インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
4日目の演習で予定外の全力稼動をした3隻の
不確定要素の多い惑星圏内より、
そして艦内で様々な装備品や機材のメンテナンスが行われている中、各艦の艦長室がオンラインで繋がれていた。各々の前に空間ウインドウが2つずつ展開され、相手が映し出されている。
『人的被害が無かったという意味では成功だけど、色々反省点が多いわね』
まず口を開いたのは日本人女性で、フルネームは
『そうね』
答えたのはドイツ人女性で、フルネームはセーナ・ネアデス*2。美人と言って差し支えない容姿の持ち主だが、剣呑という言葉を付けたくなるほどに鋭い目つきをしている。
『失敗は次に活かせば良い。それだけでしょ』
前向きな言葉を発したのはフランス人女性で、フルネームはソフィ・シャリング*3。真っ当な正義感を持ち併せている元気印な娘っ子でムードメーカー気質。ついで胸部装甲も大変大きい。
全員が20代中盤と非常に若い。
『なら、デブリーフィングを始めましょうか。私からは、そうね。やっぱりコレからかしら』
美津は冷静な話し合いをする為に、意図的に深刻さを感じさせない口調で言ったが、内容は大失態と言う他無いものであった。
『う゛』
『う、うん。まぁ、ね』
セーナとソフィが、微妙に視線を逸らしながら肯く。演習計画が崩れた後、勢いに任せて乗り切ったが、全部終わった後に気付いた事があるのだ。
それは緊急事態における命令系統の最上位者を、決めておかなかったということ。
これの何が拙いか? 単艦で行動する場合は艦長が全てを決定するので問題無いが、複数艦で行動する場合は、当然の事ながら最上位者の艦長も複数いる。一分一秒を争う緊急事態が起きた時に、命令が衝突したらどうするのか? 自分だけでなく部下全員を殺しかねない。
今回は3人が建設的な意見を出し合う事が出来たのでどうにかなったが、これは本当に運が良かっただけだ。
一応、決められていなかった理由はある。言い訳以外の何ものでもない理由だが、今回の演習は
しかし、これは本当に言い訳にしかならない。ラウラは上位者として決めておかなければならなかった事だし、艦長の3人も命令を受けた際に確認しておくべき事だった。
繰り返しになるが、大問題にならなかったのは本当に運が良かっただけに過ぎない。
そしてラウラ部門長が決めていなかったら、と言うのはとても簡単だ。しかし、3人にそのつもりは無かった。自分達に関わる事を確認出来ていなかったのは、自分達の落ち度なのだ。まして一兵卒ではないのだから、失敗を活かす建設的な考えをするべきだろう。
美津が言葉を続けた。
『という訳で、私はセーナを臨時の艦隊司令に推すわ』
『おい。話が飛躍し過ぎだ』
セーナの言葉に、美津はキョトンとした表情を浮かべて言った。
『あら? 最上位者を決めておかなかったのは失敗だった。だから決めておく必要がある。そして私は、冷静な判断力のある貴女が適任と思った。だから推す。問題無いと思うのだけど』
『それを言うなら、私はお前を推す。理由は、ここで臨時とは言え艦隊司令になれば、ラウラ部門長は今後も継続させるだろう。そうなれば、名実共にカラード宇宙艦隊の初代トップになる。人当たりや慎重さといった要素を考慮すれば、お前の方が適任だろう。戦術や戦略は、周囲がサポートすれば良い』
これにソフィが続いた。
『私も美津を推そうかな。理由はセーナと同じ。あ、ちょっと補足すると、セーナだと目つきが鋭すぎて組織の顔としてはちょっと怖い。私だと元気印な娘っ子に思われてちょっと軽く見られそう。その点、美津だったら落ち着いた雰囲気があるし、ちょっと艶っぽいからお馬鹿さんはコロッと騙されてくれそうかなって』
『ちょっと。言い方』
『事実でしょ』
盛大にぶっちゃけてくれたが、言っている事は分かる。しかし美津にも言い分はあった。
『そういう事も考慮するんだったら、私が良く言われる艶っぽいっていうのは反発の対象にもなるのよ』
これにソフィはニッコリと笑って答えた。
『他の組織ならね。でも、ここはカラードだよ』
カラードの上層部は、99.9%が女性である。社長こそ薙原晶という男性だが、事実上の最高権力者は篠ノ之束博士。内政の一切を取り仕切る副社長はセシリア・オルコット。宇宙開発部門と電力部門は社長が部門長を兼任しているが、前者はシャルロット・デュノアが、後者も女性が実務を取り仕切っている。戦闘部門はラウラ・ボーデヴィッヒ。異常気象対応部門は更識簪。ISパイロットの教育責任者は織斑千冬。レスキュー部門のトップも女性。
しかも全員が見目麗しい上に、その部下も例外無く美女揃い。上の方にいる社長以外の男性は、織斑一夏くらいだろうか?
