ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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陰で動く

「全く、ベルは本当にお人好しだ」

 

バベルを目指してメインストリートを歩く私は昨日の夜のことを思い出して溜息が出た。

リヴェリアさんに追い出されて、一応リリの情報を集めた。

そして昨日の夜にベルのナイフを盗んだのはリリだとベルに告げた。

それ以外にも金品を掠め取る『手癖の悪い小人族(パルゥム)』の正体もベルに教えた。

始めはリリは犬人(シアンスロープ)だと言ったがそれは変身の魔法で正体を誤魔化しているという推測まで全部ベルに告げた。

それなのにベルは・・・・。

 

『ごめん、桜。僕は・・・・それでも、あの子が困っているなら、助けてあげたいんだ』

 

それなのにベルは原作通りリリを助ける道を選んだ。

まぁ、どうするかはベル次第か・・・・。

 

「あ」

 

「あ、桜」

 

中央広場で私は偶然にも姉さんと遭遇した。

 

「桜はこれからダンジョン?」

 

「そうだけど、姉さんも?」

 

否定するように首を横に振る。

姉さんは道具を買いに行こうとバベルに向かっていた。

すると、姉さんが手を伸ばしてきた。

 

「途中まで一緒に行こう」

 

「それはいいけど、手は握らないから」

 

「・・・・・・・・・」

 

手を握らないと言ったら落ち込む姉さんに私は溜息を吐いて姉さんの手を取る。

 

「途中までだから」

 

「うん」

 

バベルまで一緒に歩き始める私と姉さんを見て周囲の冒険者がざわつきながらこちらを見ていた。

何人かは剣姫の妹とかどうか騒いでいる奴もいたがこの際は無視しよう。

 

「ねぇ、桜。桜と同じファミリアの子」

 

「ベルがどうかした?」

 

「・・・・・私のこと怖がってる?」

 

沈痛な顔でおどおどしながら言ってきた姉さん。

 

「ベルは別に姉さんのことを怖がってないよ。むしろ感謝している」

 

「でも、逃げちゃうのは私の事怖いって思っているんじゃ」

 

その言葉に納得した。

二回も逃げられたらそう思うのも無理はないか。

ベルもそうだけど姉さんも姉さんでこれは面倒だ。

 

「姉さん。今度無理矢理にでもベルをギルドに連れてくるからそこでちゃんと話し合って解決して」

 

「でも・・・」

 

「でもじゃない。ロープで巻き付けても連れてくるからいつまでもうじうじしないで言いたい事言い合ってそれでもし駄目だったら落ち込んでくれ。いちいち私に甘えてくるのは禁止」

 

「・・・桜、厳しい。リヴェリアみたい」

 

その言葉にリヴェリアさんが気の毒に感じた。

というか、リヴェリアさんみたいって私も気の毒ということか?

はぁ~、と息を吐きながら私は姉さんに言う。

 

「落ち込んでいる時は好きなだけ手を繋ぐのも抱き着くのもいいから。まずは話し合って」

 

「・・・わかった」

 

まったくこれじゃどっちが姉で妹かわからない。

いや、精神年齢的には私の方が年上か。この世界では14で通しているから忘れがちになるな。

 

「あ、桜ちゃん」

 

「エイナさん」

 

しばらく歩いていると今度はエイナに会った。

 

「・・・お、おはようございます、ヴァレンシュタイン氏」

 

何故か動揺気味に挨拶するエイナに対して姉さんは気にせずにぺこりと頭を下げる。

何故動揺しているのかは察しはつくけど。

 

「ヴァレンシュタイン氏と桜ちゃんはこれからダンジョンですか?」

 

「私はそうですけど、姉さんは道具(アイテム)を買いに来たんですよ。偶然鉢合わせしまして一緒に来たんですよ」

 

「ああ、だから」

 

エイナは私と姉さんの繋いでいる手を見て察してあえてそれに関しての追求はしてこなかった。まぁ、私的にもありがたいことだけど。

ふと、四人のガラの悪い冒険者が視界に入った。

防具に【ソーマ・ファミリア】のシンボルが刻まれているのを確認した私は咄嗟に読唇術で唇の動きを読んだ。

内容はリリから金目の物を盗んで殺すという野蛮な作戦だった。

 

「桜ちゃん」

 

声をかけてくるエイナも私と同じように読唇術を使ったのか表情が険しかった。

というかこの表情、見たことあるぞ。

私にベルを助けに行けという訴えってる。

はぁ、わかりましたよ。

私は姉さんと手を放す。

 

「姉さん。悪いけど私は先に行くから」

 

「待って」

 

駆けようとした瞬間に姉さんに呼び止められた。

 

「私も行く」

 

やっぱり来るのか。いや、予測はしていたけど。

 

「まだちゃんと謝っていないし、それに桜だけを置いて行けないよ」

 

「じゃ、行こうか。エイナさん、ちょっとベルを助けに行ってきます」

 

「気を付けてね」

 

私と姉さんはダンジョンを駆ける。少しでも早くベルを助ける為に。

 

「姉さん。こっち」

 

ダンジョンを駆け走り、下へと向かって行く私と姉さん。

 

「その子がどこにいるのかわかるの?」

 

「予測は出来る。たぶん10階層」

 

原作では確かそうだったけど原作通りになっている保証はない。

それでも行ってみる意味はあるだろう。

 

「おかしい。私が会った時は間違いなく駆け出しの冒険者だった。それをたった一月足らずで?」

 

疑問を抱く姉さんは当たり前の反応だろう。いや、普通の常識的な反応だと思う。

でも、そう考えると半月足らずで既に10階層に到達している私は常識外ということだろうか?

