インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~   作:S-MIST

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第22話 クラス対抗戦(中編)

 

 さぁ、後どれくらい撃てる?

 砲身も砲弾も見えないって事は、どこかでその分余計にエネルギーを消費しているはずなんだ。

 つまり燃費が良いはずが無いんだ。

 龍咆の掃射を避わしながら、(織斑一夏)はそんな事を思う。

 するとエネルギーが無くなってきたのか、それとも当てられない事に焦れてきたのか、鈴の顔に焦りが見え始めた。

 そろそろか? それとも誘いか?

 でも奇妙な確信があった。

 今の鈴は本気で焦っている。

 なら、行くぞ!!

 

 ―――瞬時加速(イグニッション・ブースト)!!

 

 龍咆の掃射を避わして側面を取った瞬間、背部非固定浮遊部位(アンロックユニット)のウイングブースターを展開。

 溜め込んでいたエネルギーを一気に放出。一瞬でトップスピードに。

 

「これでっっ!!」

「っっ!!!」

 

 完全にがら空きの体勢の鈴。

 決まった。

 そう思った瞬間、ハイパーセンサーが高エネルギー反応を感知。更にロックオン警報。

 上!?

 考えるよりも先に、身体が動いていた。

 反射的な回避機動。

 1秒前までいた空間を貫く光の奔流。

 地面への着弾。起こる大爆発。

 吹き荒れる爆炎と爆風が、一回だけ晶が見せてくれたNEXT用グレネードを思い出させた。

 

「な・・・・・なんなんだ、今の?」

 

 突然の事態に戸惑い、思わず、その場に止まりそうになる。

 だけど続けて放たれた第二射が、それは拙いと教えてくれた。

 そしてハイパーセンサーが第三射を感知する。が、俺にロックオン警報は無い。

 

「――――――鈴!!! よけろぉぉぉぉ!!」

 

 気付けば、叫んでいた。叫ぶしか出来なかった。

 第三射が撃ち下ろされると同時に、アリーナに侵入してきた2機の見慣れないIS。それが観客席に極太の両腕を向けると、ハイパーセンサーがまた高エネルギー反応を感知。

 

「さ、させるかぁぁぁ!!」

 

 残りのエネルギーを気にする余裕なんて無かった。

 考えてる余裕なんて無かった。

 何もかもが無かった。

 そんな中で、俺が出した答え。

 

 ――― 一撃必殺。

 

 時間が掛けられないなら、掛けなければいい!!

 後から思い出せば無茶苦茶だと思ったけど、この時は、これ以上の方法は考えられなかった。

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)の起動と同時に、雪片弐型へのエネルギー供給開始。零落白夜起動!!

 加速する視界の中で、凹凸の無い黒いボディとフルフェイス。極太で長い手足という、見慣れないISの姿があっと言う間に大きくなる。

 そして、求めた攻撃は最速。故に刺突。

 俺自身が一本の矢になって突き刺さる。

 零落白夜が発動した雪片弐型は、振り向いた黒いISのエネルギーシールドも絶対防御も紙切れのように貫通し、狙い違わず胸元に突き刺さる。

 だが、まだ敵は動いていた。そしてもう一機いた。止まっている暇は無い。ニノ太刀を振るう時間も引き抜く時間も惜しい。

 ならどうする?

 コレ(雪片弐型)を手放して、俺だけで体当たりをするか?

 駄目だ。コイツはまだ動いてるんだ。下手に隙を見せたら後ろから撃たれて終わりだ。

 なら!!

 無理でも無茶でも無謀でも、このまま行くしか無いだろう!!!

 残っているブーストエネルギーを全て叩き込み再加速。

 オーバーロードでブースト関連のステータスが軒並みレッドになるが全て無視。

 今、この瞬間に間に合わなきゃいけないんだ!!

 頑張ってくれ白式!!