お陰で世の男共は、合法ハーレムなどと言って羨んでいるらしい*4。なのでカラード宇宙艦隊の初代司令に、年若くて艶っぽい女性が就任しても大した問題は無いのかもしれない。
『まぁ、そう言われたらそうかもしれませんけど………』
何となく釈然としない気持ちになっていると、セーナが畳みかけてきた。
『決まりだな。では艦隊司令、続けましょうか』
美津は苦し紛れの抵抗をした。
『“臨時”です。帰還後、ラウラ部門長に相談します』
こうして続けられたデブリーフィングは、艦内の各部署から上がってきた様々な情報を踏まえた上で、時間をかけて丁寧に行われていった。
成功はより良く成功する為にはどうしたら良いか。失敗はどうしたら失敗しないように出来るか。或いは失敗した場合の対処はどうするのか。どんな事を整備しておくべきなのか。
そしてこういう話になった時、3人の経歴が全く異なる事が良い方向に作用していた。ソフィは元パワードスーツのパイロット、セーナは元参謀、美津は元オペレーター。言い換えれば最前線、後方、両者を繋ぐ中間。現場に対する理解度が高いため、巨大な組織で起こり易い“頭でっかちが作った現場でクソも使えない決まり事が作られる”という事にはならなかった。
カラードが現場主義で彼女達もその気質を受け継いでいたため、デブリーフィングの結果として出てきた改善点は、現場目線が多かったのである。
またこれだけが原因ではないが、将来的にカラード宇宙艦隊上層部の人事は、前線・後方・中間職の経歴を持つ者が、ほぼ等分になるようになっていった。最初の3人がそうだったというのもあるが、現場と上層部の認識がズレないようにする為の方策の1つとして、前線・後方・中間の空気を程よく入れた方が良いだろうという考えからだ。加えて言えば、前線・後方・中間の何処からでも上層部への出世ルートが開かれているというのは、士気向上に一役買っていたのだった。叩き上げでも艦隊上層部へ行けるというのは、他には無い魅力だったのである。無論、多くの事を学んで貰わなければならないので非常に厳しくはあったが。
◇
翌日。つまり演習5日目。
全力稼動後のメンテナンスが完了した
元々の予定は全部隊を使った大規模演習だったが、流石に1日でパワードスーツ
このため次に備えて惑星圏内の情報収集を優先する、という判断から
『こちらD-1。下の方に飛行型
現在の高度は約5万メートル。凶暴とは言え、普通の生物が飛ぶには中々厳しい高度だ。
『こちらD-2。確かにね。でも地中にあんなデカイのが居たのよ。空飛ぶ超巨大生物がいても不思議じゃないと思うの。それこそファンタジーに出てくるドラゴンみたいなやつ』
『こちらD-3。もし出会ったら?』
『上が交戦しろ、なんて言わない限り逃げるわよ。言わないわよね?』
母艦オペレーターから返事が返ってこない。
『えっ、ちょっ、もしかして本当に検討してるの?』
少し間が合った後、返答があった。
『こちら
『こちらD-4。後でウチのお調子者には言っておくから、速やかな撤退命令を下してくれると信じてるわ』
『こちら
適度な緊張を維持するための軽口が叩かれている中、
『アリス。今捕捉した場所をズームアップ。何がいる?』
D-1が機体に搭載されているボイス対応タイプ人工知能に尋ねると、コクピット内のサブモニターに映像が映し出された。簡易分析の結果をアリスが音声で伝えてくる。
『
人類が生体装甲について知っている事は少ない。
“獣の眷族”が主に使っていること。初級、中級、上級と進化していく生きた鎧であること。人体に装着用の装置を仕込む事で、数秒で全身を覆える高い装着性能を持っていること。地球のアンチマテリアルライフル程度なら、直撃を受けても問題無く行動可能な耐久力を持っていること。肉が抉れ骨が折れ内蔵が損傷した程度なら、自力で回復する高い自然治癒能力を持っていること。戦闘用アンドロイドと同等以上の膂力を持っていること。野生の獣を超える超感覚とそれに振り回されない神経系を持っていること。これら能力が初級の内から備わっていること。
そして高レベルに進化した個体ならその方向性によって、衛星砲の直撃に耐える耐久力、分子結合を崩壊させてあらゆる物を切り裂く対物理特攻の生体ブレード、ISでいうところのアクティブ・イナーシャル・キャンセラーに近い念動能力、
