1年ごと。その前に改定するなら、相手側の同意が必要です。この場合はアラライルさんですね』

 

 スノーの視線がアラライルに向くと、彼が答えた。

 

『流石にこの場で即答は出来ません。ただ地球文明圏での採掘なので、束博士が受け入れるなら、そしてこちらとそちらで条件が変わらないなら、改定にそう時間は掛からないでしょう』

 

 契約内容の詳細は専門家の分野だが、内容の肝は採掘業者、採掘資源、採掘量が事前に申請されるという事であり、契約は1年ごと。資源売却益の20%が“首座の眷族”の銀行につくられた束と晶の共同口座に振り込まれる、という事だった*11

 そしてアラライルが即答出来ないと言った理由は至極単純で、莫大な金が動いているからだった。というのも束博士が独自に調査してスターゲートを繋げている星系は天然資源の宝庫である上に、スターゲート直通というアクセスの良さまである。しかも辺境だけに手つかずで競合他社がいない。こんな好条件のところに他を介入させたくないのは当たり前だろう。しかし“獣の眷族”は様々な面で協力的で、“首座の眷族”から協力を求める事もある。加えて言えば収益の独占はメリットが大きい分デメリットも大きい。金だけで世界が回っている訳ではないのだ。つまり協力的な仲間であるなら契約に含めるのもアリ、という考えだった。

 

『分かりました。では、前向きに考えておきたいと思います』

『ありがとうございます』

 

 この後、少々の雑談をして今回の会談は終了となった。

 そして契約改定の話は順調に進んで行き、数回の会談を経て“獣の眷族”も“首座の眷族”と同じ条件で、採掘が可能となったのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 数日後のカラードの社長室。

 開いている扉からちょっとした声が聞こえていた。

 

「社長。流石に無理です!!」

 

 声の主はキャロン・ユリニル*12。カラード宇宙開発部門長代理シャルロット・デュノアの最側近だが、容姿の第一印象は立場に似つかわしくないギャルだろうか。小生意気さとあどけなさが同居した艶のある表情に、真紅の瞳に豊かな金髪のツインテール。スラリと伸びた四肢に高い腰の位置。起伏に富んだボディラインは生意気という表現がピッタリだろう。実際街を歩けば大体間違われるらしいのだが、本人曰く擬態ということだった。以前理由を聞いたところ、「外見で舐めてくれると色々楽」という何とも怖い返答が返ってきた。

 だがそれはそれとして、中身は本物だった。何せ月面で稼働しているマザーウィル建造の立役者で、今は月近郊で整備艦の修理をしているメカニックチームを纏めているのだ。誰にでもできる事じゃない。

 そんな彼女が社長室に飛び込んできて、社長のデスクに両手をついて前屈みで無理だと言っている。ギャルっぽく制服を着崩しているので胸元が開いており、お陰で豊かな谷間が良く見える。ついでに言えば赤いブラがチラチラ見えている。その下も見た関係だが、チラリズムにはチラリズムの良さがある。眼福眼福。

 

「見たいなら幾らでも見て良いですし、何ならベッドの中で好きにしてくれても良いですから、船の修理事業は待って下さい」

 

 晶は横道に逸れた思考を元に戻して、真面目に答えた。

 

「メインはお前達の練習であって、相手に渡すのはオマケだぞ。俺も束も初めから宇宙の安全基準を満たせるとは思ってないから、焦らずじっくり取り組んで欲しいと思ってるんだが」

「でも売るんですよね?」

「安全基準を満たしたものだけな。ついでに言えば幾つ売るともノルマが何隻という話もしてないから、極論1隻も修理出来なくてスクラップの山が出来ました、でも問題無い」

「そうなんですか? 私、てっきり………」

 

 ヘニャヘニャと崩れ落ちるキャロン。

 

「ああ、そうか。売るっていう話だから、ある程度数を揃えて納入するってのをイメージしたのか」

「そうです」

 

 晶は素直に、自身の連絡不足を謝る事にした。

 

「すまない。実際にやるのはお前達だもんな。直接ちゃんと説明するべきだった」

「いえ、こちらも早とちりして申し訳ありません。整備艦の修理と並行して、一定数を定期的に納入していくレベルの修理を要求されたと思って、焦ってしまいました」

「流石にそこまでの無茶振りは………」

 

 しない、と言おうとしたら言葉を被せられた。

 

