インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
普通なら就活の結果に一喜一憂する時期ですが………。
夏のとある日。
カラード異常気象対応部門所属のクロエは、自宅での~~~~~んびりと寛いでいた。今日は非番なのだ。
服装は白いキャミソールと黒いマイクロショートパンツ。飾り気なんてこれっぽっちもない過ごしやすさ最優先の服装だが、今の彼女を見て振り向かない男はいないだろう。
何せ元々の容姿が素晴らしい上に、見事な脚線美と豊かな谷間が無防備に晒されているのだ。
そして他の7人の義妹も、色違いの同じ服装で過ごしていた。肌の露出がすこーし多い気がしないでもないが、何も問題は無い。お義兄様以外の男性を、自宅に入れる事なんてないからだ。なので義妹達は、よくこの姿になっていた。
―――義妹達の普段着―――
クロエ・クロニクル
アスィーリア・ライト
アルベ・フィーリア
リルナ・メフィールド
ローズ・ピニラス
倉敷比奈(くらしき ひな)
冬祭真理(ふゆまつり まり)
鳴美唯乃(なるみ ゆの)
―――義妹達の普段着―――
なおクロエ以外の7人は大学4年生なので、普通なら就職活動に忙しかったり結果に一喜一憂する時期だろう。だが、彼女達は違う。今や事実上の統一政府となったカラードのトップ、薙原晶の義妹なのだ。影響力という意味でもセキュリティという意味でも、普通の就職活動など出来る訳がない。
出来ない理由は、他にもある。彼女達は世界的情報系企業、アースレポート・コーポレーションの大株主なのだ。持っている情報は値千金。もし普通の就職活動なんてしたら、あらゆる
因みにアースレポート・コーポレーションは義妹達全員で設立した会社なので、クロエも大株主に名を連ねている。しかし彼女は
これはISパイロットにこの手の臨時収入を認めてしまうと、ISパイロットというネームバリューの高さから副業が本業のようになってしまい、パイロットの質の低下を招きかねないためだ。それを心配するなら始めから名を連ねなければ良いとも言えるが、義妹達全員で考えて設立した会社なので名前だけでも、という事から選んだ形だった。
尤も全ての副業が一律に駄目という訳ではなく、例えば隙間時間でモデルをしたりするのは認められている。ある程度の個人活動はOKなのだ。
ISパイロットを多数擁する、カラードらしい
こんな義妹達を、世間は“
由緒正しい血筋でも王族でもないが、世界の頂点に君臨する義兄を持ち、彼女達自身も美しく、極めて強い社会的影響力を持っている。人というのは単純なもので、記号に当て嵌めたがるのだ。
閑話休題。
8人仲良く思い思いに過ごしている中で、真理が外を見ながら何となく言った。
長く艶やかな髪をお団子ツインテールにしていて、幼い表情とは裏腹にとても発育の良い子だ。
「暑そうだね」
比奈が答えた。
童顔で紫色の髪をシャギーロングで整え、後ろ髪を纏めてサイドテールにしている子だ。真理と同じく、とても発育が良い。
「天気予報。35℃だった」
尤もお義兄様が用意してくれたこのマンションは、外がどんな炎天下でも快適な生活を約束してくれる。蒸し蒸しした不快な夏とは無縁なのだ。
「天気も良いし、何処かに遊びにいく?」
「何処かって何処よ。下手なところに行ったら、視線が煩わしくってないわ」
アルベの発案に、アスィーリアが言った。
2人は元々とても似ていたが、成長した今では他人が見分けられる程度には違う容姿になっていた。
アルベは利発そうだが優しそうな表情で、アスィーリアは意思が強そうだ。
スタイルも共に元々は大き過ぎず小さ過ぎないバランス型だったが、誰かさんが丹念にマッサージし続けたお陰で、大変に素晴らしい起伏を描いている。
「そうよねぇ。1人2人くらいだったら言葉攻めでノックダウンさせるんだけど、余り多いと面倒よねぇ」
ローズが蠱惑的な微笑みを浮かべながら同意した。
