ダンジョンに生きる目的を求めるのは間違っているだろうか   作:ユキシア

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白桜

掃除が終わって一息入れると今度は夕飯の準備に取り掛かる。

ベルと神ヘスティアは料理下手というわけではないが、下手をすればあの二人はジャガ丸くんだけで夕食を終わらせてしまうためヘスティア・ファミリアの料理は私が作ることにした。流石にジャガ丸くんだけじゃ、栄養バランスが偏る。

・・・・・・私はベルと神ヘスティアの母親か。

思わず自分自身にツッコミを入れながら余った食材を使って料理する。

もちろん、二人の大好きなジャガ丸くんも別で用意しておく。

 

「ただいま」

 

「お帰り」

 

しばらくしてからベルが帰って来た。

 

「うわぁ、部屋がきれいになってる。桜がしてくれたの?」

 

「ああ、暇が出来たから。夕飯はもうすぐ出来るから着替えて手伝ってくれ」

 

「うん、ちょっと待ってて」

 

夕食を作る手を止めずにベルにそう言って手伝ってもらう。

私とベルで夕食の準備をしながらお互い今日のことを話していた。

ダンジョンに入る前にリリと出会って7階層まで行き、エイナのところでナイフを落としたことに気付きリューという豊穣の女主人のエルフとシルに拾ってもらったこと。

あの時のエルフか・・・・。

初めて豊穣の女主人に行ったとき、私に敵意を向けてきたエルフに心覚えがあった。

なるほど、あのエルフの名前はリューというのか。

そんなことを思いながら私も10階層に行ったことをベルに話すとベルは驚いていた。

まぁ、当然か・・・・後から入団したにも関わらず自分よりも早く到達階層を増やしたのだから。

 

「だ、大丈夫だったの?」

 

「問題ない。明日も少し寄り道してからまた行くつもりだ」

 

明日の昼頃にでもヴェルフのところに行ってからダンジョンに潜るとしよう。

新しい防具の性能も試してみたいし。

しかし、どんなものが出来るのか少し楽しみだな。

新しい防具を楽しみにしていると突然ベルが私に問いかけてきた。

 

「桜は・・・どうしてそんなに強いの?」

 

「・・・・・」

 

強い・・・・か。

ベルの問いに私は考える。ベルにとって私は強いと思っているのだろう。私自身も強くなりたいと思っている。ベルや神ヘスティアの為にも強者(オッタル)と戦うためにも。

だけど、それを言えばベルは自分が情けなく思うだろう。

ベルはわかりやすいぐらい純粋だ。だから男として女に守られる訳にはいかないと思うだろうし、女に守られる自分の弱さに嘆くだろう。

なら、私の目的について少し話しておくとしよう。

 

「ベル。私は別に自分が強いとは思っていない。ただ私の目的の為に強くなる必要があるというだけの話だ」

 

「目的?」

 

「ああ、いいか?ベル。強くなるのはあくまで手段だ。自分が何をしたいのか?どうしたいのか?それを成し遂げるための必要な手段だ。私には目的がある。それを探すために強くなる必要がある」

 

もちろん、ベルや神ヘスティアを守る為やオッタルを倒す為でもあるが、根本は何も変わらない。いや、それを見つけ出すまで変わることが出来ないし、見つけるまで死ぬ訳にもいかない。だからこそ強くなる必要がある。

 

「まぁ、これ以上私の言葉を聞いて影響するより、自分で考えて導き出してそれを貫けばいい。簡単に言えば自分の我儘を他人に押し付けてでも貫けばいい。ただ、一言アドバイスするなら自分が後悔しないように動け」

 

後悔してからじゃ遅いからな。と一言加えてベルに助言する。

これから先どう考えてどう動くかはベル次第。そして、私自身もそれは言える。

とりあえず今はこれでいいだろう。

 

「・・・・・うん、ありがとう。桜」

 

「力になれたのなら何よりだ」

 

