インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~   作:S-MIST

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今回は少し(?)遊んでしまいました。
カッコイイ機体も好きなのですが、泥臭いのも好きな作者です。


第80話 展示会(他作品クロスあり)

 

 とある日の休日。

 IS学園1年の専用機持ち達は、揃って市のISアリーナを訪れていた。

 目的は今行われている自動車の展示会で、晶・一夏・箒が免許を取った時に乗る車選びだ。

 ちなみに一夏と箒は車を即金で買えるような金は持っていないが、それぞれの姉が「気に入った物を買ってくるといい」と言って送り出してくれたらしい。

 

「………しかし、凄い人だな」

 

 晶が周囲を見渡しながらポツリと呟いた。

 学園関係者全員―――生徒とその家族、非番の職員など―――が招待されているのだから当然と言えば当然だが、どう見積もってもそれより数が多いのは、気のせいではないはずだ。

 

「一般からも抽選で招待されているようですから、そのせいではないでしょうか」

 

 漏れ出た言葉に答えたのは、隣を歩くセシリアだ。そして晶を挟んで反対側を歩くシャルロットが続けた。

 

「有名なモーターショーでも、これだけの車が集まる事って中々無いよ。好みの車が見つかると良いね」

「そうだな。あまり探し回るのも面倒だし、ここで見つかってくれれば良いんだけど」

「質実剛健な車なら、幾らでも紹介してやれるのだがな」

 

 話に入ってきたのは、シャルロットの隣を歩くラウラだ。

 

「ラウラの場合、殆ど軍用車だろう」

「そんな事はないぞ。民間車でも性能・信頼性に優れたものは沢山ある。まぁ、個人的にはLAV(軽機動装甲車)あたりがオススメなんだが」

「じゃあ参考までにセールスポイントは?」

「なんと言っても民間車両にはない耐久性だな。加えてパワーもあるから、並大抵の悪路なら難無く走破可能だし、重量物の牽引も出来る。そして軍用車両はアップグレードの為、拡張スペースが広く取られている事が殆どだ。フルカスタムという希望にも沿えると思うぞ」

 

 悪くない売り込みだったが、束なら恐らく「面白くない」と言って却下するだろう。

 

「まぁ、候補の1つって事で」

「あ、あの、なら光岡自動車が出しているオロチはどうですか? メーカー曰く、『スーパーカー特有の扱い難さを極力排し、日常的に使えるクルマ』に仕上がっているそうです。後調べた限りですと、エンジンパワーと静粛性が両立された新型エンジンを搭載していて、ハンドリング性能も良好みたいです。博士を傍らに乗せて走るには良い車だと思いますよ」

 

 次いで口を開いたのは、セシリアの隣を歩く簪だ。

 そして晶は聞いた言葉通りに、オロチの助手席に、束を乗せて走る姿を想像してしまう。

 

(――――――悪くないな)

 

 彼もやはり男。美女を隣に乗せるなら、格好良い車が良いという程度の思いはある。

 だがここで即決めてしまっては、せっかくイベントに来た意味がなくなってしまう。

 なので晶は候補の1つとしてオロチの名を頭の片隅に留めておき、イベントを回る事にした。

 

「悪く無い案だけど、折角イベントに来たんだ。色々見てからでも遅くないだろう。――――――ところで、一夏はどんなバイクを選ぶ気なんだ?」

 

 簪に答えてから左を向けば、両腕を箒と鈴にガッチリホールドされた一夏がいた。所謂両手に花というやつだ。

 他人から見れば羨ましい事この上ない状況だが、本人は恥ずかしいのだろう。両腕に当たる柔らかい感触に赤面しながら答えてきた。

 

「オ、オンロード系の格好良いやつがいいんだけど、出来ればオフロードも走れるやつがいいかな」

「確かに両方走れた方が便利だもんな。――――――そうだ。普通の展示品で満足出来るのが無かったら、試作品コーナーへ行ってみるといい。何でも量産性を置き去りにした、各企業自慢の一品が展示されているらしい」

「へぇ、面白そうだな。何かとんでもないマシンがあったりして」

「多分あると思うぞ。俺も後で行ってみる気だ」

「じゃぁ、色々回ったら、そこで落ち合おうか」

「オーケー。皆も良いかな?」

 

 全員が肯いたのを見て、晶と一夏のグループは、それぞれ会場内を回り始めたのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 一方その頃、各企業のブースでは――――――。

