楽しんでくれたら幸いです。
「…………….ここがそうなのか?」
げっそりとした顔で、俺はなのはに聞く。
「そうだよ。ここがはやてちゃんの部屋、はやてちゃんの部隊長室!!」
俺の前で、なのはは大きな胸を張る。
揺れる乳房に目いきそうになるが、なんとか堪える。
この娘は自分の体(ぶき)がどれほどの物なのか理解していないのか?
無防備すぎるなのはに、頭を抱えていると。
フェイトが心配そうに顔を近づけてきた。
「どうしたの陸君?頭が痛いの?
気分が優れないなら医務室にいこう。」
「い、いや、大丈夫だ問題ない。」
「そう。」と微笑むフェイト。
実際は大丈夫ではない。
建物に入ってからの五分間は地獄だった。
なのはとフェイト、綺麗すぎる二人が俺の両手を握り案内するんだぞ。
施設内でもかなりの有名人なのか、(美人だから当たり前か)
視線が突き刺さる突き刺さる。
露骨に睨む奴、血の涙を流す奴、好奇な視線の奴。
千差万別な視線に晒され、歩くだけで疲れてしまった。
俺がため息をつくと、二人が気遣ってくれる。
「陸君がとっても疲れているのはわかってるけど、あと少し頑張ろ。
はやてとのお話しが終わったらゴハンだから、ね。」
「その時はみんなも紹介するよ!楽しくごはん食べようよ陸君!」
フェイトとなのはのやさしさが心に染みる。
そうだよな。
あと少しゴハンなんだ。
そう思えば頑張ろという気持ちにもなれる。
頬を叩きと気合いを入れて、目の前にある部屋を見る。
まわりの扉と比べて多少豪華な扉。
「部隊長室」と書かれたプレートが飾られている。
そんな扉をフェイトがコンコンとノックすると。
「どうぞ。」
若い女の子の人の声が返ってきた。
「「失礼します。」」
なのはとフェイトがお辞儀して部屋に入っていく。
俺も遅れないように軽く会釈しながら、部屋に入ると。
眼を丸くした。
部屋にはなのはやフェイトより若い女性がいた。
茶色の髪を肩で綺麗に揃え、整った顔した女性。
なのはやフェイトと同じ制服姿で椅子に座っている。
部隊長というのだから、年輩の女性か、男性。
もしくは三十過ぎの厳ついオッサンだと思っていた。
どう考えても若すぎる年齢だ。
(深刻な人材不足なのかな管理局って?
こんな若い、っていうか。子供が部隊長なんて、お先が真っ暗だぞ。)
『相当大きな組織なのだろうが.………………これは。』
俺とドライグが失礼極まりないことを心で話し合う中、
横ではなのはとフェイトが敬礼する。
「高町なのは一等空尉、フェイト・T・ハラオウン執務官。
ご報告のため参りました。」
「とりあえずご苦労様、なのはちゃん、フェイトちゃん。
そんで、そちらが次元漂流者の人やな?」
「はい。彼が例の次元震が発生したポイントで発見。
初めて保護できた人物です。」
「そう、彼が。」
返事をしたはやては椅子から立ち上がり、ゆっくりと歩きだすと。
俺の前で止まり、
「はじめまして、私が機動六課部の責任者。
部隊長の八神はやてです。」
右手を出してくる。
その手をどうべきか。悩む。
普段から人付き合いが絶無(ぜつむ)な俺には若干、
ハードルが高くないだろうか?
動かなくなった俺になのはが小声で言う。
「?なにしてるの陸君。握手だよ、握手。」
「!!ああ、そうかそうか。握手ね。握手。
俺の人生で、人から握手を求められたことがなかったんから
すっかり忘れてたわ。」
「陸君………….…。」
優しい瞳で俺を見るなって!悲しくなるだろが!!
見ればフェイトの眼に涙目になってるし!!
「大丈夫だよ陸君。
私なら、いくらでも手を握ってあげるから。」
涙声で言われても困るんだが….………….….
気が向いたら握手するか。
二人から優しい瞳で見つめられているとーーー
「………………そろそろいいかな。」
はやてが少し寂しそうに笑う。
俺は、二人の瞳から逃げるようにはやて握手した。
「どうも、次元漂流者の藤田陸です。
よろしくお願いがします。」
「うん。よろしくお願いします。」
ギュッと力をいれる。
はやての手が思っていたよりも柔らかく。
若干ドキドキしたのは秘密だ。
「そんでなんて呼べばええん?
