インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~   作:S-MIST

43 / 262
第43話 みんなで買い物(前編)

 

 とある日、IS学園食堂。

 暑い日が続く今日この頃、その話題が出るのは必然だった。

 

「そういえばショウ、水着って持ってるの?」

 

 ()が昼飯を食べていると、隣に座るシャルがそんな事を聞いてきた。

 

「いや、持って無いな。臨海学校も近いし、買おう買おうとは思ってるんだけど、まだ買ってない」

「ならさ、今度一緒に買いに行かない?」

「そうだな――――――」

 

 予定を思い出してみるが、特にコレといった用事は入ってない。

 

「――――――特に急ぎの予定も無いし、いつ行くんだ?」

「今度の土曜日あたりに・・・・・」

 

 続く言葉は、俺を挟んで反対側にいるセシリアに遮られた。

 

「ちょっとシャルロットさん。何堂々とデートに誘っていますの?」

「只の買い物だよ。セシリアも一緒に行く?」

「勿論ですわ。丁度水着の新作モデルが出たところですから、新しいのを買おうと思っていましたの」

 

 この時俺は、先日シャルと一緒に買い物に行った後、束に呼び出されたのを思い出していた。

 シャル1人の時ですら呼び出されたのに、両手に華の状態で行ったらどうなるだろうか?

 

 ・・・・・拗ねた束も可愛いからやっちゃえば?

 

 一瞬悪魔の囁きが聞こえたが、どうにかそれを振り払い安全策を取る事にした。

 一夏も巻き込んで男2人にしてしまえば、束も怒らないだろう。

 だが一夏だけを誘うのは角が立つので、

 

「どうせなら、全員で行かないか? 折角こうやって昼も集まってるんだしさ」

 

 と如何にもそれっぽい言葉で誘ってみた。

 

「アタシはサンセー。買いに行こうと思ってたから丁度いいや」

 

 真っ先に手を上げたのは鈴。

 

「そうだな。幾つか欲しい物もあるし、私も行こう」

 

 続いて箒さん。

 

「うむ。私も行こう。日本文化に触れる良い機会だ」

 

 ラウラも参加。

 だが原作を知る身としては、クラリッサ大尉に“何の”日本文化を吹き込まれているのかが、非常に気になるところだ。

 そして最後の一夏だが、

 

「・・・・・」

 

 あれ? 無反応?

 ちょっと待て!! お前が行かなかった全員誘った意味が無いだろう!!

 男1、女5で行ったりしたら、後が怖過ぎる!!

 

「い、一夏、もしかして、何か用事でもあるのか?」

 

 恐る恐る聞いてみるが、

 

「・・・・・・・・・・」

「一夏?」

 

 反応が無い。

 すると頭がゆっくりと揺れて、隣に座る箒さんに寄りかかっていく。

 そして聞こえてくるのは、静かな寝息。

 

「いいいいいいい、一夏!?」

 

 赤くなった箒さんが一夏を起こそうとするが、ここで起こされたら面白く無い。

 なので、ちょっと一言。

 

「そのまま休ませてあげれば?」

「え?」

「遅くまで宿題やってたみたいだし、熱心にトレーニングもやってるし、疲れが溜まってるんだろ」

「そ、そうか。そういう事なら、仕方が無いな。うん」

 

 と言いつつ、満更でも無い様子で肩を貸す箒さん。

 だがラウラの、軍人らしい突っ込みが入る。

 

「まったく、新兵(ルーキー)は体調の自己管理も出来んのか?」

「そう言うな。ここに入るまでは一般人だったんだ」

「弟子には甘いな」

「まさか、世の中には本音と建前って便利な言葉があってな――――――」

 

 そう言いながら俺は、携帯でこれ見よがしに撮影。

 ピロリ~ンと安っぽい電子音が鳴り響く。

 

「――――――本音は、後で話のネタにする為だ」

「なっ、薙原さん!!」

「ん・・・あれ? 俺、寝てた?」

 

 照れた箒さんが動いたので、一夏が起きてしまった。

 

「ああ、ぐっすりお休みだったな。ほら、証拠写真」

 

 俺は自分でも分かるくらいイイ笑顔で、撮ったばかりの写メを見せてやった。

 すると一夏の顔も赤くなっていく。

 

「い、意地悪いな。起こしてくれても良いじゃないか」

「気持ち良さそうに眠ってたからさ。――――――と、そうだ。今度の土曜日って空いてるか?」

「空いてるけど、どうしたんだ?」

「臨海学校が近いだろ。だから皆で、水着を買いに行こうかって話しになってさ」

「ああ、それなら大丈夫だ。何時に集合なんだ?」

「何時にする?」

 

 俺が皆を見回すと、発端のシャルが答えた。

 

「もし良ければ10時頃で」

 

 こうして俺達は、揃って水着を買いに行く事になった。

 原作とは随分違う展開だが、もう大分変わってしまっているんだ。今更気にしても仕方ないだろう。

 そんな事を思いながら、残ったデザートを食べていたのだが、ふと思った。

 専用機持ち7人で買い物って、他から見たら凄いイベントじゃないだろうか?

