ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか   作:ユキシア

42 / 46
甘えん坊

「ティア。そこはそうじゃなくて……」

 

ラキア王国が進軍している中でオラリオはいつも通りだった。

平和が続くなかで私は自室でティアに医術を教えている。

知識、手当て、診察、触診、縫合の知識と人体の構造などを。

ティアには【シルワトゥス】という治癒魔法を持ってはいるし、この世界には回復薬(ポーション)という傷を治す薬もあるからもしかしたら必要ないことかもしれないがそれでもティアの性格を考えればこういうことも身に着けた方が良いかもしれない。

ティアは優しい。

誰かを傷つけるぐらいなら自分が傷つく方が良い。

だからティアには攻撃系の魔法がないのだろう。

ティアの性格を考えて下手に攻撃を教えるよりも治療師(ヒーラー)としても生きていけるように教えておいても損はない。

 

「あ、あの……」

 

「どうした?」

 

「ここが………」

 

「わからないのか?」

 

コクリと頷くティアに私はティアのわからない場所を教えていく。

ティア自身も物事、特に誰かの役に立つことを自分から積極的に身に着けている。

良いことなのだが、少々ティアはいい子過ぎる。

甘えては来るが必要以上に甘えては来ないし、我儘も文句も言わない。

どこかのロリ神にティアの爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。

 

「はぁ~」

 

口から自然と溜息が出る……。

すると部屋をノックする音が聞こえた。

 

『桜様。お飲み物をお持ちしました』

 

「ああ、入ってくれ。ティア、少し休憩にしよう」

 

「はい」

 

部屋に入って来た春姫からお茶を受け取ってそれをティアに渡して一休憩すると春姫は机に置いている医学書に視線を向けていた。

 

「……桜様は医学も精通しているのですか?」

 

「一応な」

 

私がいた世界では医学の免許は持っていたからな……すぐに私が探しているものとは違うと思って医者の道には行かなかったが。

 

「桜様は何でも出来るのですね」

 

「頑張れば誰だって………どうした?」

 

耳と尻尾が垂れて落ち込んでいる春姫に声をかけると春姫は弱弱しい声で私に言った。

 

「………いえ、桜様は本当に頼りになると思いまして」

 

「私はお前達からベルを取る気はないぞ」

 

「べ、ベル様のことは言ってません!?」

 

「鏡見ろ、鏡」

 

その真っ赤な顔を自分で確認しろ。

 

「ううう~」

 

「人の部屋で項垂れるな」

 

人の部屋で頭を抱えてしゃがみ込み項垂れる春姫に私はまた溜息が出た。

 

「うん……」

 

すると、何かを決心したかのように顔を上げて私に土下座……はぁ?

唐突に私の前で土下座をしてくる春姫に私は困惑した。

一応言うが、それはそれは見事な土下座だった。

流石は極東出身だけはある。

 

「桜様!私を弟子にしてください!!」

 

「ことわ……」

 

そんな面倒なことをしてたまるかと思った私は断ろうとしたがティアが私の袖を引っ張ってきた。

わざとではない上目遣いで無言で懇願してくるティアを見て息を吐いた。

 

「わかった。だけど教える時間は限りがあるからな」

 

「はい!よろしくお願い致します!!」

 

こうして春姫は私の弟子になった。

 

「だからさっさと弟子を卒業してベルを惚れさせろ」

 

「さ、桜様!?」

 

顔を真っ赤にして叫ぶ春姫は早速ティアと一緒に医術の勉強から始めた。

春姫にも自分の仕事があるから既にある程度教えているティアより重点的に教えているとティアが私の袖を引っ張って来た。

 

「どうした?」

 

声をかける私にティアは私の腕に抱き着いて離れない。

 

「桜様。私のことよりティアちゃんの方を教えてあげてください」

 

「……そうだな」

 

微笑む春姫に私はティアの頭を撫でてるとティアは私の腕から離れて大人しく私の教えを乞う。

ティアにも嫉妬するんだなと内心思いながら。

私はティアの母親ではないが、ティア的には(はるひめ)に母親を取られた妹の心境なのだろう……。

全く、それなら何であの時無言で懇願したのやら。

内心で呆れながら息を吐く私はティアはベルと同じそんな性格の持ち主だと把握した。

この嫉妬は神ヘスティアの影響かと不意に自分の主神を疑ってしまった。

頭の中でそんなわけあるかー!?と怒る神ヘスティアがいるがすぐに追い払う。

これからも苦労しそうだな、私は……。

何となくではあるがそんな感じがした。

その日を境にティアは今まで以上に私に甘えてくる。

隣や膝の上に座って着たり、自分から鍛錬を申し込んできたリ、風呂や寝る時も一緒に過ごすことが多くなった。

 

『ティア君は甘えん坊だね~』

 

あのロリ神から太鼓判を押されるほどに。

神ヘスティアが言える事ではないだろうに………。

もちろん、時と場所は弁えている。

ダンジョンの時は自分に与えられた役割をしっかりとこなしているし何の文句もない。

それに甘えてくるといっても私に迷惑をかけるほどではないし、買い物の時も荷物を持って手伝ってくれる。

嫌なのは神ヘスティア達の視線が慈愛に満ちていることだけだ。

私自身も甘えてくるのは嫌ではない。

ただこの先のティアに成長が少し心配になってしまう。

だけど、今までのティアの過去を考えればある意味良い兆しなのかもしれない。

悩む私にティアは本を持って私の膝の上に座って本を読みだす。

私は軽く息を吐きながっらティアの頭を撫でる。

とりあえずは今のままで様子を見て今後の成長具合によって考えるとしよう。

ただし、神ヘスティアやリリのような嫉妬深い子にはしないようにしないとな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。