インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
無性に極々ふつーの日常を書きたくなって書いてみました。
大学3年生と言えば、サマーインターンシップで将来の就職活動を意識しつつ様々な遊びに精を出す欲張りな時期だが、薙原晶の義妹達にとっては違っていた。クロエは既にカラードの異常気象対応部門で働いているし、他の7人も将来が決まっている。その為の準備も現在進行形で行われている。
つまり一般的な就職活動など、全く行わなくて良いのだ。
このため義妹達は、カラードの保養地に行こうと計画していた。選んだ理由は単純で、本社近郊の海上4000メートルに位置する浮遊島なら、何処よりも安全で、かつ人の目を気にしなくて良いからだ。
なのでお義兄様が来てくれれば、皆でお出迎えして色々と――――――とムッツリな事を考えているのは
そんな彼女は居間のソファで横になりながら、タブレットでカラードの広報を見ていた。
これまでIS学園勤務だったセカンドシフトパイロットのナターシャ・ファイルスが、カラード戦闘部門に配属されたという話だ。
写真付きで大きく載せられている。
―――カラード所属になったナターシャ・ファイルス―――
―――カラード所属になったナターシャ・ファイルス―――
所属となった経緯は詳しく書かれていないが、情報系企業“アースレポート・コーポレーション”の大株主でもある彼女は知っていた。アメリカ側がかなり強く希望して、ようやく実現した話なのだ。
当初はセカンドシフトしているためすぐに声が掛かると思っていたらしいが、いつまで経っても声が掛からず、そうしている内にカラードが着々と足場を固めてしまった為、影響力低下を恐れたアメリカの
一通り見終えたところで、左腕にしているブレスレットからコール音。所謂スマートフォンの次世代機と言われる物で、ビジフォンという通称で呼ばれている。
単純な電話としての機能は勿論、空間ウインドウを展開してのテレビ電話、インターネット接続、メール、情報検索、電子決済など、スマートフォンで行える事は全て行える物だ。
コールしてきた相手は、義妹の1人であるローズ・ピニラス*3。
豊かなピンク色の髪と蠱惑的な微笑み、メリハリの利いたボディライン。清楚というよりは悪女のような雰囲気だが、クロエお義姉ちゃんが大好き過ぎて、偶に暴走するというポンコツな一面もあった。
通話状態にすると空間ウインドウが展開され、ローズが映し出される。
『あ、真理。これから出てこれる?』
『今日は特に用事ないけど、どうしたの?』
『この前さ、水着作るのに良い生地がないかって探してたじゃない。良さそうなお店見つけたんだけど、直接見て貰った方が良いかなって』
『ホント!? 行く行く。場所どこ?』
『――――――ってとこ。住所は今送ったよ』
『分かった。すぐに行くから、適当に時間潰してて』
『オッケー』
コスプレが趣味の真理は、それが高じて偶に義妹達の服を作るようになり、今年の夏は皆でお揃いの水着を作ろうと思っていたのだ。しかし普通のお店では中々水着用の生地は売っていなくて、作れていなかったのだ。
通信を切って、急いで着替え始める。タンクトップだと人目を引き過ぎるので適当なブラウス選んで、後はジーンズとサマージャケット。手早く身支度を整えて、最後にバックパックを持って準備完了。
玄関に向かうと、お義兄様がくれたアーマードヘッドシリーズ*4の内の1機が待っていた。セレナちゃんだ。
サッカーボール程度の大きさのロボットの頭部パーツに、国民的なアニメに出てくる某青狸のようなマルッこい手足が直接くっついている。ちょこちょこと歩く姿が可愛い*5。
近づくと、ぴょーんとジャンプして頭の上に着地してきた。見た目ほど重くない上に、バランサーが優秀なのか、体を傾けても全く落ちる様子がない。
でもこれだと変な風に目立ってしまうので、バックパックの中にポイッと入れる。セレナちゃんは「出して!!」とばかりにジタバタしてたが、少ししたら諦めてくれた。いや、完全には諦めていなかった。バックパックの中からチャックを少しだけ開けて、平べったい板みたいなのを外に突き出してきた。センサー?
