インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~   作:S-MIST

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第50話 福音の結末

 

 脳内に流れ込む白式・雪羅のデータは、搭乗者の一夏をして、化け物と言わせるものだった。

 簡単に確認しただけでも、桁外れに高出力な全身のブースター群と、強力になったPIC制御能力は、通常ブーストで第一次形態(旧・白式)瞬時加速(イグニッションブースト)に迫る加速性能を示し、更に大型化したウイングブースターは、瞬時加速(イグニッションブースト)のチャージ時間を1/2に短縮したのみならず、四重加速(クアドラプルアクセル)を可能とし、最大速度+90%という狂気の性能を実現していた。

 武装面に目を向ければ、左腕に発現した多機能武装腕“雪羅”があった。

 拡張領域(パススロット)からのコール無しで荷電粒子砲、そして零落白夜の爪と盾という、3つの形態を使い分けられるこれは、使いこなせば大きな力になるだろう。

 そして白式の代名詞。雪片弐型の零落白夜は、発動消費エネルギー半減という劇的な進化を遂げていた。

 これだけでも原作の白式・雪羅とは大分違うが、最大の違いはその燃費だった。

 本人が知る由も無い事だが、第二次形態移行(セカンド・シフト)の際に、紅椿から受けたバックアップにより内装系が大幅に進化。

 改善されたエネルギー伝達系と大容量化したエネルギータンクが、量産機並みの継戦能力を実現していた。

 だから一夏は、確たる自信を持って皆に伝えた。

 

『――――――待たせて済まない。俺が押さえている間に、皆は箒に回復してもらってくれ』

 

 そうして、ゆっくりと前に出て行く白式・雪羅。

 動きに迷いは見られない。

 福音は、ただじっと黙っている。

 

『やれるのか?』

 

 千冬から通信に、一夏は何の気負いも無く答えた。

 

『やれる。やれないじゃないんだ。やるよ。千冬姉』

『ほう。大きくでたな。なら、やって見せろ。他の者は補給を急げよ!!』

 

 シャルロット・セシリア・ラウラ・鈴の4人が下がっていく中、静かに雪片弐型が構えられた。

 

『――――――行くぞ、福音』

 

 静かな宣言。

 直後、互いにほぼ同時に瞬時加速(イグニッションブースト)を発動。

 ソニックウェーブが発生し、音を置き去りにしながらのドッグファイトに突入。

 しかし、互角な戦いになどなりはしなかった。

 エネルギー系の射撃兵装しか持たない福音に対し、白式・雪羅が持つのはエネルギー無効化能力。

 加えて対NEXT戦闘が意識された、四重加速(クアドラプルアクセル)という過剰なまでの突撃性能。

 一度張り付かれたが最後、福音に逃れる術など無かった。

 

『これは!?』

 

 モンド・グロッソ優勝者の千冬をして、想像すらしていなかった一方的な展開。

 何せ福音の強みである銀の鐘(シルバーベル)の広域制圧射撃が、全く意味を成さないのだ。

 むしろ下手に撃とうものなら、光弾の弾幕の中を、雪羅の盾で全て無効化しながら最短距離で突っ込んでくる。

 しかも福音が距離を取ろうと瞬時加速(イグニッションブースト)をしても、そもそもの加速性能が違う。

 二重(ダブル)三重(トリプル)四重(クアドラプル)瞬時加速(イグニッションブースト)を自在に駆使する白式・雪羅を引き剥がせない。

 射撃型にとっては最悪とも言える展開になっていた。

 そしてこうなってしまっては、福音が取り得る戦術は近接格闘戦のみ。

 だが、それこそ悪夢だった。

 考えてもみて欲しい。

 機動力で負け、当たれば一撃必殺の攻撃力を持つ相手との近接格闘戦を。

 勝負になどなる訳が無い。

 福音が何十発攻撃を入れようが、一撃でひっくり返るのだ。

 結果初めの交差から僅か十数秒の間に福音は、エネルギー翼を雪羅の爪で引き裂かれ、雪片弐型の零落白夜で切り落とされ、見るも無残な姿になっていた。

 そして、

 