ボディラインは男好きするメリハリの利いたものであり、清く正しくというよりは男も女も手玉にとる悪女のような雰囲気だ。外見通り、勘違い野郎には容赦無い。因みにクロエの事が大好きで、皆のお義姉ちゃんはクロエしかいないと思ってる。そしてクロエが大好き過ぎて、偶に(?)暴走する。
「なら、浮遊島にでも行く?」
言ったのはリルナだ。
ふわっとした温厚そうな顔で、お尻辺りまで伸ばしている甘栗色の髪を緩やかにまとめている。性格は外見とは裏腹に小悪魔で、スタイルの方も生意気そのもの。
「賛成です。あそこなら静かで景色も良いですし」
良い考えとばかりに賛成したのは唯乃だ。
あどけないが整った容姿に、流麗で長い黒髪。和風美人と言えるような容姿だ。スタイルの方は、昔は大き過ぎず小さ過ぎないバランスだったが、今は違う。誰かさんが丹念にマッサージし続けたお陰で、大変に素晴らしい優美な曲線を描いている。
最後にクロエが言った。
「じゃあ。皆で行きましょうか。あ、でも皆、水着あるの?」
「私ない」
「私も」
「わたしもー」
「同じく」
「ありません」
「どんなの買おう」
ローズがポロッと言った。
「お義姉ちゃんは持ってるもんね。えっちぃやつ*1。私もああいうのにしようかなーー」
「アレは、お義兄様にだけ見せる用です。遊びに行く時は普通のにしなさい」
「分かってまーす。有象無象の背景男子になんて見せません」
全員お義兄様に愛されているので買うのは止めないが、浮遊島はカラード専用の保養地であって、自分達専用ではないのだ。他の人が来る可能性もあるので、一応節度は守るべきだろう。
こうして義妹達は全員で、水着(健全)を買いに行く事にしたのだった。
◇
カラード城下街にある、とあるハイクラス向けショッピングモール。
義妹達は落ち着いた雰囲気のお店に来ていた。
よく使っているお店で、ここなら煩わしい視線も、煩わしい話が聞こえてくる事もない。
純粋に選ぶ事を楽しみながら買い物できる。
そんな場所で仲良くアレコレ話ながら水着を選んでいると、ふとした拍子に真理が知り合いを見つけた。
「あれ? あそこにいるの、ラナさんじゃない?」
皆が視線の先を見てみると、確かにラナがいた。
ラナ・ニールセン。カラードランクNo.9。
束博士がその才能を見出したISパイロットにして、依頼達成率100%という完璧な戦績を誇るシングルランカー。
クロエは同じISパイロットとして知り合いであるし、他の義妹達も縁があって全く知らない仲ではない。
プライベートなので声をかけるのもどうかと思ったが、見ていると、何か悩んでいるようだった。
真理が近づいて尋ねる。
「ラナさん。こんにちは」
「ん? ああ、真理ですか。どうしたのですか?」
「見かけただけなんだけど、何か悩んでそうだったから」
義妹達が知る由も無い事だが、ラナは束博士が作り上げた完全自律型のAIだ。その彼女が悩んでいる理由は、割としょーもない事だった。副業でモデルをしているのだが、ちょっとした企画を持ち込まれたのだ。夏らしくオススメ水着3選というもので、ラナが選んだ水着を特集するというものなのだが………ラナにはどんな水着が「良いもの」なのかがさっぱり分からなかった。いや、人間的な嗜好という意味では分かるのだが、企画を成功させる為にはどんな水着を選べば良いのか、というのが分からなかったのだ。またこの企画を知った
「過去の同じような企画から分析するのは禁止ね♪ 自分の感性に従って選んでみようか」
AIには割ときっつい一言である。
過去のデータに頼れない。頼れるのは自分の感性だけ。これで企画が失敗したらどうしようと思うと、行動がちょっと不審者になってしまっていた。あっちの水着を手に取り、こっちの水着を手に取り、また別の水着を手に取り、ウロウロウロウロだ。
なので困っていたラナはAIとしての演算能力をフル活用して、
なので彼女は、事情を真理に話してみた。
「なるほど」