以前この情報を入手したカラードは、パワードスーツで生体装甲と敵対した場合の簡単な方針を定めていた。相手が初級なら部隊火力を集中して撃破、中級の生体装甲なら重砲のキルゾーンに誘い込む、だ。上級が相手なら? 即時撤退かIS戦力の投入である。
『ランクの推定は出来るか?』
『情報不足で正確な推定は困難ですが、中級3』
ズームアップされた画面の中で、中級と思われる者達がマークされた。
1体は左前腕と一体化した巨大な盾を持ち、その裏には生体熱戦砲らしきものがある*5。右手にはアサルトライフルのような物が見えるが、アリスの分析によれば光学兵器であった。
1体は左前腕部と一体化した巨大な生体ブレードを持ち、背中から突き出ている二本のアームにも、巨大な生体ブレードが一体化していた*6。右手には日本刀のような物が握られているが、只の物理ブレードではないだろう。
1体は頭部からバックパックにかけてが一体化していて、大きい三角形状の被り物のようになっていた。背部と脚部に推進機関のある飛行型で、縦横無尽に空を駆けている*7。映像から算出された速度は、地球の戦闘ヘリと同等以上。両手に持っているアサルトライフルのような物で、味方が動きやすいように支援していた。
そうしてモニターしていると、地上から通信が入った。
『おい。空で見てるやつ。暇ならちょっと手伝ってくれないか。数が多くて面倒なんだ』
D-1は
『こちらカラード宇宙艦隊航空隊デルタフライトリーダー、アイザック・ラング大尉。そちらの正式な所属を教えて欲しい』
『所属? というか、地球? カラード? ってもしかして、最近
『確かに最近出てきたばかりではあるが、質問への返答を求む』
『傭兵なんでね。正式な所属なんてもんはない。団の名前は羅刹。俺は頭をやってるシュトレー。あっちで敵をぶった切ってるのがアクリス。空を飛んでるのがエーマだ』
この会話の裏側で、美津はアリコーンに連絡を入れていた。羅刹という傭兵団が本当に存在するのか? 名乗った人物は実在するのか? 本当に存在していたとして、どの程度信用出来るのか? 傭兵としての実力は? 本社に確認して、分かる情報は全て送って欲しいという要望だ。
そしてコアネットワークで本社に送られた要望は、速やかに処理された。太陽系から遠く離れた地でありながら、まるで地球にいるかのようなレスポンスで情報が送られてきたのだ。
―――傭兵団“羅刹”―――
概要
傭兵ギルドに登録されたばかりの傭兵団。
規模は小さいが腕の良いのが揃っている。
中心人物は以下3名
シュトレー*8
使用している生体装甲は中級に進化した主力型のアクーラ。
依頼主には比較的誠実で、ミッション成功率は高い。
しかし、あくまで比較的。
アクリス*9
使用している生体装甲は中級に進化した格闘型のヤシャ。
気分屋だが、傭兵としての腕は良い。
エーマ*10
使用している生体装甲は中級に進化した飛行型のメイフライ。
穏やかで落ち着いていて視野が広い。
元教官だけに様々な技能に通じている。
―――傭兵団“羅刹”―――
これら情報はカラードが1号支社や2号支社を使って、情報収集を続けていた結果だった。これに加えて、最近ではレジャー施設からも情報が入るようになってきている。
そして支社やレジャー施設から情報を得られるようになった結果、秘密裏に狩っている宇宙海賊から入手出来る情報の質も上がっていた。宇宙海賊のデータベースから情報をサルベージする時に、支社やレジャー施設から得た情報を検索ワードとして使用出来るため、情報を探し易くなったのだ。
このため、表側からだけでは探れない情報が補足されていた。
―――補足情報―――
シュトレー
“首座の眷族”出身。
元々はとある星系の傭兵ギルド支部の幹部。
担当星系の大規模紛争で失策があったために降格された。
失策にはギルド内の事情が絡んでいるため幾人か敵がいる。
アクリス
“獣の眷族”出身。
ノリと勢い、あとは気分次第で生きてきた女。
容姿もスタイルも文句なしで酒好き。かつお喋り好き。
こんな性格だけに、様々な傭兵団を渡り歩いてきた。
問題も起こしてきたが、それを捻じ伏せる実力の持ち主。
バイオウェアで蝶のような羽をつけている。
エーマ
“首座の眷族”出身。
元々はシュトレーのいた支部で新人教育をしていた。
