果てなき愛ゆえに…   作:かなで☆

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第三話 ~第七班~

 里のはずれにある大蛇丸のアジトの中では、すっかりパーティの準備を終えた一同が、サスケの到着を待っていた。

 時刻は午後一時。

 約束の時間を半時ほど過ぎている。

 「サスケ…来ないんじゃないの…」

 水色の髪をかきあげながら、興味なさそうにつぶやいたのは、かつて『鷹』のメンバーとしてサスケと行動を共にしていた、忍刀七人衆の一人、水月だ。

 「誕生日パーティに来るようなやつかよ…しかも香燐のだぜ」

 その言葉に怒りをあらわにした香燐が水月にとびかかる。

 「てめぇ!なんだとコノヤロ~ッ!」

 ずしゃっ!

 殴られたはずの水月の顔が一瞬で液体化し、はじける。

 そしてすぐに元に戻り、

 「だって、遅すぎるでしょ」

 悪びれた様子もなく椅子に座る。

 その様子に、準備を手伝うために一足早く来ていたサクラとサラダは、若干気まずくなる。

 「ご、ごめんね…。家を出るとき、場所も時間もちゃんと伝えたんだけど…。

 私たちもバタバタしてたし…」

 「パパ、寝ぼけてたから…聞こえてなかったのかも…」

 不安そうなサラダの顔を見て、香燐が慌てて笑う。

 「心配すんなって。

 サスケならチャクラ感知して、来れるだろ」

 「ああ。サスケは来る」

 淡々とした口調で重吾がそう言うと、香燐は嬉しそうに頷く。

 「うんうん。重吾はさすがわかってんなぁ」

 バンバンっと肩をかなりの力で叩かれながらも、重吾はどこか嬉しそうだ。

 「君らはただサスケに会いたいだけでしょ。

 どんだけ好きなんだよ…意味わかんね」

 水月の言葉に大蛇丸が続く。

 「まったくだわ。

 たとえサスケ君が来なくても、この場が果てしなくつまらない物になるだけでしょ」

 さらりと言ってのけた大蛇丸を見つめ、一同の心の声が重なった。

 …あんたが一番好きだろ…

 「大蛇丸様~ひどい~」

 香燐が大げさに泣き崩れる。

 「冗談よ」

 …いや、本気でしょ…

 再び意見が一致したその時…

 アジトの入口のほうから何やら騒がしい声が聞こえてきた。

 「ちょっとちょっと、どうしたのサスケ…様子が…」

 その声は、里の命で大蛇丸の監視をしているヤマトの物だ。

 先ほどサクラから事情を聴き、サスケの到着を待っていたものの、ただならぬサスケの気迫にうろたえていた。

 「うるさい!二人はどこだ!」

 アジト内に響き渡るサスケの声を聞き、

 「パパ!」

 サラダが立ち上がりドアを開ける。

 その姿を確認したサスケが走りこんできた。

 「サラダ!無事か!」

 さっとサラダを後ろに隠し、椅子に座っていたサクラの腕をつかみ、同じく後ろにかばい、入り口まで下がる。

 「え?あ、あなた?」

 「パパ…どうしたの?」

 二人の問いには答えず、サスケは大蛇丸をにらみつける。

 ようやく瞳力が戻ったのか、両目からは恐ろしいほどのチャクラが溢れている。

 一瞬ですべてを焼き払えるほどの…

 「何のつもりだ…大蛇丸…」

 その殺気に、何が何だかわからないまま、水月と香燐が「ひえぇ」と震えながら大蛇丸の後ろに隠れる。

 唯一重吾だけが大蛇丸をかばって前に立つ。

 しかし、そんな彼らをまったく気に留める様子もなく、大蛇丸はすっと…立ち上がり首をかしげる。

 「言われてる意味が分からないわ」

 「とぼけるな!二人を重吾にさらわせたんだろう!

