火の国の木の葉隠れの里においても、ここしばらくは大きな争いに巻き込まれることもなく、穏やかな日々が過ぎていた。
しかし、それでも里を治める立場の火影は日々忙しく、七代目火影に就任したナルトも多忙な毎日を送っていた。
そして、今日も朝早くから、様々な書類に目を通していたのだった…
「あ~あ…こんないい日は家族でピクニックとか行きたいってばよぉ…」
ぼそりとつぶやき、机の上に並べられた大量の書類の上につっぷしたのは、
7代目火影『うずまきナルト』
里を見渡せる火影室の窓から、ポカポカと暖かい陽気が、朝からあまりにも降り注ぐものだから、ついそんな言葉が出た。
だらしなく伸ばした両手の先には、最愛の家族…ヒナタ、ボルト、ひまわりの写真が並べられている。
「元気にしてっかな…」
日々執務に追われ、この火影室に泊まり込むことも度々…
特にここ最近は、中忍試験が近いこともあり、多忙を極め…数日家に帰っていない。
ヒナタは毎日昼食を届けに来てはくれるものの、打ち合わせ中であったり、来客中であったり…と、まともに会えることは少ない。
子供たちに関して言えば、この火影室から、里の中を友達と走り回っているひまわりの姿を見るか、任務の報告で訪れるボルトと数分会話を交わすくらいだ。
はぁ…とこぼれる溜息。
さみしい思いさせちまってるよな…
「俺もさみしいってばよ…」
ヒナタの写真を手に取るナルト。
肩で切りそろえたサラサラの髪、優しい光をたたえた白い瞳、今日の日差しのように暖かい笑み…
「くぅ~。やっぱかわいすぎるってばよ」
くそぉ…ヒナタといちゃいちゃして~…
さすがにその言葉は口にせず自粛する。
しかし、どうしても気持ちが抑えきれず、ヒナタの写真に顔を…口を近づける…
と、その時…
「ナルト!入るぞ!」
ばんっと、勢いよく扉を開けて、サスケが飛び込んできた。
「うわぁぁぁぁぁ!
サ、サスケェ?なんだってばよ!突然入ってくるんじゃねぇよ!」
声を裏返して、写真を落としそうになりながらあたふたする。
しかしそんな様子を全く気にせず、サスケはナルトに詰め寄り、これ以上にないくらい真剣なまなざしで言う。
「サクラとサラダのチャクラを感知できるか?」
その声には焦りの色がにじんでいる。
「なんかあったのか?」
こんなサスケは珍しい。
一瞬にして部屋の中に緊張が広がった。
「とにかく、二人のチャクラを確認してくれ!」
「わかった」
ナルトは意識を集中してまずサクラのチャクラを探る。
しかし、感知できない…
次いで、仙人モード…
「だめだ…。
かなり離れた場所にいるか…」
…強力な結界の中…
二人はハッとして顔を見合わせる。
以前同じようなことがあった。
第4次忍界対戦を終えてしばらく
…まさか、また何者かが…
「くそっ。この目が回復していればっ」
ドンッ!とサスケが机をたたいた。
サスケの輪廻眼があれば、さらに広範囲…そしてたいていの結界であれば、容易に感知できるだろう。
しかし、つい先日、彼はその瞳の力を酷使しており、まだ力が戻り切っていないのだ。
机の上のサスケの手が怒りと焦りで震えている。
ナルトは、ただならぬものを感じ、チャクラを練った。
足元から一気に
火影の羽織がチャクラと同化して大きく広がり、全身に独特の模様が現れた。
九尾の力を使った
仙術チャクラも織り交ぜ、さらに感知エリアを広げる。
その様子を
『どうだ…九喇嘛…。なんか感じるか?』
なかなかサクラのチャクラを探れず、ナルトは九喇嘛に語りかける。
『なんだ、久しぶりにただ事じゃねぇ雰囲気だな。
あのサスケがこんなに動揺するなんてな』
答えて九喇嘛は集中する。
ほんの数秒後、二人はサクラのチャクラをかすかにだが捉えた。
「見つけたってばよ!
サラダのチャクラも感じる」
「やはり二人とも!」
サスケが声を荒げるのと同時に、部屋にシカマルが飛び込んできた。
「ナルト!どうした!」
どうやら九喇嘛のチャクラを感じ、火影室で何か起こったのかと、駆け付けたようだ。
「っと、サスケ?
…どうしたんだ…二人とも…」
異様な緊張感を感じとり、シカマルの表情が固まる。
ナルトは九喇嘛モードを解くと、さっと印を組み影分身を二人作り出す。
「シカマル。悪ぃ…ちょっと出てくる」
「え?お、おい!」
何が何やらわからず慌てるシカマルをよそに
「こっちは頼むってばよ」
影分身に言葉を残し、ナルトはサスケとともに火影室を飛び出した。