誘われたのか自分からついて行ったかは不明。
穏やかだが堅物なため、手駒にはし辛いタイプ。
―――補足情報―――
情報を受け取った美津は思った。
今話しかけてきている人物が本物とは限らないが、一応実在はしているらしい。
警戒すべき事は多々あるが、最も注意すべきは武力で協力した場合に、無関係の第三者を巻き込んでしまう事だろう。意図した、意図してないは関係無い。
だがモニターされている状況を見るに、協力など必要無いように思える。アクーラの生体熱戦砲が小型
美津はラング大尉に、テキストで指示を送った。
『これ、俺達が協力する必要あるのか?』
『さっき言っただろ。数が多くて面倒なんだ』
『逃げれば良いのでは?』
『こいつらの体内から取れる結晶は、小金になるからな。空からちょっと爆撃してくれれば、随分楽になる』
随分とぶっちゃけてくれたが、これで言葉通りの協力を求めている訳ではない、と予想がついた。本当に協力が欲しいなら、こんな言い方はしないだろう。
そしてオペレーターとして多くの者と話してきた美津は、こういう接触をしてくる者の狙いが何となくだが読めていた。宇宙人の心理が地球人と同じかは分からないが、これはこちらを知る為の接触だ。また本社から送られてきたシュトレーの情報には、「担当星系の大規模紛争で失策があったために降格された。失策にはギルド内の事情が絡んでいるため幾人か敵がいる。」とあった。背景を想像するに、利用可能な外部勢力を欲している可能性がある。
加えて演習初日、こちらから向こうが観測出来たという事は、向こうからこちらを観測出来たということだ。この場で出会った時は初対面のようなフリをしていたが、カラードの事はある程度調べた上での接触と思うべきだろう。
考えを纏めた美津はセーナとソフィの意見も聞いた後、ラング大尉に協力OKの指示を出した。
『上がOKを出した。これから協力させて貰う』
『話が分かる。そっちのボスは良いボスだな』
『ああ。話の分かる良いボスだよ』
こうして行われた協力により、カラードは中級に進化した生体装甲の観測データを入手する事が出来た。全力戦闘では無かったので限界性能が見えた訳ではないが、それでもその性能は驚異的の一言であった。
主力型のアクーラが持つ生体熱戦砲は、地球の
格闘型のヤシャが持つ生体ブレードは、パワードスーツが使う突撃砲を弾ける
飛行型のメイフライが持つ機動力や運動性能は、パワードスーツを上回っていた。直進・旋回・上昇・運動性能。いずれもだ。
そして戦力を視る者は、兵站に対する負荷も考える。
生体装甲の兵站に対する負荷は、パワードスーツに比べて圧倒的に軽いと言えた。状況によって使い分けるオプション装備はあれど、自己再生能力のある生体装甲は、極論
これは必然的に、組織的な継戦能力が高い事を意味する。局地戦では実感し辛いかもしれないが、展開する部隊の数が増えれば増えるほど、その差は明確になっていく。地球と
今回の演習でカラード宇宙艦隊は、様々な事を学んで帰路についたのだった。
◇
演習から帰還した当日。カラード本社ラウラの執務室。
竜宮美津、ソフィ・シャリング、セーナ・ネアデスの3人から報告を聞いたラウラは、暫し考えた後に言った。
「演習ご苦労だった。そして、済まなかったな。艦隊司令は単艦での練度を高めた後に決める気だったが、私の考えが甘かった」
美津が答えた。
「お気になさらないで下さい。自分達に関わる事を確認しなかったこちらが悪いのです」
「そう言ってくれると助かる。――――――では、建設的な話し合いをしよう。臨時の艦隊司令は美津になっていたが、私としてはこのまま正式に初代艦隊司令にしようと思っている。どうだ?」
「いいえ。部門長に再度選んで頂ければと」
「はい。構いません」
「良いです」
美津、セーナ、ソフィの順だ。
美津が2人の裏切り者を見るが、2人はそっぽを向いて知らんぷりだった。
これにラウラは苦笑しながら言った。
「同僚から認められている。良い事じゃないか」
「違います。2人とも面倒臭いだけです」
「照れ隠しだな」
「再考をお願いします」
「そうだな………」
ラウラは少しばかり考えた後に続けた。
