迷宮工房   作:@Riz

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ステイタスを持っていない主人公が書きたかった、ただそれだけです。

原作改変とか色々あると思います。ご了承下さい。


O P E N

──迷宮都市オラリオ。

ダンジョンという、魔物の巣窟により発展してきたこの都市は、たくさんのヒューマンや亜人(デミ・ヒューマン)、そして神々が暮らし、ダンジョンを攻略する冒険者に憧れた者や、ここで成功してやろうという輩が集まる、世界の中心と言っても過言ではない大都市である。

そんなオラリオのメインストリートから少し外れた通りの片隅に、ちょっと、いや大分おかしな格好をした店がひとつ。客がいる様子もなく、そこには腰に剣を差した金髪の女エルフと小人族(パルゥム)の少女の二人が店番をしている。

 

「平和ですねぇ。」

「ええ、そうですね。客は訪れませんが。」

「それを言ったらいけませんよ。幸い今月はまだアレ(・・)が起きてません。その事を喜ぶべきです。」

「そうですね。そう考える方がいい。」

「…………平和ですねぇ。」

「そうですね。」

 

 

特に変化のない穏やかな平和を堪能している二人。しかし平和は長くは続かなかった。

 

────ドガァァァァァァン‼

 

「あぁ……、今月はまだないからそろそろくるとは思ってましたが……ハァ……。」

「まぁ、そんなに落ち込まないでください。いつものことじゃないですか(・・・・・・・・・・・・・)。」

「いつものことだから落ち込んでるんです! 一体誰が後始末すると思ってるんですか!!」

 

店の二階からの突然の爆発に、二人は驚いた様子もなく、むしろ日常の一部のように対応していた。

 

「店長ぉぉぉぉぉぉおおお!」

 

この、木材や金属、石、そして何とも言えないガラクタで所々補強された妙ちくりんな見た目の店の名前は

 

─────『迷宮工房』──────

 

発明家の店主が営むこの店は、今日も活気に溢れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにこの店、2週に1回は爆発することで有名である。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

「──店長ぉ!どうして毎度!毎度!店を爆発させるんですか!少しは反省してください!」

「いやぁ、ゴメンってリリ。まさかフロッグシューターの皮膜とグールの毒液があんな反応するとは僕も思わなかったんだよ。それに失敗は成功の母って爺ちゃんも言ってたし。」

 

リリと呼ばれた小人族の少女に説教されているのにも関わらず、クセのある赤い髪を弄び、全く反省の色を見せないこの青年こそ、迷宮工房の店主、シェルム・トラップである。

 

「失敗する度に爆発が起こるなら、そんな成功要りません!」

「まぁまぁアーデさん、怒っても片付けは終わらない。それにさっきもいったように、いつものことじゃないですか。」

「リューさんは店長に甘いんです!こんな調子だと、店の修繕費だけで売り上げが吹っ飛ぶんです!わかってるんですか!」

「いや、しかし、トラップさんには恩義があるので、あまり強くは………。」

「リリだって店長に拾ってもらった恩はあります。でも! それとこれとは別問題です!」

 

怒りのあまり髪が逆立っているように見える小人族の少女リリルカ・アーデであるが、種族の特性で背が小さいためどうしても猫が警戒してるようにしか見えない。

つまりメッチャ可愛い。

 

「まぁまぁ、落ち着きなってリリ。ほら甘いクッキーでも食べてさ。」

「元はと言えば店長がっ!……はむ、モグモグモグ……、…………甘い。」

「よし!じゃあ落ち着いたところで片付けよっか!」

「「ハァ……。」」

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 

後片付けも終わり、日が傾き始め、オラリオの街に街灯がちらほらと灯り始めた頃、迷宮工房に一人の客が現れた。

 

「店長……いる?……。」

 

流れるような金髪に人形のような端正な顔立ち、美男リューばかりの神々にも勝るとも劣らない美少女は、数多の冒険者の中でもずば抜けた強さを誇る『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン。そんな彼女がどうしてこんな所に来たのだろうか。

 

「店長ぉー。アイズさんが来ましたよぉー。」

 

リリルカの呼び掛けによりシェルムが二階から降りてくる。

 

「おや、アイズちゃん。どうしたんだいこんな所に。」

 

本当にこんな所である。

 

「《匠君》がまた壊れた。」

 

