インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
クラス対抗戦の翌日、皆が登校してくるよりも少し早い時間、
本当、こういう部屋があると助かるよ。
何せ話が話だ。余り他人に知られたくない。
いや、正確に言えば俺が守銭奴と思われるのは良いが、あの時のパートナーの平穏を考えるなら、知られない方が良いという話だ。
お金って、容易く人も人生も変えてしまうからな。
そんな事を考えながら、面談用の質素なテーブルを挟んで、反対側のイスに座る山田先生を見ると――――――。
「そ、そんな大金受け取れません!!」
と、大いにうろたえていた。
まぁ、一般的な反応かもしれない。
2人で分けても、40億4千5百万円。
うん。一般人からみたら確実に桁が一つか二つくらいは、ずれていると思う。
俺も、要求した後でそう思った。
しかし、だ。考えてみて欲しい。
一般の航空路線で運用されている飛行機は、1機あたり約150~200億程度。
勿論、もっと安いのも高いのもあるが、その程度の値段はするんだ。
その撃墜を防いだんだから、この位は貰っても良いと思わないか?
俺は思う。
もし撃墜されていたら、この値段+各種損害賠償+全航空機の
でもそんな事、この善人な人には関係無いらしい。
「そもそもです。あの時はあえて何も言いませんでしたが、人の命に値段を付けるなんて、本当はいけない事なんですよ。ISに関わる私達は――――――」
「先生、ストップ。教師に向かって言う言葉じゃないが、建前だけじゃ世の中渡っていけないのは理解してくれ。他の誰でも無い。俺が動くなら、それ相応の理由が必要だったんだ。善意だけで動く戦力なんて、他人からしてみれば危な過ぎる。俺が動く為の、動かされる為のルールを示さないと危険だったんだ。その為に、一番分かりやすいのが金だった。それだけの事なんだ」
「それは・・・・・まぁ、分かりますけど。でも、そんな大金受け取れません」
「そう言わずに受け取って欲しい。あの仕事は、先生というパートナーがいてこそ成功したんだ。そのパートナーに報酬を渡さないなんて、誰が許しても俺が許せない」
すると山田先生は、「はぁ」と溜息をついて、
「“そこは”立派な考えですけど、薙原君。私のお仕事、分かってます?」
「え? 先生、でしょ?」
「そうです。先生です。公務員です。アルバイト禁止です。副業も禁止です。そんなお金受け取ったらクビなんです」
「あっ!?」
しまったな。
これじゃ渡せない。
学園に寄付なんてしたら、本来は山田先生の懐に入るはずのお金が、見知らぬ他人に使われる事になって嫌だし・・・・・どうするかな?
そんな事を考えていると、やっぱり善人らしい言葉が出てきた。
「なら、学園に寄付でも――――――」
「絶対に嫌だ。本来先生の懐に入るはずの物を、何故赤の他人に使わせないといけないんだ」
「薙原君。少し、他人を信用する事を覚えましょう」
「信用している人間も、信頼している人間もいるが、ソレとコレとは別の問題だ。俺が嫌なのは、貴女が直接報酬を受け取れない。使い道を決められないってところなんだ」
「困りましたね。そういうところは人として好感が持てるんですけど・・・・・そうです!!」
先生はポンッと両手を叩いて、
「使い道を、私が決めれば良いんですね?」
頷くと、
「ならこうしましょう。私の分の報酬は、私が使い道を決めますから、そういう使い道をして欲しいと言って学園に寄付して下さい」
「具体的には?」
「色々ありますよ。授業で使う教材。セキュリティシステムの更新。食堂のご飯も美味しくしたいですし、IS用装備は・・・・・買ったら全部無くなっちゃいますからコレは置いといて、他には――――――」
話を聞いていると、確かに全部学園の為にはなるのだが・・・・・。
「先生は、自分が欲しい物とかは無いんですか?」
「あるにはあるんですけどね、そういうのは自分で買います。人間、身の丈に合った生活をしないとね」
非常に耳の痛い話だった。流石は教師。
でもやっぱり、山田先生が何も受け取れないというのは納得がいかない。
いや、公務員だから仕方ないんだが、こういう善人だからこそ受け取って欲しいと思う。
なので、
「分かりました。先生の分の報酬については、それで納得しておきます。代わりに、何かプレゼントさせて下さい。誰かからのプレゼントという形でなら、受け取れますよね?」
「常識的な範疇でなら、ギリギリですよ。一応、私は教師で貴方は生徒なんですから」
「分かっています。何か希望の品はありますか?」
「せっかくなので、薙原君のセンスに任せてみましょう。勿論、変なものだったら受け取りませんからね」
「これはまた、難易度の高い話だ」
思わず天井を仰ぎ見てしまう。
常識的な範疇で、あの仕事に見合うもの?