十通りぐらい考えたんだけど。可愛いくりっくんって呼んでいい?」
「普通に「陸」と呼んでくれ。俺は「はやて」と呼ばせてもらう。
あと、俺相手に敬語なんて使わなけていい気軽に話そうぜ。
堅苦しいは苦手なんだ。」
「ありがとうな。私も「陸」って呼ばせもらうな。」
無愛想に答える俺に笑顔で頷く彼女。
呼び捨てか、まあ構わないはしないか。
はやてはニコリと微笑み、ソファーを指さし提案する。
「お互いに長いお話しになりそうやし。
そっちに座って話そ。なのはちゃんもフェイトちゃんも。」
「すまない、助かる。」
「「うん。」」
座りながら話せるのは有難い。
これからの事は本当に長いお話しになりそうだしな。
俺の前には、はやてがテーブルを挟んで座り。
右側になのは、左側にはフェイトが座るんだろう。
フェイトは小綺麗なカップに紅茶を注いでいる。
紅茶をくるまで待つことない。
俺は、はやてに言う。
「で、まずはなにが聞きたいんだ?
わかる範囲でいいならなんでもも答えるよ。」
「なんでもいいん?」
「答えられるor俺が知っていることならね。」
腕を組みう~~んと悩むはやて。
この娘はよほど聞きたい事が多いのかね?
質問を気長に待っていると、とテーブルにカップが置かれる。
「陸君も紅茶でいいかな?」
「かまわない、ありがとうフェイト。」
フェイトは続けて、なのは、はやての前にも置いてから自席に着く。
はやては悩みながらもカップを取り、なのはカップも美味しそうに紅茶を飲む。
一つ残されたカップ。
立ち上がる湯気がゆらゆらと揺れている。
「紅茶.……………嫌いだった?」
「いや、たんに猫舌なだけだから。」
不安な顔で聞くフェイトにそう返す。
体の火傷や熱傷は我慢できるんだが、舌だけはそうはいかない。
少しは冷めたかなーーと思ったぐらいで手を伸ばす。
ずるずると啜っていると、器用に紅茶を飲んでいたはやてが口を開いた。
「そんなら、あの陸が纏った鎧は何なん?」
「うん。私もそれが聞きたい。」
「バリヤジャケットではないんだよね。」
はやてが言った「鎧」という言葉になのは、フェイトともが同意する。
一瞬なんのことかわからなかったが、すぐにきづく。
「鎧ーってこれのことか?」
意識を右手に集中させる。
赤い閃光が生まれ、形を造っていく。
光が晴れた時には、「赤龍皇の籠手」が俺の右腕に装着していた。
凝った装飾が施され、キズ一つない。
手の中心にはライトグリーンに宝玉が埋め込まれている。
「キレイ…….……。」
呟き、なのはが俺の籠手に触る。
「綺麗」か、そんな感想を聞いたは始めてだ。
この神器をみた奴の反応はふたつ。
逃げていくか、闘いを挑んでくるかだけだ。
触りながらなのはが聞いてくる。
「ねえ陸君、これはなに?デバイスじゃあないんだよね。」
「俺の神器(セイクリッド・ギア)の
「赤龍帝の籠手」(ブーステット・ギア)だけど。」
「「「神器?赤龍帝の籠手?」」」
わからない顔する三人。
予想していたことではあるが、やっぱりか。
魔法を使うならば知っているはずの「力」だ。
その神器の事を知らない。
いや、この世界には存在自体がないのかもしれないな。
面倒だと思いながらも説明する。
「神器って言うのは特定の人間に宿る規格外の力の事だよ。」
「???レアスキルのことかな?」
「まあそんなところだよ。んで、コイツが俺の相棒でもありーーー。」
赤龍帝の籠手に力を込めると、力強い赤いオーラが生まれる。
「神器の中でも13種類ある神滅具(ロンギヌス)の一つだ。」
「神滅具っていうのは?」
「言葉通りの意味だよ。
神様を殺せる可能性を秘めた特殊な神器の事だよ。
ちなみに、敵も最低一つは所持しているな。」
「それって、もしかして….………」
おそるおそる聞きにくるフェイト。フェイトには当然わかるか。
なんせ、自身が攻撃されたんだからな。
聞きたくないとは思うが後でバレて、なんで隠していた。
敵のスパイか?なんて疑われるのも嫌だし。
「フェイトの予想通りだよ。白い鎧が神滅具だ。
正確には翼の神器、白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイテング)だがね。」
ガーンと効果音が見えるほどショックを受けているフェイト。
「13種類もあるの!!」
神滅具の数の多さになのははビックリしている。
そんなフェイトとなのはを華麗にスルーして、
はやてが俺に問いかけてくる。
「陸は他になん種類の神滅具の名前を知っているん?」
「あと俺が知っている神滅具は七種類。
『黄昏の聖槍』(トウルー・ロンギヌス)、『絶霧』(ディメイション・ロスト)
『魔獣創造』(アナイアレイション・メーカー)、『獅子王の戦斧』(レグルス・ネメア)
『黒刃の狗神』(ケイニス・リュカオン)『幽世の聖杯』(セフィロト・グラート)
『煌天雷獄』(ゼニス・テンペスト)だけだよ。他は知らないな。」
仲間に教わった知識が役にたった!