考えが纏まったのかどうかはわからないが少なくともさっきのような悩み顔ではなくなったな。良かったと安堵して夕食の準備が終えるとタイミングよく神ヘスティアが帰って来た。

 

「ただいま~~」

 

「お帰りなさい、神様」

 

「お帰りなさいませ、神ヘスティア」

 

三人で夕食を食べて明日に備えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の昼頃。

 

「これが私の新しい防具」

 

私はヴェルフの工房に足を運んで完成していた防具とプロテクターを身に着けていた。

白い浴衣姿の革鎧(レザーアーマー)。動きやすさを重視している為か丈の長さが少々短いが、下には黒地のインナーを着ている為白色の革鎧(レザーアーマー)と相まっている為よく映えている。袖も邪魔にならないように短くなっている。

更に白色の革鎧(レザーアーマー)に所々桜の花びらが描かれていた。

女である私にヴェルフが気遣ってくれたのだろう。

それにプロテクターも夜桜と紅桜の色に合わせて黒と紅色になっている。

 

「どうだ。桜から貰ったオークの皮や下層で手に入るモンスターの皮を中心に作ったんだ。俺的にはいいと思うんだが」

 

ヴェルフの言葉に私は夜桜と紅桜を抜いて動いてみる。

うん、動きやすいし、邪魔にもならない。文句はないな。

 

「大丈夫です。私の要望通り、いえ、要望以上の防具です」

 

「それはよかった、じゃそれに名前を付けるか・・・・・・豚具(トング)

 

「却下」

 

ヴェルフの案を私はつかさず蹴る。オーク()の防具で豚具(トング)だろうか?どちらにしろ酷いネーミングセンスだ。流石にその名前という訳にもいかず私が白桜と名付けた。ヴェルフはとても不満そうだったがヴェルフの表情はすぐに一変した。

 

「なぁ、桜。俺と契約しないか?」

 

契約。鍛冶師(スミス)と冒険者の契約か。

まぁ、私的にも助かる。その上これからのことを考えればこの契約はしておいたほうがいいだろう。だけど、下手にすぐに了承するのも変に怪しまれる可能性もある。

ここは理由を聞いておくだけ聞いておこう。

 

「何故?私がクロッゾの魔剣を欲しがらなかったからですか?」

 

「・・・・正直、それもある。だけど俺の作品を喜んでくれるお前を見て嬉しかった。俺の防具の価値を認めてくれた。それがたまらなく嬉しかった。だから俺はお前と契約がしたい」

 

ヴェルフのその言葉は本当に嬉しそうだった。周りから認められなかった自分の作品を認めてくれる人が現れたら確かに嬉しいだろう。

まぁ、私以外にも愛用者がいるというのはまだ伏せておくとしよう。

私は手をヴェルフの前に差し出す。

 

「わかりました。ヴェルフと契約を結びます」

 

「良し!武器でも防具でもこれからは何でも言ってくれ!」

 

手を握り合う私とヴェルフ。

 

「そういや、桜はパーティに入っているのか?」

 

唐突にヴェルフがそう聞いてきた。

 

「パーティと呼べるほどではありませんがもう一人同じファミリアの仲間がいます。ですが、今はそれぞれ分かれて行動しています」

 

「そっか。なら、俺の我儘ってやつを聞いてくれないか?」

 

ヴェルフの我儘。それは発展アビリティ『鍛冶』の獲得。

もちろん私はそれを了承した。見返りとしてドロップアイテムはいくつか譲るが武器や防具の整備と装備の新調を無料という条件で私とヴェルフは早速10階層へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

時が流れてダンジョンの外に出るともう空が暗くなっていた。

ヴェルフと共に10階層へ向かう途中、ベルとは会えなかったが広いダンジョンの中で会うのも難しいだろう。

10階層に到着して早速現れたオークやインプ達を倒してダンジョンの外に出るともう夜になっていた。

思っていたより長く潜っていたんだな。

今回は前回と違って何度かオークやインプの攻撃を喰らいそうになった。

私もまだまだだな。と、自分の未熟さを感じているとどこからか聞き覚えのある叫び声が聞こえた。嫌な予感がするなか放っておくことも出来ず、私は聞き覚えのある声の方へ足を運ばせると。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!ベル君ベル君ベル君ベルくーんっ!お願いだからボクの前からいなくならないでおくれ――――!!」

