インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~   作:S-MIST

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今回は息抜きの場所を作ろうの回。
ついにここまでの事が出来るようになりました。
  
追記
読者様よりイラストを頂きましたので追加しました。
束さん&千冬さんのイラストです。
ありがとうございます!!
  
追記その2
更に追加でイラストを頂けました。
重ね重ね、ありがとうございます!!
  
追記その3
カラード専用保養地の概要図を頂けましたので追加掲載しました。
ありがとうございます!!


第218話 カラード専用の保養地(IS学園卒業3年目の9月)(イラスト有り)

  

 夏と秋の境目である9月。晶は社長室で考え事をしていた。

 別に世界の危機とか、そういうものではない。仲間達の事だ。様々な活動で露出も多い彼女達には、結構な数の追っかけやパパラッチがいる。そんな彼女達がゆっくりと羽を伸ばせる場所を作りたい、と考えていたのだ。

 無論、彼女達をカラードに迎え入れると決めた時から対策はしていた。

 社員寮は本社を覆う多層リング内で最もセキュリティランクの高い第一層リング内に準備して、プライベートが決して他人に邪魔されないようにしてある。

 内装も住む当人達の意見を取り入れたオーダーメイド仕様で、自宅では可能な限りリラックスして貰えるように配慮したつもりだ。個人の性格が出ていて和風から洋風まで様々だが、総じてハイグレードマンションよりも上と言って良いだろう。掃除や洗濯といった家事からも可能な限り解放されるように、お手伝いテックボットも完備だ。

 これに加えて一番始めに建てた本社ビルや本社ビルを覆う多層リング内には、医療ルーム、プール、エクササイズ(トレーニング)ルームといった施設もある。

 本社ビルと多層リング内に同じ施設があるが、多層リングの方は後から増えてきた一般社員用だ。仲間達が使ってはいけないという決まりは無いが、青少年には教えられない大人な事情から、仲間達は本社ビルの方を使用していた。

 

 ―――閑話休題。

 

 なので自宅環境については大丈夫だと思うのだが、問題は休暇の時だ。買い物にも行きたいだろうし、レジャーも楽しみたいだろう。足元の都市なら少々の事は大丈夫だが、ちょっとでも遠出をしようものなら大騒ぎだ。そうならないように皆も変装したり、警備部門の人間が一般人に紛れて潜み、騒ぎになりそうな芽を先に摘み取ったりしているが、そういう事なくのんびり過ごせる場所を用意してあげたい。

 だが実際にどうやって行うのか、というのを考えると中々難しい。仮に何処かの無人島を買ったとしても、陸続きなら侵入は容易い。警備を厳重にしたら、人の配置や使用機材のメンテナンスでどうしたって人の出入りが発生して、結局人の目が多くなってしまう。

 

「ん~~~~~~~」

 

 1人唸っていると、束が社長室に入ってきた。

 

「ねぇ、晶――――――1人で唸ってどうしたの?」

「いや、ちょっと考え事」

「そんなに悩んでどうしたのさ。今、そんなに悩むような問題ってあったっけ?」

 

 晶は話す事で何か良いアイデアが閃くかもしれないと思い、取り敢えず話してみた。

 

「あぁ、なるほど。ふむ………ん~。ちょっと待ってね」

 

 束は空間ウインドウを1枚展開して、試作品一覧と名付けられたリストを表示させた。画面を数ページ分もスクロールさせたところで止めて、とある項目を別ウインドウで展開。内容を確認した彼女は言葉を続けた。

 

「浮島、造ってみようか」

 

 晶は浮島という単語に、まさかと思いながら尋ねた。

 

「“獣の眷族”や“首座の眷族”の大使館みたいなのか?」

 

 月のハブ化されたスターゲート近郊にある両文明の大使館は、何処かの惑星にあった島を丸々浮かび上がらせたものだ。しかも宇宙(そら)という過酷な環境にありながら、頑強な外壁無しに島の生態系を維持している。地球の遥か先を行く圧倒的な技術力だ。それと、同じ物を? しかし束の返答は違っていた。