 俺の声が届いたのかどうかは分からない。

 だけど白式は、黒いISというデッドウェイトがあるにも関わらず、普段と同じ、いや、それ以上の加速力を叩き出してくれた。

 結果、ビームを放つ直前で体当たりに成功。

 観客席への直撃だけは防げた。

 けど、無茶の代償は大きかった。

 貫いたけど、何故かまだ動いている黒いIS。そして体勢を崩す事しか出来なかったもう一機。ああ、上に無傷のがもう一機いたな。

 対して俺の方は、ブーストエネルギー0。零落白夜のおかげでエネルギーシールドも残り僅か。

 こんな状態で囲まれたら、

 

「一夏ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 鈴の叫び声が聞こえる。

 振り向けば、装甲は半壊しているけど、無事な鈴の姿と、ピットから飛び出してきた蒼とオレンジ色のIS。

 良かった。あの2人が出てきたなら大丈夫だ。

 そう思った直後、全身に感じた強い衝撃で、俺の意識はプッツリと途絶えた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ホテル『テレシア』で航空会社社長と面会している最中、山田先生から携帯を渡された(薙原晶)は、聞こえてきた言葉に声を失った。

 

「すぐに戻ってくれ!! 未確認ISが3機、アリーナに侵入。一夏のお蔭で観客への被害は無いが、無いが!!」

 

 あの、気丈な織斑先生が取り乱している。

 それが既に信じられなかった。同時に、事態の深刻さを現していた。

 

「すぐに戻る。――――――社長。悪いが面会はこれで終わりだ。急な用事が入った」

 

 返事を聞く前に席から立ちあがり、踵を返して屋上に向かう。

 途中、織斑先生から聞いた話は、かなり拙いものだった。

 観客を護る為に無理をした一夏は、敵のど真ん中でブーストエネルギー使い果たし立ち往生。

 更に零落白夜のおかげで、シールドエネルギーが殆ど残っていなかった状態で攻撃をもらい意識不明。

 確実に絶対防御を抜けてダメージが入ったんだろう。それもかなり拙いレベルの。

 そして鈴の方は敵の初撃、大出力ビーム砲を受けて装甲が半壊。

 辛うじて直撃は避けたらしいが、動けるというだけで戦闘能力は絶望的。

 唯一の救いは、すぐにシャルロットとセシリアがアリーナに入って、敵を引き付けてくれた事か。

 しかし3対2だ。急がないと。

 山田先生に携帯を返して別れた後、屋上へと続く階段でNEXTとなった俺は、鍵のかかった扉を蹴り飛ばし外へ。

 平行してデータリンク確立。IS学園で起きている現状の詳細情報を受け取る。

 こいつは!?

 即座に織斑先生に、以前戦った無人ISのデータを送信。但し無人機なので、バージョンアップされている可能性があると付け加えて。

 そうして上昇しながらOB(オーバード・ブースト)起動。

 周囲に騒音被害を撒き散らしながらIS学園へと進路を取る。

 

(クソッ!! まさかこんな事になるなんて!!!)

 

 幾ら後悔しても遅いが、思わずにはいられない。

 戦いの場に絶対は無いなんて分かりきっていたけど、こうなると、もっと別の手段は無かったのかと考えてしまう。

 

(いや、何を今更!! 後悔する位なら、仕掛けてきた相手を100倍後悔させてやる方法を考えろ!! 俺に、俺の周囲に手を出す事がどういう事か、骨の髄まで分からせてやるんだ)

 

 そう思い、思考を切り替える。

 こと戦うという一点において他の追随を許さない、強化人間の戦闘思考が走り始める。

 襲撃の目的は何だ?

 今日呼び出されたのは偶然か?

 博士に関係があるのか?

 状況報告では3機。予備戦力はあるのか?

 様々な疑問が脳内でリストアップされ、マルチタスクで推論が構築されていく。

 襲撃の目的は?

 高確率で情報収集だろう。なら対象は? 俺がいるIS学園を襲撃する位だ。明確な対象がいるだろう。まさか俺? それこそまさかだ。多少バージョンアップされていたとしても、3機程度の無人ISならすぐに片付けられる。以前戦った時以上の情報を、敵が得られるとは思えない。無人機の仕上がりを見る為? 無くは無いだろうが、何も学園でやる必要性は低いだろう。博士に関わる事か?

 コアネットワークで博士をコール。

 

(博士)

(どうしたの? 今大変な事になっているけど)

(学園の事なら知っている。ところで1つ確認したい)

(何?)

(今博士に対して何らかのアクションは発生しているのか?)

(ううん。なぁ~んにも)

(分かった)

 

 接続を切ろうとしたところで、博士が釘を刺してきた。

 

(薙原。いっくんに何かあったら箒ちゃんが悲しむ。分かってるよね?)

(言われるまでも無い)

 

 博士絡みじゃない?

 という事は、やはり対象は俺も含めた専用機持ち組みか? 襲撃時間と場所を考えれば、それ以外の可能性は低いだろう。

 何の為に?

