ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか 作:ユキシア
私の名前は柳田桜。22歳。成人していて社会人として働いている。家族構成、父、母、弟。現在一人暮らし。友人関係良好。
「良し、思考も記憶も正常。私は薬物中毒で幻覚を見ているわけでもなく、疲れすぎておかしくなったわけではない」
あちこち賑わう真ん中で私は自分が正常であるか確認する。何人か私をチラ見してくるがそんなもの無視だ。気にするだけ無駄だ。そんなことよりも状況把握が大切だ。
私は昨日もいつも通り一日のノルマを終わらせて帰宅。その後、簡単に食事とシャワーを浴びてすぐに就寝したはず。
「・・・・・それがどうしてダンまちの世界にいるんだ、私は」
ダンジョンで出会いを求めるのは間違っているだろうか。オタクの友人の勧めで何冊か読んだ程度だが、どういう訳かそのアニメの世界に私は来ていた。
私は別に死んで神様に出会ったわけでも召喚や転生された覚えもない。
「ついでに言えば・・・・見た目すら私の面影すらない」
私は特にスタイルがいいわけでも特別可愛いというわけでもない。平均的な一般女性の見本と言っていいぐらい普通の生粋の日本人だ。それがどいうわけか、14~15歳ぐらいの金髪美少女になっていたが、まぁいい。
「私は私の目的の為に生きる」
目的を果たすためなら住む世界が変わろうが関係ない。
まず私がするべきことは雨風が凌げる場所と仕事だ。その為にもまずはギルドに行ってこの物語の主人公であるベル・クラネルに会おう。あの人を疑わないお人好しならいくらでも言いくるめられる。
私はギルドを目指してこの世界の第一歩を踏み出す。
「ここがギルドか」
何人かに声をかけてようやく私はギルドに到着した。言葉がわからなかったり、文字が読めないかもしれないという不安が少々あったがそれは杞憂に終わった。
日本語と少しの英語しか話せない私だったがどういうわけかはわからないがあっさりと言葉が通じてギルドまで足を運ぶことができた。
目的人物の名前は確かエイナだったはず・・・・。
主人公であるベル・クラネルのアドバイザーである彼女と会っておけばベル・クラネルに会わせてくれる可能性が高い。少なくとも声をかけておくだけでも収穫にはなる。
ギルドに入り、私は目的の人物であるエイナ・チュールを探すが受付場で仕事をしているのを発見すると同時、エイナの前へ足を運ぶ。
「すみません」
「はい?」
声をかけてこちらに顔を向けるエイナ。
「冒険者になる為、オラリオに来たのですがどこか募集をしているファミリアはございませんか?」
こう言えば最初に思い描くのはベル・クラネルがいるヘスティアというマスコット神のはず。あとはベル・クラネルと引き合わせてくれればどうにでもなる。
「えっと、あるにはあるんだけどあまりお勧めはしないよ?」
「かまいません。それでそ」
「エイナさぁあああああああああああああんっ!」
突然の大声で私の声は遮られてしまったがそれはまぁいいだろう。今の声は間違いなく。
ベル・クラネル!
声がする方向へ振り向くとそこには血まみれでこちら、いや、正確にはエイナに手を振っている少年、ベル・クラネルがいた。
「うわあああああああああああああああああああああ!?」
「アイズ・ヴァレンシュタインさんの情報を教えてくださあああああああああいっ!」
どうでもいいが私を挟んで大声を出さないで欲しい。耳が痛い。
「ベル君、キミねぇ、返り血を浴びたならシャワーくらい浴びてきなさいよ・・・」
「すいません・・・」
現在、ベルはエイナからありがたくもないお叱りを受けている。ちなみに私はその光景を観察している。特にこれといった理由はないが、エイナのお叱りが終わるまで退屈凌ぎに見ているに過ぎない。そしてお叱りが終わりエイナが私に手招きをしてくるのを確認して私はエイナとベルがいるほうへ向かう。
「ベル君。この人が今、話したファミリアに入りたいと言っていた・・・・ええっと」
「桜だ。柳田桜。よろしく」
簡潔に挨拶を済ませるとベルが突然立ち上がって私の手を握ってきた。
「本当ですか!?僕のファミリアはまだ僕一人しかいない零細ファミリアなんですけど」
「私はそんなこと気にしないさ」
むしろ、好都合だ。下手に大規模なところに行くと何かと動きづらい。なら、手ごろでお人好しであるベルのファミリアが都合もいい。
「ありがとうございます!では、早速神様に会いに行きましょう!」
「ちょっ!?まっ!」
手を掴んだまま走り出すベル。急なことに私は転ばないように気を付けながらそのままベルの本拠であるボロ教会まで引っ張られた。
「神様、帰ってきましたー!ただいまー!」
声を張り上げて地下室にある小部屋に入ると、そこには神ヘスティアがベルの前までやってきた。
「やぁやぁお帰りー。今日はいつもより早かったね?」
「ちょっとダンジョンで死にかけちゃって・・・・。それより神様!紹介したい人がいます!」