「今までの行いを顧みて下さい。同じような事、結構やってますよ。まぁ、終わった後はちゃんと休みもくれますしボーナスもあるので良いんですけど」

「無茶してもらう事はあるけど、人材は人財だからな。その辺りは大事にしているつもりだ」

「ありがとうございます」

「ついでだ。折角来てくれたんだから少し話そう」

 

 晶はそう言うとイスから立って、社長室に常備しているコーヒーを入れ始めた。

 

「あ、私が」

「良いの良いの。ソファに座ってて」

 

 平社員だったら恐縮するところかもしれないが、晶とキャロンの付き合いはそれなりに長い。なので彼女はそれ以上は何も言わず、応接用のソファに座った。程なくして運んできたコーヒーをテーブルに置いた晶は、対面のソファに腰を下ろして口を開いた。

 

「整備艦の現状とかチームの状況は報告してくれているから良いんだが、今日聞きたいのはお前の予測というか、見込みだな。単刀直入に聞くが、あの整備艦って完全復旧出来そうなのか?」

 

 キャロンは少しだけ考えた後に答えた。

 

「宇宙戦争で撃沈される前の状態、ということでしたら恐らく無理かと。理由は2つ。1つは主機関が全損しているからです。今は“首座の眷族”が持ってきた簡易的な核融合炉を動力源として使っていますが、船体の全装備を稼働させるにはエネルギーが足りません」

「どれくらい足りない?」

「動かせるものを言った方が早いです。修理用機材の5%程度、居住ブロックの重力制御、簡易的な姿勢制御装置の稼働、デブリ用のエネルギーシールドくらいしか動かせません」

 

 予想を遥かに超えて足りなかった。

 

「うわぁ。2つ目は?」

「中央コンピューターユニットが全損しているので、艦の姿勢制御、航路計算、ワープ演算等々。あの巨体を実用的なスピードで動かす為には相当な演算速度が必要ですが、今の地球の企業では代替品を造れません。一度私の専用機に電子戦ユニットを装備*13して、演算能力を高めて代わりをしてみようと思ったのですが、初期データ読み込みの時点でオーバーフローを起こしたので止めました」

「だろうな。しかし………そうか」

 

 晶は暫し考えた後に言葉を続けた。

 

「分かった。暫くは修理機能の復旧と修理の練習を中心にやってくれ。で、整備艦の修理が進んでいけばいずれエネルギーが足りなくなると思うんだが、それについては“首座の眷族”からユニット化された核融合炉を購入して使おう。船としての機能を考えないなら、適当な外付けでどうにか出来ると思うんだが、どうかな?」

「非常に不細工ですが、エネルギー供給だけなら問題無いと思います。ただ………社長」

 

 キャロンがゆらりと前かがみになり、テーブルに手をついて、ネコ科の猛獣を思わせる仕草でテーブルに膝を乗せ、近づいてきて言った。

 

「それって私達に、融合炉の勉強もしろってことですよね」

 

 顔は笑っているが、ちょっと怖い。

 

「く、苦労はかけると思うが、ほら、“首座の眷族”から科学関連の教科書も一緒に買って、資料も沢山買って、出来る限りサポートするから」

 

 晶はちょっと仰け反りながらサポートを強調するが、彼女の前進は止まらなかった。

 

「社長。教科書と資料が沢山あるって事は、読み込む物が沢山あるって事なんですよ。例え私が専用機持ちで、思考加速が使えて、他の人より時間短縮が出来ると言っても、他のチームメンバーに教えるのも私なんですよ。例えチームメンバーが強化処置を受けてて呑み込みが良かったとしても、安全に融合炉を扱えるようになるまで、どれだけの事を教えないといけないと思ってるんですか?」

 

 非常に珍しい構図だが、殆ど晶“が”襲われているような構図になっていた。いつの間にか晶の膝の上に両膝立ちで跨り、覆いかぶさるような姿勢になっている。そして笑顔がさっきより怖い。

 

「が、頑張ってくれている社員には可能な限り報いてあげるのが信条なんだが、どうしてあげたら良いかな」

「そんな事は社長が考えて下さい。社長は良い人だと思っていたのに、私を社畜のように扱って使い潰すんですね」

「いやいや、そんなつもりは無いぞ。確かに色々やる事が増えちゃって大変な状況にはなっているがブラック企業みたいに無闇な長時間労働をさせる気なんてない。むしろONとOFFをしっかり切り替えた方が結果として効率も上がるんだ。大体俺はカラードをブラック企業にする気は無いんだ。まぁどうしても頑張って欲しい事はあるがその分はしっかり報いたいと思っている」

