インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~   作:S-MIST

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N-WGⅨ/ISはNovelAIで書き書き。
束さんのISエクシードはXINN様から頂きました。ありがとうございます!!


第245話 ヲタクの熱量!!/N-WGⅨ/ISの小規模アップデート&エクシードの外装変更と新武装(IS学園卒業4年目の2月)(イラスト有り)

  

 約半年前*1、カラードのホームページに異文明との文化交流を前提とした都市建造について、アイデアを求めるスレが立った。

 普通なら与太話と切って捨てられるところだが、場所がカラードのホームページである。異文明との交流があり、テラフォーミングまで開始しているカラードだ。本気で文化交流用の都市建造を考えている事が伝わると、世界中のヲタク共から連日物凄い量の書き込みが続いていた。

 このスレにおいて、肩書きなど何の役にも立たない。どこかの高名な教授が、ヲタクAに論破されたなど日常茶飯事だ。何せヲタク。特定分野に突出した熱量を持ち、それを突き詰める事に至上の喜びと熱意を傾けられる者達だ。

 そんな奴らが人類史上初の巨大プロジェクトにリアルタイムで参加、かつ自分の意見が都市建造に反映される可能性ありなんて餌を見せられて、突っ走らない筈がない。

 そして今日、これまでの意見を一応集約した地下都市案(3D映像付き)がスレにアップロードされた。叩き台があった方が議論し易いだろうというカラード側の考えだ。

 ソレを見たネット民は………。

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

1.ヲタクA

 1コメゲット! って……………え?

 俺の案入ってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!

 マジ。本当にマジ!? 小躍りしちゃうぜ。

 

2.ヲタクB

 2コメゲッツ!!

 おいおい。俺のも入ってるよ。(嬉)

 

3.ヲタクC

 3コメGET!!!

 ケッ、俺のは入って無かったぜ。

 

4.ヲタクD

 お前論破されてたもんなぁ。

 

5.ヲタクE

 それはそれとして、カラードガチ過ぎね?

 パッと見たけど、電源構成がまずおかしい。(誉め言葉)

 

6.ヲタクF

 それな。

 絶対ブラックアウトさせないという強い意志を感じた。

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

 世界中のヲタクやプロ共がアップロードされたデータを食い入るように見ていく。

 そして今話題に上がった電源構成について、同じようにアップロードされた説明書(?)には、このように書かれていた。

 主電源はレクテナ施設で、衛星軌道にあるスターゲート送電用中継衛星からのスーパーマイクロウェーブで稼働させる、となっている。これは良い。むしろカラードなら当然だろう。世のヲタ共がガチと言ったのはこれ以降だ。

 常用予備に地熱発電と水力発電。これは一般人でも良く知っているメジャーな発電手段だろう。

 次にゼーベック効果を使った排熱回収型発電。これは温度差を利用した発電システムで、この都市での使い方は都市の冷却プロセスで発生する廃熱を再利用する、というものだ。

 バッファとして重力蓄電。これは重力制御を用いたハイテクではなく、余剰電力がある時に巨大な質量体を引き上げておき、必要時に落下させて回生エネルギーを得るという超アナログな、それ故に極めて故障し辛い堅牢な蓄電手段だ。

 最後が全ての電源が死んだ時の切り札で、ブラックスタート用のものだ。これは劣化しない固体の金属を、その場で水等と化学反応させて電力を発生させるものだ。

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

7.ヲタクG

 うぁ。すげ。ん?

 地熱と水力が入ってるってことは………。

 

8.ヲタクH

 地熱? 活火山の近くなのか?

 

9.ヲタクI

 いや、高温岩体発電(HDR/EGS)だから大丈夫。

 

10.ヲタクJ

 なにそれ?