肯いた真理はラナを上から下までサッと見て、似合いそうな水着を脳内にピックアップした。スタイルが極上なので、どんな水着でも似合いそうだ。でも折角なので、一緒にお買い物を楽しむのもありではないだろうか。なので、こう答えた。
「うん。分かりました。じゃあせっかくだし、私達と一緒に選びませんか。私達も水着を買いに来てるので、皆で選べば何か閃くかもしれません」
「見たところ、義妹達だけの水入らずではないのですか?」
「ラナさんはこう言ってるけど、みんなは?」
真理が振り向いて皆に確認すると、全員がOKだった。
「という訳なので、一緒に選んでいきましょう」
「分かった。なら御一緒させて貰おう」
そしてここから先は、義妹8人+1名のお着換えイベントだった。
―――美女達の水着姿―――
クロエ・クロニクル
アスィーリア・ライト
アルベ・フィーリア
リルナ・メフィールド
ローズ・ピニラス
倉敷比奈(くらしき ひな)
冬祭真理(ふゆまつり まり)
鳴美唯乃(なるみ ゆの)
ラナ・ニールセン
―――美女達の水着姿―――
艶やかな水着を選び、互いに見せあっていく。
並のモデルなど歯牙にもかけない美女達が和気藹々と楽しんでいる姿は、控え目に言ってこの世の楽園だろう。
ちょっとプルンと揺れたり、キュッと食い込んでいたり、色々と刺激の強い光景がチラホラ見えるが、女性用水着売り場に男性はいない。
つまり、何も、全く問題は無い。
ぶっちゃけて言うと更識の息がガッツリとかかっているお店なのだ。この光景を覗こうなんて不届き者には天誅である。
そんなお店で、彼女達の会話は続いていく。
「ラナさん。どれもとっても似合ってますよ」
真理の言葉は、お世辞でも何でもなかった。オフショルダー、ビキニ、プランジングと3種類の水着を選んだが、どれも破壊力が凄まじい。元々のボディラインが大変に綺麗でセクシーなのもあるが、何故か赤と黒という色が妙に似合っている。これなら、彼女に持ち込まれた企画も大成功するに違いない。
「ありがとう。これで企画倒れにならずに済む」
真理の言葉にニッコリと微笑むラナの姿は、感謝する人間そのものであった。
「お役に立てて何よりです」
「お世話になった事ですし、何かお礼をしたいところですが………」
ラナは少しばかり迷った。
お金というのは何か違う気がする。では人間的に、食事に誘ってみる? 少し重い気がする。
すると、真理から提案があった。
「ならこれから皆で写真を撮るんですけど、一緒にどうですか。勿論、SNSに載せたりなんてしませんから。あ、でもお義兄様には見せると思いますけど、良いですか?」
ラナは思った。
SNSに載せない。見せる相手を先に言う。こういう配慮が自然に出てくるのは、身内にISパイロットがいるからだろう。
義妹達の情報の取り扱い方についても思い出してみる。彼女達周辺から重要情報が流出したという事実は無い。
もっと言ってしまえば、
「問題ありません」
「ありがとうございます。――――――みんな。何枚か撮るから集まって」
そうして皆が集まったところで、真理はバックに入れていたセレナちゃんを出してあげた。
お義兄様がくれたアーマードヘッドシリーズ*2の内の1機で、サッカーボール程度の大きさのロボットの頭部パーツに、国民的なアニメに出てくる某青狸のようなマルッこい手足が直接くっついている。ちょこちょこと歩く姿が可愛い*3。
ここでセレナちゃんは、いつもと違う行動を見せた。
ラナを見た瞬間、一瞬ビクッとなって後ずさりしたのだ。
「セレナちゃん。どうしたの?」
きょろきょろと左右を見るような仕草。怯えてる?
するとラナさんが近づき、正面で膝を曲げて腰を下ろし、セレナちゃんを優しく撫でながら言った。
「恐らく見知らぬ人物がいたので、対応に困っただけでしょう。―――ね」
視線がセレナちゃんに流れると、コクコクと肯いているようだった。
因みにこの短いやり取りの裏側でラナはセレナちゃんに、コアネットワークでこんな一言を送っていた。
(余計な事は言わないように。分かってますね?)
