ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか 作:ユキシア
とあるホテルの一室にて私は今、神フレイヤと会っている。
神ヘルメスを使って私は神フレイヤと交渉に来ていた。
「それで、私に何の用かしら?」
微笑みながら問いかけてくる神フレイヤに私は話した。
「神イシュタルが貴女を狙っています」
「そうみたいね」
紅茶を飲みながら平然とする神フレイヤの様子を見てどうやら【イシュタル・ファミリア】のことについてある程度の情報は握っているみたいだな。
「神フレイヤ。単刀直入に申し上げます。神イシュタルは貴女を倒す算段をつけている可能性があり、私とベルを貴女への意趣返しとして狙っている可能性もあります」
そこで初めて神フレイヤの動きが止まり、動揺らしい動揺を見せた。
「そう、イシュタルがね」
初めて聞いた底冷えする声を聞いただけで私の背筋は凍ったかのように冷たくなった。
間違いなく怒りに触れているな・・・・・。
なら、そこを利用するしかこの女神を動かす手段はない。
「そこで神フレイヤ。貴女にお願いがあります。万が一に【イシュタル・ファミリア】と戦うことになりましたら貴女と貴女の【ファミリア】の力をお借りしたい」
それが私の考えた最善。
神イシュタルはいずれ神フレイヤに戦争をしかけてくる可能性が高い。
なら、狙われている神フレイヤに私とベルが狙われていることも話した上で協力、いや、【フレイヤ・ファミリア】を利用する。
【イシュタル・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】の戦争中に私達は
正直、かなり気が引けるがこれ以外に上位派閥である【イシュタル・ファミリア】から逃れる手はない。
全ての責任を【フレイヤ・ファミリア】に押し付けた上で私達は目的を達成する。
「いいわよ」
神フレイヤは了承の言葉を口にした。
「それが本当ならイシュタルは線を越えたことになるし、私もそれだけは許せない」
表情は変わらず微笑んでいるがその声は本当に怖かった。
私の主神、ヘスティアは怒りながらも多少なりの慈悲や慈愛がある。
だけど、神フレイヤは慈悲や慈愛があった上で本気で怒っている。
「前に貴女には楽しませてくれたものね。いいわ、利用されてあげる」
「っ!?」
微笑みながらあっさりと私の考えを見透かす神フレイヤに私は目を見開き、冷や汗を流す。
私の驚いている反応が面白かったのかくすくすと神フレイヤは笑いながら私の頬を撫でる。
「神を利用するのは少しいけないわ。でも、その度胸と私を楽しませてくれたお礼として目を瞑ってあげる」
「・・・・・・ありがとうございます」
心臓をわしづかみにされるような感覚で頬を撫でられる私の本能が逆らうなと言わんばかりに体を動かすことができない。
「貴女の魂。前に直接見た時よりもっと美しくなっているわ。ふふ、ますます貴女が欲しくなったわ」
笑みを漏らしながら言う神フレイヤに私は何も言えなかった。
それでも構わないのか、気にしていないのか、神フレイヤは私の頬から手を離して立ち上がる。
「それじゃあね、桜。いずれ私のモノにしてあげるわ」
去って行く神フレイヤが部屋から出て私はやっと体を動かすことができた。
体中から汗が流れ、床へと落ちる。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
荒い呼吸をゆっくりと整えていきようやく呼吸が落ち着き始めてから私は解放されたかのように安堵した。
許してくれたのは・・・本当だろう・・・・。
そうじゃなかったら私は存在していない。
利用しようと企んでいた私に少し罰を与えたのだろう。
万が一に私が気に入られていない奴だったら何をされていたかはわからなかったと考えるとゾッとした。
汗を拭い、私は立ち上がって部屋を出て外の空気を吸って気持ちを落ち着かせる。
取りあえずは何とかなった・・・・・。
後はこのことをベル達に話す前に『殺生石』のことについて調べておかないと。
まだ謎が多い【イシュタル・ファミリア】。
その謎を解明しない限り、どうにもできないだろう。
『殺生石』のことは極東の神である神タケミカヅチに明日聞いてみるとしよう。
そう思いながらホテルを出ると外はすでに夜。
夜の道を歩きながら
「さ、桜殿・・・!今までどちらに?」
「後のことを考えて少しな。それよりその恰好・・・歓楽街に行くつもりか?」
「・・・・・・・」
私の言葉通りだったのか目線を逸らす命。
「春姫・・・・友人に会いに行くつもりか?」
「・・・・・・はい」
肯定した命は私の横を通り過ぎようとしたが私が命の腕を掴む。
「命。万が一にその春姫に会ってお前はどうするつもりだ?」
「自分は・・・・自分は話を・・・」
「ハッキリ言う。何もできないのなら動くな。それが春姫の為にでもある」
ハッキリと言った私に命は目を見開くが私は構わずに続ける。
「いたとして話を聞くと思うか?知り合いであるお前に自分が娼婦をしていると知られたらその春姫の心はどうなる?身を堕とした自分の姿を見られて平気でいられるわけがないだろう?」
「し、しかし・・・・ッ!」
「しかし何だ?自分なら何とかできるのか?それならぜひ聞かせてくれ。そしてそれができるのなら私は止めたりはしない。むしろ協力してやる」
「・・・・・・ッ」
私の言葉に顔を赤くする命の手は拳を作り強く握りしめているのを見て私は言う。
「命。今のお前に出来ることはない。考えもなしに自分の感情のままに動くな。それが春姫の為でもあってお前の為でもある」
そう、例え普通の娼婦だろうと【イシュタル・ファミリア】の末端だとしても今の私達には何もできない。だからこそ、私がこうして今も動いているんだ。
「それでも・・・それでも自分は春姫殿を放ってはおけませんッ!!」
私の手を振り払って駆け出していく命の背中を見ながら私は息を吐く。
これはどうするか、いや、今はそれよりも他に考えなければならないことがある。
それを終わらせてからでも遅くはない。
問題があるとしたら【イシュタル・ファミリア】がいつ仕掛けにくるかだ。
そこら辺も神ヘスティアと相談した上でベル達に警戒するように言っておかないと。