ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか 作:ユキシア
シュリーム古城跡地。
【ヘスティア・ファミリア】と【アポロン・ファミリア】とで行われる『
攻めの【ヘスティア・ファミリア】。
防衛の【アポロン・ファミリア】。
交戦期間は三日と定まれ、勝利条件は対象であるヒュアキントスが期間内まで生き延びるか、ベル・クラネルを戦闘不能にすれば【アポロン・ファミリア】の勝利。
『
盛り上がる神々達はオラリオ創設神であるウラノスの許可により『
観戦する中には【アポロン・ファミリア】が勝つと疑わない者もいれば【ヘスティア・ファミリア】が勝つことを信じる者達もいる。
「柳田桜とは別れは済ませてきたかい?」
「・・・」
賑わう眼下の街並みを他所に、アポロンがヘスティアに近づく。
薄笑いするアポロンに対してヘスティアはそっぽを向いて『鏡』だけを見る。
『それでは間もなく正午となります!』
実況者の声がはね上がる。
冒険者が、酒場の店員達が、神々が、全ての者の視線がこの時『鏡』に集まった。
そして、
『
号令のもと、大鐘の音と歓声とともに、戦いの幕は開いたと同時に突如、シュリーム古城が大爆発を起こした。
『――――――――はぁ!?』
その時誰もが目を見開きながら『鏡』を凝視した。
ヘスティア、ヘルメス、アスフィを除いて。
「おーおー、少し火薬の量が多かったか?」
開始を告げる銅鑼の音とともに起爆させた爆弾により【アポロン・ファミリア】のいる古城は大爆発が起きて半壊、いや、七割は崩壊した。
「・・・・桜様。聞いてはいましたが本当に容赦がないですね」
「全くだ。もう終わりかけてんじゃねえか」
リリとヴェルフが半眼で私に言ってくるがそんなこと知ったことか。
「というよりこれはルール違反なのではないでしょうか?」
「命。いい言葉を教えてやる。バレなきゃ反則も一つの技だ」
頬を引きつかせる命に私はいいことを教える。
「でも、大丈夫なのかな?流石にちょっと危ないんじゃ?」
「あいつらも『恩恵』を授かっているんだから死にはしないだろう」
「桜。今回ばかりは目を瞑りますが二度目は私も言わせてもらう。卑怯だと」
何で皆して私を責めるように見てくるんだ?
私はただやられた分をやり返しただけだ。
十倍で。
一週間前。
私はベルとヴェルフに別れた後に【ヘルメス・ファミリア】団長であるアスフィ・アル・アンドロメダに会っていた。
「それで、私にいったい何の用でしょうか?」
そう尋ねてくるアスフィさんに私は壊された
以前、リヴィラの街でモルドがベル相手に使っていたこれを拾っていた。
「これ、便利ですよね?姿を消せるなんて。噂で聞いたのですがこれをお作りになられたのはアスフィさんらしいじゃないですか?」
「・・・・・・ええ、確かにそれを制作したのは私です。それが何か?」
「いえ、実は少しお願いがありまして」
「お願い、ですか?」
警戒するアスフィさんに私は前の世界で実際に作られていた爆弾のことについて話した。
ある程度の設計は覚えていたが私一人では容易に作ることができない。
そこで『神秘』のアビリティを持っているアスフィさんに協力を要請しにきた。
一対一の決闘ならまだしも【ファミリア】総力戦になったらこちらに勝ち目はほぼない。アポロンの方が数が多い。
人海戦術で体力や魔力を削られていき負けるのがオチだ。
総力戦になれば『
「・・・・・・なるほど、確かに貴女の今言われた設計と私の『神秘』があれば可能ですが、私が貴女の【ファミリア】に協力をする理由がありません」
確かに。アスフィさんとはリヴィラの街で共に戦った仲だがこの人は一つの【ファミリア】を任されている団長。利益なしに協力してくれるなんてことは私も考えてはいない。
「アスフィさん。気になりませんか?私がこのような知識を持っていることに」
「・・・・・・・・」
そう、今話した爆弾だけでもこの世界にはない知識だ。
流石に細かいところやマニアックなものまではわからないが、それでも一般的に知られ渡っているものなら覚えている。
「先ほどの爆弾だけではありません。私はそれ以外にも貴女なら制作可能だと思われる物の知識を私は持っています」
殲滅に関しては私の世界の兵器の方が強いからな。