 

11.ヲタクK

 ぶっちゃけて言うと、地下にあるあっつい岩に水ぶっかけて、蒸気を作ってタービン回す方式。

 大深度地下の岩は惑星そのものの熱で常に加熱されるから、人間が水ぶっかけた程度じゃ中々冷えない。

 ついでに言うとこの方式は活火山の近くじゃなくても使える。

 

12.ヲタクL

 おおぉ。エコだ。っていうか高性能だけどメンテに手間のかかる核融合炉を投入していないあたり、万一何かあっても現場の人間だけでどうにか出来るように作ってるなこれ。マジで安全設計がガチだ。

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

 この会話は始まりに過ぎなかった。

 ネット民が次々と深掘りしていく。上下水道は? 廃棄物の処理方法は? 日常生活に関わる事だけに、多くの者が僅かな穴も見逃さないとばかりに隅から隅まで舐めるように見ていく。

 そうして見ていくと、上下水道や廃棄物処理の要点は次の5点に集約されていた。

 1つは完全閉鎖系の水再生サイクルで、都市内で使用される全ての水(生活排水、工業排水)を回収して再利用するシステムだ。万一電源が喪失しても最低限の生活用水は確保出来るように、砂や礫(小石)を用いた物理的自然ろ過のバックアップラインが設置されている。

 1つは廃棄物プラズマガス化改質システムだ。都市から出るあらゆるゴミをプラズマによる超高温で分解するもので、最終的に都市を補修する資材(スラグ)エネルギー(合成ガス)に変換される。稼働エネルギーコストは高いが、有害物質が出ない。

 1つはバイオマス・コンポスト循環だ。食料残渣や排泄物を微生物分解し、都市内の植物工場や緑地帯の肥料として還元する。これの良いところは化学合成肥料の備蓄が尽きても人が住んでいる限り、酸素供給源の緑を守る事が出来る、というところにある。

 1つは真空式ごみ収集システムだ。都市中に張り巡らされたパイプを通じて、空気の圧力でゴミを処理センターへ自動回収する。これの良いところは、ゴミが散乱する事が無いというところだ。つまり害虫の発生源を物理的に遮断する事で、地下都市という閉鎖環境での疫病リスクを最小化出来る。

 1つは非常用の重力式大容量貯水槽。これは重力制御を用いたハイテクな貯水槽ではなく、都市の最上層に巨大な貯水槽を設置する、というものだ。最上部に配置する事で仮に全電源が喪失するような大規模火災が起きた時でも、水は高いところから低いところに流れるという単純な物理法則に従い、バルブを開くだけで大量の水を投下できる物理的な安全装置だ。なお全電源が喪失しているという事はポンプによる排水も出来ないという事であるため、大深度貯留槽の整備や都市の最下層よりもさらに低い位置にある地下河川等へ逃がす事までがセットであった。

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

1865.一般人A

 俺の住んでる街もこれくらいしてくんねぇかなぁ。

 

1866.一般人B

 同意。

 

1867.一般人C

 同意。

 

1868.一般人D

 同意だけど無理だろ。

 こんなのカラードじゃなきゃ出来ねぇって。

 それはそうと、なんかもう一つ面白いのがアップロードされたぞ。

 

1869.一般人E

 うん?

 

1870.一般人F

 あ、本当だ。リンク増えてる。

 えーと、なになに、テラフォーミング中の惑星の大陸マップ………マジ?

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

 カラードはシレッと、劇薬のような燃料を投下していた。

 所謂グー〇ルマップのように、文化交流用都市を建造する惑星の大陸データだ。これには、合わせて次のようなコメントが添えられていた。

 

『カラードは現在、都市建造の候補地を5ヶ所にまで絞っています。マップ上にある青い光点です。選定条件としては次のようなものです。1.地震の少ない安定した地盤であること。2.水資源を活用し易いように海が近いこと。3.将来的に地上にも都市を作る可能性があるため、開発が容易い平野であること。3.高低差というのは多くの事に使えるため、山が近くにあること。これらを優先事項として選んでいます。マップを見た方々が、「ここはどうだ?」というところがあれば、遠慮なく意見をお願い致します』

 

 大陸データには、現在観測されている大陸プレートの動く方向のデータもあった。情報はまだ少ないが、動く方向が分かるだけでも多くの事が分かる。

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

15825.地質ヲタA

 うわぁい。さっすがカラード。分かってるぅぅ!!

 野郎共。集合!!

 

15826.地質ヲタB

 参上。

 

15827.地質ヲタC

 参上。

 

15828.地質ヲタD

 参上。

 

15829.地質ヲタE

 参上。

 

15830.地質ヲタF

 参上。

 

15831.地質ヲタG

 参上。

 

15832.地質ヲタA

 ちょいとデータは少ないけど、安定地盤の割り出しいっくよー。

 なーに。地形データがあるなら予測も推測も出来る。

 足りないところは気合と情熱。

 あとはカラードに「こういうデータちょうだい♪」ってお願いメールすれば多分くれる。

 

15833.地質ヲタB

 むさいおっさんに「ちょうだい♪」って可愛くお願いされたら逆に引くんじゃ………。(笑)

 

15834.地質ヲタA

 なにおう!? ピチピチの大学生だぞ!!

