ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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剣姫と舞姫

『―――――――ォォォォォォ』

 

『遠征』の帰りで18階層にとどまっている【ロキ・ファミリア】。

地鳴りのごとき巨人の咆哮が鳴り渡った。

それが聞こえたアイズは何があったのか察した。

階層主である『ゴライアス』が暴れていることに。

アイズは同業者の身を案じて駆け出すと洞窟前でベル、ヴェルフ、リリが倒れていた。

ベル達の前まで近寄るアイズの左足をベルは掴んだ。

 

「仲間が、ゴライアスと戦っているんです・・・・助けてください・・・」

 

絞り出した懇願を告げるとベルは意識を手放した。

アイズは膝を折り、顔を確認する。

 

「ベル・・・・?」

 

ベルを見てアイズはすぐに気付いた。

自分の妹分である桜がいないことに。

そして、先ほどのベルの発言にアイズは理解した。

桜が単独でゴライアスと戦っていることに。

 

「行かなきゃ・・・」

 

アイズはすぐにでも桜を助けようと駆け出したかったがベル達を放っておくわけにも行かずにまずはベル達を自身のファミリアに頼んで急いで『嘆きの大壁』へと向かった。

到着したアイズの視界に入った光景は動けなくなっている桜にゴライアスが腕を振り下ろそうとしている光景だった。

―――助けなくては!

その一心でアイズは魔法を発動する。

 

「助けてッ!!」

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

桜の助けに応じるかのようにアイズは風を纏わせてゴライアスの腕を斬り落とした。

 

「え?」

 

驚く桜にアイズは桜が無事なことに安堵しながら桜に言う。

 

「助けにきたよ」

 

「・・・・姉さん」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

驚く桜にゴライアスは腕を斬り落とされて腰を落とす。

その間にアイズは埋もれている桜の左足を抜く。

 

「もう大丈夫だから」

 

優しい声音で話すアイズは愛剣である片手剣(デスぺレート)を構える。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】」

 

桜を守るためにアイズは魔法を発動させる。

 

「【エアリエル】」

 

風を纏ったアイズは疾走する。

風の斬撃がゴライアスの身を斬りつける。

疾走となって高速移動。

剣は暴風のようにゴライアスを攻撃。

ゴライアスの剛腕さえも払う風の鎧。

それを見た桜は息を吸うことすら忘れてしまう程圧倒的だった。

 

「これが【剣姫】、アイズ・ヴァレンシュタイン・・・・・」

 

初めて戦っている所を見た桜は改めてアイズの凄さを思い知らされた。

これが【剣姫】だと。

これがアイズ・ヴァレンシュタインだと。

 

「・・・・・・・・」

 

桜は今初めてベルの気持ちが理解できた。

こんなにも悔しいのだと。

こんなにも自分が弱いのだと。

そう思わされてしまう。

だけどそれ以上に。

 

私は甘えていた・・・・・・・・。

 

心のどこかで桜は自分のスキルに甘えていた。

【不死回数】という命のストックがあるスキルに甘えて多少無茶をしても死ぬことはないと。だけど、その結果がこれだ。

アイズが助けてくれなかったら死んでいた。

そんな自分が桜は許せなかった。

桜は自分のスキルである【不死回数】の発現に関して覚えがあった。

桜は今までに三度死にかけたことがあった。

重病にかかり危篤状態になり。

交通事故に会って何ヶ月も生死をさ迷い。

事件に巻き込まれて殺されかけた。

合計三回、死を回避した桜。

それが【不死回数】の発現した理由だと桜は確信していた。

だからこそ桜は甘えていた。

自分は死ぬことはないと。

だけど元より命は一人に一つだけ。

一人一人がたった一つの命を賭けて自分の願いを、望みを叶える為に高みを目指しているのに自分はどうだ?

今まで何回死んだ?いったいどれだけ命を粗末にしてきた。

そんな桜に願いを求める資格なんてあるだろうか?

