ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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ホーム完成前日まで

【アポロン・ファミリア】との『戦争遊戯(ウォーゲーム)』が終わり、今は【ゴブニュ・ファミリア】によりホームの改修をして貰っている。

ベル達はダンジョンに行って冒険者依頼(クエスト)を受けたりなどしている間に未だにダンジョンに行くことを許されていない私は神ヘファイストスのところに借金の返済に来ていた。

先程から受け取った金を計算する神ヘファイストスは確認が終えたのか、一息入れて笑みを浮かばせる。

 

「お疲れさま。これで貴女の分は終わったわ」

 

「そうですか・・・」

 

安堵する私。

神アポロンが個人的に所有していた金銀財宝を売り払い、加えて一億でようやく私の紅桜のローンが終わった。

だけど、まだベルのナイフである二億ヴァリスが残っていた。

まぁ、元々が三億二千ヴァリスだったのが残り二億と考えれば精神的には少しは楽にはなるな。

借金(ローン)は楽にはならないが・・・・・。

 

「前も言ったと思うけど貴女が払う必要なんてないのよ?何百年かけてもあのバカに払わせるのだから」

 

「・・・・流石に額が額なので」

 

私が初めて神ヘスティアから紅桜とベルのナイフの値段を聞いた時は絶句した。

その後、滅茶苦茶説教したが・・・・。

 

「それにあんなんでも一応は主神ですので」

 

「・・・・・そう、ヘスティアもいい子に恵われているわね」

 

苦笑する私に神ヘファイストスは嬉しそうに目を細める。

 

「それじゃ、桜。残りのローンもしっかり返しなさいとヘスティアに伝えといてちょうだい。それと、あまり子に頼るな、もついでにね」

 

「わかりました。それでは失礼します」

 

神ヘファイストスの伝言を預かって私は神ヘファイストスの部屋を出る。

さて、次は入団希望者を集める広告紙をギルドの掲示板や他で貼っていい場所を探さないといけないな・・・・。

私は入団希望者の広告紙を見る。

 

『【ヘスティア・ファミリア】、入団希望者募集!来たれ、子供達!!』

 

共通語(コイネー)で記された広告紙には私達の【ファミリア】のエンブレムが描かれている。

まずは借金があることをバレないようにしないといけないか・・・・。

高級紙にしっかりと二億と記されている契約書を見て溜息を吐きながらとりあえずは広告紙を張りに行く。

万が一バレたら絶対に誰も入団してこないだろうし。

そう思いながら取りあえずはギルドの掲示板に広告紙を貼り、その後も許可をとっては街中のあちこちに広告紙を貼っていく。

 

「さて、そろそろ時間だな・・・・」

 

昼前になると私は『豊穣の女主人』の厨房を借りて新しい本拠(ホーム)の改修をしてくれている【ゴブニュ・ファミリア】の差し入れを作る。

差し入れと言っても簡単な握り飯と飲み物だけだけど。

せっかく改修してくれているからこれぐらいはしておかないと・・・・。

差し入れを作り終えて私は現在改修中の本拠(ホーム)へと足を運ぶ。

 

「【ゴブニュ・ファミリア】の皆さん!差し入れを持って来ましたよ!」

 

「おおおおおおっ!待っていたぜ!!」

 

「至福の一時だぁぁああああ!!」

 

「テメエ等!作業は中止だ!飯にするぞ!!」

 

私の一声に驚くほど速く動き出す【ゴブニュ・ファミリア】の団員。

唯一、普通に歩いてくるのはその主神である神ゴブニュだけだった。

私は一人一人に差し入れを渡すとそれにがっつき始める。

 

「いやー、働いている時に来る美人の飯はうめえ」

 

「【舞姫】。俺と結・・・」

 

「お断りします」

 

何を言うかわかった私は思わず殺気を【ゴブニュ・ファミリア】の親方に放ってしまった。まずいな、変態(ヒュアキントス)のせいで少し敏感になっていやがる。

皆の前で告白してきたせいで私は街中を全力で駆け出していた。

戻ってきた時もあの変態(ヒュアキントス)はまだいたし、その上で【ファミリア】に入団させてくれと何度も懇願してくるわ、ああ、クソ。もっと殴っとけばよかった。

いや、ただでさえあの変態神(アポロン)の元眷属で変態なんだ、今以上に変な属性まで加わったら私が心労で倒れてしまう。

頭を振って変態のことを振り払う。

気を入れ替える為に現在改修中のホームを見るとすでに粗方完成していた。

もう明日には終わりそうだな。

新しく始める私達の本拠(ホーム)と【ファミリア】に感慨深くなっていると私の袖を誰かが引っ張ってきていた。

振り返ると子供達が私の傍に来ていた。

 

「『舞姫』、遊んでー」

 

「あそんでー」

 

遊んでくれとせがんでくる子供達の頭を撫でながら微笑する。

 

「もう少しいい子で待っていたら遊んであげるからちゃんと待っていろよ。返事は?」

 

『はーい!』

 

よろしい。後で遊んであげよう。

 

「美人で飯も上手くて子供にも好かれる・・・・完璧だ」

 

「【舞姫】!やっぱり俺の嫁になってくれ!?」

 

「歳を考えてください、親方」

 

「というより犯罪ですよ、ロリコン」

 

「お前ら酷いな!?」

 

賑やかな【ゴブニュ・ファミリア】の差し入れを渡し終えて私は約束通り私は子供達の相手をする。

夕方ぐらいまで子供達の相手をして子供達を家に連れて帰ってから私は『豊穣の女主人』でウエイトレス姿になって仕事に取り掛かる。

厨房で溜まっている食器を洗い終えた後で給仕の方に取り掛かる。

 

