繰り返される悲劇のなか、一つのことしか考えられなくなったとある魔法少女、彼女が当たり前のように自分自身と大切な友達のためだけに繰り返す時空遡行が、聖闘士と神闘士たち、そして神々の戦いに思わぬ影響を及ぼしていきます。
基本的には、聖闘士星矢(無印~アスガルド編~冥王ハーデス編)と、魔法少女まどか☆マギカのテレビアニメ版の世界を軸に展開させていく予定です。
ここは日本の見滝原市。近代的な町並みと豊かな自然に恵まれたこの美しい街、しかし、突然この街を襲った想像を絶する暴風は、街にある全てをなぎ払おうとしていた。スーパーセルなどというレベルではなく、高層ビルまでも無残にへし折られ、宙を舞っている。
そんな絶望的な街の片隅で、一人の少女が動けなくなっていた。少女の名は「暁美ほむら」。
全ての力を使い果たしたかのように、彼女は暴風荒れ狂う空、いや、暴風の正体である巨大な魔女、「ワルプルギスの夜」を見上げていた。
「また、まどかを救えなかった」。彼女はぽつりと呟く。
彼女の正体は「魔法少女」。地球外からやってきたという謎の生命体であるインキュベーターと契約を取り交わし、自分の望みをかなえるのと引き替えに不思議な能力を持つ存在、魔法少女となったのである。
彼女の願い、それは自分にとって初めての、そして唯一の「友達」である少女「鹿目まどか」との出会いをやり直すこと。鹿目まどかは彼女の目の前で魔法少女としてワルプルギスの夜と戦い、命を落としたのだ。暁美ほむらは、彼女との出会いをやりなおし彼女の命を救うため、魔法少女達が「キュウベエ」と呼ぶ白い生き物、インキュベーターと契約を取り合わしたのだ。
契約によって彼女の得た力は「時間停止」と「時間遡行」。その力で彼女は鹿目まどかと出会ってからの1ヶ月を何度も何度も遡り、やり直していたのだ。
何度やり直しても、まどかは結局は魔法少女となり、そのたび魔女との戦いで命を落としていた。何度繰り返してもほむらの望む未来は得られない、それでもほむらは諦めず、時間遡行を繰り返していた。
ただ、ほむら自身も気がついていなかったが、繰り返すたび、彼女達が迎える結末はますます悲惨なものとなっていた。見滝原を今回襲ったワルプルギスの夜はこれまで以上に強大になっており、ほむらは魔女を倒すどころか手出しすら出来なかった。まどかや他の魔法少女達、美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子は戦いの中で命を落とし、あろうことかまどかの家族が居る避難所までも壊滅させてしまったのだ。
またダメだった。。ほむらは当たり前のように左腕の盾、時間遡行の魔法を発動させる鍵を作動させ、跡形も無く破壊された街からいずこかへと姿を消した。その一瞬の行為がこれからもたらす、とてつもない災禍に思い至ることもなく。
同じ頃。見滝原とは全く異なる光景、雪と氷に閉ざされたとある国で、美しい鎧に身を固めた戦士達が激しい戦いを繰り広げていた。
ここは、アスガルド。ヨーロッパの北、北欧諸国のさらに北にある極寒の大地である。この地では、大いなる神オーディーンの加護のもと、その地上代行者である心優しく慈愛に満ちた少女「ヒルダ」を中心に、人々が貧しいながらも慎ましく暮らしていた。そのはずだった。。
しかし、海界を支配する神、ポセイドンの魔の手に捉えられ、その先兵として操られてしまったヒルダは、それまでとは全くの別人、好戦的で冷酷な独裁者へと変貌してしまった。彼女はアスガルドの南にある暖かく豊かな大地を求め、ギリシャにある「聖域」を拠点に地上を守っている女神アテナと、彼女を守護する選ばれし戦士達「聖闘士」に戦いを挑んできたのだ。
ヒルダがポセイドンに操られていることなど知る由もない。ヒルダとアスガルドを守る伝説の戦士、北斗七星を守護星とする「神闘士」達は、戦いに勝利すればアスガルドの民に暖かい日の光と豊かな生活が約束されていると信じて、ヒルダをポセイドンの手から解き放とうとアスガルドにやってきた聖闘士達を迎え撃った。激しい戦いの末、神闘士達は次々に命を落としていった。
最後に残った最強の神闘士、アルファ星ドゥベのジークフリートは、聖闘士達と拳を交えるなかで、ついに真実を、ヒルダを操るポセイドンが全ての黒幕であったことを知ることとなった。
ポセイドンを守る最強の7人の戦士、海将軍。ヒルダとジークフリートを海底にあるポセイドンの神殿へと迎え入れるべくアスガルドに姿を現した海将軍の1人、セイレーンのソレントの口から全てを知ったジークフリートは、後事を聖闘士達に託し、ソレントを道連れに最期の時を迎えようとしていた。残されたわずかな力でセイレーンを拘束し、共に散るべく大空に輝く北斗七星へと昇っていくジークフリート。しかしむざむざと倒されるソレントではなかった。ジークフリートに仕掛けた幻覚をきっかけに一瞬の隙をつき、ソレントはジークフリートの拘束から逃れることができた。
セイレーンを取り逃し、無念の思いとともに今まさに消滅しようとしていたジークフリート、しかしその体は、彼の纏う聖なる鎧、双頭のドラゴン・ファフニールを模した深い蒼の神闘衣とともに、忽然と姿を消した。
同じアスガルドで、神闘士がもう1人、最期の時を迎えようとしている。彼の名は、エータ星ベネトナーシュのミーメ。神闘士の中でも最強クラスの実力を持ち、本来は音楽を愛する優しい人柄ながらも、彼はかつて誤解から自分の育ての親、フォルケルを自らの拳で死に至らしめた。それ以降、彼は偽りの記憶で自分の過去を封印し、非情の戦士となっていた。
しかし、青銅聖闘士、鳳凰座フェニックスの一輝との戦いの中、ミーメは養父から注がれ自分もまた養父に感じていた深い愛情、そして優しさにあふれたかつての自分を取り戻すことが出来た。最期に友として認めた一輝にアスガルドの将来とヒルダを託し、力尽きた彼は雪原に1人横たわっていた。神闘士としての責務を果たせなかったことを、頭上に瞬く北斗七星と彼の養父に詫びつつ。
彼の命の灯が消えようとしたまさにその時、ミーメの姿は彼の纏う真紅の神闘衣と彼が片時も手放さなかった竪琴とともに、その場から消え去った。
大空に散ったはずのジークフリートは、目を覚ました。暖かい陽の光、草原に吹きわたる心地よいそよ風、かぐわしい花の匂いと美しく咲く花々。アスガルドでほとんど出会うことのなかった光景が彼を包み込んでいた。
「聖闘士。。。さん?」 気がつくと、彼の傍らには少女がかがみ込んでいた。
「初めて見る聖闘士さん。。 だけど、酷い怪我。。待ってて!聖闘士さん!」
少女は遙か彼方に見える、古代の遺跡を思わせる建物へと走り去っていった。
ここがアスガルドではない何処かであることまでは理解できた。しかし、アスガルドからほとんど外に出たことのないジークフリートには、ここがどこなのかは全く見当つかない。なんとか手がかりを見つけるべくジークフリートは起き上がろうとしたが、彼が受けた深手はそれすらも許さなかった。彼は再び気を失った。
「。。ルバフィカさま、こっちです!」と再び駆け寄ってくる先ほどの少女の声と、鎧がぶつかり合うような、かすかな金属音を聴きながら。。