 …あんたの命令に逆らえないそいつを利用して…」

 急に視線を向けられて、重吾の体がびくっと揺れる。

 それを肯定ととったのか、サスケはまくしたてた。

 「サクラはチャクラコントロールに長ている上、里で最も優れた医療忍者だ。しかも、器量もいい。

 それにサラダは俺の血をひき、才能も有り、写輪眼も開眼している。その上努力家で美形だ。

 お前がほしがる理由はそろっている。」

 さらりと恥ずかしいセリフを言ってのけるサスケに一同は静まり返る…

 「俺が気付かぬうちに重吾を使って二人をさらい、なにか新しい実験に利用するつもりだったんだろう!」

 大蛇丸は、自分をにらみつけるサスケのその表情に、懐かしい快感を覚えつつ、彼の後ろに気配を感じ視線を移した。

 開けたままのドアの向こうに、追いついてきたナルトが呆れた顔で天を仰ぐのが見える。

 一瞬の思案の後、大蛇丸は「ああ、そういうこと…」と意味ありげな笑みをサスケに向ける。

 サスケとは長い付き合いの大蛇丸だ。

 その様子を見て、すべてを悟ったようだ。

 「まぁ、あながち間違いではないわね」

 サスケを見つめるその視線の隅には、ナルトから事情を聴いたのか、呆れ顔のヤマトもいる。

 「そうねぇ…」

 大蛇丸は少し楽しげに言う。

 「あなたが警戒心ゼロで爆睡している間に、重吾が二人を迎えに行き、

 あなたがたどりついた『つながり』という物が、果たしてどういった物なのかを調べるために開いたこの『パーティ』という実験に、二人をつき合わせようとしている…。

 あなたの言葉に当てはめて今の状況を説明すると、こういう事になるかしら」

 言われていることが理解できず、サスケはしばし固まり、大蛇丸の言葉を頭の中で繰り返す。

 「………………ん?」

 自分の勘違いから完全には開放されていないものの、大蛇丸の言った『言葉の意味』を理解したサスケは、顔をしかめながら振り返った。

 「パーティ…だと?」

 「サスケ…そういうことだってばよ…」

 そこには何とも言えない気まずい表情を浮かべた親友と、真っ赤な顔を両手でふさいでうなだれている、最愛の二人がいた。

 「君って人は…」

 その後ろからヤマトのこれ以上ないほどの呆れ声…

 サスケが再び視線を戻すと、テーブルの上には豪華な料理と、『香燐おめでとう』と書かれたプレート付のケーキが並べられていた。

 「昨日も、今朝も言ったのに…」

 サクラは耳まで真っ赤にしながらぽそりと言った。

 「パパのばか…」

 ゆでだこ状態の二人とは正反対に、大蛇丸の後ろでは香燐が座り込んで地面に「の」の字を書きまくっていじけている。

 「…実験…。

 …忘れられてた…。

 …しかも…なんだかえらく幸せそうだし…

 …大蛇丸様も…サスケも…嫌いだぁ…」

 ぼたぼたと涙を流す香燐の背をさすりながら、重吾は何とも言えない表情でサスケを見つめる。

 そして水月がこらえきれず大声で笑い出した。

 「まじかよサスケェ!

 ありえないんだけどぉぉぉぉぉ!」

 そんな状況で、さぞかし恥ずかしい思いをしているであろうと心配して、ナルトがサスケに声をかけようとすると…

 「そうだったか…」

 サスケは一同の期待を裏切り、いたって冷静に…

 「無事でよかった」

 と、サクラとサラダの頭を交互になでたものだから、事態はさらに上乗せされた。

 まったく自分の状況が分かっていないそんなサスケを見て、大蛇丸が「風を感じるわ」とつぶやく。

 …いや、何の風だよ…

 …もう好きにしてくれってばよ…

 がっくりと肩を落とすナルトの中で、九喇嘛が声を上げる。

 『ガハハハハハ!

