前回の後書きで聖騎士の光魔法について変更しない方向にするっていったのですが、結局変更しました。
あ、あと章の名前つけました。どんどん増やしていきたいですね。
では、本文どうぞ。
◇
「…ハル、チハル!起きて」
シズクちゃんの声?もう朝か?昨日はなかなか寝付けなかったな。…誰が死んでも朝はくるんだね。…でも、マナトさんが死んだのは昨日って訳じゃないのか。おとといか。僕は知らない間に朝を迎えてたのか…。そうだ、起こされてたんだ、とにかく起きないと。
「…んぁ…どうしたの?」
テルもコウタも起きてる。寝坊した?まだ日が高く昇ってる訳じゃない。寝坊したってことはなさそうだ。
「なんか、パーティーに入りたいって女の人が!」
え?パーティーに入りたい?何で?寝起きだからか状況が理解できない。
「どういうこと?」
「とりあえず、その人中庭にいるからきて」
いわれるがままにベッドから降りて中庭に向かう。テルとコウタもついてきた。
そこにはうなじほどの長さの綺麗な赤髪の女性が立っていた。髪の毛は少し外跳ねしてる。身長は僕より小さい。一五○センチくらいだ。姿勢や立ち振舞い、シルエットやスタイルはなんだか大人びているが、それが似合わない幼い顔立ちをしている。歳がいまいちわからない。身長は低いけど、それを感じさせないようなスタイルの良さだ。
…うーん、どこかで見たような気がするなー?
「あなたがこのパーティーのリーダーね。私はオルタナ出身のアトリトルテ・アルベルトだ。先日、義勇兵に志願し、今日、戦士ギルドでの修練を終えてきた。今ちょうど、その足でここへきた。失礼を承知での申し出だが、私をあなたたちのパーティーに入れて欲しい」
声は可愛いのに口調がものすごく大人びている。顔と声だけなら恐らく十二歳とかでも通用しそうだ。釣り合わなくてなんだか、大人を演じているように見えないこともない。スタイルはいいんだけどなー。
っていうか、戦士か…。修練を終えたばかりにしては、防具はしっかりしていて戦士っぽい雰囲気があるが、武器は左腰に細身の剣──あれはレイピアなのかな?──と右腰にダガーのようなものがあるだけだ。なんていうか戦士っぽい武器じゃない。体型も細いってほどじゃないけど、あまり戦士っぽい力強さは感じられない。
「あ、あの、すまないがそんなに見ないでもらえるか?…変?あたしのこの格好?」
「あっ、ごめんなさい!全然変じゃないです」
今、大人っぽい雰囲気じゃなかった。実は子どもっぽいとこあるのかな?歳が気になるな。
「義勇兵になりたて…ってことは七日前…戦士ギルド…南区…。おい、チハル!この人お前が南区で見かけたっていう見習い団章持ってたってやつじゃないか?」
…あ、確かに。あの人も赤い髪だった。でも、髪が腰ぐらいまであった気がするなー…。
「もしかして、ギルドに入る前って髪長かったりしました?」
「ああ、腰ぐらいまであったが邪魔なのでバッサリ切った」
…もったいない。いやいや、っていうかあの人だったのか。それはこの際どうでもいいや。他に気になることはいくつもある。
「そうですか。えーと、パーティーに入りたいってのはわかったんですけど、いくつか質問したいんですが、いいですか?」
「ああ、構わない。なんでも聞いてくれ」
「じゃあ、一つ目。何で僕たちみたいな初心者パーティーのことを知ってて、その上何で選んだんですか?」
「レッドムーン事務所のブリトニー所長に新人の五人組パーティーがいると聞いて決めていた。…これは失礼かもしれないが、あなたたちを選んだのは私もまだ未熟者だからだ。見ての通り、私は女だ。体も大きくないし、力も合って、人並みだ。上位パーティーに入る技量はない」