「貴女が協力して頂けると言うのであれば私は知識を提供します。ダンジョン攻略が少しは楽になるのではないですか?」
私の言葉に思案するアスフィさんに私は前もって告げる。
「ちなみに何故私がそのような知識を持っているかは秘密です」
今の私の言葉は裏を返すと私と協力したらその知識がアスフィさんだけに渡すという意味がある。
私の言葉の意味が通じたのか揺れるアスフィさんに私は止めをさした。
「そういえばリヴィラの街で神ヘルメスに裸を見られたな・・・」
怯むアスフィさんに私は続けて。
「どなたかが制作した
冷や汗を流すアスフィさん。
「ここで断られたら私はショックで裸を見られたことを神ロキを中心にあちこち尾鰭付きで言ってしまうかも」
「わかりました!わかりましたから!協力させて頂きます!ええ、協力しますよ!」
「ご協力ありがとうございます。アスフィさん」
「・・・・・もうやだ」
何とか
後に『
リリを助けに行くときまで私とアスフィさんは不眠不休で作り続けていた。
私はリリを助けた後、迂闊にも寝てしまったがその間もアスフィさんは作り続けてくれていたことに私は心から感謝した。
そして、『
もちろん、ばれないように建物の死角に置いたり、コーティングしたりなどして。
まぁ、万が一ばれてもこれが爆弾だとわかるのは私とアスフィさんぐらいだからどこかに捨てるか、無視しているだろうし、爆発したら証拠も残らない。
ほぼ不眠不休でこの世界で初めて作った私とアスフィさんの製作品名、
ちなみにアスフィさんは終わったと同時に気絶するかのように寝たが主神である神ヘルメスに無理矢理どこかに連れて行かされていた。
そして、現在。
私は
「それじゃ、作戦通りにリューは『クロッゾの魔剣』で城壁を破壊してその後は私とヴェルフと命と一緒に敵を倒す。リリは出来る限りベルのサポート。そして、ベル」
私はベルと向かい合ってベルに尋ねる。
「勝てそうか?」
その問いにベルは力強く頷いた。
「僕はあの
その答えに私だけではなく皆が笑みを浮かばせていた。
「なら、団長。号令を」
副団長である私はこれ以上何も言わない。後は団長を信じて任せるのみ。
「勝とう」
その言葉に私達は既に粗方崩壊している城に向かって駆け出した。
「攻めてきたぞぉ!!」
「嘘だろ!?何でこんなタイミングで!?」
「というよりいったい何が起きやがった!?」
混乱している【アポロン・ファミリア】達は私達が攻めてきたことに更に混乱する中でリューが『クロッゾの魔剣』を使って城壁を破壊。
そこから私、ヴェルフ、命で【アポロン・ファミリア】に襲いかかる。
「クソッたれ!テメエ等何しやがった!?」
「さあな?私達も何も知らないさ」
白々しく誤魔化す私は次々と【アポロン・ファミリア】の眷属達を倒していく。
「なんだっ、なんだ今のはァ!?」
瓦礫の中から出てきたヒュアキントス。
ベルは真っ直ぐヒュアキントスに向かって突進する。
襲いかかるベルにヒュアキントスは剣を薙ぎ、短刀と長剣が、火花を放ち、激突した。
「全員!ベルとの一騎打ちの邪魔をさせるな!」
ベルとヒュアキントスの一騎打ちに邪魔が入らないように【ヘスティア・ファミリア】は二人を取り囲むようにベルを守る。
【アポロン・ファミリア】の眷属達を倒しながらベルとヒュアキントスの決闘に視線を向けると力ではヒュアキントスが勝っていたが速さはベルの方が上。
明らかにこの一週間でベルは成長していた。
「―――――誰だっ、お前はっ!?」
あまりの変化にヒュアキントスが叫び散らした。
「私は、Lv.3だぞ!?」
戦慄と動揺を重ねるヒュアキントスに対して、ベルの体がぶれる。
獰猛な輝きを宿す紅緋色の短刀が駆け抜け、ヒュアキントスの
正直、私も驚いている。
ベルがあそこまで成長していることに。
【ステイタス】は見れなかったけどベルの動きから察すると恐らくSかそれ以上のはずだ。私もLv.3であるけどベルとは戦いたくないな。
いったいどんな
苦笑しながら敵を倒していくとヒュアキントスは短剣を振り下すと衝撃と風圧が発生。
その一撃に瓦礫ごと地面は抉れてベルは後方へ下がると同時にヒュアキントスも後方へ下がった。
「――――――【我が名は愛、光の寵児。我が太陽にこの身を捧ぐ】!」
ヒュアキントスは魔法の詠唱を始めた。
「【我が名は罪、風の悋気。一陣の突風をこの身に呼ぶ】!」