 レポート締め切り間際で髪はボサボサ服はヨレヨレだけど。

 ツルッ、ボンッ、ボンッのナイスバディ。

 間違った。ボンッ、キュッ、ボンッのナイスバディよ。

 

15835.地質ヲタC

 安心しろ。此処では誰もが平等だ。(そっと目を逸らしつつ)

 

15836.地質ヲタD

 そうだな。例えツルッ、ボンッ、ボンッでもな。

 

15837.地質ヲタE

 そうだな。レポ締め切り間際でフラフラな廃人の言う事だ。

 サラッと流すのが大人というもの。

 

15838.地質ヲタA

 しっかり食いついてんじゃないの。

 

15839.地質ヲタC

 これくらいにしておこう。

 というかレポート良いのか?

 

15836.地質ヲタA

 もうちょっとで終わるから大丈夫。

 2徹目だけど。こんな面白そうなこと逃せるわけない。

 

15837.地質ヲタF

 休め。先は長いぞ。

 

15838.地質ヲタA

 エナドリ箱買いしてあるから、あと3徹くらいはいけるいける。

 ウヒヒヒヒ。

 

15839.地質ヲタD

 骨は拾ってやる。

 よーし。じゃあ始めんぞ!!

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

 こうして都市構造や建造場所そのものの妥当性の解析に情熱を燃やす者もいれば、都市の目的である文化交流に焦点を当てる者もいた。

 そしてこの話を考える時に一般人が参考にしたのは、地球ではいつもの会談と言われている、束、アラライル、スノーの三者会談だった。

 実は束博士、地球人類の為に色々質問してくれているのだ。例えば「こちらでは~だけど。そっちではどう?」みたいな事を、話の合間に少しずつ。またこれまでの経過として、少なくとも音楽というのは共通言語として成立する、琴やヴァイオリンに近い楽器も存在している、という事も分かっている。

 ならば、後は想像力を働かせていけば良い。

 音楽があるなら劇もあるだろう。喜怒哀楽に焦点を当てた書物もあるだろう。注意しなければならないのは、地球の文化圏でもある事だが、Aという文化圏では良いジェスチャーが、Bという文化圏に行けば悪いジェスチャーになってしまう事もある。なのでネットの文化ヲタク達は、そこに焦点を当て始めた。

 が、これには先駆者がいた。晶の義妹達が設立して大株主となっているアースレポート・コーポレーションだ。

 あの会社は各国の日常的なコミュニケーションをデータベース化し、挨拶から買い物、ビジネス的な場面まで広く網羅した様々なシーンを動画で見れるようにしている。その中には、行ってはいけないダメな例も動画にされているのだ。

 このため文化ヲタ達は情報収集という労力から解放され、情報を現実的に活用する方向で考え始める。

 でもその前に、ちょっと脱線していた。

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

28652.文化ヲタA

 義妹ちゃん達流石だわ。

 俺もあんな可愛い&美人な義妹欲しい。

 

28653.文化ヲタB

 言うな。全人類が思ってる。

 

28654.文化ヲタC

 俺は写真集で我慢するよ。

 あとアイコラ画像。

 

28655.文化ヲタB

 おい。まさかお前作ってないよな?

 

28656.文化ヲタC

 いや? DLしているだけだけど。

 いっておくけど、健全だぞ。

 

28657.文化ヲタB

 なら良いんだ。以前、エッチィの作ってバラまいた奴がいてさ………。

 

28658.文化ヲタA

 うわぁ。(察)

 

28659.文化ヲタD

 うわぁ。(察)

 

28660.文化ヲタE

 うわぁ。(察)

 

28661.文化ヲタF

 うわぁ。(察)

 

28662.文化ヲタG

 うわぁ。(察)

 

28663.文化ヲタB

 みんな同じことを思ってるようで良かった。

 

28664.文化ヲタC

 ど、どうなったの?

 

28665.文化ヲタB

 調べてみな。すぐヒットするから。

 まぁそれはさておき、本題だ。

 文化交流で知らずにNGな事やってブチ壊す事ほどつまらない失敗は無いからな。

 地球側の情報は既にある訳だし、どうやったら宇宙人さんに視覚的に分かり易く伝えられると思う?