何が良いんだ?
「無理しなくて良いんですよ。薙原君が、パートナーを気遣う人間だと分かっただけでも十分ですから」
魅力的な笑顔でニッコリと笑いながら、そんな事を言う。
教師の鑑みたいな人だ。素直にそう思った。
だからこそ、正しく報酬を受け取って欲しいと思う。
「・・・・・無理なんてしません。ちょっとすぐに良い案が出てきませんけど、必ず渡します」
「常識的な範疇で、ですからね」
「分かってますよ。――――――と、そろそろ時間か。では、また教室で」
もうすぐSHRの時間だったので席を立った俺は、ふと、思いついたように尋ねてみた。
「そういえば、先生は1人暮らしですか?」
「そうですよ」
「分かりました。なら1人暮らしに役立ちそうな、実用的な物を考えてみますよ」
「ここで洋服とかを選ばないあたり、性格が分かりますね」
「そっちの方が良いなら、そうしますよ?」
「いいえ。任せると言ったんですから、任せます」
「任されました。―――では」
そうして教室に向かう途中、俺はどんなものにするかを考え始めた。
方向性は決まったから、後はどんな形にするかなんだが・・・・・。
◇
昼休み、
基本的に書物は電子化されているから教室でも良かったんだが、あそこで調べ物をすると色々と煩い。
なので静かなこっちに来たんだが・・・・・。
「何故、
「昼休みにどこにいようが私の勝手。ついでに言えば、一日中生徒会室にいる訳でも無いのよ」
「一日中いるものだと思っていた」
「そんな事無いわ。――――――ところで、何を調べているの?」
生徒会長はそう言いながら、隣の席に腰を下ろした。
ついでに足組み。
短めのスカートから見える脚線美が中々際どい。
が、明らかに地雷と分かっている人間だ。
目の保養程度に止めておくのが良いだろう。
「別に大した事じゃない。少し気になった事があったから調べているだけだ」
答えになっていない答えを返すと、更識はディスプレイを覗き込んできた。
「――――――『家庭用ロボットのアレコレ』? 何か作る気なの?」
「ノーコメントだ」
下手な事を言うと何に利用されるか分からないから、自然と口も堅くなる。
なので努めてそっけない返事。
すると更識、
「そんなに警戒されると、おねーさんは悲しいな」
と明らかな演技でヨヨヨと泣き崩れる。
「そういうのがやりたいなら、役者としてデビューしたらどうだ? 顔は良いから、多分すぐに売れっ子だ」
「つまらない反応ね。女を泣かせたんだから、もう少しうろたえてよ」
「女の涙ほど信用出来ないものは無い」
「貴方今、世界の半分は敵に回したわよ」
「それは困ったな。なら、騙されるのは男の甲斐性とでも言っておこう」
「すっっっっごい棒読み。欠片も思って無いでしょ?」
「どうだろうな?」
下らない話で煙に巻きつつ、教室に戻ろうと席を立つ。
俺の交渉スキルで、コイツとやりあうのは危険過ぎる。
だが、
「大方、山田先生への報酬で悩んでいるんでしょう?」
とピンポイントで言い当ててきた。
何故分かったんだ? タイトル以外の情報は何も与えていないはずだ。
更識の方にチラリと視線を向けると、既に彼女は勝ち誇った笑みを浮かべていた。
「やっぱり貴方、こっちの方は素人ね。本当に隠す気があるなら、視線すら向けずに立ち去るのが正解よ」
俺は再びイスに腰を下ろした。