ギルドでの修練を終えたばかりで上位パーティーに入れてもらうのはかなりの腕前がないと無理だろう。
僕たちは
「なるほど、納得いきました。じゃあ、二つ目です。何で
「それもブリトニー所長のアドバイスだ。あのパーティーに入りたいなら戦士がいいだろうといっていた。
ブリちゃんが優しい人?僕たちのときも少しアドバイスくれたけど、優しくはなかった気がする…。っていうかほんとに僕たちの情報与えすぎじゃない?今度、問い詰めにいってみようか…。
「そうですか、わかりました。じゃあ、最後に一つ。オルタナ出身の人が義勇兵になるのは、けっこう珍しいと思うんですが、なにか目的があるんですか?」
「それはだな…。これを黙っておくのは失礼になってしまうだろう。私は最終的に正式なオルタナ辺境軍本隊に入隊することが目標だ」
「…辺境軍?」
確か、オルタナの警備とか前線基地の維持とかをやってるんだっけ?門のところにいる衛兵も正規軍の人だったはずだ。
「ああ。さっきもいった通り、私は女だし、小柄だ。このままではとても正規軍には入れるはずがない。現にそうだった」
っていうことはなろうとしたってことか。確かに、アトリトルテさんの体型は戦いに向いているとはいえない。
「義勇兵になって名を上げれば、正規軍も無視できないだろう。実際にオルタナ辺境伯、ガーラン・ヴェドイー公の晩餐会に招聘された義勇兵もいると聞く」
誰だったかな?確か図書館で見たことあるような気がするんだけど…。
「つまり、私はあなたたちのパーティーをそれまでの踏み台にするといっているようなものだ。もちろんパーティーにいる間はパーティーのために死力を尽くす。これは正規軍を目指すものとして揺るがない誓いだ。もちろん、失礼なのは重々承知の上だ。だが、私には時間がない。この通りだ、頼む」
アトリトルテさんが深く頭を下げた。…え?っちょっ?そんなことされても…。
「事情はよくわかんないですけど、とりあえず、僕たちのパーティーに入りたいってことはわかりましたから、頭を上げて下さい」
時間がないってことは、プライベートでそれなりの事情があるんだろうな。こんなに頼まれてるのに無下にする訳にもいかない。それに、昨日の反省会で前衛が足りないって話は持ち上がった。カナちゃんが前線まで上がろうか?っていってたけど、それはやっぱりよくない。後衛の守りは僕だけじゃ心許ないし。だからこの話はまさに渡りに船だ。
っていうか早く頭上げて欲しいな…。
「とにかく、いきなり正式決定って訳にはいかないのでお試し期間みたいのを設けません?」
「それは本当か!」
「僕はそれがいいかと思うんですけど、今パーティーの全員が揃ってないので、みんながいいっていってくれれば…」
後ろにいる仲間たちに目を向ける。テルはすぐに頷いてくれた。
「うーん。まあ、とりあえず、お試しからならいいんじゃねえか?」
「私も賛成。盾役は多い方がいいと思うし…」
あとはカナちゃんか…。
「シズクちゃん、悪いけど、カナちゃん起こしてきてくれないかな?」
「うん、わかっ…」
「ふああぁ。みんな、なんか朝から騒がしくなぁい?…あれ、その可愛い子誰ぇー?」
タイミングいいなー。めっちゃ眠そうだけど。
「かっ、可愛いっ?!」
「えっと、アトリトルテ・アルベルトさん。僕たちのパーティーに入りたいって人。職業は戦士だって」
「え?パーティーに入りたいの?!カナ、大賛成!こんな可愛い子なら大歓迎!」
眠くて正常な判断ができてないのか、真っ直ぐアトリトルテさんに突っ込んでいく。そして、抱きついた。
「…へっ?…ゃめて、やめて下さいっ」
「あ、ごめんっ!」
