インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
例によって例の如く、元ネタキャラを検索する時は周囲に人がいない時にお願い致します。
今話の中で原生生物をエイクリッドと命名していますが、元ネタはPS初期のゲームのロストプラネットからであります。
そして今回のお話の中心はモブさん達です。
ラウラは自身の執務室で、3人の部下と話をしていた。
黒ウサギ隊の面々ではない。ロールアウトしたばかりの新造艦、
1人は日本人女性で、名前は
1人はドイツ人女性で、名前はセーナ・ネアデス*3。美人と言って差し支えない容姿の持ち主だが、剣呑という言葉を付けたくなるほどに鋭い目つきをしている。元々の所属はカラード戦闘部門の作戦参謀。殲滅、撤退、防衛、奇襲、強襲、救出その他モロモロ、通常戦力を使った作戦立案が兎に角上手い。そんな彼女を艦長として選出した理由は、味方の力を引き出す上手さにあった。自軍の戦力を正確には把握して作戦を立案して武力行使する。可能か不可能かの見極めに信用のおける者が上にいれば、部下達も安心するだろう。
1人はフランス人女性で、名前はソフィ・シャリング*4。真っ当な正義感を持ち併せている元気印な娘っ子でムードメーカー気質。ついで胸部装甲も大変大きい。元々の所属はカラード戦闘部門のパワードスーツパイロット。そんな彼女を艦長として選出した理由は、真っ当な正義感がありつつも鉄火場を知っているからだ。経験を積めば現場事情に精通した良い艦長になるだろう。
全員が20代中盤と若い。普通なら、この若さで艦長に求められる多くのものを兼ね備えるのは難しいと思うだろう。しかし、カラードでは違っていた。基礎的な身体能力は強化処置でどうとでもなるし、求められる膨大な知識だって、強化された神経系なら素早く吸収できる。このため重視されたのは性格や人間性に加え、教科書的な知識に固執する事無く、柔軟に物事を考えられる思考力といった部分であった。
因みに全員女性なのは、偶然ではない。
ラウラは学生時代と違い自身の容姿を認識しているため、今後関りが増えるであろう艦長に男性を選ぶと、面倒な事になりそうだと思って避けたのだ。何も知らない赤の他人が聞いたら自惚れるなと言うかもしれないが、自身の立場も併せて考えれば、良からぬ事を考える者がいないとも限らない。単純に晶以外の男に言い寄られるのが嫌だったというのもある。これに加えて晶が、「お前が使いやすい奴を選べば良い」と言ってくれた事も大きい。
このような理由から選ばれた3人に、ラウラが尋ねた。
「―――以上が概要となるが、何か質問はあるか?」
説明した内容は、太陽系外で実施予定の演習についてだ。
アリコーンのスターゲート機能を使って、3隻の
そして惑星圏内へ降下。情報提供のあった原生生物数千体を狩った後に帰還するだけ。緊急事態が発生しない限り、アリコーンからの援護は無い。
セーナが挙手した。
「宜しいでしょうか」
「良いぞ」
「提供された情報。何処まで信用出来るのでしょうか?」
提供された情報に出てきた原生生物の形状や生態は様々だ。火炎弾や強酸性の粘液を吐き出してくるもの。雷撃を放つもの。強い衝撃を受けると爆発するもの。強力な前肢や触手で攻撃してくるもの。飛行能力のあるもの。サイズも人間程度から数十メートルに及ぶものまで、実に多種多様な種類がいる。
しかもこれら個体は非常に凶暴で、テリトリーに近づいただけでも容赦なく攻撃してくるらしい。演習相手として、非常に都合が良いと言えるだろう。
だが、提供された情報を100%信用するなどあり得ない。相手にこちらを騙す意図が無かったとしても、相手が持っていた元々の情報が間違っていた、という可能性だってあるのだ。
ラウラは答えた。
「潜行戦隊が現地に赴き、情報提供通りの原生生物がいる事は確認している。ただし情報提供者が個人的に収集した情報だから、信用度という意味では参考程度に留めておくべきだろう。あと念の為に言っておくが、未確認種の存在を否定するものではない。これだけ様々な種類がいるんだ。貰ったデータでの最大個体は数十メートル程度だが、もっと巨大なものがいるかもしれない。或いはもっと小さい群体生物なんていうのもいるかもしれない。どちらにせよ、想像力を働かせることだ」
「了解しました」
次にソフィが挙手して、ラウラが肯くと話し始めた。