全てのアーマードヘッドシリーズには、ナインボールの圧倒的暴力が焼き付いている。あらゆるイレギュラーを排除し続けた処刑人。アンドロイドという姿をとってはいても、ISはナインボールなのだ。
閑話休題。
セレナちゃんは近くのテーブルにぴょーんと飛び乗り、皆にカメラを向けた。
そして某青狸のようなマルッこい手を使って、良い感じに音頭を取りパシャッと1枚。
撮る直前、お義姉ちゃん大好きなローズがちょっと暴走していた。
クロエの後ろに陣取っていた彼女が、シャッターの瞬間にお義姉ちゃんの胸部装甲を後ろからワシッと鷲掴みにしていたのだ。お陰で写真には、とても艶やか(?)な姿が残ってしまった。
「ちょっ!? ローズ!!」
「セレナちゃーん。今の写真、私の端末に送っといてね~」
「ダメよ。送っちゃダメ。消しなさい」
相反する命令を受けてオタオタするセレナちゃん。
ラナと視線が合う。コアネットワークで一言。
(消してあげなさい)
こうしてちょっとしたトラブル(?)がありつつも、義妹達+1名は楽しく買い物をしていったのだった。
◇
帰りはラナの車で、ドライブだった。
送ってくれるというので、敢えて遠回り。車内で楽しくお喋りだ。
因みに10人乗りのハイエースで、所々にカスタムの跡が見える。詳しい者が見れば色々分かるのだろうが、カラードランクNo.9が乗っている車だ。並大抵のカスタムではないだろう。浮遊島に行く予定? 思いのほか遅くなってしまったので、また今度だ。
そんな車の中でクロエは、ふと思った事を口にした。
「随分変わったわね」
外を見ながら言ったので、他の面々も分かったようだった。
この都市はIS学園近郊という立地条件もあって、元々ある程度大きかった。でも今は、その比じゃない。カラードが宇宙進出を進める程に、統一政府としての足場を固める程に、加速度的に大きくなり、今尚大きくなり続けている。
世界の名だたる企業が本社移転を決め、或いは支社を出し、高層ビル群が立ち並び、数多の需要を見込んだ他の企業が次々と店を出し、国際機関が軒を連ね、総領事館が大使館に格上げされ、事実上の世界の中心地だ。
大学で経済学を専攻するローズが答えた。
「もっともっと大きくなるわ。間違いなく」
文化人類学を専攻する真理が続いた。
「多くの人が集まって、交流する場所が発展するのは必然です」
他の面々もそれぞれの専攻分野の視点から、同じように意見を述べていく。
それをラナは運転席で聞きながら思った。
彼女達は単なる“
こうしてのんびりとしたドライブの後、義妹達は自宅へと帰ったのだった。
◇
オマケ。
「お義姉ちゃん一生のお願い。この水着着て見せて!!」
自宅に帰ったローズは、クロエに頼み込んでいた。
お義姉ちゃんの水着が地味(にローズには見えた)なのが許せなくて、こっそり攻めた水着を買っておいたのだ。
「貴女ねぇ。一生のお願いって、人生何回あるのよ」
言葉通りなら、ローズの人生は両手の指では足りないくらいになっている。
「ソレはソレ。コレはコレ。義妹にはお義姉ちゃんを美しくする義務があるの」
「ないからね」
「あるの」
「ないの」
「あるの」
「ないったらないの」
「あるったらあるの」
平行線である。
埒があかないと思ったローズは、大胆な賭け(?)に出た。
言葉で説得するのが無理なら、実力行使。
約束事を守るお義姉ちゃんなら断れない方法。
「お義姉ちゃん。ジャンケンで私が勝ったら着て。負けたら諦めるから」
「………まぁ、そこまで言うなら仕方ないわね。良い? 最初はグー。じゃーんけーん――――――」
ローズ。グー。
クロエ。チョキ。
―――ジャンケンで負けたクロエのお姿―――
―――ジャンケンで負けたクロエのお姿―――
こうして、平和な一日が過ぎていったのだった。
ちゃんちゃん。
水着に取り付かれた作者でございます。
もうそれだけ………。
しかーし、後悔はしておりません。
艶やかな水着姿にグフフフフフとなってしまいました。