魔法を詠唱するヒュアキントスにヴェルフ達は詠唱を止めようと動き出すが私が手で制した。これはベルとヒュアキントスの一騎打ち。
邪魔をしてはいけない。
そのことはリリにも深く言ってある。
「【放つ火輪の一投――――】!」
「【ファイアボルト】!」
魔法の詠唱に気付いたベルは速攻魔法を放ってヒュアキントスに当て、ヒュアキントスの全身は焼き焦げて
「【―――――来たれ、西方の風】!!」
ベルはもう一度速攻魔法の構えを取る。
「やぁー!?」
瓦礫の中から出てきた長髪の女がベルに奇襲された為に射撃が阻害された。
そして、ヒュアキントスの魔法が発動した。
「【アロ・ゼヒュロス】!!」
太陽光のように輝く大円盤。
「【ファイアボルト】!」
一歩遅れてベルも魔法を放つが効かず、ベルは回避しようとしたが追尾効果がある魔法なのかベルを追いかける。
「【
瞬間、円盤が輝き大爆発した。
「――――がっっ!?」
ヒュアキントスの魔法によりベルは吹き飛ばされた。
「ベル様!?」
「ベル!?」
「ベル殿!?」
「クラネルさん!?」
この場にいるリリ達が悲痛の叫びをあげる。
体が何度も跳ねて、血の粒を散らしながら転がっていく。
ベルは何とか勢いを殺して立ち上がるが右腕はだらりと垂れ下がっていた。
「もらったぞ!!」
止めの一撃を刺そうと立ち尽すベルに短剣を装備して突撃する。
ベルの体はもうボロボロ。立っているのがやっとだろうと誰もが思うだろう。
ヒュアキントスの勝利だと誰もが疑ってはいないだろう。
普通に考えればだが・・・・・。
ベルの体は確かにボロボロだけど、ベルの目はまだ諦めてはいなかった。
まだ勝つことを諦めてはいなかった。
「勝て!ベル!!」
私もベルの勝利を疑うことなく信じている。
だから勝て、ベル。
お前自身の力で勝利を勝ち取ってみせろ。
私はどこまでもお前を信じているから。
急迫するヒュアキントスの短剣はベルを串刺しにするかのように襲ってくる中でベルは後ろに身を引いたがヒュアキントスは短剣を握り締めて剣尖を繰り出す。
次の瞬間、ベルは地面に背中から倒れ込んで短剣を回避。
更にその反動で両足を振り上げてヒュアキントスを上空へと蹴り上げた。
上空へと蹴り上げたヒュアキントスにベルはかかとを地面に埋めて疾駆した。
「―――――ふッッッ!!」
「――――――ま、待てぇえええええええええええええええええええええ!?」
突貫するベルにヒュアキントスの顔は恐怖と絶叫に歪む。
「うあああああああああああああああああッッ!!」
振り上げたベルの左手が、渾身を持って振り抜かれて撃砕する。
「がぁっっっ!?」
放たれた左拳がヒュアキントスの頬に叩き込んで吹き飛ばした。
三〇Mほど吹き飛ばされたヒュアキントスは立ち上がることはなかった。
そして、落ちてくるベルを私はキャッチする。
「お疲れ。お前の勝ちだ、ベル」
私達、【ヘスティア・ファミリア】は『
さて、神ロキ経由で賭けておいた金は後で取りに行くとしよう。
私達は【アポロン・ファミリア】に勝った。
『――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!』
オラリオの上空に、大歓声が打ち上がるなかで勝利を確信していたアポロンは顔を真っ白にして立ち尽していた。
『鏡』の光景が、アポロンを現実から逃避することを許してはいない。
「――――――ア~ポ~ロ~ンッ」
ゆらぁと円卓の席から立ち上がる神ヘスティアは茫然自失しているアポロンへと近づいた。
「ひ、ひぃいっ!?」
「覚悟はぁできているのだろうなぁ?」
地獄の底から響くような低い声音に、アポロンは盛大に尻もちをつく。
果てしない鬱憤を溜め込んだヘスティアは爆発寸前だった。
「ま、待ってくれヘスティアっ!?こ、これは出来心だったんだっ、君の子供が可愛かったからつい悪戯を・・・・た、頼むっ、どうか慈悲を恵んでくれ、慈愛の女神よ!私達は求婚し合った仲じゃないか!?」
「だ・ま・れ」
嘆願を封殺するヘスティアのツインテールはヒュンッヒュンッヒュンッ、と荒ぶらせるヘスティアの怒りがどれだけ深いのかを悟ってしまった。
「勝った暁には、要求を何でも呑むと約束したなぁ?」
腰を抜かしたアポロンにヘスティアは怒りの咆哮を上げた。
「ホームを含めた全財産は全て没収、【ファミリア】も解散――――そして主神である君は永久追放、二度とオラリオの地を踏むなァ――――――――ッッ!!」