 毎回毎回動画見て確認なんて、誰だって面倒だろ。

 後はそうだな。

 カラードに“首座の眷属”と“翼の眷属”に対して、NGな声掛けや行為を外交経由で教えて貰うってのはどうだ?

 

28666.文化ヲタF

 外交経由で教えて貰うは賛成。既にやってる気もするけどな。

 あと視覚的に分かり易いも賛成。だって全員が勤勉で真面目とは限らないだろ。

 

28667.文化ヲタG

 “首座の眷属”や“獣の眷属”にアイコンとかピクトグラム*2って文化はあるかな?

 あればこっちの意図を向こうに伝えて、あっちで作ってもらった方がより分かり易いのが出来ると思うんだが。

 

28668.文化ヲタE

 ありだな。メール送ろうぜ。

 

28669.文化ヲタC

 公式(カラード)ここのスレ見てるだろ。勝手にやるんじゃね?

 

28670.文化ヲタA

 かもしれんが、送った方が確実だろ。

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

 この他にもアップロードされた情報に対して、様々な議論が活発化していた。

 例えば食料。移民が始まればL4宙域にある食料生産用コロニー2基は現地に移動予定、というのは既に公表されている情報だ*3。そしてコロニーを使った食料生産は、人を生かす事だけを考えた生産体制なら、1基あたり年間1000万人が上限となっていた*4。食の豊かさを求めれば上限は下がるが、移民船クレイドルの乗員は数十万人程度なのだ*5。試算上、先進国の一般的な食生活を提供する程度なら何ら問題無い。また食料生産に使われているコロニーは“首座の眷族”製であるため、耐用年数にも優れている。購入した際のマニュアルには100年程度なら問題無く使用可能とあり、束のシミュレーションでも同様の結果が出ていた。適切なメンテナンスを行えば、更に永く使用出来るとも。

 このためスレ民の興味は、移民先での食の豊かさに向かっていった。

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

87563.食ヲタA

 公開されているコロニーの生産能力なら、野菜は割と余裕あるな。

 野菜は………。

 

87564.食ヲタB

 野菜“は”な。

 

87565.食ヲタC

 だな。問題は肉だな。

 

87566.食ヲタD

 薄々思ってはいたけど、放牧ってこんなにコストかかるかい………。

 

87567.食ヲタE

 野菜を畑で作るのに比べて、数倍から100倍以上の面積が必要だからなぁ………。

 

87568.食ヲタF

 諦める?

 

87568.食ヲタG

 でもさぁ。移民先でも肉食いたくね?

 

87568.食ヲタH

 食いたい。

 いっそ割り切るか。

 レパートリーは減るけど、食料生産用コロニーは2基だろ。

 1基は野菜用。1基は肉用とか。

 

87569.食ヲタI

 それ、単純計算で野菜のレパートリー半分だぞ。

 

87569.食ヲタJ

 あのコロニーって円筒形だろ。

 ならさ、春巻きみたいな同心円多層構造にしたら作付け面積増やせね?

 

87569.食ヲタK

 お前頭良いな。

 おい、誰か建築ヲタ呼んで来い。

 ちょっと強度計算させてみようぜ!!

 それが出来るなら、野菜のレパートリー減らさずに肉が食えるようになるぞ。

                               

―――カラードホームページの掲示板―――

                               

 こうしてネット民達は投下されたネタに食いつき、様々な意見が出ては多方向から検証されていったのだった。

 掲示板は変わらずお祭り状態である。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 一方その頃。カラード本社地下にある束と晶の自宅。

 2人がいつも過ごしている階層よりも更に深い大深度地下にある地下空間に、小規模アップデートされたNEXT(N-WGⅨ/IS)の姿があった。

 アップデート内容は多くない。装甲形状が多少変わった事と、両手に持つハンドレールガンに機能が追加された程度だ。

                               

―――NEXT(N-WGⅨ/IS)―――

                               

 

【挿絵表示】

*6

                               

―――NEXT(N-WGⅨ/IS)―――

                               

 軽く体を動かしたところで、束がコアネットワークで尋ねてくる。

 

(どう? 何か違和感ある?)

