ネット版 仮面ライダーハイセ ドント! アンダーカバー ~喰種だって出しゃばりたいッ!~ 作:黒兎可
<――亜門鋼太朗の喰種資料整理 ファイル1――>
「何? 鯱のような男がバーでカクテルを振舞っていた? ……一応監視を続けておけ」
がちゃり、と電話を切り、俺は資料整理に戻る。
アオギリの樹による進行により、23区のコクリアから大量の喰種が脱走した。ピエロマスクのグループや、元アオギリ所属の喰種など。
20区に帰ってきた俺は、今一度、自分が何と戦うべきなのかを見つめなおすため、資料を再度確認していた。
「ここで目撃情報のあった喰種……、しかし何と言うべきか」
俺は近くにあった一つを手に取り、確認した。
片方はビッグイーター。Aレートの、通称「大喰い」と呼ばれる喰種だ。資料によれば外見は女性だが、クモのようなシルエットを捕食時に発現するという情報もある。
記述によれば、どうもこの喰種は各地を多く転々としてきているらしい。赫子の判別により特定できるが、しかしここ数ヶ月は見事に音沙汰がない。
篠原さん……俺の恩師いわく、もう既に死んでいるかもしれない、とのことだ。
「確かに動きが見られないのは不気味を通り越している。他の地区での情報も挙がってこない以上は、その可能性もあるのだろうか――」
「ばあぁん! 亜門さぁん!」
と、突然資料室の扉を全開にした少年。鈴屋什造だ。
「どうした什造。あと、いきなり開けると埃が散るぞ」
「ぺっぺ! 汚いです!
あ、それはそうとイットー、これからドーナツ食べに行くですが、一緒に行きます?」
「……言っておくが仕事中だぞ」
「でも、僕は食べないとやってけないですー。
そうです、僕が見て回ってる間、イットーがドーナッツを買ってくださいです」
かなり無茶苦茶なことを言う什造に、俺は軽く頭を抱えながら注意しようとして――。
不意に、奴が持っているチラシが目に入った。
「……おい、何だそれは」
「何って、アレですよアレアレ。新作のやつですよー。
ほら、この赤丸してあるやつ、僕のおすすめー」
さっと差し出されたそれを、俺は反射的に受け取り、凝視してしまった。
前々から気にはなっていた、つい先日CMの始まったトリプルチョコパウンド。異色の組み合わせながら映像の演出は美しく、カカオバターの光沢感がどこかエロティズムさえ放っている。だが惜しい、発売日まであと一週間とは。生殺しも良いところだ。
逆にハニーワッフルは100円セールが始まり、クリーム、チョコと一つずつ購入でポイントが倍か……。
はっ!?
「じゃ行くですよー」
俺の興味津々な反応を受けて、什造は楽しそうに笑いながら資料室を出て行った。
確かに俺は甘味には目がない。目がないが、しかしそれを職務中にするかどうかは別だ。休憩時間などならまだしもである。
以前アカデミーで教鞭を一瞬振るった際、担当したクラスの少女から「先生って、結構食べますよね。甘いの。羨ましいです私身体弱いから……」という風に羨望のまなざしを受けたこともあるが、それだって不本意なところだ。
「おい待て什造、お前は……。いや、それ以前に走るな、激突するだろう!」
「わー!」「きゃっ!?」
「いわんこっちゃない」
倒れた女性職員を抱き起こし、什造も手を貸して起こす。
「店に行くかどうかは別にしても、パトロールは必要だろう。もし買いたいというのなら、休憩時間でな」
「了解ですー」
そんなやり取りを交わしながら、俺たちはエレベータに共に乗り込んだ。