神と、戦士と、魔なる者達   作:めーぎん

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旧友とつかの間の再会。かつて戦った者同士の再会。

そして、思いがけず訪れた新たな出会いによって、運命が動き出す


二つの再会、新たな出会い

「やっと、ビジネスの話が終わりました。すっかり待たせてしまってごめんなさい。」

「いいえ~、お会いできるの、ほんとうに久しぶりですから。いくらでも待てますわ。」

 

テーブル狭しと並べられたお菓子やティーセット。きらびやかな調度品がならぶ応接室。

部屋に入ってきた一人の少女の顔を目にするや、部屋に居たもう一人の少女は歓声をあげる。

 

「その制服、中学校のかしら?すごくお似合いですよ。」

「はいっ、中学校の制服ですのよ。胸元の赤いリボン、かわいいでしょ?」

「えぇ、ほんとうに。私も中学校に通って、かわいい制服着て、楽しい学園生活楽しんだりできたらなぁ、って思うこともあるんですよ。」

「きっとお似合いになりますわ! 一緒の学校に通えたりしたら、きっとすごく素敵だと思いますの。」

 

少女たちのおしゃべりは、尽きることなく続く。

 

「ところで、今度のお仕事はすごく大変だとお聞きしたのですが。。」

「はい。今度はもしかすると。。」

「ええっ!? そんなことを聞いて、行かせるわけにはいきませんわっ。どうして沙織さんばかりそんな目にあわないといけないですの?」

「こればかりは仕方ないのです、私はそのためにこの世界に生まれたのですから。」

「そんな。。」

「わかってくださいね、それに、帰ってこれないと決まったわけではないのですし。私と一緒に行ってくれる方たちも、一人も欠けることなく帰ってくることができたら、どんなに素敵なことでしょう。」

「私と同じ年なのに。。せめて沙織さんのお側でお守りすることが出来たら。私、こうみえても護身術の心得はありますのよ。」

「いくら仁美さんがお強くても、相手は、普通の人間ではどうにもならない相手ですから。」

「そうですか。。では、もっともっと強くなったら、沙織さんのお側に居させていただけるんでしょうか?」

「普通の鍛え方ではとても。。お気持ちだけ、ありがたく受け取らせていただきますね。」

「そうですか。。あ、そうそう。。」

 

仁美と呼ばれた清楚な少女は、重苦しい空気を変えようと話をそらす。

いかにも中学生らしい、他愛のない話と笑い声が部屋に響く。

 

 

「沙織お嬢様、そろそろお帰りのお時間ですが。」

ノックとともに入ってきたスキンヘッドのいかつい男性の言葉が、少女たちの楽しいひと時に終わりを告げる。

 

「辰巳、時間、もう少しなんとかなりませんか?」

「お気持ちはわかりますが、見滝原から戻る時間を考えたらこればかりは。。」

辰巳と呼ばれた男性は、申し訳なさそうに首をふる。

 

「もうっ。。残念ですわ。でも大きなお仕事がいつ始まるか、まだわかりませんから。それまではこちらにできるだけいっぱい来させていただきますね」

 

沙織と呼ばれた少女はそう言うと、仁美と呼ばれた少女に見送られ、つかの間ながら幸せなひと時を過ごした豪華な邸宅をあとにした。

 

 

「お父様、どうして沙織さんばかり。。」

「仁美。私にもよくわからないけれど、あのお方は、グラード財団総帥としての役目よりもさらに大きな役目を背負っておられるようなのだ。きっと、あの小さな肩に世界を背負っていらっしゃるのだろうね。」

「。。。」

「グラード財団と志筑コンチェルンはは重要なビジネスパートナーではあるけれど、お前たちは幼いころから本当の姉妹のように仲良く育ってきたのだから。せめて、ここにいらっしゃったときには、あのお方が幸せな時を送れるように、優しく迎えて差し上げなさい。」

「。。。わかりましたわ。それで沙織さんの力になれるなら。。」

 

 

志築家の邸宅を後にした車は、街中をかなり急ぎ目に走っていた。

 

「辰巳、今度ここに来るときは、もう少しゆっくり居させてくださいね。」

「そうは言っても。。。うわっ!」

「どうしたのです!辰巳!」

「道路に黒猫がっ!よけきれませんっ!」

 

急ブレーキを踏んで車を停めたものの、車のすぐ前に現れた黒猫を避けるには、車との距離が近すぎた。

轢いてしまったか。

恐る恐る目をあけた辰巳の視界に飛び込んできたのは、何事も無かったかのように歩道に座っている黒猫と、その脇に立っている一人の老人だった。

 

「やれやれ、辰巳どの。急に猫が飛び出したとはいえ、それを避けられない辰巳どのではあるまいて。何か集中力を乱すようなことがあったのでしょうが、前方には気をつけなされ。」

「ハクレイどの、かたじけない。それよりも、どうしてここへ?」

「なに、未来の日本に来てみれば、見るもの見るもの何もかもが物珍しくてな。散歩しているうちに、ついつい遠出してしまいましたわい。」

「散歩。。城戸邸からここまで200キロはあるというのに。いくら貴方とはいえ、スケールが大きすぎますぞ。」

 

半ばあきれ顔の辰巳をよそに、ハクレイは黒猫を抱き上げると涼しい顔をしている。

 