カナちゃんが絡み付けた腕をほどいた。アトリトルテさんは動揺してるみたい。そりゃ、当然だよね。
「えーと、とりあえず、みんな賛成みたいだけど、どうしますか?」
「え?あ、コホン。…是非とも、お願いしたい」
「わかりました。じゃあ、よろしくお願いします、アトリトルテさん」
「アトリでいい。長いと呼びづらいだろう」
「わかりました、アトリさん」
「さん付けもやめてくれ。あと敬語もだ。仮にもパーティーとして行動するのだからな」
「そうだね。じゃあ、あらためてよろしくね、アトリちゃん」
「うんうん、アトリちゃん、よろしくね!」
「…うっ。ちゃん付けはちょっと。…呼び捨てで頼む」
呼び方でこんなに議論することになるとは…。とりあえずは本人の意思を尊重すべきだろう。
「わかった、アトリ、ね。これでいい?」
「ああ、大丈夫だ」
「んじゃ、俺らも自己紹介しときますか?俺は盗賊のコウタだ」
「聖騎士のテルだ、よろしく」
「魔法使いのシズクです、よろしくね」
「神官のカナヒだよっ!カナって呼んでねー」
「狩人でリーダーのチハルだよ」
「コウタ、テル、シズク、カナにチハルだな。仮採用とはいえ、よろしく頼む」
□
現在の時刻は午前の八時だ。ちょうど鐘が鳴っているので間違いない。アトリが仮のメンバーとしてパーティーに加わってからは朝食を摂りながら、彼女のことについて聞いた。アトリの使う武器はスモールソードと呼ばれているレイピアの軽量版だといっていた。小柄な女性戦士の武器としてはわりと定番にあるものらしい。そもそも女性戦士自体が少ないので、数が多いって訳ではないが。アトリはそのスモールソードに加えて主に防御用のダガーも使用する。いわゆる二刀剣法、二刀流だ。そうはいってもダガーは盾に近い運用が中心のようだが…。
「……という訳でぇ!みなさんにぃ!新しいお友だちを紹介しようと思いまぁーす!神官のメリイさんです、はい、拍手……っ!」
ランタが激しく手を叩く。ハルヒロとモグゾー、カナとチハルも一応拍手しているみたいだ。
今、俺たちはオルタナの北門にいる。ハルヒロたちも狩りに出るというので、宿舎から一緒に出発したのだ。そんな訳で、ハルヒロのパーティーに新しく加わる神官のメリイの紹介場面と遭遇することとなった。
ユメとシホルは呆然としている。全く相談していなかったのか?
「メ、メリイさんでーす……」
「…ど、どうも」
「…は、はじめまして」
シホルとユメがやっと反応を返すが、メリイはなんの反応も示さない。じろじろと一人一人を眺めるだけだ。
「この人たちはなに?」
メリイは俺たちのパーティーを見ながらいった。視線が恐い。
「あ…、その人たちはおれらの後輩パーティー。宿も同じだから、それなりに仲良くしてる」
「そう、じゃあ、これで全員って訳ね?」
「う、うん。メリイを入れて、六人」
メリイの冷酷な反応にハルヒロが困惑しているようだ。さすがにあの態度はよろしくない。あれでは、連携も取れないだろう。
「そう、まあいいわ。分け前がもらえれば。で、どこいくの?ダムロー?」
「そ、そうかな?」
「かな?はっきりして」
チハルが口を挟むかどうか迷っているようだ。俺には全く相手にできなさそうだ。
「ダムロー。旧市街。…ゴブリン狙いで」
「あっそう。だったらさっさといけば?わたしはついていくから」
「あ、あのー。もうちょっと言葉使いとか柔らかくした方がいいと思うんですけど、どうですかね…?」
ついにチハルが口を開いた。よく間に入ろうと思えるものだ。
「は?あなたたちには関係ないでしょ?」
「ま、まあ、ないといえばないかもしれないですけど…」
「だったら、口出ししないでもらえる?…で?いくの?いかないの?いかないのならわたし帰るけど」
