穏やかな太陽の光がふりそそぐ訓練場。
今日のフィールド設定は、
高い木々と鬱陶しいほど草花が見渡す限り茂るジャングル。
その一本の大木に俺はいた。
「まあ、はじめてだからこんなもんかね。」
俺は腕時計で時間を確認する。
時刻は十時十分、
午前の訓練が始まってジャスト二時間が経過した。
遅く慣れない運動に肩がこり、
グーッと空に腕を伸ばして背伸びをしつつ、首をまわす。
「かるい準備運動のつもりでやったんだが、
………………お前達には少し厳し過ぎたか?」
地面に倒れ、疲れきりぐったりとしている四人。
「たがが二時間を軽く走った程度で情けない。
気合いを出せ気合いを。」
「ハアッ、ハアッ、あ、あれをかるくなんて、ハアッ、
ぜ、絶対に、言いません。」
「ハアッ、藤田さんの動きが、ハアッ、速すぎます。」
荒い呼吸を繰り返しながらも答えるスバルとエリオ。
フォーワードメンバーの中で体力があるほうの二人は、
地面に膝をつき、槍を杖がわりにして体を支え、
座りこんでいる。
だが、この二人は慣れない場所でも恐れず、
最初から魔力を全開(フル)に使用して、
終始俺を捕まえにきたのだから疲れるのは当然。
スバルとエリオは魔力、体力とも及第点で合格。
問題は残りのメンバー、
視線を左に移して草が人の形にそれている地点。
地面にベターと転んだままでうつ伏せになっている少女、
キャロの元に歩き、しゃがむ。
「キャロ~~無事か~~生きてるか~~。 」
「…………………….….。」
返事がない。
「おーい、返事しろーー。」
「.……………………。」
試しにつついてみるが反応もない。
ただの屍のようだ。
流石に心配になり、耳を澄ませてみると、
心音、呼吸は安定しているので大丈夫だと判断。
次は右にいる彼女の元まで歩き疲く。
「ハアッハアッハアッハアッーーー。」
こちらも荒い呼吸で木に持たれかかりるティアナ。
そんなティアナに俺は、ニャーッ、と邪悪な微笑みをつくり、
「残念だったなティアナ、この勝負は俺の勝ちだ。
約束通りこれからの訓練は文句はいわせんぞ。」
「...……………せん。」
「?せん?」
「ハアッ、ハアッ、ーーーーまだ、負けてせん!!」
顔を肌色から紫色を変え、体力、魔力ともにはきれかけ、
いきも絶えだえな声でありながらもティアナの瞳は死んでいない。
(根性だけは一人前だな。)
(しかし、根性だけではもうたてまいよ。)
震える脚を手で押さえつけ、立ち上がろうとするティアナだが、
足が、ズルリ、と滑り倒れこむ。
「~~~~ッ!!まだ、まだ負けてません!私はまだ動けます!!
問題ありません!!」
「いやいや、無理だって、限界だよ君の体は。」
手足に力を込めているのだろうが、
体が思い通りに動かず、ティアナは悔しそうに歯噛みする。
そんなティアナに、俺はガリガリと頭をかく。
「ーーったく、ガキが弱っちいくせに強がるじゃない。」
腰に下げたバックから小型の水筒を取り出す。
中はポカリスエット(?)らしき水、
訓練前の廊下でフェイトから貰ったものだ。
蓋を外して、呑み口をティアナの口元に近づける。
「飲めよ。少しは楽になる。」
「ハアッ、心配して、ハアッ、いただかなく、ハアッ、
とも大丈夫です。ハアッ、ハアッ、」
「いやいや、全然大丈夫そうに見えないから、
今にも死にそうな顔してるから。」
強情をはるティアナの口にさらに近けようとした、
瞬間ーーーーー。
死に体(キャロ)なはずの瞳がギラリと怪しく輝かせ、
飛びかかってきた。
「シャーーーーッ!!!」
「オワッ!いきなりなにしゃがる!!」
咄嗟に体を引いて突進は回避したが、
キャロは猫のような俊敏さで俺から水筒ひったくり、
蓋を壊すいきおいであけ、ガブガブと飲みだす。
「まてまて!慌てず少しずつゆっくりと飲めよ!!