「エイミーっ! 助かったのね! よかった。。」

慌ててハクレイのそばに駆け寄ってきたのは、制服姿の少女だった。

 

「ありがとうございます、エイミーを助けてくれて。絶対間に合わないって思っちゃって、目をつぶっちゃった一瞬の間に助けて頂けるなんて。すごいです。」

「そうか、こいつはそなたの飼っている猫じゃったのだな。」

「いえ。。飼っているわけじゃ。。 野良猫なんですけど、いつの間にかすっかり仲良しになっちゃって。今日も学校帰りにその子に、エイミーに会いに来てたんです。」

 

ハクレイから黒猫を受け取って抱きかかえると、その少女は深々とお辞儀をする。

 

「わたし、鹿目まどかっていいます。あ、せめて何かお礼を。。この子の命の恩人ですから。。」

「いやいや、気にすることはない。ただの通りがかりじゃし、わしにとってはなんでもないことじゃ。」

「そうですか。。」

少女は申し訳なさそうに立ち尽くしている。

 

「ごめんなさい、エイミーっていうんですね、その子。もう少しであなたの大事なエイミーの命を奪ってしまうところでした。」

止まっている車から降りてきた少女は、鹿目まどかと名乗った少女のところまでやってくると、やはり深々と頭を下げた。

 

「私は、城戸沙織といいます。まどかさん、エイミー、かなり動揺しているようですから、しっかり落ち着かせてあげてくださいね。」

「城戸、沙織さん。。。えぇっ !あのグラード財団の城戸さん、ですか!? わたし、知ってます! そんな、頭をあげてください、気をつけてなかった私が悪いんですっ。」

 

頭を下げあう二人の少女。そしてやはり申し訳なさそうに頭を垂れる辰巳。

収拾のつかなくなっている現場を見て、ハクレイが間に入る。

 

「お嬢様、そろそろお時間です。屋敷で待っている皆のためにも、そろそろ向かわねばなりますまい。」

「そうですね、ハクレイ。まどかさん、エイミーとこれからも仲良くしてあげてくださいね。」

「はい、この子、おっちょこちょいみたいだし、私がもっと気をつけてあげないと、です。お気をつけて。。」

 

城戸沙織、ことアテナの車が立ち去り、まどかもどこかへ立ち去った。

それを待っていたかのように現れたのは一人の少女。

 

「あの老人、いったい何者かしら。でも、エイミーが事故に遭わなかったおかげで、まどかが魔法少女にならずに済んだのなら、感謝すべきなのかもね。」

 

そう独り言を呟くと、その少女もまたどこかへと去って行った。

 

 

 

グラード財団の邸宅に戻ったアテナを、アスガルドから戻った二人の神闘士が待ち受けていた。

「そうですか。。邪神ロキについては、私も聞いたことがあります。アスガルドに立ち入ることが出来ないとなると、いったいどうすれば。。」

「アテナ、時の流れを狂わせるような所業は、時の神クロノス、その兄弟で神の座を追われたかつての刻の神カイロス、そして北欧のスクルドたちしか心当たりがありませぬ。私も探ってみましたが、今回の件、いずれの神も関わってはおらぬようです。この者たちのいうとおり、魔法少女が関わっているという推測、あながち外れてはおらぬかもしれませぬな。」

「ハクレイ、かつてカイロスと接触のあった243年前の聖域がそう考えるのならばそうなのでしょう。この時代で魔法少女や魔女を認識できるのはあなたたち二人だけ。どうか。。」

 

アテナがそう言いかけたとき、部屋の扉が勢いよく開き、何人かの少年が部屋に飛び込んできた。

 

「まさかと思ったら、ジークフリートじゃないか! どうやって助かったのかはわからないけど、また会えるなんて夢みたいだぜっ!」

「ミーメも蘇ったんだね!兄さんが知ったらきっとすごく喜んでくれると思うよ!」

少年たちは二人を取り囲み、興奮が収まらない。

 

「ペガサス星矢、アンドロメダ瞬、ドラゴン紫龍にキグナス氷河、こうしてまた相まみえることが出来るとは。あの時は申し訳なかった。すまない。なんと言ってよいか。。」

「そんなことは気にするなよ!それより、沙織さんから聞いたぜ!日本のことなら任せてくれよ。俺たちも手伝うからさ。」

「そうだ。俺たちの本来の敵とは違うが、この世に生きる少女たちをまるで物のように使い捨てる所業、許すわけにはいかない。俺たちも戦うぞ。」

「そうと決まったら、さっそくその魔女とやらを探しに行こうぜ!あんたたちと一緒なら、俺たちも魔女を認識できるようになるんだろ?」

「星矢、紫龍。。。あなたたち、ポセイドンと戦った時のダメージがまだ残ってるのに、もう少し休んでいてもいいのですよ。」

「沙織さん、俺たちがそんな事でおとなしくしてるなんて思わないだろ?よろしく頼むぜ!」

 

あまりに急な展開に茫然としつつも、二人の神闘士は大きくうなづいた。

「そうと決まったら、さっそく行こうぜ!」

心なしか嬉しそうな氷河の声とともに、4人の青銅聖闘士と2人の神闘士は駆け出して行った。


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