 そこまで考えた時、脳裏を閃きが走った。

 待てよ? 敵から俺を見た場合、単純な力押しで勝てない相手と戦う場合、致命的に抜けている情報があるだろう!!

 それは人格や性格といった精神的なもの。

 物の好き嫌いに始まり、非常時には何を優先する傾向にあるのか。

 純粋に力押しが出来ない場合、この辺りの情報は無視出来ない。

 逆にこの辺りの情報を上手く使えば、例え敵側であったとしても、自分達の利益となるように動かせる。

 相手の動きをコントロール出来るんだ。

 なるほど。そう考えれば、今日呼び出されたのも、アリーナがこのタイミングで襲撃されたのも、全てが繋がる。

 目的は、俺が非常時にどう動くかを知る事か。

 勿論普通なら、こんな大袈裟な事はしないだろう。

 この世界で生まれた人間なら、生い立ちを調べれば大まかな事は分かるはずだから。

 でも俺は違う。

 博士と行動を共にする以前の情報は、世界中の何処にも無いんだ。

 つまり敵にとっては、『強力な力を持っている謎の存在』という事になる。

 これらを踏まえて考えれば、IS学園を襲撃したのが3機だけと考えるのはおかしい。

 情報を持ち帰る為の偵察機がいるはずだ。

 しかし分かったところでどうする?

 一夏と鈴の状況を考えれば、悠長に探している時間は無い。

 悠長に?

 何も“今”探し出す必要は無いじゃないか。

 結果として情報を持ち帰られなければ良いんだ。

 そしてIS学園には、その手のプロが居たじゃないか!!

 俺は織斑先生に通信を繋ぐ。

 

「先生。大至急呼び出して欲しい人がいる」

「誰だ?」

「IS学園生徒会長、更識 楯無(さらしき たてなし)。すぐに頼みたい事がある」

「分かった。少し待て――――――」

 

 そうして呼び出した彼女に、手短に用件を伝える。

 すると、

 

「噂の薙原君は人使いが荒いんだね。会った事も無い相手に、そんな事を頼むなんて」

「失礼なのは承知している。が、他に頼めそうな相手がいない。それにもしかしたら、何も無い可能性もあるんだ」

「いいや、君の考えは正しいと思うな。多分、私も同じ事を考えると思うよ」

「そう言ってくれると助かる」

「じゃぁ偵察機は任せて。君は1年生の方を。後ついでに、ご褒美も期待しているよ」

「分かった」

 

 交信を終了した俺は、迫ってきたIS学園のアリーナ突入に備え、武装の呼び出しと最終チェックをコマンド。

 各部ハードポイントに量子の光に集まっていき、その中で武器が形を成していく。

 

 ―――SYSTEM CHECK START

    →HEAD:063AN02・・・・・・・・・・・・・・OK

    →CORE:EKHAZAR-CORE ・・・・・・OK

    →ARMS:AM-LANCEL・・・・・・・・・・OK

    →LEGS:WHITE-GLINT/LEGS ・・・OK

    

    →R ARM UNIT  :04-MARVE(アサルトライフル)・・・OK

    →L ARM UNIT  :063ANAR(アサルトライフル)・・・・OK

    →R BACK UNIT  :EC-O307AB(レーザーキャノン)・・OK

    →L BACK UNIT  :EC-O307AB(レーザーキャノン)・・OK

    →SHOULDER UNIT :-

    →R HANGER UNIT :-

    →L HANGER UNIT :-

 

 ―――STABILIZER

    →CORE R LOWER :03-AALIYAH/CLS1・・・・・OK

    →CORE L LOWER :03-AALIYAH/CLS1・・・・・OK

    →LEGS BACK  :HILBERT-G7-LBSA ・・・・・OK

    →LEGS R UPPER :04-ALICIA/LUS2 ・・・・・・・OK

    →LEGS L UPPER :04-ALICIA/LUS2 ・・・・・・・OK

    →LEGS R MIDDLE:LG-HOGIRE-OPK01・・・・・OK

    →LEGS L MIDDLE:LG-HOGIRE-OPK01・・・・・OK

    

 ―――SYSTEM CHECK ALL CLEAR

 

 

 

 ◇

 

 

 

 その少し前、アリーナでは――――――。

 

「鈴さん!! ピット戻って!! 敵は(シャルロット)とセシリアで抑える!! 急いで!!」

「い、一夏は・・・・・」

「僕とセシリアで何とかするから!!」

 

 叫びながら、両手に持つアサルトライフルをトリガー。

 と同時に、同じようにピットから飛び出してきたセシリアがビットを展開。

 一夏を囲む3機に、同時に撃ち込む

 

(時間は掛けられない。なら!!)