 

酒を飲んで完全に酔っていた主神がいた。

ベロンベロンに酔っている神ヘスティアを見て私は溜息を出しながら近寄る。

 

「何やっているんですか?神ヘスティア」

 

半眼になって言う私に神ヘスティアは気にも留めず私の胸に飛び込んできた。

 

「桜君!ベル君が!ベル君が!浮気をしたんだー!!」

 

「あーはいはい。そうですか。防具を鼻水や涙で汚さないでください」

 

「そなたがヘスティアの新しい子か?」

 

抱き着いてくる神ヘスティアに呆れていると横から男神が話しかけてきた。

物腰丁寧な美男の男神に私は頭を下げる。

 

「うちの主神がご迷惑をおかけして申し訳ありません。支払いは私が持ちます」

 

「うむ。しっかりしている素晴らしくも美しい子だ。私の名はミアハだ。ミアハ・ファミリアの主神をしておる。ヘスティアとは同じ零細ファミリア同士仲良くさせてもらっている」

 

神ミアハは懐からポーションを二つ取り出して私に差し出してきた。

 

「このポーションをやろう。その美しい顔に傷など残ったらかなわんであろう」

 

「いえ、主神がご迷惑をおかけしたんです。それは受け取れません」

 

「気にするでない。それに勘定がそちらで持ってくれるにも関わらず何もしないのは神として恥だ。受け取っておくれ」

 

「そういうことでしたら」

 

神ミアハからポーションを受け取って支払いを済ませて神ヘスティアを抱える。

 

「それでは神ミアハ。また」

 

「うむ。ポーションがなくなったら我がファミリアに来るといい」

 

そこで私は神ミアハと別れた。いい神だったな・・・・。

 

「うぅ~、ベル君・・・ボクを捨てないでおくれ・・・・・」

 

貴女も少しは神ミアハを見習ってください。

項垂れる神ヘスティアに私の口からまた溜息が出た。

 

 

 

 

 

「ぬぁぁぁぁぁぁぁっ・・・・!?」

 

翌日の朝。案の定神ヘスティアは二日酔いになっていた。

 

「まったく後先考えず酒を飲むからそうなるんです。はい、水」

 

「うぅ・・・桜君が冷たい・・・ありがとう」

 

呆れながら神ヘスティアに水を渡した私は神ヘスティアを心配そうに見ているベルを連れて外に出る。

 

「ベル。悪いけど今日は一日神ヘスティアの傍にいてやってくれ」

 

「うん。僕は構わないけど桜はどうするの?」

 

「私は少しダンジョンに潜ってる。流石に二人で神ヘスティアの傍にいたら迷惑だろう」

 

金銭面に少し余裕ができたとはいえ、油断は出来ないからな。

それに神ヘスティアの為にもベルと二人きっりにさせてやるとしよう。

 

「そうだな、ベル。神ヘスティアの調子がよくなったら食事にでも誘え。きっと喜ぶはずだ」

 

「ええ!?で、でも僕でいいのかな?」

 

むしろお前の方がいい。いや、お前以外誰がいる。と言いたくなったが堪える。

あからさまに好意を向けている相手からの誘いをあの駄目神が断るわけがない。

 

「当然だ。それじゃ頼むぞ」

 

「う、うん。頑張ってみる」

 

「よろしい」

 

それじゃ、私はダンジョンに行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?桜のところの女神さまの容態は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だろう。日頃から元気が有り余っているし」

 

