ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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兆し

「桜!?」

 

暗闇に招じてベル達に襲いかかって来たキャットピープルと四人の小人族(パルゥム)

キャットピープルとアイズに四人の小人族(パルゥム)は桜に襲いかかる。

ベルは桜を助けようと動こうとしたが同じ防具を身に纏った四人組がベルに襲いかかって来た。

 

「っっ!」

 

迎え撃つベルは咄嗟に《短刀》と《神様のナイフ》を抜き放った。

 

「ぐっ!」

 

四人の小人族(パルゥム)に囲まれた桜は夜桜と紅桜で何とか応戦するが防戦一方で何とか攻撃に耐えるのが精一杯だった。

目の前にいるキャットピープルと戦いながらアイズはキャットピープルと小人族(パルゥム)は第一級冒険者だということに気付いた。

 

助けなきゃ・・・!

 

助けに行こうにも目の前のキャットピープルがそれを妨害する。

下手に桜に助けに行けばやられる。なら、早く倒して助けないとと思いながらアイズは片手剣(デスぺレート)をキャットピープルに斬りつけるがキャットピープルは槍でそれを捌く。

チラリとベルの方にも視線を向けるアイズだけどベルはヘスティアを守りながら見事迎撃しているのを見て相手はベルと桜と同じLv1だとわかった。

問題は目の前のキャットピープルと四人の小人族(パルゥム)だけ。

アイズは意識を目の前のキャットピープルに向けて集中する。

一分一秒でも早く倒して桜を助けないと。

 

「クソが!」

 

アイズの耳に吐き捨てるような悪態が聞こえた。

それは桜を囲って攻撃を繰り出している四人の小人族(パルゥム)の一人の声だった。

 

「何で攻撃があたらねえ!?」

 

え?とその言葉に疑問を感じたアイズはキャットピープルに意識を向けながら視線を桜に向ける。

そこには防戦一方だった桜が四人の小人族(パルゥム)を捌き始めていた。

ありえない。とアイズの脳裏に過ぎった。

相手は一人一人が第一級冒険者。

それを四人を相手にしている桜は防戦一方でも凄いことなのに今の桜は確実に四人の小人族(パルゥム)の動きを見切って攻撃を捌き始めている。

本来なら瞬殺されてもおかしくないはずにも関わらず多少の手傷だけで少しずつ優先になりつつあった桜にアイズは驚きを隠せなかった。

そして、あることを思い出した。

桜が夜桜を持って黄昏の館を出て行ったときのフィンの言葉に。

 

『やれやれ、とりあえずはこれでよしとしよう。彼女とはいい関係を築かないと』

 

『珍しい・・・フィンがそこまで桜にこだわるなんて』

 

アイズにとって今のフィンの行動が珍しかった。

フィン本人が勧誘すること事態は珍しくはないがたった一人にこだわることはアイズに知る限り今回が初めてだった。

 

『まあね。出来れば、いや、何としてでもファミリアに入れたいと僕は思っているよ。それだけ彼女は逸材なんだ』

 

フィンの言葉にアイズは目を見開いた。

桜が本当にLv1と疑うぐらい強いのはアイズも知っているつもりだけど、自分達の団長であるフィンがここまで言わせた。

 

『彼女の東洋の技かな?それも凄いけど彼女、柳田桜の視る力と胆力それに冷静さ。どれも目を見張るものがある』

 

『視る・・・力?』

 

『観察力や洞察力と言えばいいのかな?彼女は他の比べるとずば抜けている。それと、アイズ。一つ聞くけど君は生き返れるとわかっていても死ぬことは出来るかい?』

 

アイズはすぐに首を横に振った。

例え生き返ると分かっていても死にたくないのは誰だって嫌なものだ。

 

『まぁ、僕もだけど。でも彼女はベートとの決闘でそれをやってのけた。自分の死さえも計算に入れてベートに勝った』

 

そして、フィンは桜に対してある推測を立てた。

 

『これは僕の推測だけど。彼女、柳田桜は強敵と戦えば戦う程ありえない速さで成長する』

 

あくまで推測だけどね。と小さく笑いながら言っていたフィンの言葉は正しかったことが今アイズの目の前に起きていた。

 