『――――――終わりだ』

 

 何度目かの交差の末、易々と懐に入り込んだ一夏が、零落白夜を横薙ぎに振りぬく。

 結果、残っていたエネルギーを根こそぎ消滅させられた福音は、電池が切れた人形のように動きを止め、一夏の腕の中に崩れ落ちるのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 一方その頃、福音との戦闘をモニターしていた束と晶は、コア・ネットワークで話をしていた。

 

『何とかなったみたいだね。途中、ちょっと危なかったけど』

『ああ、初撃を外した時はどうなるかと思ったよ』

『の割りには、介入するそぶりすら見せなかったけど?』

『すぐに介入したら、あいつ等の為にならない。万一、ピンチになったらすぐに助けてくれるなんて思われたら、福音を暴走させた意味が無くなる』

『確かにそうだね。そして、その甲斐もあったね』

『ああ、紅椿の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)発動と、白式の第二次形態への移行(セカンド・シフト)。2人ともよくやってくれたよ』

『これで箒ちゃんが紅椿を持っていても、とやかく言う奴はいなくなるかな』

『少なくとも、表立って言う奴はいなくなるだろうな。何せエネルギーを無尽蔵に回復させる単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)だ。搭乗者を換えろなんて言う奴は、よっぽどの馬鹿だよ』

『うんうん。いっくんの白式も凄い進化したしね。アレならもしかして、NEXTに届くんじゃないかな?』

『単純な性能だけを見れば、戦術次第では届くだろうな。世の中に、絶対無敵なんて無いんだから』

『アレ? 意外だね。相手にならない位は言うと思ったけど』

 

 晶は経験的に、勝負に絶対が無い事を良く理解していた。

 別に、特別な経験を積んだ訳じゃない。

 人間生きていれば、“絶対に勝てる”そう思った勝負をひっくり返された事なんて、一度や二度必ずあるはずだ。

 そして、それが束の身に起きないとも限らない。

 だから注意喚起の意味も込めて、晶は一芝居うつ事にした。

 

『元の世界での話だけどな、ネクストがハイエンドノーマルに墜とされた事があるんだ』

『え、ウソ!?』

 

 予想通りに返って来た、信じられないという驚きの声。

 無理も無い。

 ISに例えるなら、紅椿が第一世代に墜とされるようなもの。

 性能差を考えれば、普通はありえない。

 

『本当だよ。歴戦のレイヴンが、未熟なリンクスの精神を徹底的に揺さぶって、地形を選び、天候を読み、機体を何度も変えて、利用出来るものは全て利用し尽して、そうしてハイエンドノーマルがネクストの両脚を切断してのけたんだ。見事だったよ』

『そんな事が・・・・・』

『そんな事が起こるからこその戦場さ。実際、俺だって墜とされかけただろう』

『確かにそうだね。でも、もう無いよね。君は私のものなんだ。勝手に墜ちたりしたら許さないよ』

『勿論だ。もうあんな無様は晒さない』

『絶対だよ。君がいないのは嫌だからね』

『俺だってお前がいないのは嫌だよ。――――――さて、それじゃぁ予定通り自作自演もいいところだが、お前を狙った不埒者に報復しに行くかな』

 

 そう言いながら晶が進路変更をしようとした時、当の束がストップをかけた。

 

『何か考えがあるのか?』

『うん。どうせなら、もっと派手に殺れる方がいいよね?』

 

 物騒な物言いとは裏腹に、穏やかで楽しげに紡がれる言葉。

 

『そう言うって事はアテがあるんだな?』

『以前戦った無人機、覚えてる?』

『そっち絡みか』

『今内偵中だけど、その無人機を搭載した潜水艦が、福音を開発した軍需企業お抱えのPMC(※1)基地に、寄航するって情報を入手したんだ』

 