ダンジョン内10階層で私とヴェルフはそんなことを話していた。

ここに来てまだ三日目だけどもうだいぶ慣れてきた。

オークは一撃は重いが単発で動きが遅いし、インプは群れて数は多いがゴブリンより強い程度。もうそこまで脅威ではなくなった。

強くなっているかはわからないが、私的には手応えは感じている。

この調子で11階層へ行ってみたいが慣れた頃が一番油断ができない。まだ10階層で留まっておこう。

 

「それで桜。白桜の調子はどうだ?何か不備とかあるか?」

 

「いや、問題ない」

 

白桜の不備はどこにもない。動きやすいし、インプの攻撃を一、二度喰らってみたがダメージらしいダメージもない。防御力もたいしたものだ。

 

「本当にヴェルフはいい腕しているよ。クロッゾのヴェルフより鍛冶師(スミス)のヴェルフのほうが私は好きだな」

 

「そっか・・・。いや、なんか照れるな」

 

頬を赤くしながら頭を掻くヴェルフ。そう、いい腕はしている。ただ、作品の名前が残念すぎるのが痛手だ。クロッゾの件もあるだろうけど、ネーミングセンスも問題だと思うのは私の間違いだろうか?

そう思っている複数の足音が聞こえた。足音の先には五体のオークと十数匹のインプ達。

 

「歓迎されてんな。どうする?魔石もドロップアイテムも十分手に入ったし逃げるか?」

 

「・・・・いや、ちょっと試したい魔法がある」

 

「お、魔法も使えんのかよ。なら、発動するまで足止めしておくぜ!」

 

オークとインプ達に突っ込むヴェルフに私は魔法の詠唱を始める。

 

「【瞬く間に散り舞う美しき華】」

 

オッタルと戦った時に発現した私の新しい魔法。

 

「【夜空の下で幻想にて妖艶に舞う】」

 

神ロキやリヴェリアさんには要注意された魔法。

 

「【暖かい光の下で可憐に穏やかに舞う】」

 

だけど、この先のことも考えて知っておかなければならない。

 

「【一刻の時間の中で汝は我に魅了する】」

 

この魔法の効果や使用できる時間など。

 

「【散り舞う華に我は身も心も委ねる】」

 

せっかくある武器を恐れて使わなければ何の意味もない。だから私は使う。

 

「【舞う。華の名は桜】」

 

詠唱を終えた私は魔法を発動させる。

 

「【舞闘桜】!!」

 

魔法を発動させ、私の全身と夜桜や紅桜にも魔力に覆われる。そして、発動して神ロキやリヴェリアさんが言っていたことがわかった。

すごい勢いで精神力(マインド)が削られていく。それにまだ立っているだけなのに全速力で走っているように疲れる。

なるほど、確かに神ロキの言う通り危険だな。

改めて凄い魔法を発現させたもんだと思いながら私はオークとインプ達へ突っ込む。

速い・・・ッ!

(メドル)は離れている距離をほぼ一瞬で詰めることが出来た。

 

「ハァッ!」

 

夜桜で一振り。すると、オークの胴体を真っ二つにすることが出来た。もう一体のオークにも紅桜で一振りすると面白いぐらい真っ二つだ。それに死角にいるはずのオークやインプもまるで見えるかのようにわかる。これが察知能力上昇か。

これはすごい魔法だけど消費も激しい。さっさと終わらせよう。

 

「ハァァァァッ!!」

 

掛け声とともに周囲のモンスターを全滅させる。他に周囲にモンスターがいないことを確認して一息つくと勝手に魔法の効果が切れた。

この魔法は私が倒すことに意識をしていないと勝手に効果が切れるのか?

いや、それは追々知って行こう。

私はその場で座り込み肩で息をする。

疲れた・・・・・でも収穫はあった。

この魔法【舞闘桜】が扱える時間は一分半が限界。それを過ぎると前のように丸一日寝込んでしまう。

 

「お、おい!桜!大丈夫か!?」

 

「ごめん・・・肩貸して・・・・」

 

その後、ポーションを数本飲んで落ち着き本拠(ホーム)へと帰った。

 

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