 

「流石にそこまでの物は造らないよ。ただ地球圏内で何処かの大地を浮かび上がらせて、空の上でも快適に過ごせるように、気象条件を整えるくらいならあまり手間でもないかなって。場所の用意が出来たら、建物とかはキャロンに建てさせれば良いでしょ」

 

 晶は大きな仕事を任せている彼女の事を思い出した。

 キャロン・ユリニル*1。カラード宇宙開発部門長代理シャルロット・デュノアの最側近という責任ある立場だが、容姿の第一印象は立場に似つかわしくないギャル………から少し変わっていた。小生意気さと艶っぽさが同居する表情。真紅の瞳に豊かな金髪のツインテール。スラリと伸びた四肢に高い腰の位置。起伏に富んだボディライン。ギャルよりも挑発的な美女、という表現が相応しいだろう。

 外見からは想像し辛いが仕事の腕は確かで、本当の性格は割と真面目だと晶は知っていた。マザーウィル建造の時から見ているが、本当に良く働いてくれている。彼女も彼女が率いているメカニックチームも。なので、デュノアから引き抜いた。勿論円満に。そしてラファール・フォーミュラのテストパイロットだったという経歴の持ち主なので専用機を与え、一緒に引き抜いたメカニックチーム共々強化処置を施して、今は月近郊に留置されている整備艦の修理を行って貰っていた。

 整備艦は束と晶が宇宙(そら)の戦争跡地から拾ってきたもの*2で、全長10キロメートルサイズの巨大な双胴艦だ。遥かな先進文明の産物である上に酷くボロボロな状態だったので、“首座の眷族”から人を派遣してもらい、色々と直接教えて貰いながらだ。そうして約2年という時間をかけて、ようやく格納した艦を修理する為の機材が復旧した。

 まだまだ直さなければならない所は多いが、一応一段落したと言えるだろう。チームを1/3………いや1/4くらいずつ地上に下ろして、交代制で自分達の(カラードの)保養地に建物を建てて欲しい、と言ったらやってくれるだろうか? 一番先に楽しんで良いという特典付きで。

 晶はそんな事を思いながら、束に尋ねた。

 

「大地を浮かび上がらせるって、強度的に大丈夫なのか?」

「お手軽にやる気だから、結構力業かな。こんな感じ」

 

 束は先程見ていたウインドウを晶の前に移動させた。内容を確認してみる。なるほど、力業だ。

 使用されているのはスターゲート送電システム、抗重力機関、エネルギーシールド発生装置、気象コントロール装置を組み合わせた複合機関。

 概要を極々簡単に言うなら、地下に巨大な茶碗状のエネルギーシールドを直接発生させて大地から切り取り、抗重力機関で浮かせる。浮かべた大地周辺は気象コントロールで人が快適に過ごせるように環境調整。戦闘機動する訳ではない=座標はゆっくりとしか変わらないので、必要なエネルギーはスターゲート送電システムで賄う、という考えだ*3

 ここで晶の脳裏に、悪魔の閃きが走った。どうせ専用の保養地を造るなら、束を含めて彼女達の水着姿が見たい。水着を着せる為には何が必要か? 水が必要だ。大量の水。出来れば海を再現して砂浜もあれば尚良い。

 

「なぁ束。仮に浮島を造ったとしてさ、海の上に浮かべて、海から大量の海水を島の上にまで上げる事って可能かな」

 

 すると何かに気付いた束は晶に近づき、上目遣いに見ながら言った。但し色っぽいではなく、若干ニヤニヤしている。

 

「ふぅ~ん。何を考えているのかは聞かないであげるけど、出来るよ。嬉しい?」

「ちょー嬉しい」

 

 男なら当たり前だろう。ちょっと想像しただけでこの世の楽園と分かる。そして他の野郎に見せるのは嫌なので、浮島という環境は非常に良い。

 

「正直者だねぇ」

「当たり前じゃないか。お前相手に隠す理由が無い」

 

 普通ならちょっとはオブラートに包めというところだが、この2人にとっては今更の話だ。

 

