ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか 作:ユキシア
アポロンが開催した『神の宴』から一夜が明け、翌朝。
柳田桜
Lv.3
力:I0→1
耐久:I0
器用:I0→2
敏捷:I0→1
魔力:I0
魔導:H 耐異常:I
《魔法》
【氷結造形】
・想像した氷属性のみ創造。
・魔力量により効果増減。
・詠唱式『凍てつく白き厳冬 顕現するは氷結の世界』
【舞闘桜】
・全アビリティ・魔法・スキル・武器の強化。
・察知能力上昇。
・体力・精神力消費増加。
・詠唱式『瞬く間に散り舞う美しき華。夜空の下で幻想にて妖艶に舞う。暖かい光の下で可憐に穏やかに舞う。一刻の時間の中で汝は我に魅了する。散り舞う華に我は身も心も委ねる。舞う。華の名は桜』
《スキル》
【不死回数】
・カウント3。
・24時間毎にリセットされる。
・一度死ぬたびに全回復する。
【目的追及】
・早熟する。
・目的を追求するほど効果持続。
・目的を果たせばこのスキルは消滅。
【
・連続攻撃により攻撃力上昇。
・『力』の超高補正。
初めて私はもの凄い低い上昇値が出てきた。
トータル4。
まぁ、ダンジョンに潜らずに『豊穣の女主人』で働いているからな。
【ステイタス】の更新を行って私は昨夜のことを考える。
神アポロンがあの程度で終わるとは思えない。
だからその場にいた神タケミカヅチと協力を要請してしばらくは【ヘスティア・ファミリア】と【タケミカヅチ・ファミリア】は一緒に行動を共にすることになった。
主に桜花と命だけど。
「それでは神ヘスティア。行って参ります」
「うん、アポロンのことがあるから気を付けておくれよ」
「わかっていますよ」
私は朝早くから『豊穣の女主人』に行かなければならない。というより、今は下手にダンジョンへは行かない方がいいが生活もある以上行かなければならない。
取りあえずはいつも以上に周囲に警戒するようにしてもらっている。
「それでは命。行こうか」
「はい、それでは桜花殿。ベル殿を頼みます」
「ああ」
私と命、ベルと桜花でしばらくは組んで行動する。
ベルと桜花は後でヴェルフ達と合流してからダンジョンに行くはずだ。
Lv.2が三人もいれば何とかはなるだろう。
いや、一番警戒が必要なのは私か。
まぁ、『豊穣の女主人』にはリューもいるし、人目もあるから問題はないとは思うが。
「っ!?」
「どうされました?桜殿」
「あ、いや、何でもない」
廃教会の上を見るが誰もいない。誰かに見られた気がしたがまた神フレイヤか?
それにしては嘗め回すような感覚はなかったが警戒しすぎで疲れているのか、もしくは慣れてしまったか?
取りあえずはまずは自分の身を守らないといけないか・・・・。
『豊穣の女主人』に向かいながら私は命に謝る。
「悪いな、命。こんな面倒なことに巻き込んで」
「い、いえ、友を助けるのは当然ですよ、桜殿」
そう言ってくれる命に私はもう一度「悪い」と言いながら神アポロンのことについて考える。ハッタリとはいえ神ロキが私達の後ろ盾になっていることを知ったはずだ。
二大派閥の一角である神ロキの言葉を信じるとまではいかないだろうけど疑いはするはず、ならそうそう仕掛けては来ないだろうし、そもそも『
三文芝居をもう一度してきたところで私達に効果があるとも流石に思わないはずだ。
まぁ、何とか解決策を考えていかないと・・・・・。
解決策を命と相談していると『豊穣の女主人』に到着した。
「それでは自分は周囲の警戒に当たります」
「ああ、でも無理はするなよ」
「はい」
命は『豊穣の女主人』周辺の警戒に当たり私はウエイトレス服に着替える為に酒場の中に入ろうとしたが――――――――大爆発が発生した。
「っ!?」
大爆発が起きたであろう場所から煙が上がっているのを見て私は目を見開いていた。
私達の
「桜殿!?」
周囲の警戒に当たろうとしていた命も今の爆発を聞いて私の方へ駆けつけてきた。
「命!
「はい!」
私は命と共に
もう襲ってきたっていうのか【アポロン・ファミリア】!?いくら何でも早すぎるだろう!?
たった一晩明けての朝早くからの襲撃に驚きながらも思考を巡らせる。
神ロキの話がハッタリだとバレたのか?
いや、あの時の会話には神ロキの私情も交じっていた。ハッタリだとは気付くのは速すぎる。それなら何かあるのか?【ロキ・ファミリア】を敵に回しても大丈夫な何かが?