 バカに天然。

 お前らそういう所はすでにどの火影をも超えてるぜ!』

 『うっせー!』

 「ま、しかし…」

 つぶやいてサスケを見つめる。

 復讐という闇に染まって、サクラちゃんを殺そうとまでしたあのサスケがねぇ…。

 心底安心して家族を見つめるその姿に、ナルトは胸の奥が暖かくなるのを感じた。

 何より、サクラとサラダの幸せそうな顔が嬉しかった…。

 「まぁとにかく」と大蛇丸が椅子に座る。

 「はじめましょ。

 香燐、あなたもいじけてないで座りなさい。

 ただ実験のためだけでもないのよ、一応ね」

 目で促されて動いた重吾の手には、プレゼントらしきものが用意されていた。

 『え~!』

 興味のないサスケと、プレゼントを持つ重吾以外の声がはもった。

 …大蛇丸が…プ…プレゼント…

 「…てか…何が入ってんだ…」

 奇妙なものを見るようなナルトの視線をすり抜けて、

 「大蛇丸様~」

 泣きながら大蛇丸に抱き着く香燐。

 その赤い髪を、大蛇丸はまるで猫をかわいがるようなしぐさでなでる。

 「よかったな、香燐」

 重吾が香燐にプレゼントを渡し、大蛇丸の隣の席に着く。

 「へへ…」と照れ笑いを浮かべながら、香燐はいわゆる誕生日席に、

 「ちぇっ…なんだかんだ言って、大蛇丸様は香燐びいきだよな…」

 水月はぶつぶつと文句を言いながら重吾の横に…

 それぞれがごく自然に、流れるように…

 そして、まるで何もなかったかのように、言葉も…何の違和感もなく、サスケがその場に溶け込んでゆく。

 彼らも当たり前のようにそれを受け入れる。

 その様子を見てナルトはふと思う。

 …あいつにとってここはどういう場所なんだろうな…

 子供のころに里を抜け、大蛇丸や、ここにいる香燐たちと過ごしてきた…

 それは自分が、自来也、カカシ、サクラたちと過ごしてきたものと、同じようなものなのかもしれない…

 そう思うと、ナルトは複雑な心を隠し切れなかった。

 かつてサスケを奪った大蛇丸に対しての気持ちは、完全に消え去るわけではない…

 …でも、あいつにとってここはある意味…

 「なんて顔してんのよ」

 考え込むナルトの背中をポンッとたたき、サクラが笑った。

 「今さらでしょ」

 その笑顔には、色々な物を乗り越えて手にした、揺らぐことのない強い思いが溢れていた。

 「サクラちゃん…」

 もしかして、俺と同じことを…

 …だから、ここに…

 「私たちは、すべてを超えて、未来(さき)を目指さなきゃ」

 その言葉に、ナルトは自分の描く未来…『すべての忍の協力』という夢への道が、決して孤独ではないことを改めて実感する。

 「そうだな…」

 そんな二人のやり取りを理解してか、ヤマトがほほ笑む。

 「そうだね」

 多くを語らずとも分かり合う彼らを見て「何の話?」とサラダが首をかしげる。

 「いつか…ね…」

 サクラは優しく微笑んで、サラダの手を取り、席についた。

 「僕は持ち場に戻るよ」

 ヤマトは軽く手を上げ、立ち去る。

 「んじゃ、俺も帰るってばよ」

 それに続こうとナルトが背を向けるが、   

 「あなたもせっかくだから混ざっていきなさい。」

 「え…?」

 大蛇丸に言われて、一瞬躊躇するナルト。

 さ…さすがにそれは……

 しかし、

 「それがいいよ!七代目!」

 嬉しそうなサラダの笑顔に、断ることをあきらめる…。

 「まぁ、いいか」

 観念したナルトに、

 「さっさとしろ」

 めんどくさそうに言うサスケ…

 「早くしなさい」

 どこか姉のような口調のサクラ…

 一瞬、二人の姿が子供のころの姿と重なり、立ち尽くす…

 が、ふいに手のひらにぬくもりを感じ、目を向けると、そこにはサラダがいた。

 「七代目、早く早く」

 「あ、ああ。わかったてばよ」

 手を引かれ、ナルトが椅子に座ろうとしたその時、

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 木の葉の里…火影室の影分身の一人が、里の現状を伝えるためにボンッと、姿を消した。

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 たちまち影分身の持つ情報…記憶が、オリジナルのナルトに伝わる。

 「…………え…?」

 サァっとナルトの顔から血の気が引く…。

 その記憶の最期には、決意を秘めたシカマルの顔があった。

 『ナルト、里は任せろ!

