スバル達の初の訓練が終わって一週間が経過した。
始めは難しかった魔導師に対する「力」の手加減も、
コツがつかめ、やっとこの世界になれてきた朝。
「ご馳走さまでした。」
日課の早朝修業を終えた俺は、ただ飯の朝飯を平らげ、
ブルジョア気分で食後のコーヒーを飲む。
「う~~ん、相変わらすうまいなここのコーヒーは。」
いい豆を使っているのか最高にうまい。
…………味の違いイマイチわからないが。
カップをテーブルに置いて、
「今日もいい天気だな。」
窓を開くと心地いい風が流れ、すみきった蒼空を見上げた。
(ーで、何をたそがれているんだ相棒、正直似合わんぞ。)
(似合わないいうな!!自覚しているわ!それぐらいは!)
ドライグの言葉にため息をつき、気分は最高にブルー。
漫画なら背景が暗くなり、
ズーンと効果音がでるほど肩を落とす。
(能天気で後先を考えないのが取り柄の相棒が悩み事か?
相談なら「聞くだけ」聞こう。)
(さりげなく人をバカにするな。
まあ、聞いてくれるだけでもうれしくはあるんだが。)
この際文句は言ってられない。
聞いて貰おう。
(スバル達の訓練方法がさっぱりわからんのが悩みだ。)
(なぜだ?しっかりと、とまでは言わないが、
ある程度はこなしているではないか。)
(基礎体力の向上を目的とした修業ならな。
師匠達からトラウマになるレベルの修業を受けた身としては、
人間のどこを鍛えれば、筋力が上がるのかはわかってるつもりだ。」
(なら問題はないだろう。何を悩む。 )
(「基礎体力をあげる修業しか出来ない。」
これが問題なんだよ。)
あー、と曖昧に肯定するドライグ。
不味い。
なりゆきではなく、
覚悟を決めた気持ちで指導官を引き受けたのがつもりだったが、
ダメでした。
そもそも「魔導師」でもない俺がスバル達を鍛えられるはずなく。
見船は見事に座礁してしまった。
はぁ~~、とため息。
(しかし、それは相棒のせいではあるまい。
はやて達は相棒に「魔導師」を育てろとは言っていない、
「神滅具」対策をお願いしたのだろ?
なら構わないだろう。役目は果たしていると思うがね。)
(ーーだといいんがね。胃が痛くていけない。)
はやては「急がなくてもええよ。」とは言っていたが、
居候のこちらとしてはなるべく早く結果を出したい。
ガタッと椅子から立ち上がる。
「ダメだダメ、体を動かそう。リフレッシュしよう。」
訓練場に向かって歩く。
一言言うが、けっして「現実」逃げているわけではない。
これは「戦略的撤退」だ!!
と、自分に言い訳しながら歩きつつ、
ついでに習ったばかりのモニターを展開。
画面には、
ここ一週間で向上したスバル達のパラメーターが折れ線グラフで記されおり、
俺は上がりぐわいを確認していく。
(…………みんなが頑張っているのはわかるんだけど、
いかんせん結果が伴わらないだよな。)
僅かに、本当に少しづつ上がって数値。
進歩がないとはいわないが、余りにも遅すぎる速度。
蟻と同じぐらいだ。
(才能がないのでは仕方ないことだ。
誰でもが「藤田陸」のようにはいかないことは理解しているだろう?
時間をかけてやっていくしかないありまい。)
(そうだな。それぐらいは分かっているんだが….…………)
気持ちが焦りギリッ、と歯をくいしばる。
分かっていたことだ。
一目見た時から、
スバル達には「魔導師」の才能はある。
しかし、「武術」に対する「才能」は低い。
だからこそ時間がほしいのだ、みんなを強くする為に。
(…………….もどかしいな。)
(なら焦らないことだ。
無茶な訓練をして怪我でもすれば本末転倒だぞ。)
(……だな。こればかりは地道にやるしかないわけだし。)
ドライグの忠告に頷く俺だが、
不安が頭から離れない。
万が一にも『神滅具』、
歴戦の猛者との戦闘になれば一分も経たず殺されてしまう
(あんな光景(こと)は一度だけで十分なんどよ。
だから、今度こそ守るんだ、なにがなんでも。)
(……‥………相棒。)
頭の中で戦闘シュミレートをしては頭を振り、
駄目な箇所を修正してもう一度やり直す。
試行錯誤を繰り返す。
「なんだ?一体。」
突如鳴り響くサイレン。
ビービーと警報音が鳴り響き、
ランプが赤く点滅して通路が染まる。
脚を止めて立ち止まった俺を、
局員は慌ただしく走りながら通過した。
窓を覗くと、椅子に座った男性が緊張した面持ちで連絡していた。
警報音ってまさか。
「陸君至急屋上の向かってください。緊急事態発生です。」
「緊急事態?」
モニターに現れたなのはが真剣な表情で言う。
人間、嫌な予感ほど当たるもんだな。
