ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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ダンジョン

ヘスティアより見せてもらった私のステイタスを見て色々、使いどころがありそうだなと思った。冒険者的には不死回数というスキルは非常に便利だ。一日に3回とはいえ死んでも大丈夫なのだから多少無茶しても問題ない。

 

「さて、初のダンジョンへと行くとしよう」

 

ダンジョンの入り口であるバベル前で気合を入れた私は朝早くから装備を整えて来ていた。

昨日の内に冒険者登録を済ませて支給された剣と防具を身に纏いまずは第一階層へと足を進めると目先に二体のゴブリンを発見する。

私はゴブリンたちに見つからないように隠れながら距離を縮め落ちている石を拾いゴブリンたちより遠くへ投げた。その音に気付いたゴブリンたちは音がしたほうに視線を向けたと同時に私は走って一体目のゴブリンの背中に剣を突き刺す。

もう一体のゴブリンが私に気付いて動こうとしたがその前に剣を抜いて今度はゴブリンの喉を切り裂く。最後に倒れたゴブリンの心臓を刺して確実にトドメを刺すとゴブリンは灰になった。そして、灰の中からにある魔石を拾う。

 

「これが魔石か。思っていたより普通だな」

 

拾った魔石を袋に入れてそのまま二階層へと向かう。

 

次は魔法を試してみるか・・・・。

 

色々試しながら下へと向かうと気が付けば私は六階層まで来ていた。ここまで数匹のゴブリンや蛙などがいたが、そこまでたいしたことはなかった。ゴブリンは囲まれれば少々厄介だが、そうなる前に殺せばいいだけで蛙は舌に気を付ければいい。というより、私は蛙が嫌いなんだ。次からは無視しよう。

 

「ん?」

 

ビキリビキリと何かが割れる音が聞こえる。この辺りのモンスターはすでに灰になっていることを考えて可能性があるとすれば・・・・。

 

「やはりか・・・・」

 

私の目の前で壁からモンスターが生まれた影のようなモンスター。

 

「なるほど、ベルが言っていたウォーシャドウというモンスターか」

 

新米冒険者では敵わないモンスターだから念のため注意してとベルが言っていたが目の前に現れたのなら仕方ないよな。

 

「おっと」

 

そんなことを考えている暇もないくらいウォーシャドウは長い腕と鋭い爪を使って攻撃してきた。剣の間合いに入るように私は前進するがウォーシャドウは私の動きに合わせて下がりつつ長い腕を使い攻撃しながら私を間合い入れさせないようにか、近づかせてくれない。

 

「なるほど、ベルが注意するわけだ」

 

ゴブリンたちに比べると厄介なモンスターだ。私は距離を取って魔法の詠唱を始める。

 

「【凍てつく白き厳冬 顕現するは氷結の世界】」

 

魔法の詠唱を終え、私は自分の周囲に氷の手裏剣を創造すると同時にウォーシャドウへと放つ。もちろん、これでは致命傷は与えられないのは百も承知。私は剣を槍投げのようにウォーシャドウの胸部へ向けて放つ。手裏剣はあくまでウォーシャドウの気を逸らすだけのいわば牽制。一瞬でも隙ができればいい。投げた剣はウォーシャドウの胸部に命中し、瞬時に私は跳び蹴りで剣の柄を蹴り、ウォーシャドウの胸に剣を深々と突き刺すことに成功。

 

「あ、しまった」

 

ここまで酷使したせいか剣が折れた。

 

「弁償か・・・・・」

 

溜息を吐きながら今日はここまでと断念して私は地上へと帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

「六階層まで行ったって言う口はどの口かな~」

 

「ほのしゅしふぁほ(この口だよ)」

 

地上へ出てギルドに行き六階層まで下りたことと剣を折ってしまったことをエイナに話すと笑顔で私の口を広げてきた。

 

「全くあれほど、ベル君と一緒に行って安全を確保して言ったのに初日で六階層まで下りる冒険者がどこにいるの」

 

「ここに」

 

自分を指して答える私にエイナは私の頭に手刀を入れてきた。意外に痛かった。

 

