インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
話中のイラストはXINN様から頂いたものです。ありがとうございます!!
追記:外宇宙ミッションの通し番号が間違っていたのでタイトルを修正致しました。
(世の中分からないねぇ)
(うん。まさか私達が束博士を運ぶなんてね)
2人がいるブリッジは、窓から外を見る、という作りではない。恐らく全周囲モニター型のコクピット、という説明が一番近いだろう。半球状の部屋の壁面と床全てがモニターで、
中央付近に横並びでシートが配置され、
これはISと艦をリンクさせてワンマンオペレーションを行うなら必要無いものだが、レビヤタン級駆逐艦は将来的に一般人が運用する予定でもあるため、コントロール系を成熟させる為に2人の専用艦にも取り付けられていた。また同じ理由で、2人で操艦するなら必要無い航海員や通信員のシートも設置されていた。2人の後ろだ。
そして航海員と通信員のシートには、束と晶が座っている。居ても退屈なだけと伝えたが、束博士が外の景色を見ていたいと言ったため、自動的に晶も一緒にという訳だ。
後ろから話し声が聞こえてくる。
「でもこうやってスターゲートマップを見ると、
「なにを?」
「スターゲート。全部で8000ちょっとだろ。ヒューマノイド系、非ヒューマノイド系問わず入植している全ての星系をスターゲートで繋いで、ゲートを通れば全ての文明圏に行けるようにしてる。どれだけの労力があったのかを考えると、やっぱり凄いなって」
「そうだね。でも晶。そこに私達も加わるんだよ。そしてスターゲートハイウェイを拡大していけば、もっと行き来し易くなって、もっと色々な所に行けるようになる。どんな世界になるかな」
「楽しみだな」
「うん」
夫婦のような会話を聞いて2人が和んでいると、別行動をしているハウンドチームからコアネットワークが繋がれた。
エリザさんだ。
(そっちの方は問題ないかしら?)
(はい。問題ありません)
(良かったわ。社長や奥様を乗せているのだから、しっかりね)
(勿論です。ところで、社長に繋ぎますか?)
これは
(気持ちだけ受け取っておくわ。仕事中は可愛い愛犬ではなく、猟犬である事を望まれているの)
(失礼しました。では、そちらもお気をつけて)
(ええ。そっちもね)
今回の移動で
だからレビヤタン級駆逐艦を使っているのだ。
そしてハウンドが別行動な理由はアリコーン0番艦を衆目に晒したくないというのもあるが、ジャンクヤードを俯瞰的に見て、おかしな点がないかを調査してもらう為だった。存在を知られていない方が、詳しく調査し易いのは道理だろう。
こうして束一行は地球のスターゲートハイウェイから“首座の眷属”の領域に行き、そこから“翼の眷属”の領域に向かって十数個のゲートを越えるという、ちょっとした小旅行でジャンクヤードに向かったのだった。
◇
少しだけ時は進み、幾つかのスターゲートを越えたレビヤタン級駆逐艦のブリッジ。
操艦する
尤も、面倒な手続きがある訳ではない。基本的にはその星系を統治する文明の現地政府が、公共情報として全ての船が受信できるように発信している情報だ。受信用回線さえ開いておけば、受信は自動的に行われる。
その情報を見て、
「流石は“首座の眷属”だね」
隣のシートに座る
「本当にね」
そしてセキュリティランクの決め方にもルールがあるが、現場目線で見れば概ね次のような感じであった。
ホワイトなら星系内の交通監視システムが完成しているため、何かあればすぐに分かる。仮に海賊が不埒な行いをしたとしても、最速なら十数秒で部隊が駆けつけてくる。ワープ機関の発達した
グリーンなら到着まで数分。十分実用レベルであるし、並大抵の海賊なら即時鎮圧可能な火力と練度を持つ。
イエローからはセキュリティ系企業やバウンディハンターと共存という形になってくる。一番多いのは入植した惑星の周囲を治安組織―――大体の場合においては軍―――が護り、星系内の他の部分をセキュリティ系企業がカバーするといった具合だ。このためイエロー領域の安全の程度はかなり幅広い。
レッドは紛争地域や海賊多発地帯、或いはスターゲートネットワークの繋がっていない領域外に付けられるランクで、この領域に行くなら“自己責任”という言葉の意味を、強く噛み締めないといけない。
これらを踏まえた上で“首座の眷属”の領域を見てみると、主要星系は当然のようにホワイト。周囲も綺麗にグリーン。外縁部付近にイエローが相応にあるが、恒星系保有数2600という他文明を圧倒する領域の広さを考えれば、企業やバウンディハンターの活用は自然な発想と言えるだろう。