(いや、流石だ。全然違和感が無い)

(オッケー。じゃあ、次は武器の方にいってみようか)

(分かった)

 

 広大な地下空間に、仮想ターゲットが展開される。

 両手に持つハンドレールガンはNEXTがN-WGⅨ/ISにセカンドシフトした際に、幾つか生まれた新武装のうちの1つだ。

 共に実弾兵器だが、エネルギー物質変換により弾数無制限。NEXT兵器のOIGAMI(老神)を超える衝撃力と破壊力をマシンガンの連射力で発射するキチガイ武装。

 厳密に言えば、右手のロングバレルタイプと左手のショートバレルタイプで若干性能が違う。

 ロングバレルタイプが連射レートが多少低くなっている代わりに、威力が高いアサルトライフル型。

 ショートバレルタイプが連射レートが高い代わりに、威力が多少下がっているサブマシンガン型。

 束はこれに手を加えていた。彼女曰く、「エネルギー物質変換するだけのエネルギーがあるなら、レーザーとかプラズマを撃ってもよくない?」というものだ。

 一理ある。という訳で、自重しない改良が施されていた。束は、本当に自重していなかった。

 型式番号はYWH160HR-KRSV-longbarrelとYWH160HR-KRSV-shortbarrel*7

 エネルギー物質変換による実弾攻撃性能そのままに、モードチェンジでレーザーとプラズマの撃ち分けが可能になったのみならず、3種の複合同時攻撃を可能としたものだ。それでいて重量増加は僅かというトンデモ兵装。

 地下空間を軽く飛び回りながら、トリガーの感触を確認していく。悪くない。

 

(束。ターゲットを動くようにしてくれ)

(オッケー)

 

 静止していたターゲットがランダムに動き始める。中々良い動きだが、問題無い。叩き墜としながら頻繁にモードチェンジ。切り替えによるラグを体に覚え込ませていく。

 そうして暫く撃ち続けた後で、N-WGⅨ/IS()は言った。

 

(良い感じだ。後は、耐久性能か。束。やっても良いかな?)

(良いよ。信頼性の無い兵器なんてダメダメだからね)

(じゃ、遠慮なく)

 

 N-WGⅨ/IS()はそう言って、YWH160HR-KRSV-longbarrelを放り投げて、落ちてきたところで蹴り飛ばした。YWH160HR-KRSV-shortbarrelも同じように蹴り飛ばす。すると物理法則に従って、地下空間の壁面に叩きつけられた。

 近づいて拾い上げてみる。取り敢えず、壊れているようには見えない。次いでシステムチェック。終了。システム上も、壊れてはいないようだ。

 

(束。ターゲット頼む)

(出したよーーー)

 

 実弾。レーザー。プラズマ。モードを切り替えながら適当にトリガー。

 

(取り敢えず、ちゃんと動くな。もうちょっと派手にやってみるか)

 

 蹴って殴ってもちゃんと動く。なので、更に強くやってみる。クイックブーストで超信地旋回。33.6km/s(120,960km/h)という超速度で、遠心力をつけて壁面に叩きつけてみる。

 

 ―――メキャ。

 

 流石に壊れた。しかし原型を保っているあたり、中々耐久力もあるようだ。

 自己再生能力で直せそうな程度の損傷だが、聞いてみる。

 

(束、どれくらいで直せそうかな? 自己再生だと6時間くらい掛かりそうなんだが)

(原型は保ってるし、ちょっと自己診断プログラムの結果頂戴)

(こんな感じ)

(内部システムは無事だね。これなら2時間もあれば直せるよ)

(分かった。なら終わったら、ちょっと狩りに行ってくる)

 

 2人の間で狩りとはイコール宇宙海賊狩りだ。

 

(あ、私も行こうかな。エクシードの外装をちょっと弄ったのと、幾つか新装備があるから)

(お? どんな感じにしたんだ?)

