インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
ドレス成分多めになったおります。
あと、とばっちりを受けたコウモリさん。
「めんどうくせぇ」
カラード本社の社長室で、晶はボヤいていた。
何が面倒臭いかと言えば、年末年始が近づいてきたからだ。クラスメイトや近しい者達だけで年末年始のパーティをするなら楽しみだが、今やカラードは事実上の統一政府だ。そんな訳にもいかない。
意図的に見ないようにしていた眼前の空間ウインドウを、もう一度見てみる。
世界で―――あくまで地球レベルだが―――要人と言われる者達の名前がズラリと並んでいた。言うまでもなく参加者だ。脳が理解を拒否しようとしているが、参加者だ。
何回でも思ってしまう。面倒臭い。しかし、秘書さん達が整えた場を社長がブチ壊す訳にもいかないだろう。
結局逃げ道は無いと諦めたところで、晶はふと思った。巻き込んでやろう。アイツの性根は分かってる。嬉し涙を流しながら手紙を床に叩きつけて喜んでくれるに違いない。絶対にそうだ。フフ、フフフフフフフフ。その時の光景が目に浮かぶようだ。
善は急げとばかりに内線で秘書さんをコール。便箋と手紙を持って来させて、直筆の招待状を書き始めたのだった――――――。
◇
数日後。
部屋の主が届いた手紙をベチッと床に叩きつけて、ゼーハーゼーハー肩で息をして、ちょっと落ち着いたら天井を見上げて放心している。暫くそうしていると、ようやく心が追いついてきた。
(あんのやろう。なんて厄介なモン寄こしやがる!! 直筆の招待状とか送ってくるなよ。他の奴に知れたら面倒だろうが!! つーかさ、招待状なら普通に送れよ。秘書を使って直接届けさせるとかするなよ。なんかあったって宣伝してるようなモンだろ。分かれよ畜生め)
心の中でカラードの社長をサンドバックにして、まず考えたのはどうやってサボろうかだった。
何故ならケリーには、手紙の内容がこう見えたのだ。
『退屈だからお前も来い。暇つぶしに付き合え』
勿論、手紙にそんな言葉は一言も一ミリも書かれていない。非常に礼儀正しい言葉で書かれている。しかし、しかしだ。カラード社長の顔が思い浮かぶ。何度思い浮かべても、手紙の内容と社長の顔がイコールにならない。
(どーーーしよーーーーかなーーーーーーー。普通に送ってくれたんだったら、郵送側のミスで届かなかったって事に出来るんだけどなぁ。チッ、それを見越して秘書に直接届けさせたのか。悪知恵の働く奴め)
心の中で悪態をつきつつ考える。
流石にサボるのは無理そうだ。ならちょっと顔を出して、少し酒を飲みながら話をして、適当に話を合わせて、良い感じのところで「じゃあ私はこれで」と言ってスッとスマートに消えるのだ。これで問題ない………はず。
この時、コウモリさんはすっかり忘れていた。
今の地球上にカラード社長から直筆の招待状を送られて、直接話せる人間が何人いるのか、ということを。
それを見た他の一般人がどう思うのか、ということも。
帰る事に思考が傾き過ぎて、いつもなら気付いたであろう事が、すっぽりと頭から抜け落ちてしまっていたのだった。
因みに普通なら落ち着いたどこかのタイミングで思い出したかもしれないが、カラード社長の秘書から直接招待状を受け取ったという話が広まってしまったお陰で、次から次から次から次へと来客が来るようになり、忙しさに謀殺されて記憶の片隅へと追いやられてしまったのだった。
尤も思い出したところで、彼に逃げ道など無かったのだが。
◇
瞬く間に時は過ぎていき、カラード忘年会当日。いつものホテルのパーティ会場。
ISパイロットが多く参加する会場の華やかさは、世界中の美姫を集めたと言っても過言では無い程であった。
まず一番注目されているのは、言うまでもなく欧州の三美姫だろう。
カラード副社長のセシリア・オルコット。カラード宇宙開発部門長代理のシャルロット・デュノア。カラード戦闘部門長のラウラ・ボーデヴィッヒ。
セシリアが任されているのは地球という惑星そのもの。
シャルロットは代理という肩書きこそ付いているが、実質的に宇宙開発の実務を担っているのは彼女なのだ。宇宙船や宇宙農園のレンタル事業に始まり、レジャー施設のプラチナ・ドロップス、積み替え用ステーションでの水の販売等々。10年前の人類では想像すら出来なかった事業が、彼女の管轄下で動いている。地球の何処の国も企業も、
ラウラが預かるカラードの武力は、最早何処の国も企業も無視出来なくなっていた。元々ISを中核として多様な戦力を揃えていたが、最近新設されたカラード宇宙軍の存在が決定的な駄目押しとなっていた。
つまり束と晶を除けば、3人は地球文明圏の最高権力者と言って良い。
同時にいずれ劣らぬ美女達であり、身を包むドレスが魅力を存分に引き出している。
セシリアは蒼を基調として金のアクセント。シャルロットは黄色を基調として黒のアクセント。ラウラは黒を基調として金のアクセント。
美姫と呼ばれるに相応しい存在感が、周囲の視線を否応なく吸い寄せていた。
―――シャルロット・セシリア・ラウラのドレス姿―――
―――シャルロット・セシリア・ラウラのドレス姿―――
そんな彼女達は挨拶に来る者達に笑顔で対応しながら、コアネットワークで話していた。
シャルロットが言う。
(ラウラ、随分派手なの選んだよね)
(そうか?)