多分、ここでこのまま立ち去っても良い事は無いだろう。
それにいずれ話をしなければならない相手だ。人となりを知っておくのも悪く無い。
こちらを探られる可能性の方が高いが・・・・・まぁ世の中、ノーリスクで得られるものなんて、ほんの僅かだ。
「どうして、そういう答えに行き着いたんだ?」
「簡単な事よ。今までの貴方の行動を見ていれば、それなりに律儀な性格だと分かるわ。そんな人間が朝早くきて、わざわざ盗聴対策が施された面談室で話をした。つまり他人に聞かれたくないという事。そして山田先生と貴方との接点は、先生と生徒という以外は、あの仕事の一件しかない。――――――だから報酬絡みというのは、容易く想像がつくわ。ついでに言えば山田先生の性格的に、公務員という立場から逸脱するとも思えない。どう?」
「・・・・・正解だ」
まさか行動だけでそこまで読まれるなんて、やっぱりプロは違うって事か。
俺は内心で驚きながも、言葉を続けた。
「―――で、それを言う為だけに来た訳じゃないだろう? 用件は何だ」
「別に大した事じゃないわ。今後ともよろしくって、挨拶に来ただけ。それと、これ私への直通アドレス」
差し出されたのは、折りたたまれたメモ帳の切れ端。
ここで出されるのが、普通のアドレスのはずも無い。恐らく仕事用のアドレスだろう。
だが受け取ろうと手を伸ばすと、サッと下げられてしまった。
「どういうつもりだ?」
「貴方と、直接連絡がつくアドレスが欲しいなぁ~って」
更識は、魅惑的な笑みを浮かべながらそんな事を言う。
目的はそれか。
少し、アドレスを渡した場合のメリットとデメリットについて考えてみる。
まずメリットは?
言うまでも無く、様々な方面にコネクションを持つ更識楯無との間にパイプが出来る事。
しかも強力なIS操縦者という点も見過ごせない。
友好を深めておけば、今後色々と役に立つだろう。
では、デメリットは?
知らない内に厄介事を抱え込んでしまう可能性が高い事。
何せ更識の本職を考えれば、NEXTと直接連絡が取れるというのは、この上ない強みだろう。
例え使う気が無いカードだとしても、そう言えるだけで、強力なカードとなるのは間違い無い。
そして第三者がそれを見れば、まず間違いなく協力関係にあると見るだろう。
つまり更識と敵対している者から見れば、俺も排除対象になる訳だ。
どうする?
しばらく考えていると、
「――――――まぁ、無理にとは言わないよ。でもこれから先、今回と同じような幸運が続くかな? 博士の事だけを考えるなら、必要無いかもしれないけどね」
「・・・・・」
仮に、ここで断ったとしよう。
次に
恐らく、報酬を支払う限りは動いてくれるだろう。
だが一度こういう話を断った後だと、足元を見られかねない。
ピンチの時なら尚更だ。
ならここは、少々のデメリットを呑んででも関係を結んでおくべきだろう。
そう考えてアドレスを交換すると更識は、
「改めて、これからよろしくね」
とニッコリと笑いながら手を差し出してきた。
彼女的には、目的達成というところか。
「ああ、よろしく頼む」
こちらも手を差し出し、営業用スマイルで握手。
そして思う。
原作では良い人っぽいが、完全に良い人という訳でも無いだろう。
下手をすれば、いつの間にか手駒にされていてもおかしくない。
そうならない為には、どうしたら良いだろうか?