 

「さぁお前達、本命のお客さんが来たぞ!! 何としても我が社の製品を売り込むんだ!!」

「勿論です。我が社の製品が最優である事を証明してやりましょう」

「その意気だ。頼むぞ!!」

 

 こんな会話が行われていた。

 ちなみに今回企業の主目標は、晶・一夏・箒の3人に車やバイクを売り込む事だが、可能であればCM起用したいという思惑もあった。そしてCM起用という視点で3人を見た場合、一番熱い視線を送られているのは、実を言うと箒であった。

 知名度で言えば、晶や一夏の方が遥かに上である。にも関わらず何故か。

 それは彼女の立ち位置と出自が関係していた。

 何せ箒の姉はあの篠ノ之束。ISという超兵器を世に送り出した天才。そして妹は、姉が作り上げた世界唯一の第4世代機を駆るISパイロット。加えて凜とした容姿に、姉ゆずりのワガママボディ。加えて織斑一夏と仲が良い上に、薙原晶とも姉繋がりで関係がある。

 つまり見栄えが良い上に、口説けば大物がセットで付いてくる可能性が高い。

 彼女が一番先に狙われるのは必然と言えた。

 そして、一夏・箒・鈴の3人が通り掛かる。

 

「――――――いらっしゃいませ。本日はどのような商品をお探しですか?」

 

 事前情報の収集は万全だが、逢えて知らないフリをして話し掛ける営業マン。

 誰しも自分の事を勝手に調べられれば、良い気はしないだろう。

 これには一夏が答えた

 

「ん? ああ、俺はバイクなんだけど、彼女()はコンパクトカーが欲しいって。鈴はもう持ってたっけ?」

「持ってるけど、そろそろ買い替えようと思ってたのよね。オフロード系の車ってある?」

 

 この注文に営業マンは素早く脳内の商品リストを検索。幾つかの商品をピックアップする。

 

「勿論です。オフロード車でしたら、後ろにあるあちらのブースに、バイクは――――――オンロード系でしょうか?」

「はい。でも出来れば、オフロードもそれなりに走れるヤツが良いなぁって」

「最近のはサスペンション技術の向上で、専用マシンほどではありませんが、それなりに走れるようになっています。どちらに重きを置くかで選ばれてはいかがでしょうか」

「う~ん。多分メインはオンロードかなぁ」

「なら1つ右隣の、あちらのブースにありますので、まずはそこをご覧になるのが宜しいかと思います。カスタムサービスにも対応しておりますので、きっと良い商品が見つかるかと思いますよ」

「ありがとう。じゃぁ、どこから見る?」

「い、一夏のからで良いぞ」

 

 先程「彼女」と言われた事にドキドキしながら答える箒。確かにお互い憎からず思っているが、改めてそう言われると照れてしまう。

 その様子に対抗心を燃やした鈴は、ギュッと一夏の腕に抱き着きながら言った。

 

「そうね。まずは一夏のから選びましょうか。こう見えて私、それなりに詳しいんだからね」

「ふ、ふん。詳しいと言っても、あくまでそれなりだろう」

「全然分かんない箒よりは、ず~~~っと役に立つと思うよ」

「何だと!!」

「まあまぁ2人とも」

 

 こうして3人はじゃれあいながら、各ブースを回っていくのだった――――――。

 ちなみにこの光景を見ていた一般招待客の男性A氏は、『リア充爆発しろ!!』と繰り返し思ったそうな。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 同時刻、別行動をしている晶達は――――――。

 

「これなんて悪くなさそうだけど――――――」

「この車種は確か、高速領域でのハンドリングに難があったはずです」

「じゃぁこっちは――――――」

「総合性能は優秀だが、このメーカーのメインフレームは少々細い傾向にある。万一の事態を考えると少し不安だな」

 

 簪とラウラが持てる知識を総動員して、商品の絞り込みを行っていた。

 何せ片やIS技術者、片や軍人だ。並大抵の事はスペックデータと実物を見れば瞬時にすりあわせ出来る。更に限定的にISのセンサーを使って内部構造の把握までしているのだから、その精度は推して知るべし。