「説明はヘリでします。」
「了解した屋上だな、すぐにいく。」
「お願いします。」
プツンとモニターが消えると同時に、
隊舎の見取り図を頭の中に描き、
最短長を走りした。
ーーーーーーーーーーーー
バババババとローターを回して空を進むヘリ。
中には俺の向かいになのはとリィンが座り、
フォワードメンバーが四人が座っている。
フェイトはいなく、現場で合流するらしい。
初任務に緊張しているのか、顔が強張ってガチガチな様子。
大丈夫なのかと心配になるが今は、
「状況を説明してくれ、
どうなっているんだ神滅具でもでたか?」
最悪な事態になっていないかと、
尋ねる俺にリィンは首を横に振る。
「恐いこと言わないでください、神滅具ではなく。
レリックが発見されました。」
「レリックって、
前にはやてが言っていた赤い石ロストロギアのことか。」
「はいです。」
レリックーー赤い結晶状のロストロギア。
使用法は一切不明だが、
結晶内に強力な魔力エネルギーを秘めており、
極めて危険度が高いロストロギア。
その爆弾らしきものが見つかったとの報告をうけ、
はやてはなのは達に出場命令をだしたようだ。
「なるほどね、
じゃあ見つかった場所と敵対する戦力はどれぐらいなんだ。」
続けてなのはが説明し始めた。
「場所は、エイリム山岳陵地帯。
対象は山岳リニアレールで移動中。
内部に浸入したガジェットのせいで、車両の制御が奪われている。
リニアレール車内のガジェットは最低でも三十体。
大型や飛行タイプの未確認の出るかもしれません。
気をつけください。」
「了解した。まあ、気をつけるほどの敵じゃないが。」
頷き、安心した。
ガジェットなんて玩具は「敵」足り得ない。
三十体程度、一分もかけずスクラップに変えてやる。
ボキボキと拳を鳴らす俺に、なのはは。
「でも、陸君はヘリで待機ですから。」
「はいっっ?何でだよ!!」
「これはスバルたち、フォワードメンバーの初任務ですし、
陸君が戦ったら任務にならないじゃないですか。」
「そ、それは確かにそうかもしれないが……………」
ぐうの音でずに黙る俺に、リィンがいう。
「陸さんはヘリでのんびりと待っていてください。
「力」が必要な時は絶対に連絡しますから。」
「……………………わかったよ。ヘリでおとなしくしてるよ。」
参りましたと両手を上げてつつ、ドカッ、と長椅子に腰をおろし。
「だが、俺が「危ない」と判断した時は助けに入る。
これは譲れない。」
「はい。その時はお願いします。」
「よろしくですよ~~~~。」
二人の返事に頷く。
そこからしばらくヘリで飛行してく。
「ん?キャロどうかしたか?」
顔がさっきより強ばり、僅かにだが肩も震わせている。
「い、いえ、何でもありません。」
「何でもなくはないだろ、緊張しているのか?」
「ごめんなさい。」
謝られても困るんだが?
エリオも気づき気遣うが、キャロは平気だとかえすだけ。
この娘は「緊張」しているだけではない、
「何か」を怖がっている。
こんな精神状態で戦うのはマズイな。
「大丈夫だ、何も心配することはない。」
「えっ?」
キャロの小さな頭に手をおく。
「お前は独りぼっちじゃない。
エリオにティアナ、スバルがいるし、なのはだっている。
一人じゃ不可能なこともはみんなで力を合わせれだいい。
それに俺がいる。」
「藤田さん。」
「ピンチの時は何時でも呼んでくれ。
必ず「助けてやる」「教えてやる」「なんとかしてやる」、
だから心配なんかせずにおもいっきりぶちかましてこい!」
「はい!」
「よし!」と、柔らかな髪を優しく撫でていく。
ほわ~~っと、目を細めて気持ち良さそうにするキャロ。
これで少しは改善されればいいんだがな。
「優しいんだね陸君は。」
にっこりと微笑むなのは。
いや、この程度の気遣いは普通だろとおもうんだが。
「なのはさん、もうじきポイントに到着します。」
シャーリーの報告が入り、頷くなのはのヘリのハッチを向かう。
「じゃ、ちょっと先に出てるから、みんなもズバッとやっちゃおう!」
「「「「「はい!!!」」」」
「陸君も後はよろしくね。」
親指をぐっとたてるなのはに、同じやりとりをかえす。
任せておけと意思を込めて。
僅かにいきおいをつけて飛び出し、
ハッチから落ちていくなのはを見送る。
「で、リィン。
スバルたちは何をすればいいんだ?レリックの回収だけか?」
「いえ、任務は二つあります。
一つはガジエットを逃走させずに全機撃破すること。
二つ目がレリックを安全に確保することです。
ですから、スターズ分隊とライトニング分隊の二チームに別れ、