「ひぎゃああああああああああああああああああああああっっ!?」
絶叫が轟く中、ヘスティアは言う。
「と、ボクはそう考えていたよ」
「へ?」
『神の審判』が下ったと思われた矢先にヘスティアが胸元から一枚の紙を取り出す。
「桜君に頼まれてね。君の罰は桜君に決めさせてもらった」
はぁと溜息を吐きながらヘスティアはアポロンに言う。
「桜君に感謝しなよ。やりすぎたことは許す気はないけど君のことを考えて罰を作ってきたらしいからね」
「お、お、おおお・・・・・」
両手を祈るように掴んで感涙するアポロンはこの場にいない桜が慈愛に満ちた女神のように見えた。
他の神々も慈悲深いなど、地上の女神など桜を称えているなかでヘスティアが紙を開いてアポロンに与える罰の内容を読み上げようとした瞬間―――――ヘスティアは凍った。
固まるヘスティアに騒めくなか、ヘスティアは震えながらそれを読み上げた。
「ホーム及び【ファミリア】が所有しているものを全て【ヘスティア・ファミリア】に譲渡。【ファミリア】解散の後、主神であるアポロンは永久追放・・・・」
「え?」
呆けるアポロン。
桜が考えた内容は先ほどヘスティアが叫んだものと全く同じだった。
そこまでは・・・・。
「続けて、主神であるアポロンが個人的に所有しているものも【ヘスティア・ファミリア】へ譲渡。加えてギルドに神アポロンの名義で金を貸りてそれも【ヘスティア・ファミリア】に譲渡。但しい、一億ヴァリス以上のみ・・・・無理なら他から借りて来てください・・・・」
震えながら読み上げていくヘスティアにアポロンは魂の抜けた抜け殻のようになり、それを見ていた神々の顔も引きつっていた。
神ロキですらうわぁと根を上げる程。
「さ、最後に一言だけ・・・」
ヘスティアは青ざめた表情をしながらコホンと咳払いしてアポロンに告げる。
「二度と私達に近づくんじゃねえ。この変態が!」
桜の代わりに告げるヘスティア。
アポロンは悲鳴すら上げられなかった。
先ほどまで慈愛に満ちた女神のように見えていた桜が今度は悪徳非道の魔王如き笑みでアポロンを嘲笑っているように見えた。
桜はアポロンを嘲笑いながら地獄へ借金を背負わせた状態で叩き落した。
「気分はどうだ?ヒュアキントス」
『
「私の言った通りベルは強かっただろう。何で自分よりLv.が低いベルに負けた敗因を教えてやろうか?」
そう言いながら返事をしないヒュアキントスに私は勝手に答える。
「ベルは決して諦めなかった。感情論だろうけどベルは最後の最後まで諦めずに戦って勝利した。お前に負けてからずっとベルは挫けそうになりながらも決して諦めはしなかった」
諦めずにヒュアキントスに勝つ為に姉さんのしごきを受けてきたのだろう。
その結果がこれだ。
「お前の敗因はベルを甘く見ていた。その油断が敗北に繋がったんだ」
そう、ヒュアキントスはベルと会ってからずっとベルを見下していた。
見下して、馬鹿にして、ベルに負けた。
相当な屈辱ものだろうな、こいつにとっては・・・・・。
「それから、お前は前に私は人の上に立つ人間だと言っていたな。確かに私も才能ある者や優れている者が人の上に立つべきだと思っていた」
私はそんなものに興味はなかったからどうでもよかったが私は気付いた。
人の上に立つべき者はどういう奴なのかを。
「誰よりも優れている者が上に立つのではなく慕われる者が上に立つのだと私は思う」
ヴェルフやリリ達に囲まれながら勝利を喜びあっているベル達を見て私は微笑む。
そう、ベルのような奴こそが人の上に立つべきなんだ。
だからこそベルが団長なんだ。
「私が言いたいのはそれだけだ。二度と私達に近づくなよ」
どうせ、こいつのことだから自分の主神にでも付いて行くだろうけど・・・・。
私はベル達のところへ駆け寄って私も勝ったことに喜んだ。
巨大な屋敷が建つ、広い庭の中で神ヘスティアは大いに威張っていた。
「じゃーん!どーだ、これが今日からボク達のホームだ!」
『おお~~っ』
感嘆の声を上げるベル達。
『
神ヘスティアが私の頼み通りしてくれて本当によかった。
これで私の身も守れて金も手に入って借金を大幅に返すことができた。
リリも賠償金をちゃんと【ソーマ・ファミリア】に払ってきてくれたおかげで紅桜も戻ってきた。
全て万事解決。皆、幸せ。