今の俺には、武力しか無い。
なんて事を考えていると、
「―――心配性ね。そんなに警戒しなくても良いのに」
「ここで全く無警戒というのも、問題あると思うが?」
「しすぎは逆効果よ。相手に要らぬ警戒心を抱かせるだけ。本当に、こっちの方面は素人さんなのね」
「・・・・・」
「そこで黙り込むのも減点。素人ですって、教えているようなものよ」
「更識にかかれば、誰でもアマチュアだろう」
「それほどでも無いわ。――――――でも、そんなに買ってくれているなら、交渉のイロハを色々と教えてあげましょうか?」
少し考える。が、結論はあっさりと出た。
「いいや。遠慮しておこう。何も俺が万能である必要は無い。付け焼刃は危険だよ。それに――――――」
「それに?」
続く言葉を期待するような眼差し。
「俺の存在価値は、単機における最強戦力。そして博士のガーディアンというところにある。勿論、交渉事が出来るに越したことはないが、何も俺である必要は無い。そういうのに強い仲間がいれば良い」
「・・・・・意外ね。てっきり全部自分でやりたがると思っていたけど」
「人一人が出来る事なんて、たかが知れているよ。役割分担出来るところはしないと、何処かで破綻する」
「嫌味なくらい正論ね。――――――まぁ、今日はこれで失礼するわ。中々、楽しい時間だったわよ」
そう言いながら更識は席を立ち、図書室から出て行った。
対し、見送った俺は、
(あれが、本当のプロか・・・・・)
そんな事を思いながらイスの背もたれに寄りかかり、深く一息ついてから、教室に戻る事にした。
◇
誰もいない生徒会室。
夕日の差し込むその部屋に戻ってきた
何てアンバランスで、何て面白そうな人。
勿論、ある程度の下調べはしてから接触したけど、正直信じられないでいた。
あれだけの力の持ち主、そして入手した過去。それらを考えれば、どこか歪んでいてもおかしくないのに、それが見当たらない。
言ってしまえば、どこにでもいる一般人。
だけど、入手した戦闘情報がそれを否定する。
あの桁外れの性能を自在に使って、そして武器を使い分け、状況を利用し、目的を達成している。
間違っても素人の動きじゃない。
玄人の巧みさと、敵の弱点を本能的に嗅ぎつける獣の動き。
なのに、交渉事に関してはどうだろう?
頭は回るようだけど、それだけだ。
経験値が絶対的に足りていない。
入手した過去を考えれば、そっちの方面でも、それなりに経験は積んでいるはずなのに。
だからアンバランス。
でもそれが面白い。
そして何よりポイントが高かったのは、1人で何でもやろうとしなかったところだ。
何でもやりたがる英雄願望でもあれば、色々と手取り足取り教えてあげる最中に骨抜きにしてあげたんだけど、彼は仲間やチームの重要性を知っていた。
『人一人が出来る事なんて、たかが知れている』
この言葉が良い証拠ね。
多分、博士と2人きりという超少数精鋭で動いていたおかげで、人手の足りなさに泣いた事があるんでしょう。
だから信用出来る仲間を欲した、というところかしら?
なら彼を楯無に、いえ、私の元に引き入れる為には、まずはソコからね。
これから困る事も多いでしょうから、協力していけば難しくないでしょうけど・・・・・問題は博士よね。
あのからかった時の態度を見るに、博士は相当、彼に御執着のよう。
下手に引き抜けば、世界最高の頭脳を敵にまわす事になる。
それは避けたい。
でも引き抜きたい。
しかし私は警戒されているだろう。
ならどうする?