いや、ない。

そう桜は断言した。

 

「すーはー」

 

一呼吸する桜は夜桜と紅桜を握りしめながら立ち上がった。

 

「・・・・・私には覚悟が足りなかった」

 

願いを、自分の目的を探すために命を賭ける覚悟が。

なら、覚悟を決めよう。

この身を削ってこの命を賭けて資格を得よう。

私の目的の為に。

 

「【瞬く間に散り舞う美しき華。夜空の下で幻想にて妖艶に舞う。暖かい光の下で可憐に穏やかに舞う。一刻の時間の中で汝は我に魅了する。散り舞う華に我は身も心も委ねる】」

 

「桜・・・・?」

 

魔法の詠唱を行う桜の足元に桜色の魔法円(マジックサークル)を展開しながら詠唱する桜にアイズはゴライアスとの戦闘中にも関わらず視線を桜に向ける。

そして確信する。

これは桜の必殺の魔法だと。

 

「【舞う。華の名は桜】」

 

最後の詠唱が終わり桜は魔法を発動させる。

 

「【舞闘桜】!!」

 

【舞闘桜】を発動させた桜はゴライアスに向かって駆ける。

 

「ハァァアアアアアアアアアアッッ!!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

連続攻撃を仕掛ける桜に吠えてゴライアスは桜を叩き潰さんとばかり桜に剛腕を向ける。

 

「させない!」

 

だけど、アイズは風でそれを妨害した。

風を纏う神速の速さで攻撃を繰り出すアイズ。

烈火の如く激しく、舞いながら戦う桜。

【剣姫】と【舞姫】、二人はゴライアスに攻撃どころか休ませる暇も与えずに攻撃をゴライアスに繰り出す。

連撃烈火(コンボレイジング)】のスキルによりゴライアスの硬い皮膚を次第に引き裂いていきとうとう魔石が見えるまでゴライアスの皮膚を切り裂いた。

 

「姉さん!」

 

叫ぶ桜の声にアイズは了承したかのように頷き、後方へと跳んで着壁する。

壁に足をつけた大勢で、アイズは風を剣に留めて必殺技を唱える。

 

「リル・ラファーガ」

 

アイズが纏う風に危険を察知した桜は即座にゴライアスから離れる。

そして閃光となったアイズが狙うのは丸見えとなっているゴライアスの魔石。

閃光のようになったアイズは一本の矢となってゴライアスの魔石を貫いた。

 

『――――――ガ』

 

魔石を貫かれたゴライアスは灰となって消えた。

17階層の階層主、『ゴライアス』との戦いは電光石火のように速く終わりを告げた。

二人の冒険者の手によって。

 

「・・・・終わった」

 

倒れそうになる桜をアイズは抱きしめる。

気を失っている桜にアイズは静かに言う。

 

「お疲れさま」

 

桜を背負って18階層へと戻ろうとした時、自分と同じ【ファミリア】であるフィン達が駆けつけてきた。

 

「やれやれ、どうやらもう終わっていたようだね」

 

槍を持ちながら苦笑するフィン。

 

「え~~、せっかく来たのに~」

 

戦えなかったことに駄々こねるティオナ。

 

「はいはい、終わってるなら仕方ないでしょ」

 

妹であるティオナをなだめるティオネ。

 

「アイズ。桜の治療をしよう」

 

アイズに背負われている桜に治癒をかけるリヴェリア。

 

「アイズ。君と彼女で倒したのかい?」

 

「うん」

 

尋ねるフィンにアイズは肯定する。それを聞いたフィンは面白げに笑みを浮かばせる。

 

「アイズ。そのままテントへ運んであげてくれ。その方が彼女も喜びそうだ」

 

「?」

 

微笑ましそうにアイズと桜を見るフィン達。

背中に桜を背負っている為顔が見えず首を傾げるアイズは知らなかった。

鬱憤が晴れたかのように眠りについている桜は子供みたいに安らかな寝息を立てていた。

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