思考を巡らせながら私と命は
「ひどい・・・・・」
命がそう呟く。
私も何とも言えない感情が渦巻いているが今はそれどころじゃない。
ベル達がいないということは【アポロン・ファミリア】はベル達を追っているのだろう。
「う・・・・」
「桜花殿!?」
瓦礫の中から桜花が這い上がってきた。
命はすぐに駆け寄って桜花にポーションを飲ませる。
「アポロンだ・・・【アポロン・ファミリア】が襲撃してきた・・・・」
桜花の言葉に私は納得した。
襲撃したのは【アポロン・ファミリア】。ベルは桜花を巻き込まない為にこの場から離れたのだろう。だけど、神アポロンはどういうつもりなんだ?
ダンジョンではなくこんな地上の朝早くからの襲撃をすれば間違いなくギルドから
それを覚悟で襲撃したとしても神ヘスティアが『
私はそこで気付いてしまった。
最悪な答えに。
「命!お前は今すぐにヴェルフ達や他の【ファミリア】に救援を要請してくれ!?」
「し、しかし桜花殿が・・・ッ!」
「俺は大丈夫だ。行け、命」
桜花の言葉を聞いて命は私の指示に従ってくれた。
「桜花。悪いがお前はここにいてくれ」
それだけを告げて私は駆け出す。
ギリと歯を噛み締めながら自分の愚かさに苛立ちを感じた。
私の考えが足りなかった・・・・・ッ!
いや、神アポロンの執念深さを甘く見ていた!
神アポロンはベルを殺して神ヘスティアを強制送還させるつもりだ。
恩恵が刻まれている神ヘスティアがいなくなれば私の背中に刻まれている恩恵は消える。
そして、邪魔者であるベルを抹殺して私を孤立させたところで無理矢理恩恵を刻ませることにより私は【アポロン・ファミリア】の眷属にされる。
先に恩恵を刻んでしまえば神ロキの言葉が本当だったとしても私を手に入れている時点で神アポロンの目的は達成している。
そのことに気付いたのか・・・・ッ!
そして、私が
いや、今はベル達を助けに行かないと。
ベルのことだから助けを求める為にギルドの方向へ向かっているはず。
「いたぞ、【舞姫】だ!?」
「捕まえてアポロン様に献上しろ!」
「一人で行くな!多勢で攻めろ!」
駆け付けている私に向かってそれぞれの得物を持って襲ってくる【アポロン・ファミリア】の眷属。
私は夜桜と紅桜を鞘から引き抜き、一気に加速する。
「どけっ!!」
【ランクアップ】した私の脚はLv.2の時より圧倒的に速く【アポロン・ファミリア】に接近して斬り払う。
「く、【紅蓮の炎よ――」
「【凍てつく白き厳冬 顕現するは氷結の世界】!」
遠方より詠唱を唱えるエルフよりも速く私は
『魔導』のアビリティがIからHに上がった為か、より早く詠唱を終わらせることができた。
「ぐ・・・強い・・・・」
「これが・・・【舞姫】・・・・・」
私に斬られて倒れている【アポロン・ファミリア】の連中が呻いている。
「おい、ベル達はどこに行った?」
私は倒れている一人の男の
「ハッ・・・・もう兔は・・・終わりだ・・・あいつはきっと今頃・・・ヒュアキントスに殺され・・・ヒギッ!?」
男の肩に夜桜を突き刺して男は悲鳴を上げるが私は淡々と訊ねる。
「もう一度訊く。どこだ?言わなければ次は右眼を抉り取る」
指を伸ばして男の右眼に近づけると男は根を上げてベル達がいるであろう方向を指した。
「フン」
私は男を投げ捨てて急いで向かう。
無事でいてくれよ・・・・ベル、神ヘスティア・・・ッ!
ベル達がいるであろう方向に駆け出していると炎雷が空を昇っているのが見えた。
今のはベルの【ファイアボルト】。ということはまだベル達は生きている。
脚に力を入れて更に加速する私。
「【舞姫】だ!」
「相手はヒュアキントスと同じLv.3だ!全員でかかれ!!」
だけど、私の進行を阻止するかのように襲いかかってくる【アポロン・ファミリア】・・・・・いや、【アポロン・ファミリア】と三日月に杯のエンブレム、【ソーマ・ファミリア】も私に襲いかかってくる。
「チッ!」
【ソーマ・ファミリア】を見て私は舌打ちする。
恐らくはリリのことがバレたのだろう。死んだと思われているはずのリリだけどいずれかはどこから情報が洩れて何らかの因縁が来るかもしれないとは思っていたがこんな形で来るとはな。
タイミング的にはリヴィラの街での騒動が原因だろう。
なら、リリの身にも何かあるはずだが、今はそれどころじゃない。
向かってくる数十人、ざっと見て五十人以上はいる冒険者達。
軽装から重装備、近距離から遠距離で攻撃してくる【アポロン・ファミリア】と【ソーマ・ファミリア】の冒険者。
クソ!こんなところで時間を喰っている場合じゃないのに!