「いい?もう一度言うけど冒険者は冒険しちゃいけない。ダンジョンは何が起こるかわからないんだよ。危険を避けて生きて帰ってくればいいの」

 

「危険じゃないと判断したからこそ六階層まで下りた。その証拠に私の体に傷一つもついていない」

 

「たまたま今回はそうなっただけ!いい!?もうこんな無茶はしちゃダメだからね」

 

「・・・・善処します」

 

する気はないけど。どうせ、スキルのおかげで3回までは死んでも大丈夫なのだからそこまで気にする必要がどこにあるんだ?エイナのありがたくもないお説教から解放された私は魔石を換金。支給された剣の代金を引いて5000ヴァリス。最後に倒したウォーシャドウが思っていたより高く換金することができた。

 

「5000ヴァリスか。武具を買うとしてもこれじゃ買えないか」

 

支給された剣では私には合わない。もっと頑丈な剣でなければすぐに壊れてしまう。

 

「少し武具店に行ってから帰るとしよう」

 

あちこちある武具店を回りながら私は本拠へと帰宅した。

 

 

柳田桜

 

Lv.1

 

力:I0→50

耐久:I0→22

器用:I0→34

敏捷:I0→66

魔力:I0→44

 

《魔法》

 

【氷結造形】

 

・想像した氷属性のみ創造

・魔力量により効果増減

・詠唱『凍てつく白き厳冬 顕現するのは氷結の世界』

 

《スキル》

 

『不死回数』

 

・カウント3

・24時間毎にリセットされる。

・一度死ぬたびに全回復する。

 

『目的追及』

 

・早熟する。

・目的を追求するほど効果持続。

・目的を果たせばこのスキルは消滅。

 

熟練度上昇トータル200オーバー。ステイタスの更新を終えた私はヘスティアより写してもらった紙を見て納得した。初日で一気に6階層まで行ったうえに『目的追及』のスキルが発動していたおかげかここまで上がったのか。

 

「まったくキミは初日で6階層まで下りるってどういう神経をしているんだい?」

 

「太い神経をしているんですよ、私は。そんなことより神ヘスティア」

 

「ん?なんだい?」

 

「やはり、私とベルのスキルは秘密にしておいたほうがいいですようね?」

 

「当然だよ。ベル君は嘘がつけない子だから言ってはいないけど。神は常に娯楽に飢えているんだ。万が一にもこのことがバレたりしたら」

 

「それは大変ですね。ベルが」

 

「キミもだよ!ううん、キミはベル君以上に気を付けておくれよ!」

 

それはレアスキルが2つも出てきたら明らかに標的になる。一応は気を付けておこう。

 

「ただいま!神様!桜!帰ってきました!」

 

「おお!お帰り!ベル君」

 

「お帰り」

 

帰ってきたベルはすぐにステイタスを更新するが熟練上上昇トータル160オーバーという私負け劣らずの上昇率を出した。それを知った我らの嫉妬深い神ヘスティアはバイトの打ち上げにと早足でどこかへ行ってしまった。

 

「さて、食事にでもしようか?ベル」

 

夕方ぐらいの時間帯だし、少し早いけどたまにはいいだろう。というより朝から何も食べずダンジョンに潜って武具店巡りしていたからお腹がすいてしまった。

 

「あのさ、桜。食事なんだけど、今日は外で食べない?」

 

珍しくベルが外で食事に行こうと言い出した。ただでさ貧困極めている私たちには外食なんて夢のように思っていたが、今日の稼ぎはよかったのか?

 

「別にいいけど、どこに行くんだ?」

 

「豊穣の女主人っていう酒場なんだけど、いいかな?」

 

「いや、せっかくのベルの誘いを無下にはしないさ。今日はそこで済ませよう」

 

私とベルは豊穣の女主人の酒場まで向かっている途中に私はベルにある提案を出した。

 

「ベル。明日は一緒にダンジョンに行かないか?」

 

「僕は嬉しいけど、どうしたの?」

 

「今日1日ダンジョンに行って今の戦い方では厳しい。効率よく稼ぐにはベルと一緒に行ったほうがまだいい」

 