一気に飲むと体にーーー、って遅いか。」
「ゴクゴクッーーーゲホッゲホッ!!」
らっぱ飲みの途中でむせるキャロ。
アホだ、呆れながらティアナに予備の水筒を渡す。
一分ほど迷っていたティアナだが、水筒を受けとり。
「………………….いただきます。」
蓋をあけてコクコクと、ゆっくりと飲んでいくティアナ。
「「じーーーーーっ」」
視線が背中にグサグサと突き刺さってきた。
チラリと後ろを見てみると、
スバルとエリオの二人が物欲しそうな、
当然僕たちにの分(水筒)もありますよね、って瞳をして待っている。
ハアッ、とため息をつく。
「…….…………….仕方ないやつらだな。仲良く飲めよ。」
ホラよ、と最後の水筒をスバルたちに投げつけ、
見事キャッチするエリオ。
「「ありがとうございます。」」
「ゆっくり飲めよ。後、仲良くな」
はい、と頷き、行儀良く九十度頭を下げてから、飲みはじめるエリオ。
こちらもよほど咽が渇いていたのからっぱ飲みして、
すぐにスバルに手渡す。
仮にも「神滅具」と戦う可能性がある四人が、
ここまで基礎体力がないとは予想外。
このままでは全員殺されてしまう。
腕を組み上げて、空を仰ぐ。
これしかない。
「神滅具」との戦闘で、か弱い子供たちが生き延びるには。
ぐっ、と握った拳に力を込める。
(あとは、みんなの覚悟だけだな。)
みんなを見つめ、訓練のはじめをを思い出した。
フェイトと買い物をした翌日の訓練、
俺はスバル達の「実力」を調べる為に「鬼ごっこ」をする事にした。
ルールは簡単、マップは訓練場全域で制限時間は二時間。
俺は魔力、神器を禁止。
スバル達は魔法、武器の使用は自由。
俺が逃げる役で、
スバル達は二時間以内に捕まえるor攻撃を「体」にクリーンヒットさせたら勝利。
はじめはいくらなんでも俺が不利すぎると納得していなかったティアナ達に、
「大丈夫だ。「魔力」と「神器」が使えない程度で、
お前達の攻撃が俺が怪我をする事態にはならねーよ。
「絶対にな。」」
このセリフに「魔導師」のプライドにカチンときたらしく。
ティアナは、ピキッ、と頬を引きつらせ、
「失礼ですが私達は成り立てとはいえ「B級」の魔導師です。
いくら藤田さんが隊長達に勝ったといっても、
魔力なしの生身で魔導師に勝てるとはーーー」
「勝てるさ。負ける筈がないだろ。
なのはたちより「弱い」んだから。」
ティアナの言葉を遮り、ハッキリと断言する。
「万が一にも俺が負けたら、
今後一切、お前達の訓練に口をださないことを誓うよ。」
「その言葉、嘘じゃないですよね。」
「もちろん。
逆に俺が勝ったら今後の訓練で一切の文句は許さんぞ。」
「!それは………………」
体を強張らせたじろくティアナを、口に手をあて嘲笑う
「あっれー、まさか揺らいじゃうの?