 付け加えると、殆どの営業マンは晶に近付く事すら出来ないでいた。

 シャルロットとセシリアが絶妙のタイミングで間に入り、セールストークをさせないのだ。

 特にセシリアの方は、幼少時より貴族社会で揉まれただけあって、相手に不快感を抱かせない絶妙な断り方をしている。彼女と話した営業マンなど、話を断られているのに何故か満足気なくらいだ。

 

「………セシリア、凄いな」

 

 後ろから見ていた晶が、思わずそんな言葉を漏らす。

 すると彼女は淑女らしい、穏やかな微笑みを浮かべながら振り返った。

 

「この程度、貴族の交渉に比べれば児戯ですわ」

「俺には出来そうもないな」

「人には得手不得手がありますもの。全部完璧にこなされては、協力のしがいがありません。たまには頼って下さいな」

「そうさせて貰うよ」

 

 これに面白くないのは、既に恋人(愛人)宣言しているシャルロットだ。同じように役に立っているはずなのに、セシリアだけ褒められて面白いはずがない。

 

「むぅぅぅ。セシリアばっかりズルイ」

「勿論シャルだってそうさ」

 

 ギュッと晶の腕に抱き着くシャル。だがセシリアは微笑むだけで、営業マンとの交渉に専念していた。内心は同じ様にしたかったのだが、人の目がある事もあり、淑女の仮面を被る事にしたのだ。

 また思うところもある。シャルロットは既にデュノア社を挙げて、晶と束を全面的に支援している。その結果欧州では、シャルロットこそが晶の片腕だ、と見る動きもあるくらいだ。

 この程度こなせなくては、一方的に差をつけられてしまう。

 

「――――――ところで晶さん。本命はどれですの?」

 

 営業攻勢が一段落したところで、セシリアが尋ねてきた。

 

「ん~~~~、見た感じだと、光岡自動車のオロチかなぁ。あの不良っぽいけど優美な曲線が何とも」

「ならそろそろ、そちらの方に行きませんか。私達が歩いてる限り、営業攻勢はいつまでも続くと思いますわ」

「そうだな。じゃっ、まずはオロチにしようか」

「まずは? 何台も買う気なんですか?」

「決めてる訳じゃない。ただ試作品コーナーが妙に気になってね」

 

 先程遠目に見えただけだが、素人目に見ても“かろうじて車というカテゴリーに入る”というくらいに大胆な作品が幾つも見えた。

 いやハッキリ言ってしまえば、試作品コーナーからは変態チックな臭いがする。キサラギとかアクアビットとかケミカルダインとか、少々(?)突き抜けてしまった者達特有の臭いだ。

 なら、行くしかないだろう。むしろ行かなかったら後悔する。

 よって晶は光岡自動車のブースで早々に購入を決め、話の流れでCM出演をオーケーしたところ、シャルロットが続き、するとセシリアが負けじと参加し、取り残されまいとラウラ&簪も参戦。実に専用機持ち5人が参加するという非常に豪勢なCM作製が決定された。

 なお余談ではあるが、一夏と箒が買ったメーカーもコラボという形で参加。結局1年生専用機持ち全員が参加する、絢爛豪華なCMが作製されたという――――――。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 そして晶が試作品コーナーへ足を踏み入れた時、いきなり彼の足が止まった。

 

(遠目に見てまさかとは思ったが、本当に作ったのか!? どこだよ作ったの!?)

 

 近くに表示されていた機体解説を見てみれば、製作チームは如月・有澤重工の合同チーム。コンセプトはあらゆる地形で行動可能な多目的重機。専用設計ではなく多様なオプションパーツを用意する事で、汎用性を追及したらしい。ある意味、設計思想はアーマード(A)コア(C)に近いと言える。

 割り振られた型式番号はMBR-5RA2C。

 

(これは、間違いない!! ガンヘッド!! まさか、まさか実物を目にする事が出来ようとは!!)

 

 晶の内心は歓喜一色だった。

 重機という名目の為武装こそ施されていないが、そのシルエットは間違いない。

 この世界に放り込まれる前、好きだった映画の主役機体だ。

 

(確かにタイヤで動くって意味じゃ車だが、これどう考えても戦車の部類だろう。というか誰だよ、車の展示会にこんな物を出そうって言い出したやつ。イカレてるだろう!!)

