2016年2月28日
別作品として移設しました。
一話目から鬱なお話しなのでご注意ください。
昔の話をしよう。
あの世界は今思えば本当に住みにくい世界だったと思う。
緑の育たない大地。
人工心肺を着けなければ出歩くこともできない大気。
極端な富裕層に貧困層。
教科書や記録を見てるとまるで2000年初期がお伽噺のように感じるその世界で私は生を受けた。
このご時世富裕層は、同じ富裕層と関係を持ち、結婚をするのが当たり前。愛人の一人二人も囲うのだが富裕層自体の数が少ない。
そんな母は資産家に愛人として選ばれた幸運な人だと云える。温かい食事にベッド、屋根のある生活。
それらを手にいれたのは一重に母が美しく、聡明だったから。
貧困層の産まれだが見る人が見れば誰もが美しいと言って。
一を知れば十とはいかずとも七か八までを自分で導ける。
そんな人だった。
そして母は資産家と関係を持って私が産まれた。
資産家の愛人にその娘。
母と正妻はそれなりに仲が良くて
私と本妻の娘も仲が良かった。
資産家は本妻の娘だけでなく私も学校に通わせてくれた。
将来本妻の娘を側で支える為に勉強していた。
本妻が居ながらもそれなりに愛された私達はきっと幸運だったのだろう。
けど、それは思い過ごしだった。
いくら仲がよくても所詮人間。
そのような関係は簡単に崩れ去る。
事の発端はきっとテストだと思う。
けど小学校四年の夏ごろから仲のよかった本妻の娘の私への当たりが悪くなった。
私は頭が良かった。
正確には回転がはやくて要領ががよかったのでテストではいつも上位にいた。
正妻の娘は私よりいつも一歩か二歩後ろにいた。
それが多分面白くなかったんだと思う。
そして、私は彼女の想い人に好かれていた。
私は迷惑だった。
勉強して将来は本妻の娘を支えて恩返しをしなくちゃいけないから勉強したいのに休み時間になったら執拗に絡んでくる。
私は愛人の娘なので強く言えないから本妻の娘に対応をお願いした。そうすれば彼女とその想い人の接点も増えて彼女の機嫌が良くなると思ったからだ。
けど、効果は逆効果だった。
あの頃の私はなにも分かってなかった。
彼女からすればそれはただの嫌みだったのだ。
そして私と彼女の関係は崩れた。
駒使いにされて、ストレスの捌け口にされる。
親から怒られれば私を蹴り。
想い人となにかあれば私を殴る。
それが日常になってた。
それでも私は彼女といた。
血が繋がってる私のお姉ちゃんだから。
お母さんを暖かいお家に置いてくれるお父さんの娘だから。
殴られても、蹴られても恩人の娘で、私は将来彼女を支えて恩返しをするつもりだった。
そう、するつもりだった。
ある日母が再び妊娠したのを知った。
学校から帰った私は母からそう打ち明けられた。
あの時の感情は今でも忘れない。
どんな子だろう。
男の子かな?女の子かな?
男の子だったらやんちゃな子になるだろうか。
でも母が産むんだからきっとカッコいい。これは大変だ私はモテモテの弟にやきもきしなくちゃいけない。
女の子だったら私に似るのかな?
母の娘だからきっと美人になる。
美人姉妹なんて言われるかもしれない。
反面教師で無愛想な私なんかと違ってきっと人当たりもよくモテモテになる。これは大変だ。妹に変な男が寄ってこないかハラハラしないといけない。
母のお腹を大事に撫でながら訪れるであろう未来に夢を膨らませる。
がんばってね。
はやく私に顔を見せてねと優しく語りかけた。
本妻が資産家、父に私達を家から出せと言っているのを耳にした。最初はなにを言っているのか分からなかった。
母は美しすぎたのだ。
貧困層にいたときもその環境に似合わない美しい容姿が富裕層に上がり、健康的になったことによってさらに美しく、妖艶なものとなった。
父は本妻より、母を、私を愛するようになった。
私も含まれるのは恩返しのつもりでお手伝いをしていたからというのもあるが母の娘であるからだろう。
本妻はそれが気に入らなかったのだ。
母は父に私達は家から出ていくと伝えた。
母は前々から本妻の感情を感じとっていたようで私を守る為に、父の家庭を守る為に出ていくと伝えた。
母も愛人とはいえ、父を愛していたのだ。
渋々ながらも父は私達が家を出る事を認めた。
安いアパート、最低一年は過ごせる生活費と母に出産後の職場を紹介した。
私にも転校することになってしまったが最低、中学を卒業できるまで面倒を見てくれる事になった。
私は小学校で十分と言ったが父は中学を出て、弟妹を学校に行かせる為に頑張れと言ってくれた。
その言葉を聞いて私は頑張った。
父も頻繁に私達の様子を見に来ては頑張れと応援してくれた。