(そうだよ。スリットは凄い深いし背中は丸見えだし前だってそんなに開いてるし)
(お前だって人の事は言えんだろう。ほら、あそこの御仁がお前の胸元を見ているぞ)
(次からは出禁かな)
(流石に可愛そうではないか?)
(冗談だけど、ラウラから可愛そうなんて言葉が聞けるようになるなんてね。時の流れを感じるよ)
(こういう場だ。見るくらいは許してやるさ。触ってきたら出禁じゃ済まないがな)
(それは当たり前。ね、セシリア)
(当然です。カラード公式行事の場でそのような事をする者など、制裁してやりますわ)
仮にこの言葉が周囲に聞こえていたとして、どれだけの者が目を逸らせるだろうか。彼女達の存在感はそれほどのものであった。
ここでラウラが、ふと思った事を尋ねた。
(そういえばセシリア。お前母国と少し揉めていただろう。どうなったんだ? 大丈夫なのか?)
(ああ。その事ですか。まぁあちらは仲直りしたいようですし、色々言ってきてはいますね)
(その様子だと、仲直りする気は無さそうだな)
(無い訳ではないんです。私をどうにかしようとした者達は概ね失脚しているので、もう良いかとも思っていたのですが………先日内々に送られてきたものを見て、彼らは変わっていないな、と思っていたところです)
(それは?)
(これですわ)
ラウラとシャルロットに、送られてきた内容が送信されてきた。
忘年会中なので、空間ウインドウには出さず脳内で確認する。
今度はシャルロットが言った。
(これは………ダメだね)
(でしょう)
ラウラは何も言わなかったが、シャルロットがダメと言った部分は分かっていた。
内容は色々あって、政治的に譲歩できる部分は譲歩した“つもり”なんだろうという予想はついたが、それを帳消しにして余りある地雷を踏んでいる。
セシリアを陞爵させて公爵にするというものだ。言うまでもなくイギリス貴族階級の最上位であり、本来は王室メンバーや最側近しか叙爵されないが、あちらにしてみれば「これだけのものをやるのだから、もう良いだろう」というところだろうか? だが、これを提案した者は分かっているのだろうか?
叙爵とは爵位を授けられることを言う。つまりイギリスの場合は、女王陛下よりも下の地位につく事を認めるという意味だ。
加えて言えば、もっと拙い事がある。これは確定ではないが、万一貴族院への出席を求められた場合、伝統的に貴族名を名乗っての宣言があるのだ。
それは「私、~*1は、法律に従い、チャールズ国王陛下、その相続人および後継者に対して忠実であり、真の忠誠を誓います。神のご加護を。」というものだ。単なる伝統的な宣言とは言え、カラードの副社長が言える言葉ではない。
シャルロットが尋ねた。
(どうするの?)
(色々面倒になってきましたので、この際ですから貴族の位を返還しようかと思っていますの。ただ我が家に受け継がれてきた位でもありますし、迷っていますわ)
ラウラが独特な感想を述べた。
(なるほどな。確かに自身の階級を返上するとなれば、迷って当然だろう。だが、良いのではないか。
(貴女という人は、時折核心をズバッと言いますわね)
(遠回しに言って欲しかったか?)