「じゃあ試作品にちょっと手を入れるから、色々準備しといてね」

「オッケー。全力でやっておく」

「気合い入れ過ぎ」

 

 束は晶を小突いた後、自宅の研究室に戻って行った。

 因みに彼女が社長室に来た理由は、ちょっとした思いつきを話す為だった。とある理由から束はクロエとラウラの自室に行く事があるのだが、その際に義妹ちゃんの1人が作ったコスプレを見て、中々出来が良かったので偽名で持っているランジェリーブランド―――この場合は作り手という意味―――にスカウトしようと思ったのだ。何ならテスターとして義妹ちゃん達全員でも良い。そう思いながら保護者である晶のところに足を運んで、先の会話になった訳だ。

 話題を切り出す前に別の話になってしまったが、急ぐ話でもない。また今度で良いだろう。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 晶は束を見送った後、早速と秘書さんに適当な土地の確保を命じ、次いで丁度良く定期報告で本社に戻ってきていたキャロンを社長室に呼び出した。

 

「――――――という訳で空に浮いたカラード専用の保養地を造ろうと思ってるんだけど、チームの1/4くらいを地上に下ろして、建物をパパッと建てられないかな? お前達が一番始めに使って良いから」

 

 普通に考えれば相当な無茶振りだが、幸か不幸かキャロンとそのチームは無茶振りに慣れていた。なにせ強化処置を受けて思考速度その他色々な能力を強化されているとは言え、覇権文明(ランクS)である“首座の眷族”から造船や船の修理、今の地球文明には存在しないあらゆる事を学んで欲しいと言われているのだ。その無茶振りに比べれば、只のリゾート用住居を建てるなどイージーミッションにも程がある。むしろ息抜きに丁度良いくらいだ。

 

「分かりました。デザインは任せてもらっても?」

「皆で使うから、そうだな。ラフ画で良いから、数パターンのデザインを出してくれないか。それでアンケートをとって――――――」

「はい、どうぞ」

 

 最後まで言う前に、コアネットワークでデータが送られてきた。確認してみれば、オーソドックスなホテル、浜辺のコテージ、水上コテージ、一風変わった水中コテージ等々、見事という他無い様々なデザインがあった。更には全体の景観デザインまで………。

 

「マジ?」

 

 驚く晶に、キャロンは言った。

 

「以前、社長が言ったんですよ。カラード専用の保養地をお前達に造って貰おうと思ってるって*4。だから、頑張ったんですからね。いつ話が来ても良いように」

「大分先のつもりで言ったんだが………いや、大変だっただろう」

 

 するとキャロンはえっへんと胸を張って答えた。

 

「大変も大変で物凄い大変でした。首座の皆さんに色々習いながら、休暇で地球に戻ってくる度にチームの皆で旅行に行って、あっちこっちの観光地を参考にしてデザインしたんですから。沢山褒めて下さいね」

 

 本当は息抜き&リフレッシュ旅行のついでだったのだが、勿論そんな事は言わない。労力は正当に評価してもらわないと。キャロンはそう思いつつ、特に心配はしていなかった。この社長は、そういう意味ではとても信頼が置ける人だからだ。

 

「勿論だ。そして、そうだな。よし。保養地の浮遊島が出来た時に、チームの皆に特別ボーナスだ。期待して良いぞ」

「さっすが社長」

「だからキッチリ作ってくれよ」

「勿論です。確約を貰えましたので、みんな沢山頑張ってくれると思いますよ」

「頼もしいな。任せた」

「任されました」

「じゃあ俺は貰ったデザインでアンケート取るから、決まったらまた連絡する」

「了解です」

 

 こうしてカラード専用保養地の計画は動き出したのだった―――。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 計画は密かに、そして大胆に進められた。

 建物の建築資材は全て事前に調達。同時進行で幾つかの候補地をリストアップ。入念な吟味の後に購入。浮遊島の心臓部となる複合機関を持ち込み設置。起動によって直径2キロメートルという半球状の大地が、地球から切り取られ空へと舞い上がっていく。