 だが思っただけで、これについて深く考える事はしなかった。

 何でかって?

 これから先、ずっとついて回る話だからさ。

 だから安全上問題が無ければ、出歩いて騒がれるのは、有名税だと思って諦めるしかないだろう。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 専用機持ち一同が座る隣のボックス席では、話が聞こえていた(盗み聞きしていた)新聞部副部長、黛 薫子(まゆずみ かおるこ)が、物凄い速さで姉とメールのやりとりしていた。

 

『特大のネタがあるんだけど、幾らで買う?』

『小遣いなら親にせびりなさい。姉にたかるんじゃないの』

『いいの、そんな事言って? 専用機持ちのネタだよ』

『専用機のネタって言ってもピンキリよ。報道規制が外れていない薙原さんや一夏さん、後は第四世代ISのテストパイロットの箒さんあたりならまだしも、他の子だと海外の代表候補生でしょ、インパクトがね』

『1年の専用機持ち全員に、まとめてインタビュー出来そうなチャンスがあるんだけどね。でもまぁ、要らないっていうなら仕方ないか。お姉ちゃんのボーナスアップに協力してあげようと思ったけど、他に持っていくね』

『ちょっ!? 待ち!!』

『アレ、要らないんじゃないの?』

『誰も要らないとは言ってない!! 言い値で買うわ。但しガセだったらどうなるか分かってるわよね?』

『報酬は後払いでいいよ。あくまで予定だから』

『分かったわ。で、ネタは何?』

『今度の土曜日、専用機持ち7人が揃って水着を買いに行くみたい。遠くには行かないみたいだから、『レゾナンス』だと思う。何人か人を使って張り込ませておけば、専用機持ち7人の集合写真、仲良く話している日常風景、水着姿、後は“偶然”店にいた専用機持ちにインタビューしている時に、“偶々”そこにいた薙原さんや一夏さんへ話を振ったりとか。―――どう?』

『ナイス!! 流石我が妹!! 愛してる!! 謝礼は弾むわよ!!』

『毎度あり~』

 

 こうして姉とのメールを終えた(まゆずみ)が顔を上げると、少し不思議な光景が広がっていた。

 いや不思議という程では無いのかもしれない。

 只いつもより、熱心に携帯を弄っている人が多いのは、多分気のせいだろう。

 そんな事を思いながら(まゆずみ)は、残りの御飯に箸を伸ばすのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 そうして土曜日。

 ()は一夏と一緒に待ち合わせ場所の、ショッピングモール『レゾナンス』の噴水前にいたのだが、どうにも奇妙な感じがしていた。

 上手く言葉に出来ないのだが、何か雰囲気が浮ついている、とでも言えばいいのだろうか?

 気のせいだと言われれば、それまでなのだが・・・・・とりあえず一夏に話を振ってみた。

 

「なぁ、今日って何かイベントあったっけ?」

「いや、特に無いと思ったけど」

「だよな。何か準備してる様子も無いし」

 

 周囲を見回してみるが、怪しいものがある訳でもない。

 只、いつもより少し人が多くて、何か浮ついたような感じがする。

 そんな事を思いながら一夏と時間を潰していると、今日の主賓達がやってきた。

 遠目からでも分かる存在感に、アイドル顔負けの容姿とモデル以上のスタイル。

 彼女達が歩けば、周囲の人間が軒並み振り返っていく。

 そんな中、勇猛果敢な男達が我こそはと声を掛けていったが、結果は見るも無残な惨敗っぷりだった。

 まずシャルには優しくハッキリと断られ、セシリアにボロボロに言われ、ラウラの凍てついた視線でビビらされ、鈴の無自覚な言葉でプライドをへし折られ、最後は箒さんに軟弱者と(さげす)まされる。

 後に残ったのは、真っ白に燃え尽きた残りカス(男達)のみ。

 そんな連中を量産しながら彼女達は、待ち合わせの噴水前に到着した。

 