(いいえ。小気味良い感じで好きですわ)
(それは良かった)
こんな会話をしている最中、シャルロットに話し掛けてくる参加者がいた。
ナイスミドルな紳士と言った風貌で、レジャー業界ではそこそこの大物と言われている。L4宙域にある
「シャルロット様。今、宜しいでしょうか」
「どうしましたか?」
「先日の件、お考え頂けたかと思いまして」
カラードは先日、月のスターゲートハイウェイを越えた先にレジャー施設をオープンさせていた*2。
施設の名はプラチナ・ドロップス*3。本体は全長44キロメートルのドーム型コロニーで、周囲には直径15キロメートルのアトラクション専用施設が3つある。
なお大きさの比較対象として例を上げると、日本の首都圏で約994万人*4が住まう東京23区の北端から南端までが約17キロメートル、西端から東端までが約21キロメートル程度だ。人類がL4宙域で運用している
収容人数1000万人以上というドーム型コロニーの中身は、海の見える都市という作りになっていた。都市部や海の浜辺にはホテルがあり、客を飽きさせないようにファッション、雑貨、飲食店など、多様な専門店が入っている大型の商業施設が複数ある。
だがプラチナ・ドロップスを本当の意味で楽しむなら、周囲に3つあるアトラクション専用施設に行くべきだろう。小惑星をくり抜いた後、外見を白銀の流体金属で完全な球形に整えられた施設で、中には天災級の大津波を体験出来るゾーンや、山を再現してスキーを体験出来るゾーンなど、惑星上で言えば一地方という単位が必要な環境が、レジャーの為だけに人工的に整えられているのだ。
そしてこれらを稼働させる為の莫大な量の水は、原始星L1448-MMから採取されていた。毎秒アマゾン川の約1億倍という水量が
これまでの人類の常識からは考えられないこの巨大な施設がオープンして以降、地球のレジャー業界からはシャルロットに陳情が山のように届いていた。内容を要約すると、「地球人をプラチナ・ドロップスで研修させて欲しい」というものだ。
しかしシャルロットは、すぐに首を縦に振らなかった。まだオープンして半年程度しか経っていない。客足は良好で運営自体は行えているが、内部的な問題の洗い出しや改善点がまだ色々と残っている。こんな状態で受け入れを命じても、施設側が混乱するだけだろう。
今現在プラチナ・ドロップスに地球人がいない訳ではないが、それは研修を受ける為ではなく、完全な別件で“首座の眷属”や“獣の眷属”の人達と相談を行う場として使っているだけなのだ*5。研修とは天地程に意味が違う。
シャルロットは答えた。
「いずれとは思っていますが、今はまだ受け入れ体制が整っていません。ましてあちらの職員は、アラライル大使やスノー大使のように地球文明の事を詳細に調べている訳ではありません。今焦って行う事は、決して両者の為にならないでしょう」
「分かりました。では可能になった時は、是非ともお声がけ頂ければと思います」
「はい。その時は声をかけさせて貰おうと思います」
こうして欧州の三美姫が話している頃、別の場所では新たな出会いが生まれていた。
アメリカ国家代表のナターシャ・ファイルス。ギリシャ国家代表のベルベット・ヘル。その専属オペレーターのセレーナ・エイレネ。
ナターシャは銀を基調として金と黒のアクセント。ベルベットは赤と青を基調としたツートンカラー。セレーナは灰を基調として赤いショールというアクセント。
ナターシャと後者2人は、これまで接点が無かった。国家代表なので顔を知っている程度だ。
―――ナターシャ・ベルベット・セレーナのドレス姿―――
―――ナターシャ・ベルベット・セレーナのドレス姿―――
尤もお互いに、機会があれば話したいとは思っていた。
3人の肩書きが周囲与える影響を考えて、という理由も無いではないが本当の理由は違う。あの人の広い懐に抱え込まれた者同士で、友好を深めておくのも良いと思ったからだ。因みに自明の理ではあるが、抱え込まれた者達の中には不文律が存在している。それは吹聴しないということ。大奥様である束博士の性格を考えれば、どんな末路を辿るかは分かるだろう。
なので3人の会話は、極々穏やかな雰囲気の中で行われていた。
ワイングラスを片手に、窓際で夜景を眺めながらの談笑だ。
「それにしても社長って、奇特な人というか珍しいというか、面白い人よねぇ」
ナターシャがしみじみと言うと、ベルベットが答えた。
「こういう場ですから、色々な人と話すのは十分にありでしょう」
「本心は?」
「多分、みんな同じだと思います」
だがそれをやってしまえば、社長は社長としての役割を果たせなくなってしまう。それに定期的にちゃんと呼んでくれる。つい先日も――――――と少し思い出したところで、セレーナが言った。
「まぁ、あの御仁の表情は少し引き攣っていますが」
3人の視線が向けられた先には、ケリーと話している
こういう場での男性のテンプレートは極上の美女を傍らに侍らせて自慢する、だと思うのだが彼は随分と長い時間、アメリカ軍のケリー大将と話している。理想的な軍人と言われているくらいなのだから、恐らく非常に高度で知的な会話が行われているのだろう。
そんな時だった。ナターシャとケリーの視線が合う。
一瞬のアイコンタクト。
ケリー
良い所にいた。こっちに来てくれ。場所変わって。
ナターシャ
嫌よ。そっちに行ったら他の人に睨まれちゃうもの。
ケリー
頼む。というかカラード所属とは言え軍属だろ。
俺大将だよ。
ナターシャ
イ・ヤ・よ。頑張って。理想的な軍人さん。
ケリー
FU〇K!!