 この間、僅かに2週間程度。当然の如く世間は大騒ぎになったので、いつものホテルで会見が行われた。

 説明する晶の隣には束もいる。

 

「―――という訳であの浮遊島は、社員がゆっくり羽を伸ばす為の保養地として使います。普通のコテージの他、水上や水中コテージでのんびり、という感じですね」

 

 会場にいる記者達は最早何から突っ込んで良いか分からなかったが、取り敢えず再起動した記者の1人が質問した。

 

「あの、今“水中”とか“水上”という言葉が聞こえてきたのですが、空に浮かぶ島に、どうやって大量の水を運ぶのでしょうか?」

「浮遊島は本社近郊の海上に留置しますが――――――概要図を見せた方が早いですね。こんな感じです」

 

 晶が手元のコンソールを操作すると、背後にあった大型ディスプレイに簡易図が表示された。それによれば浮遊島の真下に、AIC*5に類似する力場操作系の技術で無色透明な垂直トンネルを形成して、海水を引き入れるとなっていた。

 因みに規模が大きいので超技術が使われているように見えるが、原理的には井戸の手押しポンプと同じであるため、形成された垂直トンネル内には常に海水が満ちている。また水というのは停滞していると腐るため、循環させる為に浮遊島の外縁部から放水されて、海に戻されるようになっていた。

 このため実際に稼働した場合、浮遊島と海が巨大な水柱で繋がり、更に島の外縁部からは滝が流れ落ちるという、中々ファンタジーな光景になるだろう。

 

「なるほど。ありがとうございます」

 

 すぐに、次の記者が質問してきた。

 

「これは新たなレジャー施設として大きな可能性を秘めていると思いますが、そのような事に使う予定はありますでしょうか?」

「ありません。これは先程も言った通り、社員がゆっくりと羽を伸ばす為の保養地として使う予定なので」

 

 この返答に会見を見ていたレジャー業界の人達は安堵すると同時に残念に思った。こんな物をポンポン造られては商売上がったりだが、浮遊島にホテルを構える事が出来れば、圧倒的な集客力間違いなしだからだ。しかし社長がやらないと言っている以上………いや、羽を伸ばす社員向けに店を出す事が出来れば………と考える商売人は多かった。

 

「分かりました」

 

 間を置かずに次の記者だ。

 

「社員が羽を伸ばすためという事ですが、何かしらの店を誘致する気はありますでしょうか?」

 

 多くのレジャー関係者が期待していた質問だが、返答は無情だった。

 

「必要そうな物品を常備しておく気はありますが、人を配置しての営業活動という意味の店でしたらありません。そういう寛ぎ方をしたいなら、そういう店を使って下さい、という事です」

「そうですか。恐らく期待した人は多いと思うのですが、残念です」

 

 今度は会場の端にいた記者だ。

 

「多分大丈夫だと思うのですが、気にする人がいると思うので聞きます。浮遊島をもう1つ造って基地化するお考えはありますか?」

「貴方は確か、軍事関係で記事を書いていた人でしたね。なら分かると思いますが、基地というのは手間もコストも掛かります。何かしらの理由があって必要なら選択肢には入りますが、現状その気はありません。試算したらすぐに分かると思いますが、全ての物資搬入と人の出入りを空輸に頼った空中基地なんて、手間暇を考えただけで眩暈がします。その手間暇を呑み込んでまで実用化する理由が、今の地球にあるとは思えません」

 

 記者はニコッと笑って答えた。

 

「ありがとうございます」

 

 隣にいた記者が口を開いた。

 

「社員が対象という事ですが、部外者は一切入れないという事でしょうか?」

「身内くらいまでならOKにしようと思ってますが、無論事前審査はさせてもらいます。あとレジャー施設のような面白さを期待されても困るので先に言っておきますが、食事等は全部自前で用意して貰う予定です。先程ゆっくり羽を伸ばす為の保養地と言いましたが、それは何かしらのサービスを使ってくつろぐという意味ではなく、自宅以外のゆっくり休める場所を提供する、という意味です。なのでもし身内の人に連れて行ってと言われても、のんびりする以外は何も無い、という事は先に言っておきます。何かレジャー的な事をしたいのでしたら、個人で持ち込める範囲でですね」