 ※1:『Private Military Company』いわゆる民間軍事会社の事。

 

『随分面白そうな話だな』

『内偵結果が黒なら、殲滅ミッションだ。何一つ残さず消し飛ばして。そして、“そのついでに”PMC基地も吹き飛ばしておいて、それで向こうが勝手に勘違いしてくれる』

『オーケー。そういう事なら、今は素直に帰還しよう』

 

 こうして晶と束が悪巧みをしている頃、一夏達は――――――。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 宇宙から帰還した晶に“銀の福音”(シルバリオ・ゴスペル)を預けた後、千冬に出迎えられていた。

 

「よく、無事に戻ってきてくれた」

「何とか勝てたよ。千冬姉」

「本当に、よくやったな」

 

 答えた一夏に、めったに見せない優しげな表情を見せる千冬。

 何故か顔が赤くなるラウラ。

 

「お前達も、モニターしていたが見事な連携だった。だが慢心はするなよ・・・・・と言ってもする奴はいないか。その辺りはアイツ(薙原)に任せておこう」

「普通ならこの後、慢心して痛い目を見るってのが黄金パターンよねぇ~」

 

 鈴の言葉に全員が頷くが、同時に全員が同じ想像をしていた。

 仮にあの男(薙原)が、慢心を知ったらどうするだろうか?

 

 ・・・・・延々とNEXTと1on1?

 

 互いが互いをチラ見してアイコンタクト。

 やりたい?

 無理、死ねる。

 私はもう決定かな・・・・・。

 あの失敗は大丈夫だと思うよ。

 でも2人っきりになれるのでしたら・・・・・

 なるほど。では後押ししてやろう。

 え?

 

「そう言えばさっき、『私の狙撃にかかればあの程度』だなんて言ってる奴が1人いたな」

「ほう?」

 

 ラウラの言葉に眉をひそめる千冬。

 

「だ、誰でしょうね。今この場に、そんな愚か者はいないと思いますわ。今回はチームの勝利でしょう? でも自分の腕に思うところがあるのも事実。ここは是非とも晶さんの補習を受けたいところですわ」

「あ、セシリアずるい。それを言うなら僕だって」

「あんた達元気ねぇ。でもあいつがトレーニング中に、そんな期待してるような甘い事すると思う?」

 

 騒ぎ出すセシリアとシャルロットに、鈴が冷静に冷や水をかけ、更に続けた。

 

「あのドSにそんな補習なんてお願いしたら、それこそ気を失うまでやらされるわよ。あんた達がドMって言うなら止めないけど」

「鈴の言う通りだ。そういう機会が欲しいなら、トレーニングの時間以外にしろ」

 

 そう言って千冬が締めくくった時、山田先生が小走りで駆け込んできた。

 

「織斑先生!!」

「どうした?」

「その、マスコミの方達が是非とも取材させて欲しいと大挙して押し寄せてきて」

「黙らせるのは・・・・・流石に無理か。搭乗者の疲労を理由に、明日の朝10時に会見すると伝えてくれ。後、まさかいないとは思うが、抜け駆けのペナルティは高くつくともな」

「分かりました」

 

 すぐに去っていく山田先生を尻目に、千冬が全員に向き直った。

 

「という訳で明日は記者会見だから、今日はゆっくり休んでおけよ。それでは解さ――――――」

「の前に、俺にも少し話をさせてもらっていいかな。織斑先生」

 

 姿を現したのは晶だった。

 

「どうした?」

「メンタルケアという程じゃないけど。こういうのは早めに伝えておいた方が良いと思ってね。――――――箒」

 

 晶に呼ばれた箒は、注意された訳でも無いのに、その場で直立不動の態勢をとってしまった。

 ここで呼ばれる理由なんて1つしかない。

 初撃の失敗についてだろう。叱責される。

 誰もがそう思ったが、聞こえてきた言葉は優しいものだった。

 