頭の中に色々な案が浮かんでは消えていく。
穏便にやるなら、金も女も権力も駄目。
身内以外は殆ど認識しない博士だけど、記号や物事に関わるファクターとしてなら必ず気付く。
じゃないと世界中の組織から単独で逃げおおせるなんて不可能だ。
なら結局、取れる手段というのは、
「王道的に仲良くなるところから、かなぁ・・・・・」
そんな事を呟きながら、私は『生徒会長』というネームが立てられた自分の席に腰を下ろす。
すると机にある端末がオートで起動。
パスワードを打ち込み、仕事用の画面を呼び出す。
「・・・・・さて、お近づきになる為には、
この日、生徒会長室の電気は夜遅くまでついていたという。
◇
放課後、
シャルロットとセシリアを見舞いに来たんだが、セシリアは既に退院した後だった。
なので、今ここにいるのは俺とシャルロットだけ。
「良かった。大分元気になったみたいだな」
「うん。先生も明日には退院出来るって。本当は今日でも良いらしいんだけど、無理しないで1日ゆっくり休んだ方が良いって言われてね」
ベッド上で身体を起している彼女が、はにかみながら答えてくれる。
無理をしている様子は無いから、言葉通りの意味だろう。
「その方が良い。シャルロットはいつも頑張り過ぎだ」
「君がそれを言う? 何のかんの言って、僕に仕事を割り振るくせに。クラストレーニングの話とか」
「うっ・・・・・それは、まぁ、すまないとは思っているんだ。俺1人だと手が足りないし、一夏はその手の書類仕事とか計画立案とかをやる事自体が初めてだったし、セシリアは形式美に拘るし・・・・・いや、2人が悪い訳じゃないんだ。むしろ手伝ってくれて助かったのも本当なんだ。只、シャルロットが手がけると綺麗に分かり易くまとまるから、ついな・・・・・」
いかん。
こうして思い出すと、日頃如何に頼っているかが良く分かる。
「まぁ、頼られて悪い気はしないから良いよ」
だけど、彼女は嫌な顔一つせずにこう言ってくれる。
本心かどうかは分からない。
いつもなら、他の人が相手なら、この言葉の裏を探るんだが、探りたくないと思っている自分がいる。
だから心の赴くままに探らなかった。
「そうか。じゃぁ、これからも色々頼むとしよう」
「酷い。ここは労わってくれるところじゃないの?」
「ここで労わると俺が大変だから、感謝は別のところで表そうと思ってね」
「別のところ?」
シャルロットが首を傾げる。
彼女は、喜んでくれるだろうか?
「
「え?」
キョトンとした表情の彼女。
・・・・・しまった。
いきなりこんな風に誘うのは拙かったか?
やっぱり、もっと手順を踏んだ方が良かっただろうか?
内心で少し、いや大分焦っていると、
「いいの!? 本当? 嘘じゃないよね?」
と、ズイッと顔を近づけられた。
「あ、ああ」
予想外の強烈な反応に、思わずたじろいでしまう。
でも良かった。
これで、「アンタとなんかじゃイヤ」何て言われたら流石に凹む。
「そっか。それなら許してあげる。でもプレゼントか。何でも良いの? 今更ダメなんて言わないよね?」
「勿論だ。一つと言わず何個でも」
「ありがとう。あっ、でも・・・・・」
喜んでくれたのも束の間、何か気になる事があったのか、せっかくの笑顔が曇ってしまった。
「どうしたんだ?」
「確か、
「そうだが?」
「なら、一つだけにしようかな」
「どうして?」
俺が首を傾げると、彼女は人差し指を立てて、
「お金の使い道は考えないと、後で要らない苦労をするって事」
「それは分かるが、それとこれと何の関係が?」
「僕にプレゼントを沢山買ってくれるのは嬉しいけど、それを他人が見たら、報酬を女に貢ぐ君だよ。そういう話が流れるのは良くないでしょう?」
「・・・・・確かに、な。悪いな。気を使わせて」
「ううん。いいよ。それだけ大事にされているって思えるから」
面と向かって言われると何だか気恥ずかしいが、彼女の笑顔が見れるなら悪く無い。
むしろ今後も誘おうかと考えてしまった。
少しだけ、女に貢いで破産する奴の気持ちが分かった気がする。
その後しばらく話し込んでしまい、気付けば寮の門限時間ギリギリだった。
「――――――ヤバッ!?」
「ショウ。急いで!! 織斑先生って容赦無いから」
「分かってる。じゃぁ、また明日な」
急いで出て行く俺を、シャルロットは「頑張ってねぇ~」と言って送り出してくれた。
そして帰りの道中、走りながら思う。
彼女と話していると、随分と気が楽になっている事がある。
今もそうだ。
更識と話して気疲れしていたのに、こんなに気が楽だ。
こういう相手は、大事にしたいと思う。
そんな事を考えながら俺は、寮の前で秒読みを始めた織斑先生の横を、駆け抜けるのだった。
第26話に続く