互いに思う考えをしながら私と姉さんは10階層へと足を踏み入れた。

霧の中で轟音が聞こえてそちらに視線を向けると炎が見えた。

ベルの魔法か。なら、そこか。

 

「姉さん。行くよ」

 

「うん」

 

私は夜桜と紅桜を姉さんは片手剣(デスぺレート)を抜いてベルを助けるべく駆ける。

ベルを襲おうとしているオークの腕を斬り落とす。

 

「ベル!」

 

「桜!?どうしてここに!?」

 

「いいから」

 

夜桜を鞘に納めて私はベルの腕を掴む。

 

「さっさと行け!!」

 

そして囲まれているオーク達の外へと投げる。

 

「あが!!」

 

頭から落ちたベルだけど問題はないだろう。無駄にベルは頑丈だし。

 

「ここは私たちが引き受けるからさっさとリリを助けに行け!」

 

「・・・・ごめん、ここをお願い!桜!」

 

走って去っていくベルを確認して私も意識を切り替えて夜桜を抜いてオーク達に視線を向ける。

 

「さぁ、戦ろうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして私と姉さんでオーク達は全滅した。

それにしても流石は剣姫と呼ばれているアイズ・ヴァレンシュタイン。

オークをあそこまで気持ちよく斬ることは私にはまだできない。

やはり、レベルを上げると変わるものなのか。

 

「桜」

 

深刻な顔で私に声をかけてきた姉さん。

 

「ベル・クラネルと桜はどうしてそんなに早く強くなれるの?」

 

それを聞いて私はアイズ・ヴァレンシュタインの根本は変わっていないことがわかった。

強さを求めるという点は原作と変わらずか。

 

「悪いけど。その質問は答えられない。私はベルが気になるから先に行くよ」

 

「あ」

 

その場から去る私。

流石にスキルのことを教えるわけにはいかない。

少なくとも今はまだ・・・・。

そんなことを思いながら7階層へと戻って来た私が見た光景は。

 

「ごめっ、ごめんっ・・・・ごめん、なさいっ・・・・・!」

 

「・・・・・うん」

 

大泣きしているリリを抱きしめているベルの姿。

それを見た私は壁に背を預けて息を漏らす。

ハッピーエンドってところかな?

私は何も言わずその場を静かに去った。

 

「とりあえずは主神に報告しておくとしよう」

 

あの駄神が何を言うかはわからないけど一応は言っておこう。

後で何か言われるのも面倒だし。

今なら【へファイストス・ファミリア】のところにでもいるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということがあったんですけどどうしますか?神ヘスティア」

 

「そうなことがあったのかい」

 

店の陰で隠れながら神ヘスティアに先ほどのことを報告する。

 

「ベルのことですから保護的な何かを求めにくると思いますけど」

 

「ボクもそう思うよ。ベル君は優しいからね」

 

「神ヘスティアはどう考えますか?ベルとリリルカ・アーデについて」

 

「そうだね・・・」と思案しながらもしっかりと手は動かす神ヘスティア。

 

「桜君はどうすればいいと思うんだい?」

 

オウム返ししてくる神ヘスティアに今度は私が思案する。

 

「私はここでリリルカ・アーデとは完全に縁を切るのも一つの手だと思います。【ソーマ・ファミリア】は金に執着しています。リリルカ・アーデを使って何らかの言いがかりをつけられる可能性もあります」

 

それがあたしの考えの一つだ。

【ソーマ・ファミリア】は金の亡者とも呼べる。そんな奴らがリリルカ・アーデを使ってくる可能性は充分に考えられる。それならそうなる前に関わらないようにするのも一つの考えだ。

 

「もう一つは表向きは小人族(パルゥム)リリルカ・アーデには死んでもらうというのも一つの考えです。リリルカ・アーデは変身の魔法を持っているのは確認済みですので」

 

どちらにしろリリには辛い選択でもあるだろう。今までの自分を殺さなければならないのだから。まぁ、碌な人生を歩んでいないリリにとっては何も変わらないだろうけど。

 

「うん、わかった。とりあえずは一度会ってみる必要ありそうだ、そのサポーター君には」

 

「わかりました。それではそれとなくベルとリリに言っておきます」

 

「任せたよ。あ、それと桜君」

 

「はい?」

 

神ヘスティアは急に私の頭を撫でてきた。

 

「君も少しは自分に優しくするべきだ。ボクでよければいつでも甘えてきてくれてかまわないんだぜ」

 

我儘、堕落、甘えん坊の三拍子揃った神ヘスティアに私は甘える気はない。

とりあえずはこう言っておこう。

 

「まともな神になってから言ってください」

 

「ぐはっ」

 

体をくの字に折る神ヘスティアを無視して私は店の外に向かいながら撫でられた頭に手を置く。

頭を撫でられただけなのにこんなにも心地がいいものなのか?

 

 

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