剣が脆くてダメだが、魔法を中心に戦えば今日よりかは大丈夫だろうが詠唱の時は無防備に等しい。ベルと一緒のほうが効率よく尚且つ無駄なく行けるだろう。

 

「うん、わかった。あ、そういえば今日はどこまで行ってたの?3階層ぐらい?」

 

「6階層」

 

「え?」

 

「あ、ここか」

 

話している間にベルが言っていた豊穣の女主人に到着。店の中からウェイトレスがやってきた。

 

「ベルさんっ」

 

「・・・・」

 

呆けているベルにエイナ式手刀を入れるとベルは再起動して下手な笑みを浮かべた。

 

「・・・・・やってきました」

 

「はい、いらっしゃいませ。お隣の方は?」

 

「柳田桜。桜でいい。ベルとは同じファミリアの仲間だ」

 

「シル・フローヴァです。よろしくお願いします。桜さん」

 

互いに一礼しあい挨拶するとシルが澄んだ声を張り上げる。

 

「お客様2名はりまーす!」

 

シルの案内の元カウンター席に座る私とベルなのだが、先ほどからベルが縮こまっているというか、肉食動物に囲まれた小動物のように震えていた。

 

「さ、桜はよく堂々できるね」

 

「こういうのは気にしない方がいい。誰かに喧嘩でも売られたら買えばいい」

 

「どうしよう。桜、僕より男前だ」

 

今度は頭を抱えるベル。忙しい奴だ。

 

「アンタがシルのお客さんかい?ははっ、冒険者のくせにどちらも可愛い顔してるねぇ!」

 

「いえいえ、店主も十分にお若いですよ」

 

「はは。そっちのお嬢ちゃんは随分と口が達者だね。だけど、まけたりしないよ」

 

値引きしようとしたが、にこやかに拒否された。この店主相手に値引きは無理か。剣を買う予算が欲しかったんだけど、コツコツと貯めるとしよう。

 

「何でもアタシ達に悲鳴を上げさせるほど大食漢なんだそうしゃないか!じゃんじゃん料理を出すから、じゃんじゃん金を使ってくれよぉ!」

 

「そうなの?ベル」

 

「違うから!シルさん!?」

 

「・・・えへへ」

 

「えへへ、じゃねー!?」

 

魔女だな、シルは・・・・。

 

「その、ミア母さんに知り合った方をお呼びしたいから、たっくさん振る舞ってあげて、と伝えたら・・・・尾鰭がついてあんな話になってしまって」

 

「絶対故意じゃないですか!?」

 

「私、応援しますからっ」

 

「まずは誤解を解いてよ!?」

 

「シル。パスタ大盛りと飲み物を頂戴」

 

「桜は何普通に注文してんのさ!?」

 

何って?店に来たら注文するのは当然だろう?そんな常識も知らないのか?ベルは。

ベルを無視してパスタを食べる私とベルの間にシルが座ってきた。

 

「仕事はいいの?」

 

「キッチンは忙しいですけど、給仕の方は十分に間に合ってますので。今は余裕もありますし」

 

視線を店主に向けると店主も許しを出した。

 

「シル。今度からはベルを騙すようなことは止めて。ベルは髪の色と同じぐらい真っ白な性格なんだから」

 

「僕、そこまで真っ白じゃないよ!?」

 

「はい。今度はもっと普通に誘いますね」

 

その黒い笑みがなければ信用できるのだけどね・・・・・。まぁ、騙されるのはベルだからいいか。

 

パスタを食べ終わり飲み物を飲み終わらせて私は1か所だけ空いている場所を指す。

 

「シル。どうしてあそこだけ誰も座ってないの?」

 

「ああ、あそこはお得意様が予約しているんですよ。そろそろ来る頃なんですけど」

 

突如、数十人の規模の団体が酒場に入店してきた。どうやらシルの言う通り予約していた客が来たようだ。それもロキ・ファミリア。そして、あの金髪がアイズ・ヴァレンシュタインとその他か。正直、ロキ・ファミリアで覚えがあるのはアイズとロキぐらいであとは忘れたな。

 

「べ、ベルさん?」

 

小心者のベルは見つからないように隠れている。そこまで気にする必要はあるものだろうか?