「先に今後の話をしてからにしよう。というのも今後宇宙艦隊の増強は既定路線だが、運用の利便性を考えれば大きい艦隊が1つより、幾つかの艦隊があった方が良いというのは分かるだろう。そして少なくとも第3艦隊までのトップは、ここにいる3人を考えている。だから今は美津をトップにするが、ソフィとセーナにも同じ事が出来るようになって欲しいと思っている。その為の方法として、余り前例の無い方法を考えている」
10の戦力の艦隊が1つあるより、3の戦力が3つで予備戦力1つの方が色々やり易いという訳だ。
「と言いますと?」
美津が尋ねた。
「3ヵ月毎のローテーションで、お前達の立場を入れ替える。例えば始めの3ヵ月は美津がトップ。ソフィとセーナが艦隊副指令として支える。3ヵ月後、セーナが艦隊司令で美津とソフィが副指令。更に3ヵ月後、ソフィが艦隊司令で美津とセーナが副指令といった具合だ。これなら命令を下す側、支える側、どちらの立場でも必要な事を学べるだろう。その経験は将来、部下を掌握する時に役立つ筈だ」
艦長の3人は互いを見て肯いた後、敬礼を持って返した。
「「「了解しました」」」
「細かい事は、また追って伝える。私の方からは以上になるが、お前達からは何かあるか?」
するとソフィが発言許可を求めた。
「どうした?」
「今の話からは変わりますが、本社近郊にある浮遊島って私達が行っても良いんでしょうか? 一応規則では社員とその身内くらいなら良いみたいですが」
正確には本社近郊の海上4000メートルに位置する、直径2キロメートルの半球状の大地だ。
そして浮遊島の真下には、AIC*11に類似する力場操作系の技術で無色透明な垂直トンネルが形成されて、海水が引き入れられていた。
規模が大きいので超技術が使われているように見えるが、原理的には井戸の手押しポンプと同じであるため、形成された垂直トンネル内には常に海水が満ちている。また水というのは停滞していると腐るため、循環させる為に浮遊島の外縁部から放水されて、海に戻されるようになっていた。
このため浮遊島と海が巨大な水柱で繋がり、更に島の外縁部からは滝が流れ落ちるという、中々ファンタジーな光景が見られる観光スポットにもなっていた*12。
「あそこは社員の為の保養地だ。問題無いぞ。何か気になる事でもあったのか?」
「いえ。あそこを利用するのはISパイロットの人が多いみたいなので、使っても良いのかと思って」
「その言い方だと、まだ行った事は無いのか?」
「はい」
「そうか。のんびり羽を伸ばすには良い場所だ。ゆっくりしてくると良い」
因みにこの浮遊島はカラード専用の保養地として造られたものだが、実態としては専用キャンプ場に近かった。
安心して羽を伸ばせる事を最優先した場所であるため、レジャー系企業を一切入れていないのだ。つまり身の回りの事は全て自分で行わなければならない。幾つかのコテージに、ちょっとしたテニスコートやバスケットコートくらいはあるが、基本的にのんびりする以外には何もないのだ。
このためカラード一般社員の利用率は低かった。楽しく過ごせる場所は他にも沢山あるからだ。しかし、ISパイロットや重要な役職に就いている達にとっては違っていた。部外者が入ってこない浮遊島は、本当に羽を伸ばせる貴重な場所なのだ。
「ありがとうございます」
「礼を言われるような事ではない」
こうして報告を終えた3人は定時後、休暇に備えて仲良く水着を買いに行ったのだった。
なお健全な紳士諸君にとっては些末な情報だが、カラード本社敷地内には、トレーニング用スポーツウェア、水着等の売店がある。オーダーメイドも受け付けている本格的な店だ。元々は無かったのだが、本社内にプールや
3人はそのお店に、水着を買いに行ったのだった。
第238話に続く
今回と前回は、今後一般戦力の中核になりそうなキャラクター達の事を書かせて頂きました。
原作キャラが余り出ませんでしたが、「こんなキャラ達がいるんだ」くらいに思って頂ければ幸いです。
そして今回出た中級に進化している生体装甲ですが、元ネタの原作から随分と能力を盛っています。
作者が好きなのはアクーラ、ドレパノン、夜叉、阿修羅、メイフライ、バイラリンあたりです。
あとカラード本社敷地内に新しいお店が出来ましたが、ラインナップには誰かさんの趣味趣向が大いに繁栄されている可能性が高いです。(笑)
次は番外編かR-18のどちらかを………。