そしてスターゲートを通る前に毎回情報をチェックしているが、見事という他ないほど安定している。今回選んだ航路では“翼の眷属”の領域に入る直前でイエローになるが、出発前に支社を通じて調べた限りではイエローの中でも良い方だ。
2人が確認作業を続けていると、後ろの席の晶が話し掛けてきた。
「2人とも、今話し掛けて大丈夫か?」
「ちょっと待ってね――――――よし終わり。どうしたの?」
「レジャー施設経由でさ、ジャンクヤードの商品カタログみたいなのを手に入れたんだ。全部は載ってないみたいだけど、もし欲しいのがあったら言ってくれ。地球に持ち込めるかは別問題だけど、買う事は出来るから」
「「いいの!?」」
「俺と束が買い物するんだ。お前達がダメなんて理由は無いだろう」
「やっぁたぁ。ねぇかなりん。何買おうか?」
「ん~。でも冷静に考えると、ジャンクヤードでしょ。何を買えば良いのかな?」
「え? トラップに使えそうな物とか沢山ありそうじゃない?」
「あ、なるほど。そっち方面ね」
「うん」
今では随分と昔の事にように感じるが、2人は学生の時に巻き込まれたとある事件のお陰で、悪党に対して容赦の無い性格になっていた。ぶっちゃけて言ってしまうと、考え方がかなり晶に近い。使える物は全部使う。嵌める以上は最後までキッチリ嵌め殺す。目には目を、歯には歯を、理不尽には理不尽を。そんな2人がハウンドの面々と友人になり、じっくりと時間をかけて熟成されたのだ。思考が純粋な戦士ではなく、傭兵や猟犬寄りになっていた。
「なら………ん~~、こんなのは?」
カタログのページがスクロールされていき、
「それよりも、こっちは?」
空間ウインドウが再び
後ろの席にいて見えていた晶は思った。
これで広範囲を護る、というのは誰しも想像するだろう。だが、それでは面白くない。例えば、障害物の多い地形で上に展開して戦闘高度を制限する、というのはどうだろうか? 上手く使えば、
そんな事を思いながら晶も、カタログを適当にスクロールさせながら見ていく。途中、手がピタッと止まった。
マジマジと見てみる。記憶が蘇る。もう随分と遠くなった記憶だが、大好きだったやつと瓜二つだ。
後部にある4つのジェネレーターブロック。中央にある球体状の中央ブロック。そこから伸びる円柱状の前部ブロック。武装は電磁投射砲が6門。前方に向けて4。後方に向けて2。搭載機雷数10。CIWSに相当するレーザー可動砲が船体各所にある。船体色はグレー。全長は砲身込みで1282メートル。
(………ゴー、スロス? ゴースロス!? マジか!? え? なんであるの? 詳しい説明は………あった。えーとなになに。既に滅んだ文明が製造したと思われる艦のレプリカ。慣性制御技術が未成熟で乗員への負担は大きいが、高推力で機動格闘戦が可能。売り手からのコメント。趣味の一品。これを買うくらいなら普通の戦闘艦を買った方が性能的にもコスト的にも〇。改修費用高額)*2
晶の心は一瞬で決まっていた。
ジャンクヤードを楽しみにしている束の横で、晶も楽しみでニヤニヤし始めてしまう。
後ろの様子に気付いた前の2人は思った。似た者同士、と。
◇
レビヤタン級駆逐艦は順調にスターゲートを越えて行き、“翼の眷属”の領域にあるジャンクヤードへと辿り着いていた。
「おおぉ~。なんか本当にSFって感じだね。ね、晶もそう思うでしょ」
束は大興奮していた。ブリッジの全周囲モニターに映し出されている外の光景が、これまで幾多のSF映画やアニメで描かれてきた光景そのままなのだ。しかもどちらかと言えばアウトロー系。巨大小惑星をくり抜いたコロニー。入港するのに列をなしている形も色も様々な船。“翼の眷属”のお姉ちゃんがちょっとセクシーなポーズをしている如何わしい系の立体映像。白い翼のお姉ちゃんもいれば、コウモリのような黒い翼のお姉ちゃんもいる。サキュバス? 雑多な通信が飛び込んできて、翻訳機がリアルタイムで翻訳を開始。商品のセールスだったり泊まるホテルのお誘いだったり本当に様々な情報が飛び込んでくる。
「ああ。本当に。自分でこういう光景を見られるとはなぁ」
尋ねられた晶も、ちょっと、いやかなり感動していた。この光景もそうだが、こういう場所にまで来れるようになった。そう思うと、堪らないものがある。
すると束が晶の左腕に自身の腕を絡ませ、ぴったりとくっつく。
「かいものデート、楽しみ楽しみぃ~♪」
ものすっごいご機嫌である。
因みにこの時、
(こちら
コールナンバーは1が赤坂由香里で、2が宮白加奈だ。
(こちら
打ち合わせ通りなので
(此処からでも見えますけど、ほんっとーに沢山ありますね。何かあると思いますか?)