「あ、いや、いく、いきます」
「じゃあ、さっさとして」
ハルヒロが苦笑いしながらこっちをみる。そして「ごめん、チハル」と手を合わせながら、門へ向かっていく。パーティーもそれに従ってゆっくり進んでいった。新しいリーダーになったらしいハルヒロはかなり苦労しているようだ。
「あはは、なんか気難しい人みたいだね。なんかあったのかな…?」
「あまり気にするな。自分たちのことは自分たちでなんとかするだろう」
「一筋縄じゃいかなそうだけどね」
「あんな性格悪いやつなかなかいないだろ。よっぽどの事情があるか、ただの性悪か、だな」
「あんな美人なのにもったいないなー。笑ったらすごく可愛いだろうなー」
「うーん、緊張してるだけかもしれないよ?」
「緊張って感じじゃなかったけどな。目が恐いしな」
「とにかく、今僕たちが気にしても仕方ないよ。僕たちは僕たちのことに集中しよう」
チハルのいう通りだ。今の俺たちには他人を気遣う余裕はほとんどない。
「僕たちもそろそろ、森に向かおうか」
…森に着くとさっそくコウタが三体の泥ゴブリンを見つけてきた。コウタは小さい体を生かして、うまく斥候を努めてくれている。斥候としてかなり優秀で助かっている。俺にはできない役目だろう。だから、俺はパーティーの盾になるだけだ。
「アトリ、二人で一体ずつ受け持つ。大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ」
「あとの一体は任せとけ。こっちでやるからな」
コウタが後衛組に合図をする。それと同時に走り出す。アトリは少し遅れてついてくる。
ヒュン
右の茂みから石が飛んでくる。コウタだ。見事、棍棒持ちに命中。棍棒持ちは姿を見せたコウタに向かって走っていく。
「ギィイ、グィ」
短剣持ちAと短剣持ちBは迫ってくるアトリと俺に向き直る。相手はまだ俺たちを三人だと思ってるのだろう。アトリはダガーとスモールソードを引き抜き、一度牽制してから構える。独特の構えだ。右手のスモールソードの刃はだいたい胸の高さで水平になっており、左手の護拳の大きいダガーは顔の前にかざす形だ。足は右足をゴブリンに真っ直ぐ向けて、左足は開きぎみで後ろに引いている。
俺も短剣持ちBに向けて
ヒュンッ
「ジール・メア・グラム・テラ・カノン…!」
チハルの矢、シズクの
俺もゴブリン一体が相手なら周りを見る余裕が少し出てきた。アトリは目の前の敵に集中しているようだ。スモールソードの軽い突きで相手の動きを窺っているようだ。短剣持ちAはリーチの差に攻めあぐねている。
…隙だらけだ。俺は短剣持ちBの短剣を強めに弾いて、短剣持ちAへと三叉槍で足払いをかける。短剣持ちAは体勢を崩した。
「助かるっ!…
アトリは大きく踏み出して短剣持ちAの喉元にスモールソードを突き刺す。貫通した。素早く引き抜き、距離をとりながら左手のダガーでゴブリンの右手を傷つけ、短剣を落とさせる。綺麗な技だ。とても修練を終えたばかりとは思えない。短剣持ちAはまだ絶命はしてないようだが、戦闘不能のようだ。
短剣持ちBが突っ込んでくる。
…来た!コウタが短剣持ちBのアキレス腱を掻き切る。膝から崩れ落ちた。そこへ三叉槍を思い切り突き刺す。手応えはある。短剣持ちBから力が抜けた。短剣持ちAもとどめは済んだようだ。終わりだ。
いつも通り、コウタは周囲の警戒に移る。どうやら大丈夫なようだ。
「戦利品の回収、お願いね」
チハルは棍棒持ちのゴブリン袋を回収しながらいう。俺も短剣持ちBのゴブリン袋を回収した。
「アトリ、なかなかやるな。ギルド以外で剣を習ったことあるんじゃないか?」