私を引っ張り出すかのように神ヘスティアの前に私を出すベル。そんなベルに私は少々苛立っている。自分以外新しくファミリアに入ってくれる人が来て喜ぶのは理解できる。だけど、無理矢理引っ張られて走り出された私はここまで来るのに何度も転びそうになった。その報いを受けてもらおう。
「お初にお目にかかります、神ヘスティア。ベルと婚約することになったことを報告するために参りました」
「え?」
「なっ・・・」
礼儀正しくお辞儀をしながら嘘を吐く私にベルは驚き、神ヘスティアは一瞬固まったがすぐにベルに跳びかかった。
「ベ~ル~く~ん!!君はボクというものがありながらい、い、いつのまにこんな女と!!」
「ち、違いますよ!神様!誤解です!桜さんもどうしてそんな冗談を言うんですか!?」
ベルにしがみついてギャーギャーと喚き散らす神ヘスティアにベルは否定するかのように私に非難の声を出すが、私は何も言わずただ黙ってベルが痛めつけられるのを見ていた。
「それで、キミが僕のファミリアに入ってくれるのは本当かい?」
「はい」
ベルが神ヘスティアを宥めて一段落落ち着いたところで私が神ヘスティアのファミリアに入りたいとベルに紹介してもらった。
「一応、理由を聞いてもいいかい?ボクのファミリアは零細ファミリアで入ってくれるというのは嬉しいけど理由は聞いておきたいんだ」
「私は別に大規模な派閥とかに興味はありません。受ける恩恵も同じならどこに入ろうが変わらないじゃないですか」
当たり障りのない答えに神ヘスティアは息を吐いた。
「はぁ、わかったよ。ボクもせっかく来てくれる希望者を無下には追い払えないさ。恩恵を刻むからベル君は外で待っていてくれ」
「わかりました」
そそくさと部屋から出ていくベルを確認した後、私は上着を脱ごうとしたとき。
「それで、キミの本当の理由を教えてくれないか?」
神ヘスティアが突然にそう尋ねてきて私の手が止まった。
「本当の理由とは?」
「とばけないでくれ。こう見えてもボクは神だ。キミが嘘をついていることぐらい見分けられる」
腐っても神というわけか・・・・。
私は息を吐いて観念して両手を上げる。
「参りました、神ヘスティア。流石は神と称えるべきでしょうか?」
「別に称えなくてもいいさ。ボクはキミが何故ボクのファミリアに入りたいのか、その理由を言ってくれればそれでいい」
はぐらかせてもくれないか・・・・。全く神というのはこうも厄介だとは。認識を改めないといけないな。
「私はあるものを探しています」
「もの?」
「そうです。ですが、それがなんなのかは私にもわかりません」
「ちょっ!ちょっと待っておくれよ!?キミは自分でさえわからないものを探しているというのかい!?」
「はい。大きさも形も色もどのようなものなのかも私にもわかりません。ですが、本能と呼べばいいのでしょうか?私自身がそれを求めている」
そう、何日も何か月も何年も探している。だけど、その足取りすらもつかめない。だけど、諦めきれない。
「私はそれを手に入れなければならない。そうしなければいけないという本能が私に訴えている」
私は自然に手に力が入り、拳を握りしめる。
「私はそれを手に入れるために生きている。いえ、生きなければならないのです」
それを手に入れるのが私の生きる目的なんです。と、神ヘスティアに私の本心を教えると、神ヘスティアは額に手を置いて息を吐いた。
「はぁ~、わかったよ。キミが別に悪事に手を染めようというわけでないのならボクはこれ以上何も言わないさ。だけど、一つだけ、これだけは言わせておくれ」
神ヘスティアは私の頭を押さえて自分の胸元へと誘導して私を抱きしめる。
「キミはボクの家族になるんだ。だから困っていることがあればいつでもボクやベル君を頼ってくれ」
「・・・・頼りになりそうにないので遠慮します」
「・・・・そこは素直に甘えておくれよ」
そうして私の背中にヘスティアの恩恵が刻まれた。
柳田桜
Lv.1
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
桜に跨っているヘスティアはこれを見て当然のように頷いた。誰だって最初は0から始まる。これからの努力次第でこのステータスも大きく変わるが今はこれで当然だ。
そう思いながらヘスティアは続いて魔法とスキルのほうに視線を向けると目を見開いた。
《魔法》
【氷結造形】
・想像した氷属性のみを創造
・魔力量により効果は増減
・詠唱『凍てつく白き厳冬 顕現するは氷結の世界』
これはまだいい。エルフでもないのにすでに魔法スロットが一つ埋まっているが前例がないわけではない為、まだ納得できる。問題はスキルのほうだ。
《スキル》
『不死回数』
・カウント3。
・24時間毎にリセットされる。
・一度死ぬたびに全回復する。
『目的追及』
・早熟する。
・目的を追求するほど効果持続。
・目的を果たせばこのスキルは消滅。
このスキルを見たヘスティアは頭を抱えることになる。