これで良し。
私も嬉しくて頬を緩めているなかで神ヘスティアが改装の要望を訊いてくる。
「へ、ヘスティア様っ、どうかお風呂の導入を!?」
「ヘスティア様ー!作業用の炉を造ってくれ!」
命とヴェルフが興奮気味に懇願するが神ヘスティアは待てと鷹揚に告げる。
「ようやく胸を張って【ファミリア】を名乗れるようになったんだ、先にエンブレムを決めようじゃないか」
『確かに!』
【ファミリア】を象徴するエンブレムは私達にはまだない。
せっかく新しく始めるのならここで決めるのもいいかもしれない。
どんなエンブレムにしようかと考えていると実はすでに神ヘスティアが考えていた。
「へっへーん、ずっと前から考えていたんだー」
ほどなくして神ヘスティアは羊皮紙に描いたエンブレムを私達に見せてきた。
そこには炎と鐘が描かれていた。
なるほど、神ヘスティアとベルから始まった【ファミリア】だし、これがいいかも・・・・ん?
羊皮紙に描かれている炎と鐘の周りには所々に点?のようなものが垂れていた。
「神ヘスティア。この点みたいなのはなんですか?」
「桜の花びらだよ!?と言っても見たことないから普通の花びらのようだけど・・・・」
桜の花びら・・・・・?
そんな疑問を思っている私に神ヘスティアが答えた。
「ボクとベル君そして桜君の三人で始めた【ファミリア】じゃないか!」
その満面な笑みに私も笑った。
そんな粋な計らいをしてくれるとは・・・・・・。
嬉しくも恥ずかしい気持ちが心を踊る。
「さぁ、今日が本当の意味で、ボク達の【ファミリア】の門出だ」
これから私達の【ファミリア】が始まろうとしていた。
その時だった。
私達のホームの庭にこちらに歩み寄ってくる者がいた。
「ヒュアキントス・・・・」
元【アポロン・ファミリア】団長であるヒュアキントスが私達に向かって歩み寄ってきた。ヒュアキントスの姿を見た私達は臨戦態勢にはいるがヒュアキントスは変わることなく歩み寄ってくる。
「・・・・いったい何の用だ?ヒュアキントス。私は二度と顔を見せるなと言ったはずだぞ?」
『
問いかける私を無視してヒュアキントスは真っ直ぐベルのところに行き頭を下げた。
「すまなかった。謝って許されることではないが謝らせてくれ」
その光景に私を含めて全員が目を見開き驚いていた。
こいつ、ベルに謝る為にここに来たのか?
いったい何がこいつをここまで変えた?
「い、いえ、もう済んだことですし気にしてません!そうですよね!?神様!」
「うん、ボクは許すよ。悪いのは全てアポロンだからね」
ベルも神ヘスティアも突然のヒュアキントスの謝罪に驚きながらも許した。
許しを得たヒュアキントスは今度は私のところにへとやってきて――――――膝をついた。
「え?」
突然、私の前で膝をついたヒュアキントスに困惑しているとヒュアキントスは私の手を取って顔を上げる。
「【舞姫】、いや、柳田桜。私は貴女に惚れた」
「はぁ!?」
惚れた。その言葉に再び私を含めて全員が驚く。
え?どういうこと?だってこいつは神アポロンに身も心も捧げる程心酔しているんじゃなかったか?
困惑する私にヒュアキントスは語った。
「私は気付いた。見守るように暖かく仲間を包み込む眩しくも優しい・・・・・そう貴女こそ太陽のような女性だと確信した!」
演説のように語るヒュアキントスに私は何が何だかわからなくなった。
「この身も心もアポロン様に捧げていた。だが、『
自分の胸を強く叩くヒュアキントス。
そして、わかった。
ヒュアキントスを変えたのは他でもない私だ。
「どうか私の伴侶になって欲しい」
堂々と皆の前でポロポーズされる私の体はどんどん熱くなっていく。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・う。
「うああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」
私は走った。全力でこの場から逃げた。
どこをどう走っているのか訳も分からず私はとにかく走った。
「なんで・・・なんでよりにもよって私の初めて告白される相手があの変態の眷属なんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
その日の太陽は何時にも増して憎たらしいぐらい輝いているように見えた。