インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
「♪~♪♪~♪~~」
今日、
何せ
本人は「日頃の感謝も込めて」なんて言ってたけど、それって誰が聞いてもデートのお誘いだよね?
照れ屋さんなんだから。
部屋に備え付けられているクローゼットから、服を出してはスタンドミラーの前で合わせていく。
どれが良いかな?
コレも良いけど、アレも良い。
いつもだったら服なんてすぐに決まるのに、今日は決まらない。
新作の服。買っておけば良かったかな?
そんな事を思っていると、扉がノックされた。
「は~い」
「私です。セシリアですわ」
「!? ど、どうしたの? こんな時間に?」
時計を見れば、まだ朝の8時過ぎ。
何となくで尋ねて来るには、早過ぎる時間だ。
「いえ、少し用事がありまして。入って良いかしら?」
「え? ・・・・・ちょっ、ちょっと待って。今着替えてるから」
慌てて普段着に着替えて、出していた服をクローゼットに押し込める。
何でそんな事するのかって?
勿論、今日の事を知ったら絶っっっ対ついてくるって言いそうだから。
友達同士でも、女の子はそのへんシビアなんだよ。
「い、いいよ」
扉を開けてセシリアが入ってくる。
あれ? 服が普段着じゃない?
な~んか、嫌な予感。
「あれ? まだ着替えてないんですの?」
何故か、少し勝ち誇ったような顔をされた。
ますます嫌な予感。
「セシリアこそどうしたの? そんな余所行きの服着ちゃって」
「あら、貴女がそれを言いますの?」
もしかして、バレてる?
おかしいな?
今日の事は誰にも言って無いはずだし、“細心の”注意を払ったはずなんだけどな?
――― 一夏に心配されるくらいニヤけてればバレて当然である―――
「な、何の事かな?」
「ふぅ~ん。そう。なら折角ですから、今日一緒に買い物にでも行きませんこと。色々と買いたい物があるんですけど、1人で行ってもつまりませんし」
「え? いや、今日は、ちょっと・・・・・」
何て言って切り抜けようか迷っていると、両頬をギュッとつねられた。
「い、いひゃい」
「観念なさいな。ネタはもう割れていますのよ」
セシリア。ニッコリ。
「ひゃ、ひゃんのこと?」
「あら、あくまでシラを切り通す気ですの? でも無駄ですわよ。今日の待ち合わせ場所から時間まで、全部知ってますもの」
な、何で知ってるのぉぉぉぉ!!
そんな内心の叫びに、彼女は親切に答えてくれた。
「親切な方が、色々と教えてくれましたのよ。誰、とまでは申しませんけど」
誰かは知らないけど・・・・・顔も知らない誰かさんに、心の中で
勿論、リボルバーワンセット纏めて。
ついでに、120mmアンチマテリアルキャノンも撃ち込んでおこう。
「―――分かったよセシリア。降参」
離された頬をさすりながら白旗を上げる。
うう。折角のデートが・・・・・。
「大丈夫ですわ。私と貴女で左右をガッチリ固めておけば、もう余計な虫がとりつく場所はありませんから」
そういう問題じゃな~~い。
絶対セシリアの時も邪魔してやる~。
なんて事を思っていると、ニッコリと一言。
「させませんわよ」
「絶対する」
「楽しみにしてますわ。――――――それはそうと、もうそろそろ服を選ばなくてよろしいのかしら。時間が近付いてますわよ」
「え?」
時計を見れば、本当だ。
服を選んで、髪をセットして、ギリギリじゃないか!!
◇
駅前のショッピングモール『レゾナンス』。
原作じゃ、たしかやたら便利な場所って書かれてたけど、確かにこれは便利だな。
『レゾナンス』中央の噴水前でシャルロットを待ちながら、
何せ交通網の中心だから、電車に地下鉄にバスにタクシーと何でもござれ。食べ物は洋・中・和を完備。衣服も量販店から海外の一流ブランドまで網羅。各種レジャーにも抜かりなく、子供からお年寄りまで幅広く対応可能という万能さ。
本当に、よっぽどレアなものでも買おうと思わなければ、ここだけで大体の用事は済んでしまうだろう。
そんな場所に、俺は随分と落ち着かない気持ちでいた。
何故かって?
今更ながらに不安になったからさ。
何に対してかって?