「部門長の説明の中に、原生生物体内の結晶がエネルギー源として使えるというのがありましたが、確保しなくて良いのでしょうか? 実働メンバーからすると、現場でエネルギーを確保して補給出来るというのは、生存率に直結するのですが」
「言っている事は理解するが、今回の目的には入れていない。理由は今回の演習が、お前達が
「分かりました」
最後に美津が挙手。ラウラが許可すると話し始めた。
「事前情報では、他文明の方々の存在が示唆されています。接触時の対応は、カラードの基本方針そのままと思って良いでしょうか?」
友好的なら友好的な対応を。殴られたら殴り返す。勝てないと思ったら即撤退。悔しいなら生き残って十分に準備を整えた後、100倍返し。
「それで良い。ただし、判断はシビアに行え。これまでの戦闘経験から全く戦えない訳ではないと分かっているが、戦えるだけで優位という訳ではない。むしろ戦力比が互角なら、装備の質で負けていると考えろ」
「心得ました。少々臆病な位の判断でいきたいと思います」
「それで良い。――――――他に質問のある者はいるか?」
答えたラウラは、一呼吸おいて3人に問い掛ける。だが口を開く者はいなかった。
「では3日後から太陽系内で2週間の演習。補給と休息で4日間。その後、該当星系での演習とする。そして、一応言っておく。これはあくまで演習であって、お前達に慣れて貰う為のものだ。無理をするようなものではない。損害など、許さんからな。以上だ」
3人が敬礼して答えた。
「「「Yes, ma'am!!」」」
こうして3人の艦長達は、ラウラの執務室を後にしたのだった。
◇
3週間後。太陽系内での演習を無事に終えた3隻の
現在は衛星軌道を周回しながら、降下前の情報収集が行われている。
事前情報が100%正しいとは限らないし、厳しいタイムスケジュールがある訳でもないなら、より正確な情報を入手しておくべき、という至って真っ当な判断からだ。
その最中、艦長達はオンラインで話をしていた。
『事実は小説より奇なりというけど、本当にSFのモンスターみたいね』
美津の言葉に、セーナが尋ねた。
『事実は小説より奇なりとは、どういう意味なんだ?』
『世の中で実際に起きている出来事というのは、虚構である小説よりもかえって奇妙であり不思議である、という意味よ』
『なるほど。確かに数年前の地球でこんな映像が出ても、フィクションとしか思われなかっただろうな』
各艦のブリッジモニターには、
セーナはふと思った事を尋ねてみた。
『ソフィ。パワードスーツ部隊の中に、これ系が苦手な者っていないのかしら?』
『私も始めは心配したんだけど、なんか逆にテンション上がっちゃってる奴の方が多いの。多分アレね。好き放題にブッパ出来るからかな』
今回の演習では、武装に関する制限が一切無かった。むしろ普段は使えないような武装も、積極的に使って使用感覚を掴んでおくように言われている。
そこに古き良きSFに出てくるような、幾ら撃っても良い相手となれば、盛り上がってしまうのも分からなくはない。だが、そんな浮ついた気分で演習されては困るのだ。
なのでセーナは尊敬するラウラ部門長に倣い、演習内容を少々厳しいものに変更する事を提案した。
『1日目は惑星環境に慣れるという意味で予定通りに行うが、2日目以降をEプランに変更するのはどうだろうか? 浮ついた奴らもさぞかし気が引き締まるだろう』
Eプランとは、逃げる・脱出すると言った意味のEscapeの頭文字を取ったプランだ。内容は脱出するという想定で、指定ポイントまで移動するというものだ。この惑星で実施するなら、十数万匹の
これに美津が反対した。
『ラウラ部門長の言葉を忘れたの? 今回の演習は慣れて貰うものであって、無理をするものではないのよ』
『だが、ある程度の緊張感は必要だろう』
ソフィが折衷案を出した。
『どちらの言い分も分かるから、短い距離から少しずつ伸ばしていったらどうかな。始めは10キロ。次は20キロ。もしくは同じ距離でも、全然違う地形を選んで、色々な場所を経験させるのも良いかもしれない。こんな感じどうかな?』
『なるほど』
『そういう事なら』
こうして話していると、美津の艦のオペレーターが通信回線を繋いで報告してきた。
艦長同士がオンラインになっているので、一緒に知らせた方が良いと判断したのだろう。
『美津艦長。地上で狩りをしている者達を発見しました。船があるので恐らく向こうからも見えている筈ですが、特に反応はありません。如何致しましょうか?』
『向こうからのアクションが無いのであれば、特にこちらから何かをする必要は無いと思うわ。あと、こちらの降下ポイントからは外しましょう。2人はどうかしら?』