フィンの言っていた通りだった・・・・。

 

見事なフォーメーションを攻撃を繰り出す四人の小人族(パルゥム)相手にたった数分で攻撃を捌き切っていた。

 

見極めたい・・・・・。

 

強くなる為に桜の成長速度を見極めたいと思ったアイズは同時に何故そんなにも速く成長できるのかと疑問も抱いた。

桜だけじゃない。ベルも。

この二人の成長速度をアイズは知りたいと思った。

 

神聖文字(ヒエログリフ)見せてくれないかな・・・・。

 

「【ファイアボルト】!!」

 

そんなことを考えているアイズにベルは自身の魔法を放った。

 

「退くぞ」

 

キャットピープルの言葉に桜を囲んでいた四人の小人族(パルゥム)はベルが倒した冒険者を回収して闇の奥へと消えた。

それを確認した桜は夜桜と紅桜を手放してその場に膝をついた。

 

「桜!?」

 

「桜君!?」

 

「桜」

 

ベル、ヘスティア、アイズは膝をついた桜に駆け寄る。

致命傷は負ってはいない桜だけど体中が傷だらけになっていたアイズはすぐに手持ちのポーションを桜に飲ませる。

 

「ありがとう・・・姉さん」

 

「大丈夫?」

 

礼を言う桜に尋ねるアイズ。

この中で一番過酷だったのは紛れもない桜なのだから。

 

「何とか・・・・でも傷一つしかつけられなかった」

 

その言葉にアイズは目を見開く。防戦一方になりつつも桜は攻撃していたことに驚きながらもアイズは思考を働かせる。

本来ならLv1の桜が第一級冒険者と戦うのなら瞬殺されてもおかしくない。

それを防戦一方で耐えていただけじゃなくて攻撃もしていた。

 

「・・・・・・・」

 

もし、アイズがLv1で第一級冒険者と戦っていたら間違いなくなすすべなく負ける。

それなのに桜は傷を負わせた。

 

「しっかし、何だったんだい?さっきの子達は。・・・・まぁ、今はここから離れよう。騒ぎを聞きつけていつ人がくるかもわからないからね。桜君、立てるかい?」

 

「問題ありません」

 

立ち上がる桜とベルは視線をバベル、白亜の巨塔へと向ける。

 

「やっぱり・・・・」

 

桜は誰にも聞こえないぐらい小さな声でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今はギルドへと足を運ぶとギルドの中は慌ただしいことになっていた。

姉さんとの訓練を終えて私はエイナに会いに来ていた。

 

「エイナさん。少しいいですか?」

 

「あ、うん。ちょっと待ってね」

 

エイナに声をかけると作業机(デスク)に置いてあった資料を纏める。

 

「お待たせ。今日はどうしたの?ベル君は?」

 

「ベルは今は魔女に捕まっています」

 

「ま、魔女?」

 

シルに捕まったベルは今は雑用でもされているのだろう。逃げてきて正解だった。

 

「まぁ、それは置いときまして。エイナさんに聞きたいことがあるんですよ」

 

「何?」

 

「【ランクアップ】するにはどうすればいいですか?」

 

Lvを上昇させてLv2になるに為に何が必要なのかとエイナに尋ねるとエイナは頭に手を当てて溜息を吐く。

 

「はぁ~、どうしてそう君は私を困らせるようなことばかり言うのかな?」

 

そこまで困らせたことは・・・・あるか。

散々心配をかけて無茶なことをするたびに説教もされたな。後はダンジョンのモンスターの知識なども叩き込まれたっけ?