「初の実戦で良くやった。特に一夏を抱えている時に後退した判断は、決して間違っていなかった。もしかしたら最新鋭機に乗っているクセに逃げた臆病者とか言う奴が出てくるかもしれないが、そんなド素人は放っておけ。他の誰が何と言おうと、あの判断は正しかったと俺は思っている。後、初撃の失敗は気にするな。むしろ支えてくれる仲間がいた時に、失敗出来た幸運を喜ぶと良い。人間は失敗して成長するんだからな」

「あ、ありがとうございます」

 

 深々と頭を下げる箒。

 

「次はお前が、他の人間を支えられると良いな」

「はい!!」

「次に一夏。第二次形態への移行(セカンド・シフト)、おめでとう」

「みんなの協力あってこそだよ」

「それでも、そこまで白式を育てたのはお前だろう。素直に喜んで良いと思うぞ」

「何だか照れるな」

「素直に受け取っておけ。学園に戻ったらまた扱いてやるから。それとも、あれで満足するか?」

「まさか。まだまだ、宜しく頼むよ」

「良い返事だ」

 

 こうして晶は一人一人に声をかけ、労い、褒めていく。

 その光景を見ていた千冬は思う。

 こいつ、昔は何をしていたのだろうか?

 戦闘後のこういう気遣いが出来るという事は、こいつにも仲間がいたという事だろう。

 だが今、こいつ()に束以外の仲間がいるという話は聞かない。

 なら全員死んだのだろうか?

 それとも離れ離れになっているだけだろうか?

 色々な考えが脳裏を巡っていくが、答えが出るはずも無い。

 なのでいずれ、束にそれとなく聞いてみよう。

 千冬はそんな事を思いながら、晶の話が終わるのを待つのだった。

 その頃、当の束は――――――。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 晶から受け取った福音に、暴走機の沈静化と安全確保を名目に直接アクセス。

 データを全て抜いたあげく、巧妙に偽装された“ように見える”、悪辣な偽の証拠を残していた。

 それは束をして、「このレベルのものなら私でも見抜けない」というレベルのもの。

 つまりこの後、どれだけ福音が徹底的に調査されようが、真実を見抜かれる事など有り得ない。

 そうして都合の良い証拠を残し終えた時、晶が戻ってきた。

 

「状況は?」

「たった今終わったよ。ところで、箒ちゃんはどうだった?」

「やっぱり失敗については気に病んでるようだったからフォローしておいた。実際良いところが無かった訳でも無いし、俺が褒められるところは褒めておいたから、後は本人次第かな?」

「そっか。ありがとう」

「なに、大した事はして――――――」

 

 ない。

 と言おうとしたところで、ベッド状の拘束具に四肢を拘束された状態で、横たえられている福音の指先がピクリと動いた。

 

「晶。目が覚めたみたい」

「バイタルは?」

「正常値。多分もう話せるはずだよ」

「そうか。――――――おい。意識が戻ってるなら、そして現在の状況を知りたいなら、何か声を出すなりして意思表示をしてくれ。お前が話を聞いてくれない事には始まらない」

「貴方は・・・・・誰?」

 

 福音の視線が、ひび割れたフルフェイス越しに晶を捉えると、強い疲労を感じさせる、若い女の声が返ってきた。

 

「俺の名は薙原晶。多分IS関係者の間でなら、NEXTと言った方が分かってくれるかな?」

「本当に?」

「信じる信じないはそっちの自由だ。疑うなら、暴れてみると良い」

「・・・・・信じる信じないは横に置いておいて、何か話す事があるんでしょう? とりあえず聞かせて」

「意外に落ち着いているな。意識はもうハッキリしてるのか?」

「こんなにガッチリ固定されていたんじゃ、他に出来る事無いもの」

「確かにそうだな。それじゃぁ、お前の置かれている状況を説明しよう。まずは――――――」

 

 そうして始まった晶の説明を、福音は静かに聞いていた。

 米第七機動艦隊の追撃を振り切った事。自衛隊のISを撃墜した事。束の公開実験を邪魔した事。IS学園の専用機持ちと戦闘になった事。そして学生に敗れた事。

 