 

 ブーストを全開にして、3機の黒いISに向かい突撃。

 まずは一夏を助け出さないと!!

 するとビットの軌道が変化。

 便宜上付けた識別コード、無傷のα1にビットが集中し、同様に無傷のα2にはスナイパーライフルが撃ち込まれる。

 いずれもシールドに阻まれているけど、動きを止められれば十分!!

 そして残るは、一夏が傷つけたα3。

 トレーニングのおかげか、この辺りの呼吸は、今更確認するまでも無かった。

 そうしてショートレンジまで踏み込んだ瞬間、高速切替(ラピッド・スイッチ)でアサルトライフルを、衝撃力が桁外れのショットガンと散弾バズーカに変更。

 落ち着いて、それぞれワントリガー。

 命中。仰け反って固まるα3の懐に潜り込む――――――ように見せかけて横を通り抜け一夏の元に。抱き抱えて即座に離脱。

 

「30秒、稼げる?」

「愚問ですわ。さっさと運んで差し上げなさい!!」

「ありがとう!!」

 

 頼もしい言葉に、僕は振り返る事なくピットを目指す。

 セシリア、頑張って!!

 

 

 

 ◇

 

 

 

 シャルロットを行かせた直後、織斑先生からの通信。

 一体何ですの?

 

「アレのデータが手に入ったので今転送した。どうやら薙原の奴、アレと交戦経験があったらしい。転送データには推定予想値も含まれているが、無人機だからバージョンアップされている可能性もあると言っていた。――――――後、今こちらに向かっている。もうすぐ到着するはずだ」

「分かりましたわ。でも、到着する前に倒してしまっても良いのでしょう?」

 

 自分でも強がりを言っていると思う。

 だけれど、頼り切るのはプライドが許さなかった。

 それに、ISに触れてからそれほど経っていない一夏さんが、あそこまで頑張ったんですもの。

 代表候補生たる私が、ここで踏ん張れなくては名折れもいい所ですわ。

 

「そうだな。代表候補生の実力、見せてくれ」

「勿論ですわ。 ――――――さぁ!! 踊りなさい!! ブルーティアーズ!!」

 

 号令の元、一斉にビットが行動を開始。ミサイルビットも展開。

 切り札を隠したまま、乗り切れる状況ではありませんわ。

 そうして常に思考の一部をビットコントロールに割いたまま、自身も戦闘機動を開始。

 スナイパーライフルで敵を狙い撃つ。

 だけど敵も、只の人形ではありませんでした。

 明確な役割分担を持って対応してきたのです。

 α1は直接、私を狙い。α2はビット迎撃に専念し、α3は壁際にポジショニング。アリーナ全体を見渡せる位置から固定砲台となって攻撃してくる。

 本当に無人機ですの!?

 機械とは思えない柔軟なコンビネーションに驚きを隠せない。

 でも、負けるとは思いませんでしたわ。だって今の私は、1人ではありませんもの。

 

「あちらは、連携戦がお望みのようですわね」

「いいね。受けて立とうじゃないか」

 

 今にも私を攻撃しようとしていたα1が、横合いから撃ち込まれたバズーカで吹き飛ばされる。

 と同時に、一瞬フリーとなったこの隙に、α3をスナイパーライフルで照準。トリガー。

 エネルギーシールドで弾かれるが、予想通り回避するそぶりすら見せなかった。

 やっぱりあれは、一夏さんの攻撃で相当なダメージを負っている。もう戦闘機動を行うだけの余裕も無いんだ。

 そうしてシャルロットが、私と背中合わせになるように合流。

 と同時に、ビットの斉射でα2を牽制した後、回収してエネルギーチャージを開始。――――――完了

 

「――――――狙うなら、α3からですわね」

「そうだね。落とせるところから落としていこう」

 

 会話はそれだけでしたけど、これ以上は不要でしたわ。

 自然と私はα1を照準。α2へ向けてビット展開。シャルロットがα3へ向けて突撃。

 

 ・・・・・後から思えば、私達はもっと注意を払うべきでした。

 

 人の形をしていても、相手は無人機であるという事に。

 

 

 

 第23話に続く

 

 

 


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