 

 内心で罵ったところで、自分の本心は隠せない。彼の目は完全に釘付けだった。

 目が自然と、表示されている機体のスペックデータを追いかけていく。

 

 型式番号

  MBR-5RA2C。

 名称

  未定。

 タンクモード

  全長8.7m、全幅5.4m、全高2.5m(2.47m)、全備重量43.7t(標準装備)、最高速度180km/h。

 スタンディングモード

  全長6.1m(6.12m)、全幅5.8m(5.76m)、全高5.3m(5.28m)、最高速度130km/h。

 

 素の装甲は軽装甲機動車(LAV)準拠だが、オプションパーツでモジュール装甲が用意されている為、実際の防御力は主力戦車を上回る。全身に配置されているハードポイントは工事用重機だけでなく、簡易な改造で多くの兵器が搭載可能になる多目的仕様だ。

 そして何より特徴的なのは、スタンディングモードの際に現れる2本の腕。これにより従来の重機では不可能だった、様々な作業が可能になっていた。

 晶は恐る恐る、このブースの社員に話しかけてみた。

 初老の老人で、スーツよりも白衣が似合う、如何にも技術畑一本道という感じの人だ。

 

「あの、この名称が未定というのは?」

「ああ、いらっしゃい。中々良い名前が思いつかなくて、いっそのこと、買ってくれた人に名前を付けて貰おうかと思いまして」

「なるほど。ところで、中を見ても良いですか?」

世界最強の単体戦力(NEXT)が、こんなマシンに興味ですか?」

 

 どことなく謙遜気味な台詞だが、老人の目は笑っていなかった。

 そして晶は、こういう目をする人間を良く知っていた。

 同類だ。生粋のマニアだ。趣味の為には如何なる労力も惜しまない奇人変人、ちょっと突き抜けてしまった人の目だ。

 

「ええ、これには何か感じるものがある。上手く言葉に出来ませんが、機能美? ロマン? そんなところでしょうか」

「ほぉぉ、若いのにロマンと来ましたか。これは良い話が出来そうですな。入り口は機体上面にあります」

「では、ちょっと見せて貰いますね」

 

 そうして機体に上り上面装甲のハッチを開けて中を見た晶は、再び絶句してしまった。

 こちらは原作ガンヘッドとは似ても似つかないハイテクな作りだ。

 機体操作用に2本のアームレバーとペダル。レバーのグリップ部には、5指それぞれにボタンが配置されている。だが何よりも驚かされたのは、全周囲モニターを採用している事だ。これなら重機にありがちな、視界の悪さも無いだろう。

 

「どうですか。中々独創的な作りでしょう。その新開発したコクピット構造により、従来の重機よりも遥かに複雑な動きを、簡単に行えるようになりました」

「凄いな。まるでSFだ」

「我々からしたら、貴方の方がSFですよ」

「違いない。ところでコレ、火は入る(起動可能)かな?」

 

 聞きながら晶はNEXTのセンサー系を立ち上げ、内部構造をサーチ。コクピットの安全を確認しておく。

 

「勿論です。少し弄りますか?」

「そうさせてもらおう」

 

 中に入り、簡易AIの音声案内に従いMBR-5RA2Cを起動。

 すると全周囲モニターに、周囲の光景が映し出された。

 

「中々綺麗だな。稼動時間は?」

「重機としての稼動時間は――――――」

 

 機内のマイクが晶の声を拾い、外の老人が答える。

 そして次々と出てくる質問に、老人は始めのうちこそ素人にも分かり易いよう噛み砕いて話をしていたが、時間が経つにつれ、徐々にその内容が専門的になり始めた。

 これは晶が聞き上手という事もあったが、大きな要因は、以前パワードスーツの整備マニュアルについて、束と相当深い部分まで話をしていたからだ。これによってある程度まで、技術者(老人)の話が理解出来るようになっていたのだ。

 そして技術者というのは得てして、自分達の技術を理解してくれる人間に対して非常に好意的だ。

 この老人も、その例に漏れなかった。

 

「――――――という訳でこの機体の地形走破能力は、現行の如何なる重機をも凌ぎます」

「確かにスタンディングモードの4脚とこのジェネレーター出力となら、並大抵の悪路は物ともしないだろうな」

「ええ。足回りと新型タイヤの開発には苦労しましたが、その甲斐あって氷結した路面、雨で緩んだ路面、河川の渡河、山岳、砂漠など、標準装備のままあらゆる場所での行動が可能になっています」

「素晴らしい!!」

 