──《匠君》。またの名を携帯用砥石。2つの回転する砥石の間に持ち主の消耗した武器を挟み、何回か研ぐことによって、素早く切れ味を回復させることができ、不壊属性(デュランダル)の武器の切れ味もほんの少しだけ上げることが出来る道具である。ちなみにこの《匠君》シェルムが納得いくまで砥ぎの追求をしたことによって、高級な砥石を使用されている。

お値段なんと8000ヴァリス。中々値段の張るものであるが、安全がお金で買えるならと、冒険者に人気の商品である。

 

「あれ? 前回こいつを直したのが十日前だったよね。僕の予想ならもう一週間はもつはずなんだけどなぁ。」

「……ごめんなさい。」

「いや、怒ってる訳じゃないんだ。ただ、やっぱり《匠君》は冒険者を支える武器を調整するものだからね。簡単に壊れちゃうようじゃダメだよなぁって。」

「……ごめんなさい。」

「ホントに怒ってないって。取り敢えず《匠君》作るから、アイズちゃんの武器貸してくれるかな。」

 

《匠君》は武器によって厚みやら何やらが異なるので完全オーダーメイド商品でもある。

 

待つこと数分。シェルムがアイズの愛剣《デスペレート》と《匠君》、それに何かの箱を抱えて戻ってきた。

 

「はい、おまちどおさま。取り敢えず《匠君》は二つ用意しといたから。あとこれ、もう少しで遠征でしょ、ティオナちゃんが『アイズは携行食しかたべないんだぁ』って言ってたから作ってみたんだ。《満腹ビスケット・じゃが丸君プレーン味≫。」

 

──《満腹ビスケット》は少量でお腹を膨らますことができ、味の種類も豊富で、1つ6枚入り80ヴァリスと手頃な値段が人気の迷宮工房の定番商品である。

…………決してカロリーをメイトする奴や、一本で満足できるチョコバー、大豆とJOYするものなどではない。似て非なるものである。

 

「まぁ、《満腹ビスケット》って言っても、使ってる粉は小麦粉だけじゃなくて、じゃがいもと大豆の粉も使ってるから《満腹ビスケット》とは違うものだし…………あれだね、これは《じゃが丸クッキー》とでも名付けようか。ってアレ?クッキーの箱はどこいった?」

 

商品の説明と命名に思考を割いていたシェルムは、抱えていたクッキーの箱を見失っていた。キョロキョロと辺りを見渡すシェルム、ようやく見つけたとその目に入ってきたのは、これは私のものだと言わんばかりに両腕に《じゃが丸クッキー》の箱を抱えたアイズの姿だった。

 

「ははっ。気に入ってくれたようで何よりだよ。取り敢えずそのはこの中には《じゃが丸クッキー》が3ダース入っているから。」

「……ありがとう。」

「いえいえどういたしまして。それと、これはまだ試作品だからね、お代は要らないよ。それよりも味の感想を聞かせてくれ。」

 

そう言って《匠君》のお代だけ受け取る。

 

「わかった。また来るね。」

「うん。遠征頑張ってね。面白い素材がとれたら是非うちに寄っていってくれ。」

 

その言葉に頷いてアイズは店を去っていった。

 

「いいんですか?店長ただで商品を渡したりして。リリとリューさんで味見もしましたし、試作品って嘘じゃないですか。」

 

シェルムの服を引っ張り、ジト目で見上げるリリ。

 

「嘘ってほどでもないさ、まだ店には出してないんだから。それに、味の感想は多い方がいい。」

「店長がそういうならいいんですが……。」

 

少し不服そうなリリにシェルムは苦笑いする。

気まずそうに視界を外すと、そこには美人(リュー)がいた。

 

「うわっ!ビックリした!リューさん、いつからそこにいたの!?」

「少し前に、……そうですね、アイズさんと入れ違いで、だと思います。それと、頼まれたものを買ってきました。」

「あっ、そういえばお使いを頼んでたね。」

 

たった今思い出したように頷く。

 

「………忘れてたんですね。」

 

不機嫌そうな顔をして問い詰めるリュー。

いつの間にかリリは居なくなっている。

 

「いや、ちょっ、ほら!アイズちゃんが来てたから、……から……。」

「忘 れ て た ん で す ね 。」

「………すみません。」

 

忘れられていたことが面白くなかったのか、説教をし始めるリュー。

 

「──シェルムさん、別に全てを覚えていろと言う訳じゃない。しかし、自分で頼んだ事ぐらいは覚えておくべきだ。」

「その通りです……。」

 