「――――――というのが、今までの流れだ」

「そう。それが本当なら、この子の凍結処置は免れないわね」

「同盟国のISを撃墜してるんだ。凍結処置で済んだら御の字だろうな。で、次はお前の扱いについてだが、何も心配は要らない。別に暴力を加える気も無いし、米国の人間が来たら引き渡そう。ただこっちは、来た人間が本当に米国の人間かどうか分からないから、搭乗者が知っている人間が迎えに来てくれと先方には伝えてある」

「来るまで私は固定されっぱなしなの?」

「暴走機を自由にするなんて、そんな恐ろしい事が出来るか」

「確かにそうね。・・・・・・・・・・ねぇ、1つ提案があるのだけど」

 

 晶は思考を巡らせる。

 この状況で福音が出せる提案?

 提案があるなら当然見返りがあるだろう。

 だが、福音が出せる見返りとは何だろうか?

 如何に国家代表レベルの操縦者とはいえ、こちらが納得出来るレベルのものを出せるとは思えないが?

 そんな事を考えている間に、続く言葉が放たれた。

 

「そこにいる束博士に、福音の精密検査を頼みたい。ISの権威である貴女の調査結果なら、IS委員会とて無視出来ない。この子の設計が安全なものであると証明して欲しい。今回の事件は、この子のせいじゃないと証明して欲しい」

「と言ってるが、どうする?」

 

 正直に言えば、非常に好都合な提案だった。

 だがここで食いついてしまえば安く見られる。

 なので晶と束は、一芝居をうつ事にした。

 

「えーーーどうしようかな? 君には、私の公開実験を邪魔されてるんだよね。何でそんな相手の言う事を、聞いてあげなきゃいけないのかな?」

「それに提案って事は、当然報酬があるはずだよな? 束の公開実験を邪魔したのを、帳消しに出来るくらいの報酬が」

「それは・・・・・」

 

 出せるはずが無い。

 晶も束もそう思っていたが、ここで福音搭乗者ナターシャ・ファイルスは、己が切りうる最大の手札を切ってきた。

 

「報酬は・・・・・この子の設計図」

「お前、自分の言ってる言葉を分かってるよな? それは紛れも無い国家機密の漏洩。やれば間違いなくIS操縦者として再起不能になるぞ」

「ええ。十分に理解しているわ。でもね、このままこの子がIS委員会で調査される事になれば、他国の人間に徹底的に調査される。そうなったら機密も何も無いわ。だからそうなる前に、世界最高の開発者である束博士に調べて欲しいの。その結果なら、IS委員会とて尊重しない訳にはいかないわ」

「束は既に独力で第四世代機の開発に成功している。第三世代機の設計図に、それほど価値があるとも思えないが?」

「でも恩は売れるわ。福音は、今後の国防態勢を担う重要な機体。それの凍結処置が回避出来るなら、米国は必ずあなた方に味方する」

「とは言ってもな。どうする束?」

 

 既に答えは出ているのだが、尤もらしく話を振ってみる。

 すると彼女も、如何にも“仕方ない”という風に答え始めた。

 

「そうだねぇ~。とりあえず言えるのは、福音のデータ流出はもう避けられない。IS委員会の面子にかけて、必ず調査するだろうからね。でも、委員会に一言いう事は出来るかな。残念ながら、確実に凍結処置を回避出来るとは言えないけどね」

「それで十分です」

「なら、早速始めようか」

 

 こうして後日、IS委員会にある書類が提出される。

 それは篠ノ之束の名で、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は、外部からのクラッキングを受けて暴走した可能性が高いという意見書。つまり問題は機体側でなく、機体の管理体制にあったのではないかという内容だった。

 法的拘束力は何も無い書類だが、独力で第四世代機を開発した彼女の言葉を、無視出来るような者はいなかった。

 

 

 

 第51話に続く

 

 

 

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