聞きながらはやてはディスプレイにメモしていく。
仕事熱心な事だ。俺にはとても無理だね。
暇な時間をカップに入っている紅茶を飲んで待つていると。
「でも本当に綺麗だよね~~~~。」
うっとりとした顔をしたなのはが呟く。
色を気に入ったのか、造形が気に入ったのかは知らんが、
なのははよほど俺の『赤龍帝の籠手』が気に入ったらしい。
なのはは籠手を触りながら、ひょいと覗きこまれた。
「ねぇねぇ陸君陸君、この赤龍帝の籠手はなにができるの?」
「………..….なにがとは。」
具体的に言ってくれないとわからん。
「神滅具なんだよね。神様を殺せる力ってなんなのかな~~って。」
「興味があるのか?」
うんとなのはが頷く。
どうにも、なのはは俺の能力が知りたいらしい。
信頼関係を築く為にも言っておいたほうがいいかな?
黙っていたって戦闘になればすぐにバレれしまう訳だし。
(ドライグはどう思う。大丈夫だと思うか?)
『問題はないだろ。
神滅具の戦闘で「力」を隠し通すことは不可能だ。
遅かれ早かれ知られるのなら、自身から告白しておいたほうがいい。』
だな。見ればなのはだけではなく、
フェイト、はやても聞き耳をたててるし。
いちいち全員に説明する手間も省けるし、いっか。
「赤龍帝の籠手」を見せながら説明を始める。
「俺の神器の能力は「10秒ごとに力を倍にする」事と、
倍化した「力」を他の人に譲渡することが可能だ。」
「10秒ごとに倍になるの?」
なのはの言葉に俺は頷く。
「ああ、10秒で二倍、20秒で四倍って具合にな。
最終的には魔王や神すらも越え、滅ぼせるとも言われているな。」
なのはは言葉が出ないのか絶句。
はやてとフェイトも驚いている。
今の状態では、驚くほどの能力ではないはずなんだが。
神器には色々な能力があるんだぞ。
俺の能力は分かりやすいほうだ。
ふう~~っと深呼吸して、俺は説明を続ける。
「驚いているところ悪いがな三人とも。
今の状態での能力は最強とか最悪と呼ばれるものではないんだ。」
「嘘だよ。すごく強い力だもん!」
「本当だよ。考えてもみろよ。
10秒もかかるんだぞ、俺が敵なら10秒なんて待たないね。即殺する。」
みんながなるほどと頷く。
考えててもみてくれよ。
戦闘中になにもせず10秒、ただ待ってくれる奴なんていない!
破格の能力。
しかし、どうしても時間がかかるのがネックだ。
元が強ければ話は別だけど。
「でも陸君は「今の」って言ったよ。
それって違う状態もあるってことだよね?」
「まあな。」
よく気がついたな。普通気にもしないと思うんだが。
フェイトの言葉に俺は頷き肯定する。
「今の状態は神器が発現しただけの状態だ。
言うならば最低限の力しかだせない。
これを『禁手』(バランス・ブレイカー)に至ればいい。
至れるかどうかは本人の努力と才能次第だがね。」
「禁手?」
「これのことだ。」
俺の右肩を覆う赤いオーラが鎧を形成していく。
生まれたのは赤く分厚い装甲を装着した右腕。
「みんな、この姿が俺の『禁手』だ。部分的にだがね。
完全版は全身鎧。
この状態なら10秒とは言わず、いくらでも瞬時に倍にできる。
最大まで。」
「….………………………」
反応がない三人。
もっとすごい反応をするんだと思っていたんだが………..。
案外冷静に受けとめているようだな。
大概の人は、怯え、恐怖する。
なのは達の大人の対応に関心している俺に、ドライグが言う。
『相棒、この娘達気を失っているのではないか?』
(えっ!)
よくみて見ると確かに瞬きをしていない。
なのはの顔の前で手を振ってみるが無反応。
反応がない、ただの気絶者のようだ。
フェイト、はやてにも同じ事を試すが、共に反応なし。
いくらなんでも驚きすぎだろ!!。
1の攻撃を100にも1000にも強化できる力だけどさ!!
どんなびっくりしても、気絶するか普通!!!
「おーい、しっかりしろーーー。」
なのはの肩をやさしく揺する。
ハッときづくなのは。
フェイトとはやてにも同じ方法を実行、目を覚まさせる。
選択を間違えたかもしれない。
頼りない三人に心から思った。
次は『思考、注意』です。
感想がありましたら、ガンガン下さい。
心が折れない程度で。