(今見せるね)

 

 NEXT(N-WGⅨ/IS)のテストをモニターしていた束が、隔壁を開けて入ってきた。

 そして自身の専用IS、エクシードを展開して見せてくれる。

 いつものウサミミはそのままだが、白を基調としたドレスのような姿だ。物凄く似合っている。赤い宝玉をあしらった杖も良い。だがそれはそれとして、ビットの形状を人参にしているあたり、束らしいというか何というか。

                               

―――束のISエクシード外装変更Ver―――

                               

 

【挿絵表示】

 

                               

―――束のISエクシード外装変更Ver―――

                               

 晶は思ったままストレートに言った。近くに来てくれたので、コアネットワークではなく直接。

 

「うん。いい。凄く良い」

「でしょ。えへへへへへ」

 

 ニマニマする束に、晶は単純な好奇心から聞いてみた。

 

「ところで束。その人参ビット。なーんか計測されるエネルギー値が妙に高いんだが、何を仕込んでるんだ?」

「これね。晶が気兼ねなく遊べるように、こんな機能を実装してみたの」

 

 人参ビットがNEXT(N-WGⅨ/IS)を立方体状、所謂檻のように取り囲む。

 これで晶はすぐに分かった。

 

「あ、電波の通りが悪くなってる。という事はコレもしかして、遊んでる最中の姿を隠してくれるってことか?」

「そう。一々イクリプスで大規模ジャミングかけるのも面倒臭いし、これで戦闘領域を覆って、出ていく通信を全部ブロックしちゃえば良いかなって」

「凄いな。でも持久力はどれくらいなんだ?」

「頑張ったけど、5分が限度かな。使い捨ても有り得るビットに、超高性能機材は流石にね」

 

 あくまで束基準での超高性能機材という意味で、世間一般の基準で見れば十二分に超高性能ビットという扱いだろう。外見は人参だが。

 

「なるほど。あと、通信のブロック以外には何が出来るんだ?」

「レーザーを撃つ。レーザーブレードを形成して突撃。シールド形成。こんなところかな。オプションスロットも付けてあるから、後から何か思いついたら――――――」

 

 束は急に話すのを止め、何かを考え始めた。そしてニヤッと笑う。

 これに晶はものすっごくイヤな予感がした。多分、止めないと俺の精神が死ぬ。そんな予感だ。

 

「ねぇ晶」

「ダメ」

「え? まだ何も言ってないよ」

「いや、ダメ。何かイヤな予感がする」

「そんな事言わずに、ちょっとだけでも聞いてよ」

「あーーーーまた今度な。100年後くらいに」

 

 確信めいた予感が消えない。むしろドンドン強くなり、NEXT(N-WGⅨ/IS)が一歩後ろに下がる。束が一歩前に出る。NEXT(N-WGⅨ/IS)がまた一歩下がる。束が二歩前に出る。

 気付けば、束に壁ドンされていた。

 

「聞いて♪」

「はい」

 

 そうして聞かされた束の思い付きは、所謂“石破ラ〇ラ〇天驚拳”だった。人参ビットの外装が変わって正八面体のクリスタルになり周囲に展開。魔法陣っぽいものが浮かび上がって極大エネルギー波を放つという趣味全振りの必殺技っぽいもの。最近、束は“魔法戦士シノ”というアニメをよく見ていた。

 

「どうせ誰も見てないんだから、良いよね? ね。返事は“YES”か“はい”のどっちかね」

「の、NOという選択肢は………」

「ないよ。ついでにNOを選ぶ度に、合体攻撃のバリエーション増やすからね」

「お、横暴だ」

「う~ん。晶に言われるとゾクゾクしちゃう。うん。沢山NOって言っても良いよ。バリエーション増やして遊ぼうね」

 

 この後、世にも恥ずかしい必殺技モドキで、少なくない数の宇宙海賊が拠点ごと消し炭になった。

 岩石1つ残らない、完全完璧な殲滅戦である。

 誰かさんの精神的安定性と引き換えに………。

 

 

 

 第246話に続く

 

 

 

 

*1
第238話 更に進む移民の準備(IS学園卒業4年目の9月)

*2
情報や意味を文字を使わず、単純化された図記号で視覚的に伝える「絵ことば」。ユニバーサルデザインの代表例。

*3
第204話時点で既に決定事項となっていた。

*4
ガンダムのコロニーの人口が1000万くらいということなので。

*5
ACFAでは2000万人乗ってますが、流石に全幅4000メートルにそれは難しいと思いますので………。

*6
人型ではあっても人間のシルエットではありませんが、生身の肉体を位相空間に移しているだけなので問題ありません。

*7
型式番号の元ネタは共にネタ兵装。




晶くん。危険は感知しましたが、逃げられませんでした。
そして束さんはご満悦。高画質画像で自撮りして、妄想(健全)のネタにしているようです。
あとネット民達は、また暫くお祭り状態でしょう。
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