 

 ちょっとしたテニスコートやバスケットコートなど、宿泊者当人達が使うようなものは作る予定だが、あくまで当人達が使うものでサービスを受けるという類のものではない。

 

「分かりました」

 

 手前の方にいた記者が尋ねてきた。

 

「浮遊島の使い方についての質問です。今思ったのですが、これってテラフォーミング中の惑星でなら結構な使い道があると思うのですが、その辺りはどうでしょうか?」

 

 これについては束が答えた。

 

「確かに色々な使い方が考えられますが、入植初期で言えばクレイドルの方が設備は整っているでしょうし、中期以降であれば地上拠点の方が何かと使い易くなっているのではないかと思います。なので使うとしたらむしろ、テラフォーミングしていない星で少数の人間の生活拠点としてでしょうか? 移動効率などを考えたら宇宙船を改装した方が使い勝手が良さそうな気がしますが、まぁそのような場合かと」

「なるほど。新しい物が常に適している訳ではない、という訳ですね」

「そういう事です」

 

 会場の左端にいる記者が口を開いた。

 

「浮遊島は読んで字の如く空にある訳ですが、寒さ対策などどのように行われるのでしょうか? 生活空間をドームで覆うような感じになるのでしょうか?」

 

 これにも束が答えた。

 

「気象制御技術の流用でエアシールドを展開して、内部の気温を少し弄ろうかと。考えているのは常夏の島、くらいの感じでしょうか。なので生活空間をドームで覆うような圧迫感は無いかと思います。因みに外部から中は見えないようにしておきますので、メディアの皆さんにとっては残念かもしれませんが、ヘリで上空を飛んでも良い映像は撮れないでしょう」

 

 この言葉に晶が続いた。

 

「あと、一応言っておきます。この浮遊島は社員の保養地なので、色々珍しいとは思うのですが、ヘリや船で周囲を執拗に巡回したりして、休む為の環境を乱すような事はして欲しくありません。大多数の人は大丈夫だと思うのですが、特ダネの為には他人のプライベートなどどうでも良いという人もいますので。ある程度は言葉で言って穏便に退去して貰うつもりですが、分かって頂けない場合は………多分ヘリや船はレンタルでしょうから、使用中に何かあれば修理費用はレンタルした本人持ちでしょうかね?」

 

 些か穏便ではない言葉だが、こういうのは最初にハッキリさせておいた方が良いという考えからだ。なにより仲間達がゆっくり羽を伸ばす場所に、不埒な輩を近づけたくない。このため晶は周囲を巡回する無人機、欲を言えば航空母艦のような物があったら良いなぁ等と思っていた。何やら電波を受信して“アーセナルバード”という単語とイメージが浮かんだが、実用化されるかどうかは状況次第だろう*6

 記者の1人が鋭く尋ねた。

 

「強行手段も辞さないと?」

「場合によっては」

「記者を萎縮させるおつもりで?」

「言葉や映像は物理的な暴力に勝るとも劣らない暴力になり得る事を自覚して下さい、という事です。言論の自由や報道の自由を叫べば何をしても許されると思っている輩がいるでしょう。真面目にやっている人達が迷惑を被るのは、そういう人達の相手を顧みない姿勢という事もあるでしょう。無論、他の原因が無いとは言いませんが」

「………なるほど。貴方の自制心に期待しましょう」

「ではこちらは、メディアの自制心に期待しましょう」

 

 こうして束と晶は、会見で様々な質問に答えていったのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 瞬く間に時は過ぎ、9月の最終週。