『私もそう思うが、
『下手に指向性の電波を向けて、ロックオンと勘違いされたら堪らないもんね』
セーナとソフィの言葉で方針が決まり、美津が話題を元に戻した。演習についてだ。
『降下ポイントは何処にしましょうか?』
収集した情報によれば、気象も地形も中々変化に富んでいる。平地、山岳、森林、海、寒冷地、熱帯、暴風、豪雨、生身の人間では生存そのものが厳しい環境もあるが、パワードスーツなら作戦行動が可能だ。
『演習のタイムリミットは1週間だ。なら、動きやすいところから順に試して行けば良いだろう。まず平地が良いと思うが、その後は演習でどれくらい動けているのかを見てだな』
セーナの言葉に、ソフィが言った。
『私もそれで良いと思う』
これに美津も続いた。
『私も賛成です』
こうして艦長同士の相談で大まかな方向性が決められた後は、参謀達の仕事だ。
予め立てられていた演習案に、艦長達の意向や情報収集で得た情報が組み込まれ、より現実に即した形へと変更されていく。
因みに少しばかり余談となるが、カラード戦闘部門に所属する参謀達は、ラウラに非常に良く仕込まれていた。学生時代に晶から教えられた事を、懇切丁寧に教え込んでいたのだ。特殊部隊の隊長を務めていたラウラをして、鬼畜難易度と言わしめた“あの”シミュレーションの数々を教育材料として。
無論、“あの”シミュレーションの数々はISパイロット育成用であるため、全てが使えた訳ではない。しかし、あらゆるものを考慮しなければならない、というのは参謀育成にも使える部分であった。
どうやったら確殺できる? どうやったら確殺から逃れられる? 今ある情報は正しいか? 地形は使えるか? 気象条件はどうか? トラップはないか? この戦場の勝敗が他に与える影響は?
スポーツのように同じ条件で公平に戦い勝敗を決する訳ではないのだ。故に考慮しなければならないものは多い。カラードで参謀を名乗るなら、この程度は立案出来るようになれと言わんばかりに。
またラウラは参謀たちに、事有る毎にこの言葉を伝えていた。
「外道になる必要はないが、外道がいる事は知っておけ。相手が本当にこちらを攻略しようと思ったなら、あらゆる手段を使ってくるぞ。あらゆるだ」
こうして鍛えられた参謀達が、艦長達に上申してきた演習とは――――――。
◇
演習4日目。初日・2日目・3日目が普通の演習であったため、パワードスーツ部隊や有人戦闘機部隊の面々は些か拍子抜けしていた。確かに地球と色々違う部分はあるし、襲ってくる原生生物も多いが、大変という程ではない。
何せ
しかし、今は違う。
『クソがっ!! 幾ら撃ってもキリがねぇ!!』
『愚痴る前に手ぇ動かせ。
『分かってる』
カラードが今回の演習で使用しているパワードスーツは、不知火弐型、
また大きな特徴として、背部に兵装担架という機械腕が2本標準装備されていた。これは予備武装を懸架する為に使われているが、懸架したまま武装を使えるため、兵装担架を背後に向けて後方からの攻撃を迎撃、或いは前方に向けて火力密度を上げるといった使い方がされていた。
今、この瞬間も。
緑の
―――時間は少しだけ遡る。
一番初めに提示された演習内容は、艦を出発して100キロメートルほど進軍して、観測されていた小型
だが参謀連中が考えた本当の演習は、初期目標として提示した5000体をぶっ殺してからだった。
艦のオペレーターから通信が入る。
『
各員がMAP情報を確認すると、回収ポイントはハリケーンの直撃を避けられる山の向こう側となっていた。直線距離で見れば大した違いは無い。大雑把に言えば、山の左側で回収予定だったのが右側に変わった、という程度のものだ。しかし地形情報を含めて考えると、難易度は大きく上がっていた。
元々の予定されていたルートなら平原を真っ直ぐ進むだけで良かったが、変更されたポイントに向かう為には、
危険だが、移動しないという選択肢も無い。この場に留まってもハリケーンの直撃を受けてしまうし、更新された気象情報によれば、今後ハリケーンの勢力は更に増すという。つまり進むしかない。
α00のコードネームを与えられた現場指揮官は暫し考えた後、電子MAPに移動ルートを記入して全員に送信した。
『α00より各機へ。今送信したルートで移動する。全員分かっていると思うが、攻撃は必要最小限。陣形は中隊単位で
命令が下った後の行動は、実戦経験者達だけあって早かった。
何があるか分からない最前衛に