今あれだけの大口を叩いた自信はその程度のものだったのかなかな~~??」
「!!じょ、上等です!私達を甘くみたこと、後悔させてあげます!!」
「ムダムダ、そのセリフをはいた時点で負け犬決定。
負ける奴の常套句だぜ。それ」
「~~~~~~~~っ!!」
至近距離で睨んでくるティアナを睨みかえす。
以外と熱くなりやすく扱い易いティアナに、
周囲にいるスバルたちの反応は。
「ティア、思うつぼだよそれ。」
「ティアナさん、落ちついて下さい。勝てませんよ。」
あはは、と呆れた顔をしているスバルに、
慌てて止めよとするエリオ。
キャロは事態についていけず困惑しているようだ。
「はーい、そこまで。」
俺とティアナの間に入ってきたなのは。
「あとは訓練が終わったにしてね。じゃあ、始めるから位置について。」
ふん、と顔を反らして、俺から距離離すティアナにスバルたちも続く。
なのはは俺たちが十分に離れた位置にいることを確認して、
手を上に上げ。
「それじゃあ、鬼ごっこスタートだよ! 」
振り落とす。
合図と同時に全員が動く。
全員を視界におさめつつ、バックステップで後ろに下がる俺を、
スバルたちは各自武器を構えて、追撃してきた。
「ストラーダ!!いくよ!!」
エリオは高速移動による槍の刺突
「マッハキャリバー!!ウイングロード!!」
空中に青い道をつくり、上を走ってきたスバルの拳の打撃
「クロスミラージュ!!」
遠距離からティアナが放つ銃による無数の魔力弾の飛来し
「ケリュケイオン!!バインド!!」
ピンク色の拘束を唱えたキャロが脚を捕らえにきた。
それぞれが得意な「魔法」を駆使して、
俺を捕まえてきた四人。
生身の人間では絶対にかわす事が出来ない四撃をーーー
「甘いはガキども!!!」
槍を捌き、拳を受けとめ、弾を叩き落とし、拘束引きちぎる。
「なっ!!!!」
驚愕する四人。動きが一瞬、硬直して止まる。
「全然なってねーなお前らは。」
攻撃を無効化したスバルたちの「間」を横切って逃走開始。
すいすいと走る俺を逃がすまいと追ってくるスバルたちだが、
草木に阻まれて思ったように進めない。
「速い!!」
「こ、のーーー!!」
ティアナが魔弾を撃つだす。
木々の間をぬってくる魔力弾だが、
避ければ必然、速度は落ちていき、簡単に避けられる。
「よっと。」
手を上げて、魔力弾を回避。
「いまです!」
「おおーーーー!!」
上段から振り落とされるエリオの槍。
これも、木枝に阻まれ、斬撃の軌道がバレバレなうえに遅い。
「ほいっと。」
脚を止め、急停止する。
ザン、と槍が地面を切り裂くが俺の前髪を数本切っただけ。
ヒットしてはいない。
「残念、またの機会に、」
再び逃走を開始する俺。
その後も何度も奇襲してきても結果は変わらず、
同じ事を繰り返され、今にいたるとうわけだ。
水を飲み、休憩しているスバルたち。
どうきりだせば良いものかと悩む俺の頭上から、
なのはのに声が届く。
「やっほー陸君、スバル達の調子はどうかな?」
「なのはか。見てのとおりあんまりよくはないな。」
ダレパンダのようにだれている四人を指を指す。
空から降りたち、
地面にたつなのははスバル達の惨状に苦笑する。
「う~~~~ん。
一応、訓練前のウォーミングアップでグラウンドを何周か走っているんだよ。」
「一周なんメートルぐらいなんだ。」
「五百メートルくらいかな。」
「全然足りない。
俺に武術を教えてくれた師匠はウォーミングアップで、
三駅先にある公園まで走らされたもんだ。
タイヤ付きで。」
「……………それって修業っていうより「拷問」だよね。 」
顔をひきつらせドン引きするなのはに、
甘い甘いと笑う。
「「拷問」ならいい方だ、
「殺人未遂」レベルの修業だってやったことあるぞ。
例えば下から火で炙られながら腹筋と背筋を鍛え、
電気を流されつつ突進力を養い、
山では崖から落とされ木の実で生活…….…、」
「本当に殺人未遂だよそれは!」
指をおりながら師匠達からもらったトラウマの数をかぞえていき、
「でも今は感謝しているだぜ、師匠達にはさ。
あの人達との日々があったから俺は強くなれたんだから。」
「….………………………。」
そう呟く。
毎日走った日々に今は感謝し、お礼が言いたい。
あの地獄のような日々があったから、俺は強くなれた。
「力」だけじゃなくて「心」もだ。
「ドラコン」と「神」、
その両方の「力」を制御できる「強い」俺が生まれ。
仲間と家族を守ることができた。
だからーーー
「多少トラウマがあろうと、師匠達を恨んでなんかいないんだ俺は。」
「……………….……好きなんだね師匠さんたちのこと。」
「ああっ、嫌いじゃない。」
「そうなんだ。」
納得して安心したなのははスバル達のところに歩き、
「頑張れ頑張れ」とみんなを励ましはじめた。
そんな元気な後ろ姿が、
修業時代に「兄さん兄さん」と毎日のように遊びにきた妹、
しばらく会っていない妹が懐かしく、
おもわずーーー
「理亞(りあ)。元気にしてるかな」
妹の顔を浮かべて呟くと、
聞こえたのかなのはが振り返った。
「どうかしました?」
「いや、なんでもない。気にするな。」
「???」
苦笑いをする俺を、
なのははしばらく不思議そうに俺を見つめていたが、
スバル達の方を向き直した。
ふう~~と額の汗を拭う。
「何をくちばしっているんだよ俺は、」
イカンイカン、
柄にもなくセンチメンタルになっているようだ。
(妹が恋しいのか?シスコンだな。)
(黙れドライグ!宝玉叩き割るぞ!!)