 

 晶が早口で慌てて答えると、キャロンはクスッと笑いながら離れた。

 

「ダメですよ。簡単にそんな事を言ったら。社長の言葉は重いんですから。人によっては言質を取ったって大きい顔をしちゃうかもしれません。あとちゃんと言葉にしておきますけど、今の仕事、私好きですからね。大変ですけど、やりがいありますから。上司も良い人ですし」

「あ………お前………」

「はい。ちょっとしたイタズラです。社長、ああいう迫られ方に慣れてませんね。経験豊富だと思ってましたけど、意外です」

「後で、絶対分からせる」

「はい。楽しみにしています」

 

 少しばかりワナワナしている晶にクスクス笑っているキャロン。本当に珍しい構図だった。

 晶は気を取り直して話を続ける。

 

「全くもう。―――で、コンピューターユニットの方だけど、こっちの方は宛があるというか、今度また戦争跡地行ってくる予定だから、何か使えそうなジャンクパーツでも拾ってこようと思う」

「分かりました。それまでは船体各部のサブコンピューターで騙し騙しやっていきます」

 

 束が手を出して魔改造すれば解決するかもしれないが、整備艦の修理そのものがメカニックチームの練習であり、巨大物体を運用できる人員育成を兼ねているのだ。だからこの件に関して、束が直接手を出す事は無い。精々が使えそうなジャンクパーツを拾ってきたり、必要な教科書や資料を取り寄せる程度だ。地球文明の水準を遥かに超えた科学技術の資料なので、科学者や技術者的な意味で言えばひっっっっじょうに恵まれているのは間違いないが………理解出来るかは本人達の努力次第である。

 こうして晶とキャロンは整備艦や今後行われる中古船の修理など、アレコレについて話し合っていったのだった。

 因みに健全な青少年諸君には全く、これっぽっちも関係無い事だが、話し合いが終わった後にキャロンは肉体言語でしっかり分からされていた。帰宅は非常に遅かったらしいが、翌日の彼女はとても上機嫌でツヤツヤしていたという。

 

 

 

 第203話に続く

 

 

 

*1
中東北部の一地域。トルコ東部、イラク北部、イラン西部、シリア北部とアルメニアの一部分にまたがり、ザグロス山脈とタウルス山脈の東部延長部分を包含する、伝統的に主としてクルド人が居住する地理的領域のこと

*2
セシリアは勘付いていたが、本人曰く「騙されて差し上げます。」とのこと。第186話にて。

*3
振ることにより様々なものが出てくるとされる伝説上の槌(つち)。日本の説話や昔話に登場している宝物のひとつ。

*4
通称“星間国家の在り方を検討する委員会”

*5
解説:ワープドライブは主に星系内の移動に用いられ、高性能ワープドライブは星系間の移動に用いられるが非常にお高い。

*6
第192話にて。

*7
第198話にて。

*8
第171話にて。

*9
アブ・マーシュが作っていたというのは本作オリ設定。元ネタはACVDのラスボスN-WGⅨ/Vです。

*10
スターゲート1機を安定稼働させる為に必要なエネルギーは、アンサラーがファーストシフト状態かつ地球周辺で発電しているという条件下で、総出力の20%を占める。全出力を使えば5機だが、余力を持たせて3機としていた。第180話にて。

*11
第176話で決まり、第192話で申請内容や口座振り込みなど追加。

*12
元ネタは「キャロライン・ユリ」で、初回登場は「第153話 月面開発」。例によって例の如く名前で画像検索すると出てきますが、“くれぐれも”周囲に人がいない場所でお願い致します。

*13
キャロンの専用機はラファール・フォーミュラ。彼女は元々同機のテストパイロットである。




まずアラライルさん。元々何となく勘付いていた人でしたが、今回のでほぼ確信したようです。
ただ彼は覇権主義者では無かったので、彼は彼の考えに従って対応を決めたようです。
そして地球では国、という体制が徐々に変わり始めました。
まだ小国だけですが併せて政策提案なども行われる予定なので、有効性が認識されていけば、おのずと後に続こうという人達が出てくるでしょう。
宇宙ではカラード以外の人間が乗れる実用的な宇宙船(コントロールはカラードですが)をゲットできたので、こちらも活動範囲が広がりそうです。
キャロンちゃんについては紳士な皆様のご想像通り、ということで。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。