そうしてパワードスーツが
『地震か?』
隊員の誰かが呟いた。センサーが先程から何かの音と振動を拾っている。
隊員達は指示されるまでもなく、原因を探し始めた。但し足は止めない。高度10メートル程度の低空飛行を行いつつ、周囲を観察する。まず光学観測。ハリケーンの影響で雲が増えて暗いが、何も見えない程ではない。見える範囲で異常はない。次にセンサー。パワードスーツの有効索敵圏内に異常は無い。
誰もが思ったその十数秒後。
『
現場指揮官のα00は、惑星に降りる前に収集した観測情報を思い出した。
確かにこの近辺の地下には大きい熱源反応が複数あった。地上に温泉のような水源が複数あった事から、地下の水溜まりと判断されていたが………どうやら違ったらしい。
『α00から
『今はまだ、いえ、徐々に動いています。――――――はい。分かりました』
会話の後半、誰かに話しかけられたのか別の会話が混じった。
そしてα00に伝えられる。
『たった今、演習中止が決定されました。全機、全速力で作戦領域を離脱して下さい。地表に向けて上昇中の何かは、恐らく未確認の大型
『了解。全機、聞いたな!! アフターバーナーON』
パワードスーツと
地下から上昇してきた大型
大型
『なっ!?』
息を呑む隊員達だが、下敷きになる間抜けはいない。実戦経験者だけあって軽やかに避わしてスピードを落さない。そしてある隊員が、味方の近くに落ちた小型の
生物の基本的な本能として、危険が迫れば応援を呼ぶ、というのは地球人でも理解し易いだろう。そして始末された
これに周囲の
センサーに映る無数の
α00は左に迂回しながらの移動を部下達に指示するが、
α00は考えた。
相手が陸上型だけならフライパスして戦闘そのものを回避するのだが、飛行型が5000体近くいる。十数メートル程度の中型種もチラホラ。ハリケーンの影響が強くなってきていて、余り高度を上げたら暴風の直撃を受けて吹っ飛ばされてしまう。
考えを口にする前に、通信が入った。
『
『流石。仕事が早い。座標は――――――』
『了解しました。支援を開始します』
回収ポイントで待機している
爆音と轟音が轟き、道が開ける。これに48機の
しかしこの爆音と轟音が、事態を悪い方向へと動かしてしまった。
部隊の前方5キロ地点に、先程出てきたサンドワーム系大型
α00は全部隊を一度止め、素早く考え始めた。一度引いて大きく迂回するべきか? だがその場合は、迫るハリケーンの暴風をどう凌ぐかが問題になる。強行突破を選択すれば、部下達の命はより直接的な危険に晒される。
メリット・デメリットを考え、一度引いて大きく迂回する命令を下そうとしたところで、後方3キロ地点に更に別のサンドワーム系大型
これで右側と前後が塞がれた。左側は山になっていて行けない事は無いが、山を越える事は出来ない。ハリケーンの直撃を受ける事になってしまう。
『α00から
『
『
『大型種の耐久力次第ですが、そちらにも火力支援を割り振ってみます』
『助かる』
『ですが、残念な事を伝えなければなりません。
『分かった。こちらはこちらで何とかする』
こうして再び部隊を動かし始めた現場指揮官のα00だが、実戦経験者だけあって、猪のように突進するばかりではなかった。ピンチの時こそ冷静にならなければならない。
同じ理由で機動力に優れた軽量二脚を遊撃戦力として再編。左翼と右翼に60機ずつの計120機を配置。
最前衛にガトリングやバズーカ、多弾頭ミサイルといった重火器装備の重量二脚が60機。その後方に討ち漏らし処理用の中量二脚が84機。
これで
『α00より各機へ。
今回の使用されているパワードスーツは、不知火弐型、
不知火弐型は汎用性に秀でている。平均的に性能が高く扱い易いが、全てが最高性能という訳ではない。射撃戦では
故にパワードスーツ部隊の布陣はα00が命令を下すまでもなく、
◇
そうして動き始めた盤面を、
美津が口を開く。
『もう当初のプランとは随分違ってしまっているし、アリコーンに協力を要請するべきかしら?』
事前の取り決めで、アリコーンは要請が無い限り動かない事になっている。ラウラ部門長の言葉を考えれば、協力要請をしても問題視はされないだろう。そしてISを出して貰う必要は無い。SDBMミサイルで誘因された集団の大部分を消し飛ばして貰えば、後は地力でどうにか出来る者達だ。
これにソフィが反対意見を唱えた。
『その気持ちは分かるけど、パイロット達にとってこの経験はとても貴重だわ。私は切り抜けられると信じて見守りたい』
