神と、戦士と、魔なる者達   作:めーぎん

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忍び寄る影

タツミーランドを後にしたまどかたちは、マミの家に立ち寄っていた。

 

「アガシャちゃん、穏やかで大人しい子だと思ってたけど、びっくりした。アルバフィカさん相手にあんなに積極的になるんだもん」

 

ケーキを食べながら、未だに興奮がおさまらない、まどか。

皆、それぞれがタツミーランドを満喫しつつ、アルバフィカ・アガシャ組から目を離せずにいたようだ。

 

「せっかく、アテナさま達に機会を作っていただいたのですから、頑張らなきゃって思ったんです」

 

そう言うアガシャもいまだに興奮がおさまらないようだ。

 

「あたしもさ、ミロさんと一緒にって言われたときは驚いたけど、ミロさん、すごくカッコいいのに子供みたいなところもあって可愛かったし、何より…」

 

目を閉じて、今日一日を想い起こすさやか。

 

「聖闘士さんたちも、正義の味方云々の前に、あたしたちと同じ人間なんだなぁって。正義の味方らしくないって思い込んで一人で怒ってたあたし、何だったんだろう。。」

 

さやかの表情は、穏やかで晴れやかだ。

 

「射的でヒルダさまのぬいぐるみ見つけたジークフリートさん、みんなにも見せてあげたかったわ。ヒルダさまにホの字なのよ、きっと」

 

マミもまた、恋バナに花を咲かせている。そんな彼女たちを、少し驚いたような顔で見つめている杏子。

その様子に気付いたさやかが、どうしたのさ、というように杏子の頬をつつく。

 

「あ、えーとさ、まさかマミもそこいらの女の子みたいに恋バナで盛り上がるなんて、思いもしなかったからさ」

 

杏子の驚きはもっともだろう。かつてマミと魔法少女としてコンビを組んでいた頃は、会話は魔法少女に関するものがほとんどだったのだから。

 

「もー、佐倉さんったら。私だって女の子なのよ… そうね。今までは魔法少女であることにいっぱいいっぱいだったし。ジークフリートさん達や佐倉さんたちが居てくれて心に余裕があるのは間違いないけど、アルバフィカさんを心から慕ってるアガシャちゃんを見てると、なんだか私まで嬉しくなっちゃって、ついはしゃいじゃうのよね」

横で顔を真っ赤にしているアガシャを微笑ましそうに見ながら、マミが答える。

 

「私もいつか素敵な恋できるのかなぁ…そういえば、自分の未来のことって、今まで考えてみたことなかったかも」

 

 

杏子、さやか、そしてまどかも、マミの言葉に促されるように、目をつむってそれぞれ自分の未来について想像してみる。

 

ぽわわわーん

 

「うーん、とりあえず幸せそうなのはいいのだけれど、なんで私、大人になっても見滝原中のジャージ着てるのかしら」

「恭介、なんかポンコツっぽくて思ってたのとちょっと違うけど、これはこれでちょっといいかも」

「うん、家族かぁ…、うん…」

「結婚かぁ… って、ほむらちゃん、タツヤはあげないんだからっ!」

 

想像(妄想)に耽っていた4人だったが、慌てて我に返る。

アガシャを気遣っているのだろう。

 

「いえ、私、大丈夫です。アルバフィカさんとの想い出、これ以上ないほどいっぱい貰えたから、聖戦のあとの人生もきっと幸せに生きていけると思うんです」

「もしかすると今までの私って、自分でも気が付かないうちに、何かをしなくていい、しちゃいけない理由を探して、それに縋ってたのかも知れなかった」

「こうしてちょっとだけ勇気だして頑張ってみて… もしかしてそれを後悔する時が来るかもしれないけど、きっとこれでよかったんだって思うんです。」

「それに、聖戦がお別れになるって決まってるわけでもないですから…」

 

つとめて明るく振る舞うアガシャ。視線はさりげなく、ほんとうに自然にさやかに向けられている。

 

「(そうだよね。アガシャちゃん、わかっていても、それでも未来を見てる。あたしも未来のためにもうちょっとだけ勇気、ださなきゃね)」

 

一方で、いつになくはしゃいでいるマミをじっと見つめている杏子。

 

「(よかった。マミ、最近ちょっと疲れているのか眠れてないのか、ほんの少しだけ元気なかったように見えてたけど、アタシの思い過ごしか…)」

 

それぞれが未来に思いを馳せていた、その時。

 

「ミーメは、こちらには… 来ていないか」

 

飛び込んできたのはジークフリートだった。

 

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「え、それじゃぁ、ミーメさん戻ってきていないんですか?」

「マミも知らないか。遊園地の気配を感じて上手いこと逃げたのではと思ってたのだが、どうもそういうわけではなかったらしい」

 

ミーメは、タツミーランドへの道中で姿を消し、そのまま消息を絶っているとのこと。

 

「とにかく探してみましょう。手分けすればきっと見つかると思うんです」

 

さやかの提案で、見滝原や風見野、そして周辺の街へとマミたちは散っていった。

ややしばらくして。

 

「ミーメさん、見つけました!」

 