いくらLv.は私より低くてもこの数相手だと時間がかかる。
そうこうしている間にもベルと神ヘスティアが・・・・ッ!
・・・・・・仕方がない。
私はやむなく【舞闘桜】の詠唱を始める。
「雑魚が粋がってんじゃねえッ!」
「え?」
詠唱を始めようとしたその時、私の横を疾走しながら罵倒と共に【アポロン・ファミリア】と【ソーマ・ファミリア】を蹴散らす
「ワンちゃん・・・」
敵を蹴散らす
「【
「何故【ロキ・ファミリア】が【舞姫】を!?」
ワンちゃんの登場に混乱する【アポロン・ファミリア】と【ソーマ・ファミリア】。
いや、私も少なからず困惑はしているが何でこんなところに?
「ワンちゃん。どうしてここに?」
そう尋ねるとワンちゃんは鋭い目で私を睨む。
「勘違いすんじゃねえ。ロキにテメエを助けろと泣きつかれなきゃ誰がテメエを助けるかよ」
ああ、なるほど。
その光景がもの凄く鮮明に想像できた。
「さっさと兔野郎を追いかけやがれ。ここは俺が何とかしてやる」
【アポロン・ファミリア】と【ソーマ・ファミリア】を睨み付けるワンちゃんにたじろぐ、【アポロン・ファミリア】と【ソーマ・ファミリア】。
「ありがとう」
「テメエがあんな変態野郎にくたばったら俺は変態野郎より弱ぇことになっちまうだろうが。負けたら承知しねえからな。いずれテメエは俺がぶっ殺す」
悪態を吐くワンちゃんに私は内心でツンデレだなとぼやくが直接口には言わないでおこう。
「俺と戦うまで負けんじゃねえぞ」
「・・・・・ああ」
それだけを言って私は別方向からベル達のいるところへと走る。
ワンちゃんのおかげでこの場はなんとかなった。
神ロキの機転の良さに感謝しないと。
おかげで助かったが、これ以上の【ロキ・ファミリア】の助力は恐らくは無理だろう。
『神の宴』で神ロキが私の後ろ盾だと宣言していてはいるから大丈夫だとは思うが、これ以上は世話になっている【ロキ・ファミリア】に迷惑をかけてしまう。
ここからは自分の【ファミリア】で何とかしないと。
それはさておき、後でワンちゃんにはご主人様を助けたご褒美をあげよう。
そんなことを考えながらベル達に向かって私は走り続けると路地裏でとうとうベルと神ヘスティアを発見した。
血まみれでボロボロに倒れているベルに顔を青ざめている神ヘスティア。
振り下ろされる
「ぐっ!?」
「桜君!?」
後退するヒュアキントスを無視して私はすぐに
「よく神ヘスティアを守ったな、ベル」
「・・・・桜」
袖でベルの顔についた血を拭いながら私はベルに称賛の言葉を贈る。
本当にたった一人で二つの派閥から神ヘスティアを守りながらよく戦った。
「ベル。こいつの相手は私がする。お前は神ヘスティアと一緒にここを離れて神ヘスティアを守れ。神ヘスティアを守れるのはお前だけだ」
ベルの心情に気を使いながら神ヘスティアを守れと指令を与えて私はヒュアキントスと向かい合う。
「もうすぐ命が応援を呼んできてくれる。それまで神ヘスティアを守れ」
「・・・・・・うん」
苦虫を噛み締めるような顔で了承するベル。
その表情を見て私は神ヘスティアとこの場を離れていくベルにそれ以上何も言わなかった。
悔しいのだろう。ヒュアキントスに負けて、私に助けられて、自分が弱いと思い知らされた。自分がもっと強ければと悔やんでいるのだろう。
だけど、安心しろ。ベル。
お前は強くなれる。誰よりも強くなれることを私は信じている。
「よくここまで来れたな、柳田桜」
長剣の
「そっちこそ、よくも私の主神と仲間を傷つけたな」
夜桜と紅桜を構えてヒュアキントスを睨み付ける。
「兔を逃がしたようだが、無駄な足掻きだ。私の仲間がいずれ捕られ、貴様は我が栄えある派閥の一員にしてやる―――――喜べ」
「お断りだ。あんな醜悪で変態の神の眷属に誰がなるものか。それとな、これだけは言わせてもらう」
紅桜の切っ先をヒュアキントスに向ける。
「あまりうちの団長を、ベルを甘くみるな。ベルは私以上に強いぞ」
「戯言を。まあいい、貴様を我が
駆け出す私とヒュアキントス。
それぞれの得物をぶつけ合いながら私とヒュアキントスの戦いが始まった。