 

「【ランクアップ】するには」

 

あ、教えてはくれるのか。

 

そう思いながらエイナは【ランクアップ】のことについて教えてくれた。

神々さえも讃える功績、偉業を成し遂げる。

それが【ランクアップ】の条件。

 

「なるほど。ありがとうございます、エイナさん」

 

「なるほどってまさかまた無茶をする気じゃないでしょうね・・・」

 

疑いの目を向けるエイナに私はそっと視線を逸らす。

 

「いえ、単なる興味本位です」

 

「じゃあ、何で目を逸らすのかな?」

 

少しずつ怒気を高めていくエイナに私はダッシュでギルドを出た。

 

「あっ!桜ちゃん!無茶はダメだからね!」

 

逃げた私にエイナは大声でそう叫んだ。

 

ごめんなさい・・・・。

 

内心でエイナに謝罪した。

私は恐らく、いや、きっと無茶をするだろう。今までも、これからも。

そんな私を心配してくれるエイナに本当に申し訳ないと思っている。

前の小人族(パルゥム)達の襲撃。

私は防戦一方で四人の内一人にしか傷を負わせられなかった。

相手が第一級冒険者なのは理解している。

だけど、私が倒すべき相手は第一級冒険者とは比べ物にならない程の強敵。

猛者、オッタル。

あいつを倒す為には私にはまだまだ力がいる。

それに私にはまだ自分の目的を見つけれていない。

 

「私は弱いな・・・・」

 

ボヤキながら私は本拠(ホーム)へと帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

パリンと皿が割れた。

それもひとりでに割れた皿を持って私は嫌な予感しかなかった。

こういう時は嫌なことが起きる前触れみたいなもの。

他の食器を片付けながら私は割れた皿を隅に寄せた。

今日は朝からベルとリリとでダンジョンに潜る予定。

ベルはこれから遠足に行く子供のようにはしゃいでいた。

 

「桜!僕は先に行くね」

 

「あ・・・ベル君!」

 

バックパックを持って出て行こうとしたベルを神ヘスティアが呼び止める。

 

「あ、あー・・・・ほら、【ステイタス】を更新しておかないかい?ここ最近やってあげられなかっただろう?」

 

その言葉に神ヘスティアも私同様に嫌な予感がしたのだろう。

 

「ベル。せっかくだ。更新しておけ」

 

私の一押しもあってベルは【ステイタス】を更新する。

万が一の時の為か・・・・・。

更新していないとしているとでは多少なり変化がある。少しでも生き残れる可能性を神ヘスティアは上げておきたいのだろう。

 

「うわっ・・・・。神様、ごめんなさいっ、僕もう行きます!」

 

時計を見て血相を変えて扉へ直行するベル。

 

「ベル。私は道具(アイテム)を補充してから行くから。先にダンジョンに行っていてくれ」

 

「わかった!」

 

去っていくベルに私は神ヘスティアからベルの【ステイタス】を見て一驚した。

 

ベル・クラネル

Lv.1

 

力:S982

耐久:S900

器用:S988

敏捷:SS1049

魔力:B751

 

魔力を除いてオールS。いや、驚くのは『敏捷』のSSってどういうことだ?Sの999が最大ではないのか?

文字通り限界突破でもしたというのか?ベルは。

 

「・・・・・神ヘスティア。私のも【ステイタス】の更新をお願いします」

 

「・・・・ボク、もうお腹いっぱいだよ」

 

気持ちはわかるけど神ヘスティア。たぶん、お腹を破裂させてしまうかもしれません。

そして、【ステイタス】を更新してもらい神ヘスティアはとうとう頭を抱えた。

 

柳田桜

 

Lv.1

 

力:E488

耐久:D532

器用:D510

敏捷:E498

魔力:D590

 

これが前の私の【ステイタス】。

 

柳田桜

 

Lv.1

 

力:S901

耐久:S983

器用:S992

敏捷:S932

魔力:S999

 

そしてこれが今の私の【ステイタス】。

おかしい、明らかに異常すぎる。ベルみたいにSSはないがオッタルと戦った時以上に【ステイタス】の上昇値が上がっている。

2200オーバー・・・・・・。

前の1400オーバーをはるかに上回る上昇値。

何故こんなにも上がる?

確かに私はここ毎日はLv.6である姉さんと模擬戦をしたり、第一級冒険者とも戦ったりもしたけどそれがどう変化すればこんな上昇値が生まれる?

原因はやっぱり私のスキル【目的追及】の効果なのか?

だけど、私がいつ目的を追求した?強者と戦うことが私の目的なのか?

それとも私自身が原因なのか?

私はイレギュラーな存在。私という存在が何かを動かしているのか?