「ああ、幼い頃に父にな…」
なるほど。だから動きが洗練されているのか。本当にパーティーに入ってくれれば、かなり戦力になるかもしれない。
「かなり安定した戦いだったね。これならダムローでも三体ぐらいなら安定して狩れるかもしれない」
ダムローのゴブリンは少し手強い。三体ぐらいまでにしておいた方が安全だ。俺もこちらから仕掛けたとしても、二体を相手に無傷でいる自信はない。
でも、森の泥ゴブリンだったら四体同時でもいけるかもしれない。いや、森で四体固まっている方が珍しいか。
「時間あるし、今からでもダムローいってみる?今日はハルヒロさんたちもいるだろうから、パーティー単独よりも心強いし」
「そうだな、キッカワさんからも情報もらえたし、今日はうまくいくんじゃねぇか?」
「盾役が二人いるとすごい安心できるし、私もいけると思うかなぁ」
「いざってときはカナも前出るし、回復もするから任せてっ!」
「私はあなたたちの決定に従う。だが、恐らく私たちなら十分戦えるはずだ」
「俺も賛成だ」
☆
「ふぅー、今日は疲れたね」
「うーん、カナはそんなにかなー?回復しか出番なかったし」
今日のシズクは大活躍だった。氷結球でゴブリン吹っ飛ばしたりしてみんなをサポートしてた。
ダムローでも今日は安定して狩りができたし、アトリの採用は正式決定してもいいと思うんだけどなー。可愛いし。
「やっぱり、お風呂っていいね。生き返るーって感じ」
「そーだねー、きもちー、ブクブクブク」
狩りが終わってカナたちは宿舎に戻ってお風呂に入っている。テルとチハルはギルドにいって、コウタは今日と昨日回ったとこの地図を書いてみるらしい。
「…やんなあ。シホル」
「うん」
脱衣場の方から声が聞こえてくる。ユメとシホルだ。一緒にお風呂入るのは初めてかな?アトリとも一緒にお風呂入りたかったなー。でも、自分のお家あるみたいだから無理かなー。ブクブクブク…。
「ユメたちもお邪魔するなあ」
前を手ぬぐいで隠しながらユメとシホルが入ってくる。シホル、いいなー。おっぱい大きくて。二人ともかけ湯をしてから湯船に浸かる。宿舎のお風呂は広くて、四人でもなんとか入れる。
「そういえばなあ、さっきコウタに会ったよお。ちょっと話したけど、なんか変な絵書いてたなあ」
「…変な絵?地図書いてたはずじゃ?…ユメちゃん、今日のダムローどうだった?」
「今日はなあ、さんざんやったなあ。ゴブちんにも逃げられたりしてなあ」
「残念だったね…。あの新しい神官の人…メリイさんだっけ?」
「メリイちゃんかあ。もうちっと優しかったらなあ、ものすんごく可愛いんやけどなあ。ユメたちも今日初めて会ったからなあ、なに話したらいいかわからんかった」
「えっ?知らなかったの?」
「…うん、今日ハルヒロくんたちがいきなり紹介してきたの」
ほー。だから今日の朝ランタさんが紹介してたのか。カナたちに紹介してくれてたんだと思ってた。ブクブクブク…。
「メリイちゃんはなあ、すごくツンツンしててな、今日、矢外してしまったときになあ、外れすぎゆわれてん。ユメ、弓は下手なのわかってるけど、やっぱりそんな風にゆわれると傷つくやんかあ。ハルくんは気にすんなゆうてくれたけどなあ」
「確かに、門で会ったときもなんか冷たかったね。目線もちょっと怖かったし」
「ちょっと肩がぶつかっちゃったときがあったんだけど、すごい睨まれたし」
確かに怖かったなー。綺麗な人だし、見た目は怖い人には見えないんだけどなー。ブクブクブク……。
「神官がパーティーにおらんとあかんのはわかるけどなあ、そんな急がんとハルくんもユメたちに相談してくれたらよかったのになあ」