そんな美人の説教に項垂れるシェルム。

その事に溜飲を下げたのか、リューの雰囲気も幾分か柔らかくなった。

 

「……ハァ、もう日も完全に落ちている。そろそろ夕食の時間だ。」

「そうですね。今日の爆発で台所が使えないので食べに行きましょう。」

「…………さっきまでどこにいたの?リリ。」

 

説教が終わった途端に現れたリリに、シェルムは恨めしそうに言う。

 

「面倒なことになりそうなので2階にいました!」

 

満面の笑みになにも言えなくなってしまうシェルム。

 

「──そんなことよりご飯食べに行きましょう!」

「……随分逞しくなったね。」

「当然です! じゃないとこの店でやってけませんからね。」

 

「フフン。」と嬉しそうに薄いむn……ゲフンゲフン、年相応の胸を張るリリ。「その通りだ。」と頷くリュー、そんな二人に何とも言えない表情を浮かべるシェルム。

 

「……ハァ、じゃあ取り敢えず何処に食べに行こうか。」

 

溜め息をつきながら話をなかったことにする店主。

 

「いつも通り『豊穣の女主人』で良いと思います。」

「ええ、そうですね。最近いってないですし。」

「えー、なんか面白そうな店にいこうよ。」

「「却下。」」

 

一瞬で自分の意見を反対されたシェルムは物凄い不満げな顔で「えー、なんでぇ。」と二人に抗議する。

 

「何でもなにもありません。店長がそう言ってまともな店に行ったことがありません。」

「そんなことないよ。」

「いえ!前回は昆虫のステーキ、その前はカエルの目玉入りシチュー、さらにその前なんて霞!霞って何ですか!?仙人にでもなるんですか!?結局その後ミアさんのところに行ったじゃないですか!」

 

因みにその時のお値段400ヴァリス。

『豊穣の女主人』でのパスタの値段が300ヴァリス、これでもかなりのぼったくり感はあるが、空気食べてパスタより高額とか、詐欺とかそんなレベルではない。

あまりの剣幕に流石のシェルムも顔がひきつっている。さらにリューからも「私の記憶している中でトラップさんがアタリ(・・・)を引いたのは56軒中1軒です。」と言われ撃沈。

的中率約2パーセント。ゴミみたいな数値である。

しかし、56軒も付き合わされているリューさんマジ不憫。

 

「ゴ、ゴホン!よし!じゃあ満場一致でミアさんのところで決まりだね!」

(なかったことにした。)

(なかったことにしましたね。)

わざとらしい咳払いに定員二人に白い目を向けられる店長。あまりに情けない。

 

「それじゃあ、今日は店長の奢りで良いですよね!」

「リリ!?」

「ええ、私のことを忘れていたトラップさんの奢りで。」

「リューさんまだそれ引きずってたの!?」

「「良いですよね。」」

「…………ハイ。」

 

可愛い女の子二人に項垂れるシェルム。

「少し理不尽な気がする」とぼやきながらも店仕舞いをする。

 

「店長ぉー!置いてっちゃいますよぉー!」

「ちょっと待っててよ!二人とも!」

 

二人の急かす声に慌ただしく準備し、店を出る。

 

「あっ、と忘れてた。」

 

そう言って店の前まで戻ってきたシェルムは扉に掛けてある木の板を回した。

 

 

 

 

 

 

 

──────CLOSED──────

 

今日も一日が終わる。

 

 

 

 

 

 

 




シェルム・トラップ(18歳)
好奇心だけで育ったようなやつ。
発明好きでよく爆発を起こす。

リリルカ・アーデ(15歳)
ある日店長に拾われてから「迷宮工房」で働いている。
苦労人。ツッコミ担当。一応ソーマファミリア所属。

リュー・リオン(不明)
リリよりも先に店長と出会っていて、リリの先輩にあたる。
Lv.4の冒険者で 「迷宮工房」の警備もしている。
この作品では空気になってしまう。




4000文字越え!
始めてこんなに書きましたよ。
主人公はキャラ定まってないし、リューさん空気だし。
終わりは見えているのに中々終わらないし。
この作品をやっていける自信がない。

後、この作品では1ヴァリス=5~7円位です。

ベート君の憑依ものもやっていますが、そちらは更新が少し先になりそうです。すいません。

感想、誤字脱字などなどありましたら、是非お願いします。

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