まぁ、これくらいなら良いだろう。
こうして真理は、ローズが待つお店に向かったのだった。
◇
ローズと合流した真理は、早速とお店の中を見て回っていた。
歩きながら思う。皆にはどんな水着が似合うだろうか? どうせ作るなら一番似合うのを作ってあげたい。
隣を歩くローズを見てみる。今日の服装は黒いミニスカートに同色のチューブトップ。これにワインレッドのサマージャケット。体のラインにフィットするチューブトップが豊かな起伏を強調していて、スリットの入ったミニスカートがスラリと伸びた脚を綺麗に見せている。セクシーな感じがとても良い。
脳内で着替えさせてみる。ワンピース、モノキニ、ローライズ、キーホール、ホルターネック、クロスホルター、クリスクロス、ブランジングと色々試してみるが、困った。どれも似合っていて甲乙つけ難い。
「う~ん」
「どうしたの?」
「困ってる」
「それは分かるけど、何に?」
「水着をイメージしてみたけど、どれも甲乙つけ難くて」
「なるほど。なら、一番見せたい相手が一番喜びそうなのは?」
「お義兄様ならどんなの着ても似合うって言ってくれるもん」
「言い方が悪かったわね。一番ハッスルしてくれそうなのは?」
「エッチなのはエッチなので良いけど、今回は普通の水着って考えてるの」
「なら、そうね………」
ローズも周囲を見渡して、白い生地が目に入る。そして閃いた。
「良い事を思いついたわ。お義兄様色に染めてっていう意味で、白いビキニなんてどう?」
真理は少しばかり考えて、決めた。どんな種類の水着でも同じ位良いのなら、折角出た話題に乗るのもアリだろう。
「良いかも。よし、じゃあ、その白い生地を8人分買っていこうかな。あ、後はアクセント用の留め具も少しあった方が良いかも」
こうして真理は教えて貰ったお店で、色々と買い込んで帰ったのだった。
◇
翌日の19時頃。働いているクロエが帰ってくるのを待って、義妹達一同は自宅でお互いの3サイズを測っていた。
美女と言って差し支えない女性達が、無防備な下着姿で、だ。
もしお義兄様がこの場にいたら………と想像したところで、真理はアルベ*6に話しかけられた。
フルネームはアルベ・フィーリア。金髪ロングに利発そうな表情。高い腰の位置と起伏に富んだ曲線は、どんな水着を着ても見栄えするに違いない。
「ねぇ真理。ビキニとは聞いてるけど、細かいデザインって決めてるの?」
「実はまだなの。大まかにしかイメージ出来てなくて。どんなのが良いとかある?」
「ボトムのサイドに、ワンポイントで留め具みたいなのがあったらオシャレかも」
「あ、なるほど。ん~、こんな感じ?」
真理はスケッチブックに、鉛筆でサラサラッとイメージを2つ描いてみた。サイドの紐の部分にリングが1つだけ組み込まれているものと、紐の部分全部がリングチェーンになっているものだ。
「リングチェーンよりも、やっぱり1つの方が良いかな」
するとアルベの後ろから、スケッチブックを覗き込んだアスィーリア*7が続けて言った。
フルネームはアスィーリア・ライト。程よく発育した双丘とくびれた腰、スラリと伸びた脚の脚線美は、素直に綺麗だと思ってしまう。
因みにアルベとアスィーリアはとても似ているが、双子ではない。
「ボトムにリングを付けるなら、トップの真ん中にも付けた方が良くないかな。そっちの方がバランスが取れてると思う」
これに真理は再びスケッチブックに、サラサラッと書いてみた。無いVerと有るVer。
「うん。確かにあった方が良いかも」
「でしょ」
真理の頭の中で、徐々にイメージが固まってくる。
そこに、リルナ*8が次のアイデアを出してきた。