ナターシャ
絶対行ってあげない。精々羨ましがられて嫉妬されなさい。
ケリー
俺が悪かった。助けて。嫉妬の視線が怖い。
ナターシャ
閣下は泰然自若としていれば良いのです。
後は周りの者が勝手に考えて動いてくれるでしょう。
その結果が理想的な軍人というとんでもないイメージで、早期退職願いも握り潰されてしまうような立場なのだが、ナターシャが知る由も無かった。
ニコッと笑って視線を外し、ベルベットやセレーナとの会話を再開して楽しみ始める。
ここでケリーが仮に普通の下種野郎だったなら、ISパイロットとは言え生意気なナターシャを手籠めにしてあんな事やこんな事を………グヘヘヘ、とか考えたかもしれない。大将という階級なら、幾らでもやりようはあるのだ。しかも今は非常にセクシーな姿をしているので、妄想も捗っただろう。しかし、彼のコウモリさんセンサーは非常に感度が良かった。キュピーンと反応して、「それは自殺コース。駄目。絶対ダメ」と強力に待ったをかけていたのだった。
なので彼は仕方なく社長の傍らで、他人から妬みや恨みを買わない当たり障りのないの話題を、全身全霊全力全開で選び続けたのだった。
コウモリさんの人生は今日も綱渡りである。
そして更に別の場所、ラウンジではクラスメイト達が楽しんでいた。
―――赤坂由香里・鷹月静寐・宮白加奈の艶やかな姿―――
―――赤坂由香里・鷹月静寐・宮白加奈の艶やかな姿―――
静寐が
「そういえば、
「え? うん。嫌いって訳じゃないよ。
「じゃあなんで? こういう場って今までもあったけど、全部着物だったでしょ」
すると
「仕込みやすいの」
言葉と共に袖口を見せてくれる。キラッと光る物があった。
「あなたねぇ」
クラスメイトは全員専用機持ちで、ISには
「何かあった時に、スッと対応出来た方がスマートでしょ」
静寐はコアネットワークを2人に繋いで、
(因みに何個?)
(たくさん♪)
次に言葉で続けられた。
「着物って良いよね」
鮮やかな紅の着物を見て欲しいとでも言うように、その場でくるりと回って見せてくれる。
花魁もかくやという艶やかさだ。
そしてこうなると気になるのは、
取り敢えず、聞いてみた。
(
(首のリボンと腰のお花かな。バッグにも入ってるけど、こっちは敢えて発見させるフェイク用。一応機能は本物だから使えるけどね)
(レッグバンドにナイフか何かを着けておくっていうのは定番じゃないの?)
(このドレスだと左足には着けられないし、右足でもバンドのラインが見えちゃうから今日は着けてないの)
今日は、という事は着けている事もあるということだ。
こんな話をしていると会場の方から歓声が聞こえてきた。確か今は、協力企業に対する色々な発表が行われていたはずだ。
少し聞き耳を立てると、色々な声が聞こえてくる。
「うぉぉぉぉぉやったぁぁぁぁぁボーナスげっとぉぉぉぉ!!」
「積み替え用ステーションの展示スペース!! やったぁぁぁぁぁ。これで
「コロニーに研究スペース。これで、これであの研究が進められる!!」
何か少し拙そうな言葉が聞こえてきたが、忘年会で多少浮かれただけだと思いたい。特に展示前にはチェックがあるし、おかしな展示にはならないだろう。ならないよね? 晶くん。
3人はちょっと(?)趣味人な社長を思い出して、何故か3人ともとてもイイ笑顔の彼を想像したのだった。
そこに、当人がやってきた。先ほどまで一緒にいたアメリカの軍人さんはいない。解放されたのだろう。
「よっ」
「社長が会場にいなくて良いんですか?」
静寐の言葉に、晶は肩をすくめて答えた。
「今は発表があってみんな大騒ぎしてるからな。多少外したところで大丈夫さ。3人もいるしな」
3人とはセシリア、シャルロット、ラウラのことだ。これに
「晶くんは3人に、特にセッシーに頼り過ぎ。本人は喜んでるけど、無理させちゃダメだよ」
「うぐ。き、気を付ける。頑張ってくれるから、ついな」
しかし、晶もやられてばかりではない。
「それを言うならお前達だってそうだろう。何度俺が残業を止めたか」