(経験積んできたんでしょ。そっちの見込みは?)
(どんな物かまでは分かりませんけど、何かしらはあると思います)
(理由は?)
(ジャンクの管理方法です。ちょっと思うところがあって、出発前にレジャー施設の人達に調べて貰ったんです)
(廃船のジャンクに限っても数万隻。そんなにある物を、わざわざ客が直に見て回る訳がありません。思った通りジャンクの管理方法は、ジャンクにビーコンタグを着けて、客が中身を見たい時に操作するドロイドやドローンを数体乗せておくだけ。後はジャンクヤードを管理している組織がコロニーで集中管理している。客がジャンクを引き取る時も、コロニーまでは管理側が持って来て、客の船に積み込む。この方法なら、客は廃船を置いてある場所にまで行かない。誰も行かないから、多少大きな物でも隠し放題です)
(90点。もう一押しが欲しいわね)
これに
(この方法ならビーコンの発信座標を偽れます。つまり万が一客が実物を見たいと言っても、客が移動する間に隠したい物から離れた場所に移動させる事で、発見されるリスクを下げられます)
(合格。ヒヨッコだった貴女達が、そこまで考えられるようになってて嬉しいわ。ちゃんと社長のお役に立つのよ)
今度は
(ハウンドより役に立てるように頑張ります)
喧嘩を売っているというよりは、威勢の良い弟子という感じだろうか。
それを分かっている
(あら、言うじゃない。じゃあこっちも言ってあげる。――――――100年早いわ)
こうして話している間に、レビヤタン級駆逐艦はジャンクヤードのコロニーに入港したのだった。
◇
コロニーの中を歩く4人の服装には、全く統一感が無かった。晶はブルーのジーンズとジャケットにグレーのカジュアルシャツ。束はいつもの不思議の国のアリススタイル*3。
なので良くも悪くも目立っていたが、束は全く気にしていなかった。あっちを見てはこっちを見て。かと思えば近くの店に行き、立体投影されている何に使うか分からないパーツについて店員とアレコレ話して。行動が田舎から都会に出てきたお上りさんそのものだ。
そしてジャンクヤードコロニー内の風景や雰囲気は、とても雑多なものだった。
本来コロニーという閉鎖空間の開発は厳密な計画に基づいている筈だが、そんな雰囲気が全く無い。如何にも好き勝手に増改築しましたという雰囲気で、例えるならインドのコルカタやベトナムのホーチミンだろうか? ちょっと年季の入った建物が並び、上を見上げれば剥き出しの岩盤に照明が直接取り付けられている。歩いている人達も様々で、マッシブで体格の良い肉体労働系に見える男、ボンテージ風ファッションのサキュバスみたいな女、ひょろっとしたメカヲタっぽそうな男、警官っぽい服を着た女。等々と実に多種多様な“翼の眷属”がいる。
晶は束と一緒に歩きながら周囲を見て、思った事を口にした。
「良いな。こういう雰囲気」
すると束が答えた。
「地球にも欲しいけど、まだまだ色々足りないからね」
「だよなぁ」
晶は素直に同意した。こういうのは
2人の立場から地球文明を見れば、足りているものなど殆ど無い。
しかし多くの文明が最も苦労するであろう人の往来については、スターゲートハイウェイで確保出来ている。更に言えばレジャー施設もある。将来に向けての土台は出来ていると言えた。
なので、束の言葉は楽観的だ。
「ま、気長にやっていこうよ」
「そうする。頑張り過ぎは良くない」
多くの地球人にとっては不幸な事かもしれないが、2人は地球の為に身を粉にして働く気など無かった。晶は束の夢を形にしたいと思っているが、それで束との時間が無くなっては本末転倒であるし、束も晶との時間を潰してまで一般人の為に働く気など欠片も無い。つまり自分達の為に行うのだから、自分達のペースで、だ。
こうして2人が話している傍らで、
(ねぇ。なんかすっごく注目されてる気がするんだけど)
(うん。周りの人達ってみんな“翼の眷属”さんだから、翼が無いっていうことで注目されてるのかな?)