フルネームはリルナ・メフィールド。ふわっとした温厚そうな表情、お尻辺りまで伸ばしている甘栗色の髪をまとめていて、優しいお姉さんという雰囲気を醸し出している。だが、此処にいる皆は知っていた。外見とは裏腹に小悪魔な性格で、スタイルの方も生意気そのもの。お義兄様に可愛がられている時は子猫ちゃんなのに………。
「ボトムはすこーしだけローレグ気味にしない」
「どうして?」
真理は純粋に疑問に思ったので聞き返してみた。
「ハイレグだと如何にもな感じ過ぎるし、そもそもそういう事が目的なら、もっと別の服が幾らでもあるじゃない。だからノーマルに見えるけど、実は………っていうラインを狙ったらどうかなって」
良い案だと思ったので、真理は再びスケッチブックにボトムのラフ画を描いてみた。
若干ローレグ気味になった分、デルタゾーンの布面積が減った。それでも下品には見えない。
「良いかも」
「ね♪」
今度は3サイズを測り終えた唯乃*9が近づいてきた。
フルネームは
「トップの後ろは、出来れば留め具にして欲しいです。紐だと、その、解けてしまわないか心配で」
「うん。それは私も思ってた。他の人の前でポロリは嫌だもん」
私達の生まれたままの姿を見て良いのはお義兄様だけ。それは義妹達全員が思っていることだ。
「良かった」
唯乃がほっとした様子を見せていると、隣にいた比奈*10が次のアイデアを出してくれた。
フルネームは
「ねぇねぇ。ビキニのトップってどんなデザインにしようと思ってるの? ツイスト? ブラジリアン? それともノーマルな三角?」
「今のところはノーマルな三角かな。ほら、あんまり奇抜なデザインにしちゃうと、他の時に着れなくなっちゃうから」
真理がまたスケッチブックにサラサラと幾つかのデザインを描いていく。
ツイストバンドゥビキニ、三角ビキニ、ブラジリアンビキニ、眼帯ビキニetcetc。
「やっぱり皆で合わせるなら、三角ビキニが一番かな」
イメージは大体固まった。後は何か無いだろうか?
考えていると、ローズが近づいて来て言った。
「お好みに合わせて、パレオなんてあったら良いんじゃないかしら?」
「あ、それもそうだね」
再びスケッチブックにサラサラっとラフ画を描いていく。
手持ちに良い材料が無いから、また今度買いに行こう。
そしてラフ画を見たクロエお義姉ちゃんが続けた。
「麦わら帽子があっても良いんじゃないかしら」
全員が頭の中でイメージした。
白いビキニ+パレオ+麦わら帽子。
良いのではないだろうか?
こうして作る水着のイメージが決まっていったのだった。
◇
しかし予定を立てた数日後、残念な事が起きてしまった。
カラード異常気象対応部門に所属するクロエに、緊急ミッションが入ってしまったのだ。
観測史上最大の勢力を持つハリケーンがアメリカ本土に接近中。便宜上、既存カテゴリーの最大値であるクラス5に分類されているが、クラス6に分類されてもおかしくないと言われる程の超ド級ハリケーン。
本来は布仏本音が対処する予定だったが、余りの勢力に単機での対処は難しいとのシミュレーション結果が出たため、追加でクロエが派遣される事になったのだ。
そして本社でのブリーフィング前に、クロエはビジフォンのマルチ会話機能で、他の義妹達と話をしていた。
『ごめんね。皆で行きたかったのだけど』
『仕方ないよ。今回はお流れだね』
答えたのは真理だ。
『駄目よ。皆で準備してたじゃない。私の事はいいから、楽しんできて』
するとローズが答えた。
『クロエお義姉ちゃんが頑張ってる時に、私達だけノンビリ楽しむなんて出来る訳ないでしょ』
空間ウインドウの中で、他の義妹達もうんうんと肯いている。
嬉しい反面申し訳ないクロエは言った。