「うわぁ」

 

取り掛かろうと表に行くと見たくない者を見てしまった。

 

「やぁ、桜さん。注文いいだろうか?」

 

変態(ヒュアキントス)が爽やかな笑みを浮かばせながら私に声をかけてきた。

私は作り笑みを浮かばせながら変態(ヒュアキントス)に近づく。

 

「ご注文は?」

 

「貴女を」

 

「ブチ殺しますよ」

 

「冗談です。この店で人気があるものを。もしくは貴女の手料理を」

 

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

 

さっさと注文を取って速攻で離れる私。

だけど、変態(ヒュアキントス)は「つれないなぁ・・・」と軽く流した。

さて、残飯でも持って行ってやるか・・・・。

軽く復讐してやろうと思ったが流石にミア母さん達に迷惑をかけるわけにも行かず注文どおりのものを持ってきた。

それから近くに寄る度に注文を出し「ウエイトレス姿の貴女も美しい」「【ファミリア】の新設おめでとうございます」「ぜひ、私を【ヘスティア・ファミリア】に」「つれない貴女もいい」「今度私と一緒に食事でも」「明日の予定は?」「好きな趣味は何でしょう?」と話を振ってきた。

う、ウザい・・・・・・・・・。

正直、今すぐにでもこいつをぶん殴りたい衝動が私の全身を駆け巡る。だけど、今のあいつは客としてここに来ている。無駄に高いやつばかり注文してくるしこの店で働く者としてはいい鴨だが、私はいつにも増して疲労が溜まる。

今日、絶対に神ヘスティアからダンジョンに行っていい許可を取ってやる。

変態(ヒュアキントス)のせいで余計に疲れた私はミア母さんに懇願した。

 

「ミア母さん。私、厨房に行ってもいいですか?」

 

「駄目だよ」

 

「・・・・どうしてですか?」

 

私は料理が出来ますよ。何なら三人分働く上に給料半分、いや、三割減らしてもいいから厨房へ行かせてほしい。

そう懇願したらミア母さんは不敵に笑った。

 

「あんたが表にいた方が儲かるだろう?」

 

その言葉に私はがくりと肩を落とす。

そう、少なくともこのオラリオで今、一番勢いがある派閥は間違いなく【ヘスティア・ファミリア】。『戦争遊戯(ウォーゲーム)』の時の熱がまだ収まってはいないからだ。それに団長であるベルがLv.3へ到達したことは皆知っている。

更には眷属希望者の広告紙をあちこち貼っている。

【ヘスティア・ファミリア】の副団長である私がここで働いていることにより私がどんな奴かを見ようと来る輩もいる。

つまり私が表にいると客が増えて、その分の金も入ってくる。

はぁとまた私の口から溜息が出た。

 

「ほら、溜息なんてついてないでさっさと料理を運びな」

 

「・・・・・はい」

 

結局、店が終わるまで私はずっと変態(ヒュアキントス)に話を振られ続けた。

はぁ、何で私って変態に好かれやすいんだ?

セクハラしてくる神ロキ。

ストーカーのようにほぼ毎日嘗め回す様に見てくる神フレイヤ。

私を狙ってきた変態神(アポロン)

その元眷属で現在進行形で言い寄ってくる変態(ヒュアキントス)

その他、有象無象。

私に言い寄ってくる奴にまともなのが一人もいない。

せめて少しでもいいから常識を持って話しかけて欲しい・・・。

そんな切ない思いを抱えながらまた溜息を出して裏口からゴミを捨てに行っていると

銀髪の女の子が倒れていた。

 

「・・・・・エルフ?」

 

女の子を抱きかかえると長い耳を見てすぐにエルフと判明したが、その女の子の身なりが酷かった。布一枚の服に傷だらけの体で裸足。更には首輪のようなものまでつけていた。

纏めると、奴隷が脱走して力尽きた感じだ。

そう感じさせられるエルフの女の子を見て私はとりあえずは同じエルフであるリューのところにその女の子を運んだ。

 

「このエルフはオラリオの外にあるどこかの国か貴族の奴隷でしょう」

 

治療しながらリューに事情を話しているとリューがそう告げる。

この世界には奴隷がいるんだな・・・。

いや、私の世界にも公にはないが裏では奴隷のような人達もいるんだろうけど。

 

「見たところ脱走をしてきたようですね」

 

苛立ちが滲み出ているリューはエルフの首についている首輪に触れる。

 

「どうやらただの首輪のようだ。大人しかったのか、もしくはこのエルフの主人の趣向か、どちらにしろ運がいい」

 

リューは素手で首輪を握りつぶして破壊した。

魔道具(マジックアイテム)の中にはつけた者の居場所を知らせて、身動きを封じる首輪が存在するらしいがこのエルフの首についていたのはただの首輪だったらしい。

 

「まったく腹立たしい。このような子供にまで・・・・」

 

正義感の強いリューはこの女の子の主人に怒っているのだろう。

それも自分と同じ種族だから余計にだろうな・・・・。

 

「商人の荷物に紛れてか、この都市の誰かの商品として来たか。それはこの子が目を覚ましてからでいいだろう」

 

「桜、どちらへ?」

 

部屋を出て行こうとした私にリューは声をかける。

 

「私より同じエルフであるリューの方が目を覚ました時に話しやすいだろう?明日、また来るからそれまで面倒を頼む」

 

それだけ言って私は部屋を出た。

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