その影響がこのありえない【ステイタス】の上昇なのか?

そこで私はあることに気付いた。

もしかして私が探している目的と強くなりたいやオッタルを倒したいという目的が相乗効果を生み出しているのではないかと。

【目的追及】の欄には何を目的とは記されていない。だから、私自身が元から探し求めている生きる目的とこの世界に来てオッタルを倒したいという目的ができた。

その二つが相乗効果を生み出してこの異常な【ステイタス】を生み出している可能性が高い。

それなら今までの上昇値も納得できる。

それによくよく考えたらオッタルと戦ってからこの異常な上昇値が生まれたのだからそれ以外考えられない。

姉さんや四人の小人族(パルゥム)の第一級冒険者と戦ったのが後押しになったのだろう。つまり、オッタルを倒すまでこの異常な上昇値は止まらない。

 

「・・・・これはもはや呪いに近いぞ・・・・いや違うか」

 

異常な成長速度は私自身を指しているんだ。

目的を見つけるまで、達成するまで走り続けろ。そういうことだろう。

それも全速力で。

前にリヴェリアさんが言っていたことはこのことか。

がむしゃらに強さを求めている姉さんに似ているということは。

そして、その気持ちを組み込むかのように【目的追及】が私の背中を押している。

無茶でも無謀でもお前は全力で走り続けろ。

てな感じなのかな・・・・・。

結論に至った私は自分自身に呆れた。

まぁ、手っ取り早く強くなれるのならそれに越したことはないから別に困るものでもないか。

 

「それでは神ヘスティア。行ってきます」

 

「帰ってきておくれよ」

 

「はい」

 

心配そうに言う神ヘスティア。

私は道具(アイテム)を補充するために冒険者通りへと足を運んだ。

 

「あ、貴女は!?」

 

道具(アイテム)の補充をしていると一人のエルフの女性が私に声をかけてきた。

エルフに知り合いはいるが山吹色の髪をしたエルフに私は心当たりはなかった。

 

「失礼ですけどどちら様でしょうか?」

 

「・・・・ええ、そうでしょう。私と貴女は初対面です」

 

尋ねる私にエルフはまるで怨敵と話しかけているように恨めしい声音だった。

本当に私、何がしたか?

少なくとも誰かに恨まれるようなことをした覚えは少ししかないのだけど。

 

「私は名前はレフィーヤ・ウィリディス。【ロキ・ファミリア】です」

 

「ああ、神ロキのところの。私は「ご存知です。柳田桜さんでしょう」知っていましたか。姉さんから、アイズさんから聞いたのですか?」

 

「それです!」

 

どれ?

突然指を指された私は妙に気迫が出ているレフィーヤに一歩後退する。

 

「どうして貴女がアイズさんのことを姉さんと呼んでいるのですか!?」

 

その一言で私は全て察した。

こいつは姉さん、アイズ・ヴァレンシュタインのことが大好きなのだと。

こういう輩は何を言っても意味がないから面倒なんだよな。

どう回避しようか、もしくは逃げようか考えていると突然、地震が起きた。

それと同時、何かが爆発したかのような轟音が鳴り響いた。

咄嗟に私は、いや、私とレフィーヤは外に出ると外にはモンスターがいた。

 

「そんな・・・あれは・・・」

 

私の隣で横腹を抑えながら目を見開くレフィーヤ。

土煙が晴れてようやくモンスターの一望が明らかになった。

長い蛇を酷似するようなモンスター。

だけど、その先端は毒々しい極彩色の花。

 

食人花(ヴィオラス)・・・・」

 

花のモンスターの名前であろう言葉を漏らすレフィーヤを無視して私は夜桜と紅桜を抜き放つ。

目の前にいる食人花(ヴィオラス)は推定Lv3~4はあるだろう。

こいつを倒すことができたら間違いなく偉業の達成になるだろう。

【ランクアップ】も可能だろう。

こんなにも都合よく現れてくれるとはこれも神フレイヤの差し金なのか?

まぁ、そうだとしても乗るとしよう。

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

食人花(ヴィオラス)の咆哮と同時に私は走った。

私自身の為にもお前を倒す!

 

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