『皆が楽しんでくれないと、私気になって気になってミッション失敗しちゃうかもしれないわ』
『あ、ズルイ。そう言うこと言うの』
アルベが胸元で腕を組んで言う。
『お義姉ちゃんだもん。言いますよ』
今度はアスィーリアが言った。
『お義姉ちゃん頑固なんだから。分かった。なら皆で行って、30分くらいで帰ってきましょ』
聞いたクロエは苦笑いだ。
『ちょっと。それって遊んだって言わないんじゃないの』
『短い時間でもしっかり遊べば気分転換出来るって、何処かの偉い人が言ってたよ』
『減らず口ばっかり上手くなって』
『尊敬するお義姉ちゃんを見て育ったからね』
ふふんと胸を張るアスィーリア。
これにリルナが続いた。
『そうよね。どれくらい遊ぶかは、行った人間が決める事だもんね。つまりお義姉ちゃんに決定権はなーし』
クロエが不利を感じて比奈を見ると、アッサリと裏切られた。
『コテージの下見だけなら、15分でも良いと思うの』
最後の望みをかけて唯乃を見ると、少しだけ譲歩した妥協案を出してくれた。
『まぁまぁ。お義姉ちゃんは私達の事を想って言ってくれてるだけなんだから、遊んでる写真を一枚だけ撮って、それで帰ってきましょう』
いや、よくよく考えたら全然妥協案じゃない。
行って水着に着替えて写真1枚撮って帰路につくなら10分かからない。
『もう。皆ったら………』
クロエが言葉を続けようとしたところで、別の声が入った。
『クロエ。ブリーフィング始めるよ』
『分かりました。今行きます。ごめんみんな。じゃあね』
こうしてクロエは通信を終えて、ブリーフィングに向かったのだった。
◇
2日後。ミッションを成功させて通信制限が解除されたクロエの下に、1枚の写真が送られてきた。
メッセージ付きだ。
―――送られてきた写真―――
―――送られてきた写真―――
『お義姉ちゃんへ。次は一緒に行こうね。あと、お義兄様にはまだこの写真送ってないから、一緒に写る時のポーズを考えておいて下さい』
追伸
『悩殺ポーズでも可♪』
追伸を考えたのはリルナあたりだろうか?
何となく状況が想像出来てしまい、クスッと笑ってしまう。
すると輸送機の隣の席に座っていた本音さんが、空間ウインドウを覗き込んできて言った。
「クロちんの義姉妹って仲良いよね」
「それはもう。血は繋がっていなくても、大変な思いを共にした義姉妹ですから」
ニッコリと笑うクロエ。
そしてここで終われば綺麗に終わったのだが、追伸を見られてしまった。
「ところで、悩殺ポーズってどういう意味? もしかして
本音さんもお義兄様の大事な人の1人なので色々知っている筈だが、これは勘違いなので訂正しておこうと思った。
「違います。これは単なる冗談です。あの子達ったら、偶にこういう冗談を言って困らせるんですから」
「ホントに?」
「本当です」
「そっか~。私は送ってるから、お仲間だと思ったのに」
「えっ!?」
「
因みに大嘘であるが、クロエはその大嘘を見抜けなかった。
お陰で後日ちょーーーっとばかり恥ずかしい目に遭うのだが、異常気象対応部門の人員は全て晶の元クラスメイト。
つまり外に漏れる事は無かったのだった。
ちゃんちゃん。
―――白ビキニ+パレオ+麦わら帽子のフルセット―――
追加で頂けましたので掲載。
モデル:
―――白ビキニ+パレオ+麦わら帽子のフルセット―――
仲の良い義妹ちゃん達を書けて満足満足な作者です。
そしてナターシャさんがサラッとカラードに移籍しましたが、作中にある通り晶くんがスカウトした訳ではなく、影響力低下を恐れた(という建て前で)誰かさん達が動いた結果移籍となりました。
どうなるかはこれからの展開次第というところでしょうか。
因みにクロエが実際に送ったかどうかは秘密なのです。