Fate/Hasan   作:パラボラ

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お待たせしました。
キング・ハサンとかいうこれまでのハサンイメージを覆すようなキャラが出てきたので居ても立っても居られなくなりました。
ちなみにうちのカルデアには彼は来ませんでした。


第三夜

戦闘音が止んだことで、漸く終わったのだと柳成は安堵した。アサシンが戻ってくると同時に、柳成は大通りへと飛び出した。

戦闘を終えたアサシンが降りてくる。

 

「どうだった?やったのか?」

 

柳成の問いに、アサシンは険しい眼をして首をふる。

アサシンはその名の通り暗殺者だ。いくら今回が初戦で、また撃退を目的として戦っていたとしても、一度刃を交えた相手を殺せなかったのは失態だった。そう反省し、アサシンは目を閉じ霊体化する。

そんなアサシンの様子に少し不満を覚えながらも、柳成は自分の目的を果たすためミレニア城塞を目指し歩き出した。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

魔術とは、本来秘匿されるべきものである。

おおよその魔術師はこう考えており、そのため魔術師とは閉鎖的な人種である。

柳成は魔術師と言うよりも魔術使いに近いのでその意識は低いが、一時的な仲間となるユグドミレニア一族や、自分の雇い主たる魔術協会の魔術師たちなどはこの意識が強い。よって、協会から派遣された"赤"の陣営も、ユグドミレニア一族の"黒"の陣営も、同様に魔術・神秘を秘匿する方針で動いている。

つまり何が言いたいかというと、アサシンとセイバーの戦いが大事になる危険があるかもしれない、ということだ。

 

何度も言うように柳成が最も重要と考えるのは信頼だ。

しかし、この戦いで神秘が公に出ることになれば、信頼など勝ち取れる筈もない。

そもそも相良豹馬は魔術師のため、そこに不信感が生まれ、最悪の場合スパイであることが露呈する。

そのため、歩いている最中にこのことに気づいてしまった柳成は気が気でなかった。

もしバレればその時点で死。まだ"黒"のサーヴァントたちは見ていないが、数は自分たちを除けば確実に6。アサシンだけでは勝てはしないことはいくら柳成が聖杯戦争に疎くともわかる。

 

そう考え、外見だけは平静を装いながらミレニア城塞に到着した柳成だったが、すぐにその考えが杞憂であったことを知る。

 

「…お待ちしておりました」

 

そう歓迎の言葉をかけてきた白髪の青年。見た目は普通の青年だが、不思議な雰囲気を纏っている彼を見た柳成は、即座にその正体に気づく。

 

「……ホムンクルス、か」

 

ホムンクルス。人の手によって作られた人間である。

青年はその言葉に反応を示さず、中へと招き入れようとした。

柳成は舌打ちをする。

 

――見られていた

 

そうでなければこんなタイミングで迎えなどよこさない。

柳成は小さく舌打ちした。

だが同時に安堵した。

ユグドミレニアが見ていた。おそらく、"赤"のセイバーとの交戦を見ていたのだろう。

ならば、自分が敵でないことは示せたはずだ。信頼、とまではいかないだろうが、悪感情は抱かれていないはずだ。それはこうして自分を迎える態度からも明白だ。信頼を得たいところだが、それはこれからの言動でどうとでもなる。そう考え、柳成は城内へと足を踏み入れた。

 

 

 

罠の存在を警戒し、不自然にならない程度に慎重に歩いていた柳成だったが、城内に入って数分経った今も罠らしきものはなかった。

何事もないままホムンクルスに連れられ、やがて玉座の間へとたどり着く。

ホムンクルスは扉の前で立ち止まると、こちらに振り返る。

玉座の間の扉は華美な装飾が施されているわけでもないのにどこか豪華に感じられ、それと同時に言い知れぬ威圧感をこちらに与えてきた。それにはおそらく、この奥で待っているだろう人物のものも含まれている。

柳成は、自分の手が震えていることに気が付いた。そしてそれを仕方ないとした。

この奥にいるのはあのダ―ニック・プレストーンユグドミレニア。『八枚舌』と呼ばれた程の弁論に長けたもの。

ボロを出さないようにしなくては。相応の覚悟をしておかなければ仕事だけでなく、自分の人生も終わることを柳成は理解していた。

だが警戒すべきは彼だけではない。

今もまだ感じている威圧感の正体、ダ―ニックのサーヴァント。

柳成が嘘をついていることが分かれば、即座にそれは柳成の首を飛ばすだろう。

一つ、深呼吸をする。

ホムンクルスに視線を向ける。その視線を受け、彼は扉の中へと入っていく。

自分の呼吸音しか聞こえない世界。震えは既に止まっていた。

 

数秒で静寂は破られ、ホムンクルスが出てくる。

 

「主がお待ちです…どうぞ、お入りください」

 

言い終わるよりも先に、柳成はそこに足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

予想は出来ていたことだが、内装はまさに城だといえる、似つかわしい装飾が施されていた。

大きな大理石の柱が高い天井を支え、柱にはシャンデリアのような照明器具、天井はガラス張りになっていて、外からの陽光を取り入れられる造りになっている。

そして扉を開けた正面には赤い絨毯と、少し高くなっている場所に玉座、その背後には何枚かのガラスが張られている。

玉座には白髪の男。

貴族のような小綺麗な服に身を包んでいる。

柳成は一目でこの男が人間でないことを見抜いた。纏う空気がまるで違う。息がつまるほどの威圧感。柳成は無意識に男に恐怖を覚えた。

 