母が風邪を惹いたらこっそり父のところにいって病院に連れていってもらった。
産まれてくる弟妹の為に。
はやく卒業して働いて、弟妹を学校に行かせる。
それを目標に・・・。
しかし、弟妹は産まれてくることはなかった。
ある日こっそり父に会いにいった私と同じく、こっそり会いに来てくれていた父と一緒に学校から帰ってきたらアパートの前に人だかりができていた。
その人だかりの向こうに見える赤い光。
その光を見て私は警察が来ていると悟った。
この時ほど自分の頭の回転の速さをの恨んだことはなかった。
まるでドミノ倒しのように様々な条件が連鎖的に一つの答えを導き出す。
父を置き去りに人だかりの中へ飛び込む。
ーー間違いであってほしい。
アパートの住人は皆女性。母よりもお年を召した方々で私達は娘、孫のように可愛がられていた。
ーー私の推測が外れていてほしい。
母は基本的に外に出ない。
買い物や家事は下手くそだけど私がやっていたから。
ーーそんな事はあるはずがない。
アパートのセキュリティも安いがしっかりしている。
それにここは人通りも多い。
ーーお母さんになにかあったなんて
人だかりを、警察を押し退けて部屋へ飛び込んだ私が見たのは。
遺体袋に納められようとしている母だった。
気付けば私は病院にいた。
個室のベッドの上で私は自分の現状を整理する。
母が殺され、私は意識を失って病院に運ばれた。
ここは父が手配した個室なのだろう。
自分でも不気味なくらい頭が回った。
母が死んだ、妹も殺された。
これまでの関係から推測するに犯人は本妻だ。
結論が出てどうする?
復讐する?
してどうなる?
父に迷惑がかかる。
ならばどうする。
父から離れる。
結論は出た。
母が殺されたのは確かに憎い。
本妻を母子共々殺してやりたい。
けど、母が愛した人に迷惑はかけたくない。
だったらこのまま姿を隠そう。
父もその方が本妻と平穏にやっていけるだろう。
そう思ってベッドから抜け出した所に父が病室に入ってきた。
思わず強張った私に父は言った。
本妻を容疑者として警察に突き出す。そしてそのまま離婚する。
娘も知り合いに養子として出すそうだ。
だから家に帰ってこい。
一緒に暮らそう。
そう言ってくれた。
父に言われるままに家に戻った私を最初に出迎えたのは親の仇を見る目を向けてきた姉だった。
その目を見た父は激怒し、姉に手をあげようとしたが私は必死になってそれを阻んだ。
憎い、憎いけど彼女は私の姉なのだ。
あの女の娘だけど私には血の繋がった姉なのだ。
お願いします。
お姉ちゃんを追い出さないでください。
姉の前で頭を下げた。
母を殺した犯人は本妻だった。
予想通りというべきか。
動機は父が私達に会いに来てくれていたから。
本妻が逮捕された後に私は再び屋敷でくらしている。
姉も私も学校はそれぞれ今通っている小学校に通い、帰りは二人とも父の迎えで帰っている。
私と姉は家の中では疎遠な状態だ。
私が構ってほしくて歩み寄ろうとするが彼女はそれを拒絶する。
唯一触れ合えるのは父の付き添いで社交の場に出るときぐらい。
その時も姉は仲の良いフリを演じているだけ。
それでも私は姉と一緒にいれるのが良かった。
一度は取り消した。将来は姉を支える。という目標に向かって頑張ると決意したのだ。
小学校五年のある日父の様子がおかしくなった。
親子三人での食事の際にじっと私を見ている。
正直言って気持ち悪かった。学校で私を見てくる先生とどこか似たような目をしていたから。
その時はただの勘違いなんだろうと流したのだが。
それは勘違いではなかった。
ある日の晩、私と父は関係を持った。
もちろん私は望んではいない。つまりはそういうことだ。
姉もそのことはしらない。私と父だけの誰にも言えない秘密。
救いと云えば初めてを散らすことがなかったということぐらいか。
きっと父は私に母の姿を重ねたのだと思う。
寂しかったのだろう。恋しかったのだろう。
愛した人がいないのはとても辛いことだ。
だから私は父に身を委ねた。
たとえ気持ちが悪かろうと。
体調が良くなかろうと。
それで父が楽になるならば。
それでよかったのだ。
小学六年の春。
私はベッドの上で朧気な意識のまま、窓の外を眺めていた。
いつも通り事を終えた父は姉を迎えに出ていた。
その間に私は身なりを整えるのだが。今日は体調が悪い。しかし、はやくしないと姉が帰って来てしまう。
頑張ってお風呂に入り、二人を出迎える為に待った。
しかし、何時間たっても二人は帰ってこない。
最近は二人の関係も良好なので姉のおねだりでどこか寄り道でもしているのだろうか?
私は待ったがその日、二人が帰ってくることはなかった。