色々さ。
一つは今日の買い物の事。俺も男だから、可愛い子を上手くエスコートしたいって気持ちはある。
でも残念ながら、そういう経験はあまり無い。もしも“つまらなかった”なんて言われたら流石に凹む。
一つは今回、特定の人間と一緒に出かけるという事。それが周囲に与える・・・・・いや、より正確に言えば、彼女の立ち位置に与える影響。
フランス代表候補生はNEXTと近い。
周囲にそう認識された時、彼女が良からぬ事に巻き込まれなければ良いが・・・・・と考えたところで、今更だと思ってしまった。
入学前の一件もあるし、入学してから今まで、気付けば隣に彼女がいた。
俺も彼女を隣に置き続けた。
原作一夏並みに鈍感な人間でも無い限り、近い関係だなんて誰でも分かる。
間違いなく、色々と悪巧みが大好きな連中にとって、シャルロットは目標の一つに入っているだろう。
だから、今更の話だ。
そこまで考えたところで、当人が姿を見せ――――――2人?
1人は勿論シャルロット。
ミニスカートに春物のセーターという活動的な装い。
文句無く似合っているし、脚線美がとても綺麗だ。
次に現れたのがセシリア。
白いブラウスに青いロングスカートと同色のベスト。
シンプルな装いが実に似合っている。
が、少し意外だった。
本人が聞いたら怒るかもしれないが、もっと豪華な服を好むと思っていたから。
「もう来てたんだね、ショウ。まだ時間前なのに」
「こっちから声をかけたんだ。なのに遅れてくるなんて、良くないだろう」
「立派な心がけだね。――――――と、そうだ。さっきそこでセシリアと会ったんだけど、今日は1人だって言うから一緒に良いかな?」
「構わないさ。そこで会ったのも何かの縁。皆で楽しく行こう」
そこから先は、不安になっていたのが馬鹿馬鹿しくなるような、楽しい時間だった。
定番のウィンドウショッピングに始まり、手当たり次第店に入っていく。
偶然安くて良いものが揃っている隠れた名店を見つける事もあれば、反対に高いクセに碌な物が揃っていないダメダメな店を見つけたりもした。
皆であそこが良い。こっちは駄目。でも店員が良かった。etcetc。
色々騒ぎならあっちにフラフラこっちにフラフラ。
気分に任せて流れるままに。
途中、こんな美人を2人も連れているから、チンピラに絡まれるような定番イベントでも起こるかと思ったけど、そんなもの無く平穏そのもの。
途中であった事と言えば、
「あれ? 薙原君?」
丁度2人が服を選ぶのに離れている最中、買い物途中の山田先生と、バッタリ出くわしたくらいだ。
「あ、奇遇ですね。先生も買い物ですか?」
「ええ。色々と欲しいものがあったので、そっちは?」
「こっちも買い物ですよ」
「そうですか。でもこのお店って、レディースの品揃えが良いので有名なんですよ。正直、男性が1人で来る場所じゃないですね。相手は誰ですか?」
「シャルロットとセシリアですよ」
「二股は感心しませんね」
とても先生らしい言葉に、苦笑しながら一応反論しておく。
「元々はシャルロットとだけの予定だったんですけど、2人が途中で会ったから、一緒に行かないかって話になって」
「ふぅぅぅぅ~ん。そうですか」
全く納得してないような声。
おかしいな、俺ってそんなに軟派な奴に見えるかな?
だが先生はそれ以上突っ込まず、あからさまな話題転換。
「――――――あ、そうだ。この前もらった『ジャック君』、あれ凄いですね。お掃除・洗濯・戸締りと何でもござれ。おまけに目覚まし時計の代わりに起してくれるなんて、先生堕落しちゃいそうですよ」
「喜んで貰えたなら、送った甲斐があったってものです。ちなみに学習機能がありますから、何でも丸投げにすると、ストライキ起して本人にやらせようとしますよ」
「ず、随分と高性能ですね」
「それは勿論。先生の為だけに作ったハンドメイドですから」
すると僅かな沈黙。
アレ? もしかして余り喜ばれてない?