『もし人的被害が出たら、カラードの宇宙軍構想そのものが躓きかねないわよ』
『分かってる。でも宇宙軍は武力集団よ。いずれこういう危険は必ずあるわ』
『初回の失敗と経験を積んでからの失敗では大分違うでしょう』
この言葉にソフィは数瞬黙ったが、モニター情報を暫し見てから答えた。
『いいえ。大丈夫。大変な状況だけど、部隊は統制を失っていない。これならやれる』
賛成と反対に分かれたため、美津はセーナに意見を求めた。
『どちらの言い分も分かるが、私はソフィの意見を支持する』
『理由は? 部門長の言葉は貴女も聞いていたでしょう』
『ソフィは元パイロットだ。現場の状況は、私やお前よりも見えているだろう。そしてもう1つ。確かにラウラ部門長は無理をする必要は無いと仰った。しかし今後を考えれば、この位の状況は我々だけで対処出来なければならない。お前が上なら、すぐに泣きついて来る部下に大事な仕事を任せられるか?』
美津は少しばかり考えた後に答えた。
『………分かりました。では、どうしますか?』
最も有効な対処方法は3人とも分かっていた。艦首にある18連レーザー砲による地上掃射だ。3隻で行えば、相当数を撃破出来るだろう。にも関わらず誰も言わなかった理由は、現在のハリケーンという気象条件にあった。
何故なら
しかしセーナは、この考えの落とし穴に気付いていた。切っ掛けは美津とソフィの会話で、耳を傾けながら対応策を考えている時に思ったのだ。
セーナは答えた。
『山の陰から出て暴風の直撃を受ければ、
『なるほど。確かに』
美津が納得すると、ソフィが続いた。
『地上部隊の様子を見るに、斜面側に退避させれば遠慮なく掃射出来ると思う』
『よし。なら、始めるぞ』
こうして3隻の
◇
この時、地上部隊はソフィが言った通りの状況だった。
単純な戦力差で80倍を超える相手に、部隊間連携を維持して戦えている。相手が戦術や戦略を使う知的生命体なら不可能だったが、相手は只の原生生物なのだ。如何に凶暴で凶悪だろうと、アウトレンジで叩いて叩いて叩き続けて近づけさせなければ良い。尤も併せて言っていたように、簡単な状況でもなかった。数は、暴力なのだ。
『クソがっ!! 幾ら撃ってもキリがねぇ!!』
『愚痴る前に手ぇ動かせ。
『分かってる』
緑の
更に次の瞬間、叩き落したハチ型の反対側から、トラック程もあるカマキリのようなやつが突っ込んできた。振り上げられた前脚の打撃力は強力で、タンク型
しかし2機の
この時、所属小隊の隊長から通信が入った。
『ストライク0より各機へ。損害報告』
『ストライク2。オールグリーン』
『ストライク3。ノープロブレム』
『ストライク4。オーケー』
『
全部隊に通信が入った。
『
これに地上部隊の現場指揮官、α00が反応した。
『α00から
『ご心配なく。3隻とも雲の上からです。そこでなら安定して撃てます』
『なるほど。――――――α00より全機へ。残りカウント60の時点まで平野側で戦闘。切ったら
この後、3隻の
なら、古き良き狩りの方法が通じるだろう。適度に小突けば、怒り狂って追ってくる。さぁ、来い来い来い来い来い来い。
―――そうして240秒後。
『α00から各機へ。時間だ!!』
全パワードスーツが一斉に
取り残された
そうして遥かな上空から撃ち下ろされる18連レーザー砲が、地上を薙ぎ払っていく。3隻分。54本の光の柱が。1回や2回ではない。何度も何度も掃射され、大型種も含め、作戦領域の
―――54本の光の柱と
諸事情により途中挿入だと都合が悪いので、
一番最後に追加してます。
竜宮美津
仕事が終わって、髪を解いたVer
セーナ・ネアデス
ソフィ・シャリング
ラウラの執務室にて
54本の光の柱
―――54本の光の柱と
第237話に続く
演習というには随分大規模になってしまいましたが、予期せぬ出来事というのはよくあることです。
むしろこういう出来事にちゃんと対応出来るようになってこその演習でしょう。
因みに名も無き参謀達が艦長達に提出した演習計画では、行軍→初期目標5000体ぶっ殺し→帰還座標が変わってちょっと苦労する、という程度でした。
ですが大型種が出現して計画崩壊。参謀たちは盛大に冷汗をかいていたでしょう。
そしてAC6ユーザーなら恐らく誰もが思ったであろう高空からの18連レーザー掃射。書いていて思いましたが、実際にやるとエグイです。
あと身も蓋も無いことですが、もしセッシーちゃんが出撃していたら完全殲滅まで数分程度かと。単体戦略兵器は伊達ではないのです。