ごんごんと左手を叩き、
頭を振り深呼吸、気持ちを切りかえた後パチパチと手を叩き。
「全員休みながらでもいいから聞くように!」
エリオとスバルは座ったまま、
キャロはなのはに抱えられつつ、
ティアナは水筒のカップでチビチビ飲みつつ、
こちらを見てきた。
「みんないい素質はもっているよ。
このままペースで修業を続けていけば、
数年から五年後ぐらいにはなのはやフェイトに匹敵する実力
持てるだろうな。 」
「ほ、本当ですか藤田さん!」
「私達、なのはさんやフェイト隊長みたいななれるんですか?」
「嘘をついてませんか?」
四つんばりで、
詰め寄せてくるエリオ、スバル、キャロの三人。
バイオハザードのリッ○ーを連想させる格好に、
頬がひきつりつつも正直に答えた。
「ああ、まちがいなくなれる。修業を続けていけぱな。」
「ーーーーーーッ!ヤッターーーー!!!」
ガッツポーズをとるスバル達に、
よかったね、とみんなに称賛の声をかけるなのは。
たいへん喜んでいるところ悪いんが、
俺は「しかし」と続けて、いい放つ。
「なのはやフェイト「程度」の実力では神滅具には勝てない。
絶対にーーー殺される。」
「ーーーーーーーーーえっ?」
今度は言葉がでずに、絶句するスバルたち。
そんな中、ティアナだけが質問してきた。
「……………………絶対にですか?」
「なのは達隊長格とは模擬戦して、戦闘力は把握した。
だから間違いないと思うっていい。」
「…………………………。」
暗い顔で沈黙するフォワードメンバー、
なのはも何も言えず黙っている。
お通やみたいな雰囲気をかもしだす全員の顔に戸惑う。
(ハッキリ言い過ぎたかなドライグ?
もっと遠回しにオブラートに包んでいったほうがよかったかな。)
(良いのではないか。遠回しに答えたところで、
相棒が伝えたい事がかわる訳でもあるまい。)
だよな。と頷き、俺はなのはたちに力強く宣言した。
「だから、俺が全員を一から鍛えてやる。
全員最低でもおれを「捕まえられる」程度には成長してもらう。」
ーーーーーーっ!
息をのむメンバーに、俺は続ける。
「最初から無理だとあきらめるな!!人間、努力してやれないことはない。
「やる」か「やらない」か、それだけだ!!!」
「ーーーーーーッ!!はい。頑張ります。」
「よし、いい返事だ。なら休憩は終わりだ。
次はお前らが逃げる番だ、一分後に追いかける。いけ!! 」
「はい!!!」
走りだすティアナたちの背中が徐々に遠ざかっていき、
木々の中にきえいく。
「カッコいいセリフをだね。自分で考えたの?」
俺の前にたつなのはのが聞いてきた。
「いや、違うよ。
昔、自分が師匠に言われたことをいっただけだ。
寒かった?」
「ううん。よかったと思うよ。カッコよかったし。」
「ははっ、そいつはどうも。」
世辞をかるくかえす。
俺がカッコいいわけないしな。
………………互いが沈黙して一分が経過した。
「よし、張り切っていきますか。」
「うん。怪我しないように、させないようにね。」
「了解、了解。」
脚に力を込める。
さて、何分逃げられるかね、あいつらは。
少しだけ、ワクワクしながら走りだした。
感想がありましたら、ガンガン下さい。
ただし作者の心は障子紙より穴が空きやすいので、
手加減をお願い申し上げます。
次はようやく、本編が始めり「ファーストアラート」です。