 

「よっしゃあ、ダンジョン遠征みんなごくろうさん!今日は宴や!飲めぇ!」

 

ロキの言葉にロキ・ファミリアたちは酒を飲み始める。まぁ、ベルもほっとけば落ち着くだろうし、静かに飲み物でも飲んでおこう。

 

「そうだ、アイズ!お前のあの話を聞かせてやれよ!」

 

「あの話・・・?」

 

静かに飲み物を飲んでおこうと決めづけていた私の耳にその話が耳に入った。

 

「あれだって、帰ると途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の一匹、お前が5階層で始末しただろ!?そんで、ほれ、あん時いたトマト野郎の!」

 

「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて返り討ちしたら、すぐに集団で逃げ出していった?」

 

「それそれ!奇跡みてえにどんどん上層に上がっていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていったやつ!こっちは帰りの途中で疲れていたってのによ~」

 

ああ、私がベルに初めて会った日のことか。

 

「それでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえ冒険者(ガキ)が!」

 

ベルのことか・・・・。

 

「抱腹もんだったぜ、兔みたいに壁際へ追い込まれちまってよぉ!可哀相なくらい震え上がっちまって、顔を引きつかせてやんの!」

 

私は視線をベルの方へ向けるとその手は血が出てもおかしくないぐらい握りしめていた。そんなベルの肩に優しく手を置く。流石の私でもこれぐらいの同情はする。

 

「ベル。無視しろ」

 

小さくそう声をかける。だけど、ロキ・ファミリアの連中はベルをネタに笑うばかり。そして、最後の狼男の言葉に。

 

「雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」

 

ベルは酒場から飛び出した。それも泣きながら。

 

「全く、だから無視しろと言ったのに」

 

「追わないのですか?」

 

突然、後ろから声をかけられて振り返る。そこにはウェイトレス姿のエルフがいた。

 

「追って私は何をすればいいんですか?店員さん」

 

「彼は貴女の仲間なのでしょう?」

 

「仲間ですよ。でも、だからといってそれがベルを追う理由にはなりません」

 

「どういう意味ですか?」

 

正義感が強いエルフさんなのか、妙に敵意を出してくるな。

 

「男の子が頑張っているんですよ?女の私はただ無事に帰ってくるのを待つ。私ができることはそれともう一つだけ。すみませんが、トマトを大至急いただけませんか?」

 

「・・・・わかりました」

 

敵意を押さえて奥の方からトマトを持ってきてくれたエルフのウェイトレスさんにお礼を言って私はトマトを狼男めがけて投げて見事顔へ的中。我ながらナイスコントロール。

 

「誰だ!?トマトを投げてきた雑魚は!?」

 

「第2弾!」

 

「がぁ!?」

 

手元にあったコップを掴んでついでに投げてみたがこれまた命中。だけど、これでこの場にいる全員が私が投げた犯人だとわかった。

 

「この雑魚が!?テメェいきなり何しやがる!?」

 

「別に、さっきからトマトトマトってキャンキャン吠えるワンちゃんがいたから餌を恵んであげただけだけど?」

 

「桜さん!」

 

「シル。邪魔しないで」

 

止めに入ろうとするシルだけど私が手で制する。狼男はズカズカと私の方へ歩いてきて私の前で止まる。

 

「テメェ、喧嘩売ってんのか?」

 

「ええ、喧嘩を売っているわ。あ、間違えた。喧嘩じゃなかった。躾だった。私の仲間をネタにいいように笑っている野良犬をせめてまともな家庭犬へとするための躾」

 

騒めく客たちやロキ・ファミリア達。だけど、そんなことはどうでもいい。

 

「表へ行こうか、ワンちゃん」

 

「・・・・・上等だ」

 

店の外へ向かって歩き始める私とワンちゃん。ベル、お前を貶した奴にはお灸を据えといてあげる。誰かの為に何かをするなんて滅多にしないんだから感謝してよ。

それとベルにとっては不本意極まりないと思うけどベル、ちょっと利用させてもらうから、私の目的の為にも。

 

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