「お待たせしてしまったみたいですね」

「俺達も来たばかりだ。むしろ面白いものが見れて良かったよ」

「いやですわ。あんなものを見て喜ぶなんて」

 

 セシリアがプイッと横を向くと、シャルが極々自然に俺の隣に立って尋ねてきた。

 

「ところで、何処から回ろうか?」

「そうだな――――――」

 

 数瞬考えて、ふと思う。

 ファッションに余り詳しくない俺が決めるよりも、ずっと詳しそうな他の面子に任せた方が良いだろう。

 

「――――――みんな行きたい店とかって無いかな? 正直、男の俺達はどれでも大して変わらないからな。なぁ一夏」

 

 そう言って振り向いてみれば、一夏を挟んで火花を散らしている箒さんと鈴の姿。

 この短い時間で何があった?

 まぁ大体予想は付くし、このまま見ていたい気もするが、ここでヒートアップされると色々大変な事になる。

 なので俺は少々露骨に、そしてちょっとだけ悪意のある話題を放り込んであげた。

 

「ところで一夏。2人に似合う色って何だと思う?」

「え? 色?」

「そう。これから水着を買いに行くんだ。似合う色とかデザインとか、何か無いかな?」

「ちょっ、何で俺に聞くんだよ。2人の事なんだから、2人に聞けば良いじゃないか」

 

 一夏は何か嫌な予感を感じたのか、2人に両腕を捕まれながらも一歩後ずさった。

 そして、その予感はとても正しい。

 俺はニッコリと人の良い笑みを浮かべながら、2人が試着した水着を見せる為の、丁度良い口実をあげた。

 

「何言ってるんだ。本人達だけじゃ迷うから、第三者の意見が大事なんじゃないか」

 

 この瞬間、箒さんと鈴は空いている手を握りこんで親指を立てた。

 そして一夏の無言の抗議は、当然無視。

 

「っと、そうだ。結局何処に行こうか?」

 

 話を振った相手(一夏)を弄ってしまったので、今度はセシリアに話を振ってみた。

 

「お任せ下さいな。良さそうなお店はしっかり押さえてありますもの。ところで晶さん。1つ宜しいですか?」

「ん?」

「先程のお話からしますと、私の試着も、見て頂けるのでしょう?」

「私“達”だよね」

「あら、勿論ですわ」

 

 シャルの言葉に一瞬「チッ」という声が聞こえたような気がしたが、セシリアは何食わぬ顔で訂正。

 それどころか、腕を絡ませて密着してきた。

 すると反対側からも、同じような感触が。

 

「と、殿方がレディをエスコートするのは当然の事。ですからこれは、普通の事ですわ」

「そ、そうだよ。日本じゃ馴染みが無いかもしれないけど、向こう(欧州)では普通なんだ」

「分かったよ。じゃぁ、今日はこれで行こうか。――――――ところでラウラ。地形の把握は終わったか?」

 

 初々しく照れている2人にそう答えた俺は、先程から周囲を見渡している彼女に声を掛けた。

 

「ああ、視界範囲内については大体覚えた。分かりやすい作りだな」

「大昔の城塞都市じゃあるまいし、変な作りになっててたまるか」

「歴史で少し学んだ程度だが、アレはアレで面白かった」

「生活には不便だと思うぞ」

「勿論軍人としてはだ。住みたいとは思わん」

「意外だな」

「お前は私をなんだと」

 

 気安いやりとりに、思わず互いの口元が緩む。

 そして丁度良いので、気になった事を尋ねてみた。

 

「ところで、お前私服無いのか?」

 

 ラウラの格好は、学校と同じ制服姿だ。

 他が全員私服なので、良くも悪くも大分目立っている。

 

「外出には制服があれば事足りるからな。水着も学校指定の物があるから、正直買わなくても――――――」

「ダメだよラウラ!! っていうか、いつも同じ服だと思ったら、そういう事だったの?」

「あ、ああ」

 

 シャルの剣幕に、驚くラウラ。

 

「ねぇショウ。水着を買い終わった後でさ、ラウラに服を選んであげたいんだけど、良いかな?」

「全然構わない。――――――それじゃセシリア、案内宜しく」

「分かりましたわ。では、皆さん行きましょう」

 

 こうして買い物が始まった時、内心で俺は、珍しくワクワクしていた。

 だってそうだろう?

 原作主人公とヒロインズ全員集合で買い物だぜ。

 どんなイベントが起こるのか想像しただけで、もう楽しみで楽しみで――――――。

 

 

 

 第44話に続く

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。