ーーあれがダーニックのサーヴァントか

 

ゴクリ、と唾を飲む。あの赤い目で見つめられるだけで、全身から汗が噴き出す。

隣には若い男。しかしそれは外見のみであり、本当なら彼は100年近い時を生きている。

ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアその人であった。

 

「......まずは"赤"のセイバーとの戦闘、御苦労だった」

 

ダーニックが口を開く。柳成は少しだけ目を細める。

ここからが勝負。うまく話を進め、信頼を勝ち取る。相手は『八枚舌』とすら呼ばれる超一流の詐欺師。ならば半端な嘘は通用しない。

 

「それで、君は誰だ?見たところ東洋人のようだが、君の顔は見たことがない」

 

その言葉に柳成は少し息を吐く。自分の顔は知られていない、そのことが確認できたためである。

 

「......相良、豹馬だ」

 

「......私が見た顔とは違うようだが」

 

「魔術協会に目をつけられた。逃げきるためには顔を変える他方法はなかった」

 

ダーニックは顎に手を当て考え始める。相良豹馬を名乗る男が嘘をついているか、ではない。彼が利用できるか否か、をである。

嘘をついていようがいまいが、彼が領王(ロード)と呼ぶサーヴァントには敵うはずはないのだから。

だがその答えが出る前に、彼の王が口を開いた。

 

「......よかろう。手勢は多くとも困ることはない。力量も先の戦闘で確認できた」

 

そしてダーニックの方に目をやる。異論は認めない、その目はそう語っていた。

ダーニックは内心で舌打ちをする。が、表には出さずにあくまで臣下として振る舞う。

 

「ええ、それがいいでしょう。"赤"の陣営を相手にするなら、サーヴァントは一人でも多い方がいい」

 

柳成はその一連の会話を、静かに聞いていた。

 

ーー邪魔ならいつでも切り捨てられる、そういう考えか

 

柳成は歴戦の魔術使いである。サーヴァントを見るのは今回が初めてではあるが、彼我の実力の違いは把握できていた。

敵わない。それが、彼が出した結論であった。

どこの英霊を呼び出したのかはわからないが、あの圧倒的な存在感、そして絶対的なカリスマ。生前は指導者であっただろうあのサーヴァントは、柳成の想像を遥かに超えていた。

たとえ不意をついても、正面から挑んでも、策にはめたとしても。

純粋な実力差の前に、全て叩き潰される。

そんな予測が、嫌でもできてしまった。

 

ダーニックがホムンクルスに指示を出す。ホムンクルスはその命令を受け、柳成を部屋の外へと誘導する。

その間柳成は、ずっと汗が止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「......どういうことだ」

 

ホムンクルスに案内された部屋で、実体化したアサシンはそう言った。荷物の整理をしていた柳成は振り向く。

 

「......お前は俺に『骸野柳成』とそう名乗った。だが先程の会話でお前は『相良豹馬』と名乗っていた......どちらが本名だ」

 

それを聞いて柳成は納得する。アサシンには仕事のことを伝えていなかったことを思い出した。

魔術で会話を外に漏らさぬようにする。ここは自陣であり敵陣である。迂闊に仕事の話はできない。

 

「.........『骸野柳成』の方が本名だ。俺はフリーの魔術使いでな。依頼を受けて、それをこなす。今回の仕事は"黒"の陣営の情報の収集及び潜入だ。お前も知ってる通り、"黒"の陣営はユグドミレニア一族で構成されている。『相良豹馬』もその一人だ」

 

「......成る程、一族に潜入するならなりすますしかない。そういうことか」

 

「理解が早くて助かる」

 

話は終わったとばかりに元の作業に戻る柳成。

アサシンはその背中を見つめる。

 

「...サーヴァントが俺でよかったな」

 

「何?」

 

アサシンの呟きに柳成は疑問を覚える。

 

「もし俺が真っ当な英雄、『英雄らしい英雄』であったなら、その話を聞いた時点で殺している」

 

「.........何故だ」

 

「英雄というのは高潔なものだ。生前の行いを誇りに思い、そのようにあろうとする。常に人々のために、というのは少ないが、やはり正当な手段を好む。裏切りや不意打ちなどは奴らが最も嫌う行為だろう」

 

成る程、と柳成は思う。確かにアサシンの言う通りだろう。

騎士道や武士道といったものがある。これは騎士として、または武士として正当であるための行動規範や心得のようなものだが、英雄にも『英雄道』とでも呼ぶべき道があるのだろう。

 

「......お前は真っ当な英雄ではないのか?」

 

「違う」

 

アサシンははっきりと明確に、まるでそう言われることを嫌悪するかのように否定した。

 

「絶対に違う。もし俺が真っ当なら、死刑囚すら正当化されるだろう。お前はそういう英霊を召喚したんだ」

 

それきりアサシンは霊体化した。部屋からアサシンの気配は感じられない。出ていったのだろうと柳成は軽く考えた。

先程の言葉が、柳成の頭をぐるぐると回っていた。

 

 

 

 

 

 

 




静謐ちゃんが可愛すぎてツライ。ベッドに潜り込まれるとかご褒美か何か?
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