(どうだろう? “翼の眷属”さんなら他文明の人も見慣れているだろうし、博士のお上りさんみたいな行動を見て、カモにし易そうとか思ったのかな?)
(止めて。それすっごく怖いから)
一応2人は今回の同行で護衛も仕事だと思っているが、どちらかと言えば2人を護るではなく、周囲に被害が出ないように自分達で先に対処する、が正しいだろうか。2人に直接やらせたら、どうなるか分からない。
そんな内緒話をしていると、3人組の男集団が近づいてきた。服装が………一言で言えばチャラい。翼の色は白、黒、灰色と全員違っていて、黒いのはコウモリ系の翼だ。地球人的に言えば、恐らく人種の違いの範疇なのだろう。
「なぁ。なんか探しているなら手伝ってやろうか?」
先頭にいた男が、言いながら束博士に近づこうとする。が、
「御親切にありがとうございます。ですが、自分達で探しますのでお構いなく」
「羽無しのメイド如きが割って入るなよ」
相手の不機嫌で威圧的な物言いに、
「あら、私をこちらの方のメイドと認めてくれるのですね。それはありがとうございます。そしてこちらのお方が何も言っていないので、私の介入は正しいという事です。なので、主に代わりお伝えします。どうぞ、お引き取り下さい」
ハウンドの面々と付き合いがあるせいか、それとも本人にこういう気質があったのかは分からないが、
「チッ。生意気な」
男の右手が、スッと無造作に動く。人差し指と中指に指輪。
ISのセンサーが反応。
―――警告。
―――エネルギー反応を検知。
―――スタンガン系武装の可能性あり。
―――推定威力は標準的な地球人で失神する程度。
しかし、
そして彼女がスカートのメイド服を選んだのは、メイドプレイをする為だけではなかった。本当の理由は、足の動きを隠すため。合気道と同じ理由だ。膝を柔らかく使って動きの初動を悟らせず、懐に入り込んでいる。続いて僅かに両足を開いて腰を落とし、地面を踏み込む。反発力を足首、膝、腰、腹、胸、肩、腕と連動して余さず伝え、最後に掌底で相手の腹部に叩き込む。
ズドンッ、と音がして男の体が「く」の字に折れ曲がるが、これで終わりではなかった。下がった男の顎を掌底で真下から上に向かって打ち抜き、上体を無理矢理起こして腹部をがら空きにした上で、今度は双掌発勁。問答無用で吹っ飛ばす。
最後に
「あら、意外と貧弱なんですね。この程度で奥様に声をかけようだなんて」
「てめぇ」
残る2人の男が気色ばむ。
ここで束が、ニッコニコの笑顔で口を開いた。
「いや~、ごめんね。ウチのメイドって手が早くて。で、一応言ってあげるけど、そこの粗大ごみを拾って何処かに行ってくれるなら、追わないであげるよ。ま、やるなら最後まででも良いけど。どうする?」
隣で見ていた晶は思った。お前もノリノリだな。傍らに立つ
「加わらないのか?」
「
返答は腰にある
「確かに」
そんな話をしている間に残っていた2人が、
見事な制圧劇に、通りを歩いていた者達の視線が集まる。
注目を集めた
「奥様。旦那様。お掃除が終わりました」
スカートの両端を持って、優雅にカーテシーというオマケ付きだ。
なので、晶も旦那様として振る舞う事にした。
「良くやった。ああ、そうだ。ついでにこの粗大ごみ、そこの路地裏に放り込んでおいてくれ。通りを歩く皆さんの邪魔だろう」
「かしこまりました」
この時、
「少し、聞き取り調査をしてきても良いですか」
「構わない。程々にな」
「はい。そんなに時間はかけませんから、買い物を続けていて下さい」
「分かった」
こうして、
◇
3人が買い物を続けていると、
(色々と面白い事が分かりました。まずは、コレを)
晶は送られてきたデータを、思考加速で瞬時に確認する。
なるほど。小悪党だけに色々やっているようだが、ピックアップされたデータが2つあった。
1つは港の船舶データにアクセスしていること。日常的にアクセスしているようだから、港に協力者がいるな。
1つはジャンクヤードに数万とある廃船、つまり商品情報にアクセスしていること。恐らく状態が良いのを見つけては、小遣い稼ぎに使っていたのだろう。
晶は尋ねた。
(事情聴取した奴らが使ってた端末、押さえてあるか?)