一瞬そんな事を思ってしまった直後、再び先生の口が開かれた。
「それは嬉しいんですけど、本当に良いんですか?」
「何がです?」
「どう見たってアレ、高性能過ぎます。もしかして、束博士の手を――――――」
「ストップ。アレは、只の報酬の代わり。それ以上でもそれ以下でもない。という事にしておいてくれませんか。実際、片手間で作っていたから労力という訳でも無いんです。むしろ乗り気だったくらいで」
「・・・・・分かりました。せっかくの贈り物をどうこう言うなんて良くないですね。忘れて下さい」
「いいや。先生が善人だって、改めて分かったから忘れない」
「こういう時は、『忘れる』っていうのがマナーじゃないですか?」
「そんなマナーはドブに捨ててきた」
「教師の言う事は聞くものですよ」
「残念ながら今はプライベート」
そのまま少し他愛の無いやり取りをした後、山田先生は離れていった。
何でも、掃除で汚れる『ジャック君』を拭く為の布巾を買いに行くそうだ。
愛されてるなぁ~。
なんて思っていると、2人が戻ってきた。
何となく、目が据わっているのは気のせいだろうか?
◇
「はぁ~~~~~~~」
デート、というには程遠い買い物から帰ってきた
幸い同室になる予定の人は、まだお国の事情で来てないから、他には誰もいない。
だから尚の事、溜息がでちゃう。
今日はせっかく2人きりだと思っていたのに、セシリアはついてきちゃうし、僕がいない間に、山田先生とは楽しげに話しているし。
大体、何処から話が漏れたんだろう? 誰にも言って無いのに。
だけど考えようによっては、知られたのがセシリアで良かったのかな?
他の人達に知られていたら、もっと大変な事になっていたかもしれないし。
でも、山田先生とは何を話していたんだろう?
はっきりとは聞き取れなかったけど、「もらった」とか、「贈り物」とか言ってたよね。
何だろう?
そういう関係なのかな?
先生はほんわかしてるけど、あれで凄いスタイル良いし。性格も良いし。
何より
それも只の仕事じゃなくて、沢山の命がかかった高難度ミッション。
僕も頑張れば、隣に立てるかな?
そんな事を取り止めも無く考えていると、携帯がコールされた。
誰だろう? 消灯時間も過ぎているのに?
発信者名を見ても非通知。本当に、誰?
『もしもし?』
少し緊張して電話を取ると、随分と聞き慣れた声が聞こえてきた。
『あ、シャルロットか? 俺だよ。薙原だよ』
『こんな時間にどうしたの? それも非通知なんて』
『携帯からじゃないんでね。今、部屋に誰もいない?』
『うん』
『風呂上りでセクシーな格好してるとかも無い?』
『無いよ。何を期待してるのさ?』
『期待じゃなくて安全確認。お邪魔した時に悲鳴を上げられちゃたまらないからな』
『お邪魔した時? もう消灯時間は過ぎてるよ』
『はっはっは。規則は破る為にあるんだよ。――――――ってな訳で、窓を開けてくれないかな。全開で』
『ちょっと、ここは1階じゃないんだよ。それに寮の警備システムって優秀だよ。それこそ本物の特殊部隊でも無いと突破なんて出来ないって』
『大丈夫。ものは試しに開けてみてくれ』
余りにも自信たっぷりに言うから、とりあえず開けてみる事にした。
無理だと思うんだけどなぁ。
と思ったのも束の間。
「な、な、な、何してるのさ!?」
「何って? 見たまんま」
「ISの無断展開なんて規則違反!!」
「流石に生身で警備システムを突破するのは無理そうだったからさ」
「いや、そういう問題じゃなくて」
窓の外にいたのはNEXT。
それも熱光学迷彩のローブ(?)、のようなものを被っているから、首だけが浮いているように見える。
不気味な事この上ない。
しかも良く見てみれば、ブースター炎とPIC反応を隠す為か、ロープで上からぶら下がっているという念の入れよう。
見つかったらマズイって!!
「とりあえず中に入れて欲しいかな」
「う、うん。早く入って!!」
その場を退くと、「よっと」と言いながら身軽に入って、ロープを回収するショウ。
僕はすぐに窓とカーテンを閉める。
「本当に、何しているのさ!?」
「いや、今日はセシリアが来ちゃって、誘った目的を果たせなかったからさ」
「え?」
「とりあえず手を出してもらって良い?」
「う、うん」
ショウが何をしたいのか分からず、戸惑いながら手を差し出すと、NEXTのセンサーアイがブゥンって光ったんだ。
「なるほど。腕のサイズは――――――ありがと。少し待ってて」
「何をするの気なの?」
「まぁ見ててくれ」
するとショウは、小型の工作用機械を
そして、同時にコールした頑丈そうなケースから、オレンジ色の小さなインゴットを取り出したんだ。何だろう?