 キャロン率いるメカニックチームの多大な頑張りにより、浮遊島には南国リゾートのような光景が出来上がっていた。

 白い砂浜には透き通った海水が静かに波打ち、爽やかなそよ風が流れている。ゆっくりと羽を伸ばす為のコテージは水上、水中、陸地と3タイプあり、水上コテージは開放的、水中コテージは神秘的、陸地のコテージはオーソドックスな雰囲気というところだろうか。どのタイプも幾つか造られているので、多少人数が来たところで狭い思いはしなくて済むだろう。ちょっとした気分転換用にテニスコートやバスケットコートもつくられている。

 そして用地はまだ余っていたが、使っていれば追加で欲しい機能や建物も出てくるだろう事から、取り敢えずは一旦終了として、今後希望時に随時追加していく形となっていた。

 なおキャロン率いるメカニックチームが頑張ってくれたのは事実だが、大分楽しみにしていた仲間達も多かったようで、休暇を利用して手伝ってくれていた。全員専用機持ちなのでかなり助かったとキャロンが言っていた。

 ついでに晶として非常にニヤニヤしてしまった事が1つ。先日実用化された人間サイズのアーマードコアも多数投入されていたのだが、こちらも役に立ってくれていた、ということだ。人の言葉を理解する柔軟なAIと状況によって機能を組み替えられるパーツ換装能力。役に立たない訳がない。荷物の移動から組み立てまで、縦横無尽に活躍してくれていた。戦闘メカとして活躍するアーマードコアも良いが、こういう作業メカとして活躍するのも、設計思想の根底にある汎用性が証明されているようで嬉しいのだ。

 

 ―――閑話休題。

 

 そうして浮遊島に出現した南国リゾートには、今楽園のような光景が広がっていた。

 透き通った海で泳ぐ者。浜辺で思い思いに寛ぐ者。ビーチバレーで楽しんでいる者。色取り取りで様々なデザインの水着で羽を伸ばす美女達。セシリアは蒼いクロスホルダービキニ。シャルは白いツイストビキニ。ラウラはアーミー系の緑のローライズビキニ。簪は水色のリボンビキニ。本音は白いフレアビキニ。静寐は紺の三角ビキニ。清香は朱のホルタービキニ。神楽は桜色のオフショルダービキニ。赤坂由香里(あかりん)宮白加奈(かなりん)はお揃いのモノキニタイプ。他の面々もそれぞれ個性的で、とても似合っている。

 もう幾度となく中身も見ている仲だが、それはそれ。これはこれ。良いものは良いのだ。異論は認める。

 仕事でどうしても来れなかった仲間達―――ローテーションで宇宙(そら)に出ている面々や現場の都合で来れなかった一夏・箒・鈴など―――もいるが、勿論後でしっかりと休みをあげる予定だ。むしろ取らせる。使って貰う為に用意したのだから意見を聞きたい。

 なんて事をビーチチェアに横たわりながら考えていると、束が近づいてきた。黒いビキニ姿で、なんと隣を歩く千冬とお揃いのデザインだ。スタイルの方は両者共に、豊かな起伏が大変に素晴らしい。強いて言うなら束は柔らかそうで、千冬は引き締まっているという印象だろうか。

 そして向かってくる2人を見ていると、束が千冬に抱きつこうとしていた。が、千冬がアイアンクローで押し留めている。しかし束は諦めない。腕を無造作に動かすフリをして、ビキニのトップに指を引っかけてズラせば怯むだろうという魂胆が見え見えの動きをしているのだ。しかし難なく捌かれ、それどころかアイアンクローを続行され、束が「ギブギブ。ちーちゃん痛い。ホントに痛いから!!」と慌てている。

                               

 ―――親友2人の楽しい一時なイラスト―――

                               

 XINN様より頂きました。感謝です!!