車両前後からガジエットを撃破しながら中央に向かうです。」
リィンはリニアレールの見取図をモニターが展開させて示す。
「場所は、七両目の重要貨物屋。
スターズとライトニング、先に到達したほうがレリックを回収するですよ。」
「「「「はい!」」」」
「で、私も現場に降りて観戦するです。」
「あれ?リィンも行くの。ここに残るのって俺だけ」
無視ですね、わかります。
その場で回転したリィンの服装がかわった。
「新人ども。隊長さん達が空を抑えているおかげで、
安全無事に降下ポイントに到着だ。準備はいいか!!」
「「「「はい!!!」」」」
ヴァイスに言われて、スバルたちはハッチに向かい、
空に飛び出していく。
リニアレールに着地したスバルたちは、
ガジエットを手間取りながらも撃破し、内部に侵入していく。
「あれぐらいなら平気そうだな。」
空を視てみると、
高速で縦横無尽に走るフェイトが鎌で飛行型のガジエットを切り裂き。
なのはは無数の魔力弾でガジエットを穴あきにする。
コンビネーションがとれた動きに、
敵はついていけず次々に撃破されていく。
ガジエットも隊列を整え、
反撃とばかりにミサイルを発射していくが、二人は迎撃、回避。
かすり傷一つ与えられない。
戦いではなく、一方的な殲滅が行われていた。
「陸の旦那の出番は無さそうですね。」
「それならそれでいい。楽でくるし。」
「ですね。」と笑うヴァイス。
この調子なら、数十分そこらで終わり、レリックは無事に回収出きるだろう。
「?なんだ?」
窓から目を離そうした俺は不可解な点に気づく。
リニアレールに突然霧が生まれた。
眼を凝らす。
間違いない、霧がリニアレールを覆い隠すように膨張していく。
あれはマズイッ!!
「どうかしましたか陸の旦那?」
「ヴァイス、フェイトに連絡しておいてくれ。『絶霧』が出たと。」
右腕に「赤龍帝の籠手」を装着し、ハッチからいきよいよく空に飛び出す。
後ろからヴァイスの焦ら声が聞こえたが、気にしてられない。
ティアナたちだけか「孤立」してしまう。
(やはり白龍皇だけじゃあなく、
複数の神滅具使いが敵に回っていやがるか。)
強い力の所持者は誰かの下にはつきにくい。
予想通りとは言え、厄介な状況になったもんだ。
景色が下から上に流れていく風景、
空から地面に堕ちていく浮遊感を味わいつつ、
「いくぜドライグ!!『禁手(バランス・ブレイク)』!!!」
『Welsh Dragon Balance Breaker(ウエルシュ ドラゴン バランス ブレイカー)!! !!!!!!!』
赤い魔力が俺を覆い、鎧を身に纏う。
ドラゴンの姿を模した全身鎧。
全体的に鋭角なフォルム。
籠手は右手だけではなく、左手にも装着されており。
籠手にあった宝玉は両手の甲、両腕、両肩、両膝、胴体にも出現している。
背中にはロケットブースターの推進装置が装備している。
ゴゥン、と背部の噴出口から魔力が吹き出し、
リニアレールに急ぐ。
後、一分。
「チッ!!このタイミングで転送魔法陣かよ!」
周辺に無数の魔法陣が展開されていく。
足止め部隊かよ!ならスピードを上げて振り切るだけだ!!
さらなる魔力を背部に送り込む。
『陸さん!どこにーーー。
って、なんですかそのカッコウは!!』
「説明は後でしてやるから、要件を手短に話せ。」
俺の鎧姿に驚くフェイトだが二、三度深呼吸をして冷静さを取り戻した。
流石は一応とはいえプロ、状況判断はできるようだ。
後、三十秒
『その場所の周囲に大規模な魔力が感知されました。
見たこのない魔法陣ですが、おそらく転送魔法なのかと思われます。』
「だろうな。見ればわかる。」
視界に見えるだけでも大小様々な魔法陣が、
空を埋め尽くす勢いで描かれていく。
「数はどれぐらいある?」
『少なくとも百個以上有ります。』
「少なくとも百体以上の敵か転送されてくるってことか…………よしまかせた。」
『えっ?』
フェイトとなのはには悪いが、
ティアナたちのほうを優先させてもらう。
こっちは数からして神滅具使いがきたわけでなく、
ガジエット(玩具)の追加だけなら大丈夫だろ。
唖然としているフェイトに、
「来るのはおそらく雑魚だけだ。
それぐらいは自分たちだけで何とかしてくれ。宜しく。」
『陸さん、ちょっと待ってーーー』
リニアレールに到着。
同時に霧がすべてを包み込むと、
モニターがノイズがはしり、ブツン、と途切れた。
次は「神滅具」です。
できるだけ早く更新していきます。
感想がありましたらガンガンください。
ただし、作者の障子紙より弱い心を壊さない程度でお願いします。