まどかからの連絡で、彼女たちは見滝原の街外れに駆け付けた。

そこには、傷だらけで横たわるミーメの姿。

息はあるが、ひどく衰弱しているようだ。

真っ先にマミが駆け寄る。

 

「ミーメさん、あなたほどの方が…いったい何があったんですか?」

「あぁ、マミか。いや、それが、私もわからない。突然何かに取り込まれ、そこから記憶が途切れてしまったのだ。気が付けば、ここに倒れていたのだ。大丈夫、このような不覚は二度と取らない、だから大丈夫だ」

 

どこか、事態を大きくしないように振る舞うミーメ。

 

「そうか、ならよいのだが…ただ、少し休んだほうがよいだろう」

 

ミーメの様子を察して提案するジークフリート。

アテナ邸までは遠く、また余計な気を使わせては、ということで、マミの家でミーメを休ませることとなった。

 

「ジークフリートさん、ちょっといいかしら」

 

マミがジークフリートを家の外へと誘う。

 

「実は… アテナさまのところに行く途中で、一瞬なんですけど、例の、強力な魔女の気配を感じたんです」

「そうか、私だけではなかったのだな。以前から一瞬だけ現れては消えていた魔女の気配、私も感じていたのだ、もしかしてミーメの件と何か関係が?」

「はい… これまでもそうだったんですけど、私もジークフリートさんも、星矢さんや瞬さんたちもあの魔女の気配には気づけていた…なのに、ミーメさんだけはいつも気づいていた様子がなかったんです もしかすると、例の魔女、ミーメさんを狙っていたんではないかと…」

「なるほど、それであれば、ミーメだけが魔女を察知できなかったのも納得がいく…しかし、なぜ?」

「ジークフリートさんでも心当たりがないんですね。探そうにも手がかりがなくてたいへんですけど、ミーメさんと繋がりがあるのならそのうちきっと尻尾を掴めるはず。今まで以上に気を付けて、魔女の正体をつかまないと、ですね」

 

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ミーメもとりあえず体力を回復し帰っていた、その日の夜。

 

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

夜更け、一人うなされているのは、マミだ。

 

「魔法少女に誘ったりして、ごめんなさい。謝ったくらいで許してもらえないのは、私だってわかってるの…」

 

杏子が気づいていたマミの異変。どうやら彼女は、毎晩のようにこうして悪夢にうなされているようだ。

表情は青ざめ、掌にはびっしりと汗をかいている。

 

「みんなを残酷な運命に追いやっておいて、私だけ未来に希望を持とうなんて、許させるはずなんて、ない…」

 

おそらくは、かつて彼女が魔法少女へと誘った少女たちの記憶、魔女に堕ちていったであろう彼女たちへの、罪の意識だろうか。

 

そんな彼女の傍らに、いつの間にか現れた、影。

影は無言で、右手をマミにかざす。

 

「うぅっ… ごめんなさ…… すぅ、すぅ」

 

先ほどまでうなされていたマミは、まるではじめからそうだったかのように、穏やかな眠りへと落ちていった。

 

 

 

同じころ、美樹さやかもまた夢の中に居た。

 

あたりは、いつか夢に見た、荒涼たる大地、そしてはるか昔に放棄されたであろう、古びた遺跡。

その片隅、金色のはなびらが舞う空間から、さやかを呼ぶ声が響く。

夢の中、吸い寄せられるようにそこへと足をすすめる、さやか。

 

「ねぇ、あなたのこと、ずっと待っているのに。あなたは… あきらめなかった貴方は、いつここに来てくれるの?」

 

夢の中、無意識のうちに、さやかは手を伸ばす。

 

「あなたには渡したいものがあるのです。あなたがここに来てくれないと、託せない…」

 

深い眠りにおちているさやかの周りを、金色の花びらが舞い始める。

一枚、二枚、五枚、十枚。次第に花びらは数を増していくなか…

 

がばっ!

 

異様な雰囲気に気が付き、目を覚ましたさやか。

 

「また、この花びら… あなたは、あたしを呼ぶあなたは、いったい誰なの?」

 

花びらを手に握りしめつつ、さやかは問いかけたのだった。

 

 

 

小宇宙をやや回復しつつも、体力はまだ十分ではなく深い眠りについていたミーメ。

そんな彼に、どこかから呼びかける、声。

 

「ミーメさん、わたし、ずっとあなたを探していたんです。ようやく見つけることができた、再会できたのに、どうしてあなたは…」

 

どこかで聞いたことのある声。懐かしい声。もう二度と聴くことができなくなっていたはずの声。

ミーメは目を覚ますと、部屋に微かに響く声に答える。

 

「誰だ? 私の記憶に確かに刻まれているその声、私を探していたとは、どういうことだ…」

「わたし、あきらめませんから。やっと見つけた… もう離さない。あなたは、わたしと、ずーっと一緒に…」

 

ミーメの問いかけには答えず、伝えたいことは伝えた、とばかりに、その声は空間へと消えていった。

主のわからぬその声は、ミーメの心の奥底を、少しずつ確実に、侵蝕しはじめていた。

 

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