「私達は晶くんが止めてくれるけど、セッシーは立場上無理しないといけない時もあるでしょ。だから労わってあげてっていうこと」
鮮やかな返しに晶が両手を挙げて降参すると、4人は何となく笑ってしまった。
IS学園を卒業して何もかもが変わったが、こういうやり取りは変わらない。それが楽しくて嬉しくて、というやつだ。少し青い気もするが、嬉しいものは嬉しいのだ。
晶は此処での会話を楽しんだ後、また別のクラスメイト達と同じように会話を楽しんでいた。加えて非常に重要な点として、皆が着飾っているということだ。艶やかな姿がとても良い。幾度となく中身を味わった相手でも、着飾った姿はまた別なのだ。良いものは良い。脳内に最高画質画像&動画で永久保存である。無論、クラスメイト以外の面々もだ。
因みに野郎は居たという事だけ記憶しておく。
そうして一通り回ってラウンジの座席に座ると、水を差し出された。振り向けばクロエだ。
「どうぞ、お義兄様」
「悪いな」
受け取って一気飲み。冷たい水がとても美味しい。
「もう一杯お持ちしますか?」
「いや、いい。ありがとう」
答えながらクロエを見て、ふと思う。育ったなぁ。引き取った時はツル・ペタ・ストーンだったのに。
「お義兄様? 何か、失礼な事を思っていませんか?」
テレパシーでも持っているのだろうか?
内心でドキッとしながらも、素知らぬ顔で答える。
「まさか。こんなに良い義妹を持てて、俺は幸せ者だって思ってただけ」
「義妹一同、お義兄様のお役に立てるように努力していますもの」
晶はこの場にいない他の7人を思い浮かべた。
将来カラードを側面支援出来るように、それぞれが様々な分野の事を学んでくれている。本当に、ありがたい事だと思う。
「お前達を引き取った時は、普通の生活をさせてやるつもりだったんだけどな」
「もう無理ですから、離さないで下さいね」
「嫌だって言っても離さないからな」
「はい」
クロエが嬉しそうに微笑みながら答えると、その背後から声が聞こえてきた。
「晶。そろそろ戻ってこい」
するとクロエが言った。
「お義兄様は座ったばかりです。少し休ませてあげて下さい」
「体力お化けのこいつが、あの程度で疲れるものか。お前だって知ってるだろう」
具体的に言えば一晩中運動出来る訳でクロエも身を以て知っている訳だが、それとこれとは話が別だ。全く、私と同じようにお義兄様に拾って頂いた
なのでクロエは、スマートな方法で休んで頂く事にした。
「お義兄様。丁度ピアノもありますし、1曲だけ聞いていって下さいませんか」
「1曲だけ? そうだな。――――――ラウラ、いいか?」
お義兄様が愚昧な妹に気を使って確認する。
「まぁ、1曲くらいなら」
よーし。言質はとったわよ。
「ではお義兄様。ラ・カンパネラを」
―――クロエとラウラのドレス姿―――
―――クロエとラウラのドレス姿―――
ラウンジにピアノのメロディが流れ始めると、人が集まってきた。
クロエは何でもない事のように言ったが、ラ・カンパネラはピアノの超絶技巧を要する難曲として知られているのだ。それをいとも容易く弾いていく姿に、周囲から小さな声で、だが確実に「素晴らしい」という声が漏れ始める。
これはクロエの努力の結果でもあるが、元を辿れば晶が義妹達に家庭教師を付けていた事が切っ掛けだった。引き取った当初は将来どうなるか分からなかったため、当時から協力関係にあった更識家にサポートを頼んでいたのだ。
そうして5分程の演奏が終わると、ラウンジには盛大な拍手が巻き起こっていた。
クロエは立ち上がり、優雅に一礼する。
「皆様。御清聴、ありがとうございました」
こうしてカラードの忘年会は、予期せぬスペシャルイベントを挟みつつも、平和に進んでいったのだった。
第244話に続く
NovelAIでヒロイン達のドレス姿を作り始めたら止まらなくなった作者です。
お陰で今回はセクシーなドレス姿がとても多いです。
そしてドレス姿の皆さんは全員晶くんの………です。
羨ましいったらありません。
因みに、コウモリさんは最後まで当たり障りのない話題を選び続けてミッションコンプリート。
今回も生き延びました。(笑)