 

【挿絵表示】

 

                               

 ―――親友2人の楽しい一時なイラスト―――

                               

 だが千冬は止めず、逆に「お返しだ馬鹿者」と水着のトップをズラされていた。お陰で束は両手で押さえる羽目になり、結果アイアンクローで掴まれっぱなしという、エロいんだか子供の喧嘩だか分からない光景になっていた。まぁ、楽しそう(?)なので良いだろう。

 視線を浜辺に向ければ、何とも面白い瞬間が見られた。ビーチバレーをしていたラウラのアタックがちょっと見当外れの所に飛び、セシリアが取ろうとしていた飲みかけのジュースを直撃して、周囲にばら撒いてしまっていた。お陰で至近距離にいたセシリアはカルピスという白い液体が全身に………。色々想像してしまう光景だが、言わぬが花だろう。

 別の場所を見てみれば、本音が海の中で専用機“九尾ノ魂”を展開していた。何をする気かと思って見ていると、水を操作して皆にウォータースライダーを提供していた。世界に1つだけ。変幻自在に姿を変えるウォータースライダーだ。良いなアレ!! 俺も後で滑らせてもらおう!! と思っていたら清香が面白い事をしていた。ウォータースライダーの途中から意図的に飛び出して後方伸身2回転宙返り。そのまま海の中に入水だ。楽しんでるなぁ~。

 これを見た他の面々が続き始めると、本音もウォータースライダーの形を変えてジャンプ台のようにしていた。お陰で美女達が太陽の下で空高く舞い、海に入っていくという何とも素晴らしい光景が堪能できた。しかも嬉しいハプニング付き。何度も繰り返している内に入水の衝撃で水着がズレて、おっきいメロンが見えたりしている。素晴らしい!!

 そうしている内に瞬く間に時間は過ぎて行き、夜になった。過ごし方はそれぞれだ。

 バーベキューをするも良し。ワインを片手にゆっくりするも良し。いつもとは違う場所で友人達と語らうも良し。だがそれはそれとして、晶は一度見ておきたい光景があった。何度も見たら飽きるかもしれないが、この浮遊島は都市近郊高度4000メートルの位置にある。ネオンの煌めく夜景が中々に綺麗だろうと思って島の端に来てみたが、案の定だ。誰かを連れてきてロマンチックに語らうなんて真似はしないが、こういう光景を眺めるのも悪くない。

 持ち出してきたワインをラッパ飲みという品性もへったくれもない方法で飲んでいると、強化人間の感覚(強化人間レーダー)が近づいて来る人影を捉えた。誰かは振り返らなくても分かる。

 

「こんなところで、どうしたの?」

 

 束だ。

 

「気付けば、随分なところまで来たなぁと思ってさ」

「そうだね。昔の私が今の私を見たら何て言うかな?」

 

 彼女が隣に座りながら言った。ちょっと珍しい事に白いワンピース姿だ。

 

「信じられないって言うんじゃないかな? 俺との仲もそうだし、猫被り出来るようになったし、宇宙人と話せるようになったし、想像出来なかった事が沢山だ」

「言えてる。あ、あとはセッシーと今みたいな関係になるなんて思ってなかったかな。IS学園に入った頃のプライドだけ高い無能とか本当に無理だったから」

「それが今や、俺達がいない時の地球を任せるくらいだからなぁ。あとはラウラかな。最悪な出会いだったのに、今じゃ忠臣というか何と言うか」

 

 これに束は肘鉄しながら答えた。

 

「あのねぇ。将来困ってた子に身一つで来ても良いぞなんて、俺のもの宣言も同じでしょ。その上であんな事やこんな事して、無自覚にやってたみたいだけど、手段が完全に悪い男のそれでしょ」

「言われてみればそうかも。でもまぁ、本人も良いと思ってくれているみたいだし、結果良ければ全て良しってことで」

 

 こうして2人で昔は考えられなかった事を色々話していると、また1人近づいてきた。千冬だ。浴衣を着用しているのは本人の趣味だろう。

 

「こんなに綺麗な夜景が見えるところで2人きりとは、お前達実はロマンチストなのか?」

「単なる偶然ですよ。元々は1人酒です」

「お前がか?」

 

 千冬が驚きながら、晶を挟んだ束の反対側に腰を降ろした。そしてワインボトルを見て言葉を続ける。

 

「男というのは美人に酌をさせるのが好きな生き物だと思っていたんだがな。仲間の誰かを誘えば、喜んでついてきただろうに」

「それをやるなら、始めからみんなで楽しく飲みますよ」

「なるほど」

 