 命に代えても守り抜く!』

 背後にはすっかり臨戦態勢に入った仲間たち…

 もちろん、ヒナタもいる…

 ………こ……これは……

 「サ、サスケェ…サクラ…ちゃん…サラダ…

 …やばいっ…てば…よ……」

 冷や汗をだらだらと流しながら声を震わせるナルトの説明を聞き、サスケたちは音を立てて椅子から立ち上がった。

 そして、4人は慌てて里に帰り、サクラとサラダの無事を心底喜ぶ仲間たちに、しどろもどろになりながらすべてを話した。

 …結果…

 『勘違いで済むかぁぁぁぁっ!』

 その場にいたメンバーの声が里中に響いた。

 ひなたに関しては、自分の夫がしでかした、事の大きさに眩暈を感じ、その場に崩れ落ちる。

 「きゃっ…ひなた!」

 いのとテンテンが慌てて抱きとめる。

 その様子を背に、

 「お前ら〜!」

 怒りの声を上げたのは、カカシと、

 「なんてことを!」

 これ以上ないくらい眉間にしわを寄せた綱手だった。

 すでに引退した2人までこの場にいることを見て、さすがに事態の重大さを理解したサスケが「すまない」と言いながら顔をひきつらせる。

 「ばっかもぉぉぉぉん!」

 綱手はわなわなと体を震わせながら3人を叱り飛ばす。

 「ここにいる人間以外には、シカマルの機転で、混乱を避けるために訓練と称して事に当たったとはいえ、謝って済む問題ではないぞ!」

 カカシがそれに続く。

 「その通りだ!それに、火影という立場でありながら、冷静さを欠いたその行動は問題大ありだぞ!ナルト!」

 「ひぃぃぃぃ!ごめんなさい!ごめんなさい!」

 次いでサクラにもカカシの叱責が飛ぶ。

 「おまえもだ!サクラ!」

 「はいぃぃ!」 

 「お前がしっかりしつけないとだめでしょうが…こいつは!」

 びしっとサスケを指さす。

 「し、しつける…俺を…」

 腑に落ちないものの、立場上言い返せないサスケの横で、ナルトとサクラが土下座でただただ謝り倒す。 

 『おいナルト』

 叱られ続けるナルトに九喇嘛が言う。

 『これが本当の、

 第七班ここに復活…じゃねえのか』

 完全に面白がっている九喇嘛に、思わずナルトは普通に声を荒げた。

 「うるせー!」

 急に声を上げたナルトに、場が一瞬静まり返る。

 はっと気づいた時にはすでに遅し…

 「ち、違うんだってばよ…これは…その…」

 その弁解は全く届かない。

 「なんだと…」

 恐ろしいくらいに冷たい、カカシと綱手の声が見事に重なる。

 そして次に、殺気を爆発させた二人の声が雷のごとく落ちた…

 「ナルトォォォォォ!」

 「ひぃぃぃ!

 ごめんなさいだってばよぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 そして、3人の頭に綱手の渾身の一撃が決まり、すべては終息を迎えた。

 その状況を、離れた場所にいる大蛇丸はほぼ違えず想像し「サスケ君。やっぱり興味深い子だわ」とつぶやき、サスケによく似た少女を思い浮かべる。

 「あの子はたぶん…呆れた表情であの大人たちを見てるでしょうね…」

 フフフと不気味に笑う大蛇丸の想像通り、サラダは綱手の一撃で地面に沈んだ3人を、冷めた目で見ていた。

 

『ガハハハハハ!

 おまえら本当に最高だぜ!』

 

 九喇嘛の大きすぎる笑い声が、いつまでもいつまでも、ナルトの中で響いていた。

 

 

                                  完




 ただただ家族愛が止まらないサスケと、個人的に大好きな、大蛇丸と元『鷹』のメンバーの仲の良さを描きたいと思い書きました☆
 原作ではなかなか描かれなかったサスケとサクラ…
 私の願望を深く取り入れて(笑)また描きたいな…と思います。

最後まで読んでくださり、本当に本当にありがとうございました。

 
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