 晶は非常にご機嫌だった。

 何せ好きだった映画の主役機体が、相当な完成度で再現されているのだ。これで喜ばない人間はいないだろう。コクピット内を弄り回し、ステータスウィンドウを開いては、細かいパラメーターを確認していく。その表情は、まるで珍しい玩具を与えられた子供だ。

 だから、彼は気付かなかった。

 老人がさり気なく簪に話しかけて機体上面に上らせ、センサーブロックの説明を始めたことに。

 徐々に立ち位置を変え、空いているコクピットハッチ付近に誘導したことに。

 そして忘れてはならない事があった。

 この機体は、如月・有澤重工の合同チームが製作したもので、如月は更識家のフロント企業。この老人は如月の社員。当然、当主の息がかかっていた。展示会の前に下された勅命が思い出される。

 

(――――――可能ならで良いわ。簪ちゃんと晶君を、コクピットで2人きりにさせてあげて)

 

 聞いた時は無理難題と思ったが、この分だと上手く出来そうだ。

 老人はセンサーブロックの尤もらしい説明を続けながら、機体上面を歩き、簪の後側に立つ。彼女の前には空いているコクピットハッチがあった。

 そこで老人は極自然に咳込んだ。と同時にお尻を後に突き出し、簪を前へ押し出す。

 

「えっ!?」

 

 不意の衝撃に彼女の足が前へ出るが、そこに足の踏み場はない。

 ぽっかりと空いている空間があるだけだ。

 

「ん?」

 

 上から聞こえた声に、晶が顔を上げた。

 その視界に映ったのは、誰かのスカートの中身だった。真っ白い飾り気の無いショーツに、黒いニーソックス。ここで眼福、と思ってしまうのは、やはり男だからだろう。が、この直後彼は焦る事になる。顔面に向かって、真っ直ぐそれが落ちてきたのだ。

 

「ちょっ!?」

 

 慌てて受け止めるが、如何せん体勢が悪い。

 勢いを止め切れず、柔らかい臀部が顔面を直撃。のみならず両足が晶の肩に引っ掛かり、前側から肩車するような形になってしまう。つまり晶の目の前には、純白のショーツがあった。

 そして老人は最後の仕上げをする。

 躓くフリをしてコクピットハッチを蹴って閉じ、ブレスレットに偽装していた外部操作用端末で機体内部のマイク機能をOFF。これで密閉空間の出来上がりだ。

 加えて、他の如月社員も優秀だった。

 簪がコクピットに落ちる直前、外にいた他の専用機持ち達に話しかけ、落下の瞬間を目撃させなかったのだ。

 こうしてちょっとした(?)トラブルはあったが、晶はMBR-5RA2Cを2台購入。名称をガンヘッドとし、1台を自分用、もう1台を先日設立したPMCに配備したのであった――――――。

 

 ちなみに後日、更識本邸では姉妹間でこんな会話があったという。

 

「ちょっとお姉ちゃん!! 会場にいたあの人、お姉ちゃんの差し金なのっ!?」

「ん~、知らないよ。あの人って誰?」

「如月第一技術開発部主任、竹下健次郎!! お姉ちゃんの部下じゃない。滅多にああいう場所に出てこないのに、どうしているのかと思ったら…………」

「思ったら?」

「コクピットに突き落とすなんて酷いじゃない」

 

 すると楯無は、その言葉を待っていたかのようにニヤリと笑った。

 

「酷い? あれぇ~、本当にそう思ってるのぉ~?」

「あ、当たり前じゃない」

「ふぅ~ん」

 

 楯無はニヤニヤと笑いながら、着けていたイヤホンを簪に放り投げた。

 

「?」

 

 意味が分からず首を傾げる妹。だが取りあえず着けてみると、直後彼女の顔は真っ赤になってしまった。

 

「お、お姉ちゃん!! これ!!」

「いや~、姉としては引っ込み思案な妹が積極的になってくれて嬉しいよ。でも、お姉ちゃんも負けないからね」

 

 この後壮絶な姉妹喧嘩があったらしいが、半壊した離れで手を繋ぎながら倒れている2人を見て、直属の部下達は問題無しとして放置したという――――――。

 

 

 

 第81話に続く

 

 

 




今回クロスしたのは日本映画の名作(と作者は思っている)ガンヘッドでした。
あのデザイン、大好きなんです………。

そして更識姉妹の仲がレベルアップしました。

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