 すると千冬は晶からワインボトルを奪ってグイッとラッパ飲みで一口。飲んでからラベルを見て言った。

 

「お前、コレ結構良いやつじゃないか。普通はラッパ飲みに使うようなやつじゃないぞ」

「今日の事を秘書連中に話したら勧められました。酒の銘柄なんて知りませんよ」

「お前、なんて勿体無い。おい束。こいつちゃんと教育しておけ。カラードの社長が酒の銘柄も知らないなんて」

「え~。別に銘柄で美味しくなる訳じゃないでしょ。美味しいものは名前に関係無く美味しいし、不味いのは名前に関係無く不味いでしょ」

「いや、確かにそれはそうだが、一般常識としてな」

 

 アルコール好きな千冬としては、若干許せない事らしい。しかし束には関係無い。むしろ千冬が言った一般常識という言葉で、無理矢理揚げ足を取り始めた。

 

「あ、そうそう。一般常識と言えばちーちゃん」

「ん?」

「ちょっと良い感じのデザインのランジェリー見つけたからさ。今度着てみてくれないかな。レディとして身だしなみは大事でしょ」

「誰に見せる訳でもない。そんなものスポーツブラとショーツで十分だ」

「え~。晶っていう見せる相手がいるでしょ。ちーちゃん前から礼節は大事って言ってたじゃない。見せる相手がいるなら、身だしなみにも気を使うのが一般常識でしょ」

 

 無理矢理も無理矢理で屁理屈も良いところだ。普通ならそんな訳あるかと一喝されて終わりだろう。しかし織斑千冬という人間は、束に微妙に甘かった。割と容赦なくアイアンクローをしたりもするが、やっぱり親友なのだ。後はまぁ、見られるなら相応の………という思いも1%くらい、いや10%くらいなら無い訳でもない。

 こうして口先三寸で丸め込まれた千冬は、後日束から上下一式をプレゼントされるのだった。因みに親友に送られた品なので、変な機能は無いノーマルなものである。

 

 

 

 第219話に続く

 

 

 

 本文中に水着描写はありませんが、キャラ2名のイラストをXINN様より頂けましたので載せたいと思います。

 まず山田真耶先生。

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

 あと、半オリキャラのキャロンちゃん

 

【挿絵表示】

 

 

 水着描写のあったクラスメイト10名の姿を追加で頂く事が出来ましたので、こちらも!!

 

【挿絵表示】

 

 

 重ね重ね、ありがとうございます。

 更に追加で女性陣沢山なイラストを頂けました。

 

【挿絵表示】

 

 

 更に更に追加。

 親友のトップを剥ぎ取ろうとする傍若無人。

 

【挿絵表示】

 

 

 更に更に更に追加。

 カラード専用保養地の概要図。

 

【挿絵表示】

 

 

 こんなに沢山。本当にありがとうございます!!

 

 

 

*1
元ネタは「キャロライン・ユリ」で、初回登場は「第153話 月面開発」。例によって例の如く名前で画像検索すると出てきますが、“くれぐれも”周囲に人がいない場所でお願い致します。

*2
第193話にて回収。

*3
スターゲート送電システムはワームホールを使う特性上、激しい機動をする物には適さない。

*4
番外編第10話にて。

*5
正式名称はアクティブ・イナーシャル・キャンセラー。レーゲンシリーズに搭載されている武装で、ラウラは「停止結界」と呼称している。もともとISに搭載されているPICを発展させたもので、対象を任意に停止させることができる。

*6
エースコンバット7の超兵器。




周囲の状況に関係無く水着シーンを書ける場所が欲しいぜ!! という欲望に抗えませんでした。
異論は認めますが後悔はしていません。キリッ!!
あと浜辺のシーンとか、気付けば一般向けには余りよろしくない表現が入っていたりして、ちょいちょい修正が大変でした。(笑)
因みにクラスメイト達のシーンをメインにしましたが、ちゃんとキャロンちゃん達のチームが一番初めに楽しんでいます。
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