(勿論です。ただ備え付けなので、使うならこちらに来て貰う必要があります)
(OKだ。これから合流する)
因みにこのメンバーにとっては些末事なので誰も聞かなかったが、
◇
3人はコロニー内の些か治安の悪い区画に来ていた。
薄暗くて通りの喧騒は遠く、少々の騒ぎなど闇に紛れてしまう。アンダーグラウンドな者には、実に都合の良さそうな場所だ。
目的地は目の前にある10階建て相当のビルで、外見は随分と年季が入っている。この区画にある他の建物と同じだ。
入って行くと、
合流したところで、晶は礼を言った。
「色々調べてくれたみたいだな。ありがとう」
「この程度、何ともないって」
本人は軽く言っているが、初めて来た場所であれだけの情報を手際良く集められるというのは、十二分に凄い事だろう。晶がそう思っていると、
「聞き出した話によると、この区画は旧市街地みたい。で、新市街地が作られて機能移転していったあと、再開発する前に忘れられちゃったんだって。まぁ、忘れられたというよりは、多分こういうところを残しておいた方が都合が良かったんだと思うけど」
人が多く集まると、集団に馴染めない者というのは一定数出てくる。恐らく“翼の眷属”も同じなのだろう。だからこういう場所を残しておいて、色々と処理し易くした。人道的にどうかという話を横に置いておけば、分からない話ではない。
そしてこういう場所に、移転作業の中で忘れ去られてしまった重要回線が残っていた。あくまで“偶々”だ。もし発覚したら速やかに遮断して、問題ありませんでしたという事にする。こんなところだろうか?
「だろうな。で、使われた端末って何処なんだ?」
「こっち」
案内されたのは、カウンターから一番離れた壁際のデスク。背後は壁だ。
すると束はポケットから、自作の携帯端末を取り出して有線接続した。
「さて、ちょっと弄ってみようかな」
この端末が本当に使えるかを確認する為に、かるーーーーーくアクセスを開始。すると数十の空間ウインドウが周囲に展開され、繋がっているシステムを洗い始めた。
ウインドウに洗われた結果が次々と表示され、束は言った。
「オッケー。此処からなら多分いけるかな。じゃ、本格的にやっていくよ」
こうしてジャンクヤードコロニーは何の前触れもなく、“天才”にして“天災”篠ノ之束のハッキングを受ける事になった。
因みに、何か確証があった訳ではない。今回ジャンクヤードに来たのは買い物デートの為であって、調査は単なるついで。重要度の比率で言えば買い物が9で調査が1。どうせ悪い事の10や20程度は出てくるだろうから、適当にピックアップしたのをいつもの会議で渡して終わり。束にしてみれば、その程度の事だったのだが――――――。
―――
あかりん&かなりんの色々なイラストを頂けました
諸事情により途中挿入だと都合が悪いので、
一番最後に追加してます。
護衛任務なあかりん&かなりん
戦闘態勢なあかりん&かなりん
優雅にカーテシーするかなりん
―――
第241話に続く
コロニー内部から束さんによる直接ハック♪
さて、何が出てくるでしょうか? グヘヘヘヘヘ。