とりあえず黙って見ていると、器用に工作用機械を使い始めた。
何を作る気なのかな?
ワクワクしながら、しばらく無言で眺めていると、徐々に形が出来上がってきた。
ネックレス? いや違う、ブレスレットかな?
「――――――後は、イニシャルを彫って・・・・・はい完成!! 初めてにしては上手く出来たかな?」
「初めて?」
「うん。この手の工作機械を使った事はあるけど、女の子が身に着けるアクセサリーを作ったのは流石に初めてだ」
ショウは出来た物を色々な角度から眺めながら、何度もセンサーアイを明滅させながら、そんな事を言ってくれた。
初めての手作りを、僕に?
嬉しい。
アレ? でも山田先生へ送ったっていうのは?
「嘘ばっかり。女の人にはみんなそんな事言ってるんでしょ? 山田先生とか?」
「ショックだな。俺ってそんなに信用ないのか? 確かに山田先生には、少々別の理由があって贈り物はしたが、完全なハンドメイドは間違いなくこれが初だよ」
NEXTがガックリと肩を落しながら答える姿は、どことなく面白かった。
世界最強の単体戦力とは思えない姿だ。
そんな姿を自分だけが知っていると思うと、何だかとても嬉しくなる。
あの傷ついた姿もそうだ。
ショウは僕の前では、僕の前だけでは、そういう姿を晒してくれる。
そう思えば、今日1日の残念な事も、全部吹き飛んでしまった。
「大丈夫。本当にそんな事を思ってる訳じゃないから、そんなに落ち込まないで」
「落ち込みもするさ。最近、誰かさんに脇が甘いと言われてな」
誰が言ったのかはとても気になるけど、それは違うんじゃないかと僕は思った。
これで寄ってきた女の子に、色々しちゃっているというなら話は変わるけど、彼はそんな事一切してない。
むしろそれを言った人は、ショウ自身に人を近づけさせないようにして、孤立させるのが目的なんじゃないだろうか?
そんな穿った考えをしてしまう。
だから、
「僕は今のままで良いと思うな。その誰かさんがどういう気で言ったのかは知らないけど、僕から見れば、ショウは十分に気をつけてるよ。だってその証拠にクラスの子と話す時だって、一般的に紳士と言われている以上の行動は、決して取らないじゃないか。それを『脇が甘い』というなら、言葉以上の悪意を僕は感じるけどね」
「そう言ってくれると助かる」
あからさまに安堵したような声。
・・・・・駄目だよショウ。
そんな安心しきった姿を見せられたら、欲が出ちゃうじゃないか。
でも、これくらいなら良いよね?
愛称で呼んで貰うくらいなら、良いよね?
仲が良い友達同士なら、普通の事だよね?
心の中で、自分の行動を必死に正当化する。
「ねぇ、ショウ」
「何だ?」
「シャルロットって、長くて呼び辛いでしょ? だからもし・・・・・もしショウさえ良ければ、今度からシャルって呼んでも良いよ」
「え? いいのか?」
「うん」
「そうか。じゃぁ、今度からシャルって呼ばせてもらうよ。――――――って、そろそろ戻らないとヤバイな。織斑先生って、偶に、気まぐれ的に巡回するからな。余り長居してばれたら事だ」
「帰り、見つからないようにね」
「そんなヘマしないよ。また明日な、シャル」
「うん!!」
ショウが窓を開けて出て行った直後、微かな着地音。
多分すぐ近くにいるはずだけど、暗闇とローブのおかげで、もう姿は見えない。
しばらく外を眺めていた僕は、窓とカーテンを閉めて、彼の残していったものを腕に付けてみた。
サイズはピッタリ。
しかもサイズ変更が出来る様に作られているから、手首だけじゃなく、色々な所に付けられるという作りの良さ。
こんな良いものを僕の為に。
しかも初めての品。
これで嬉しくないはずが無い。
こぼれる笑みが止まらない。
だから次の日、嬉しさの余り寝れなくて、寝坊したのは仕方が無いと思うんだ。
織斑先生の出席簿、痛かったなぁ・・・・・。
―――プレゼントしたジャック君の感想―――
XINN様より頂きました。感謝です!!
諸事情により途中挿入だと都合が悪いので、
一番最後に追加してます。
―――プレゼントしたジャック君の感想―――
第28話に続く