「メリイさん、あんまり働いてくれないしね」
「そやんなあ、前にも出てくれないし、回復もちょこっとしかしてくれへんしなあ」
「うーん、それって普通の神官だったらそこまでおかしくないよ?」
「ほにゃ?そうなん?」
「うん。カナの
修師のパーティーにも回復担当の神官がもう一人はいたみたいだし。修師は自分で自分を回復しながらガンガン攻めるタイプだったみたい。
「カナちゃんはいつも私の護衛についてくれてるよね。奇襲受けたり、人が足りないときは前に出るけど。カナちゃん強いから」
「そうなんかあ、知らんかった。…ユメたちマナトのこと働かせすぎてたんかもなあ。盾役も
「……マナト…くん」
「……」
「……」
…マナトさんそんなに頑張ってたんだ。優しい人だから全部抱え込んじゃったのかな。…カナになんかできることなかったのかな。
「ほわっ、ごめんな。そんな暗い感じにしたかったんやなくて…」
「ぴゅー!」
「ふにゃっ!もう!カナちゃん、びっくりしたやんか」
「えへへー。もういっちょっ!ぴゅー!」
「むぅ、お返しや!…あれ?うまくいかへんなあ、これ。あっ、シホルっ、かかった?ごめんな。…あれ?怒ってる?」
「……ユーメーっ!」
「ふわっ、やめっシホル!カナちゃん!」
「私もっ!」
「ふにゃっ!三対一は卑怯やんかあ。ユメ、怒ったで」
ユメは両手を使ってお湯をカナたちに向かってかけ始める。
これで少しは涙、洗い流せたかな?マナトさんにはなにもできなかったけど、マナトさんのパーティーの人たちを元気付けるくらいなら、今のカナにもできる。
「きゃっ!…ユメちゃん、それはずるいよ」
「ユメ、それは反則」
「できへんのやから仕方ないやんかあ」
「ほら、こうやって両手を合わせて、お湯入れて、ぴゅっ!って。ほら簡単」
「はにゃっ!…むぅ、ユメのこと騙したなあ、シズクちゃん」
「ずるした罰だよ」
「うにゃー…。お?ユメ思ったんやけど、これシホルのおっぱいでもできるんと違う?」
「…え?なにいってるのユメ?」
「シホルのおっぱいな、こうやって寄せて上げると谷間にお湯溜まるやんかあ。これでぴゅっ…ほら、できた!」
「ひゃあっ…!ユメ、やめてっ」
「それならシズクのおっぱいでもできるかも。…わっ、できた!」
「やめてっ、カナちゃん…。だ、だめっ」
「いつも見てたけど、大きいねー。触ってみるとやっぱり違うね。たぷんたぷんのふにふにだ!」
「ふわっ、そんな、さ、触らないでっ…!んっ、やっ…」
「シホルのおっぱいも負けてへんよお。たゆーんたゆーんでたっぷんたっぷんなんやからなあ」
「ちょっ、ユメっ、あっ、にゃあ…」
「おっ?シホル、またにゃあが出たなあ。可愛いなあ」
「うーん、シズクとシホルどっちが大きいんだろ。…えいっ」
「ひゃん!カナちゃんまでっ…。んっ、は、恥ずかしいよっ…」
「あっ、ユメもユメも」
「ユ、ユメちゃんっ…。そ、そんなに」
「これは……シホルの勝ちっ!」
「……うーん、ユメもそう思うなあ」
「「…わかったからもうやめてっ!!」」
「怒られちった」
「でも、ええなあ。二人ともおっぱい大きくて」
「い、いいことなんてないよ」
「あ、あたしは太ってるだけだから…」
「ユメももう少しあったらなあ。ランタにちっぱいとかひんぬーとかゆわれんなるのになあ」
「…むー、それはカナへの当て付けかっ!ユメがちっぱいだったらカナはどうなるの?!」
いいじゃんか、揉めるものがあるだけ。ユメ、ちょうど自分で揉んでるけどっ。カナなんて揉めるものだってないよっ。まな板、絶壁、無乳、どれでもいいけど、そんなカナからしたらユメだって十分羨ましい。
「カナちゃんはなあ、全部がキュッって引き締まっててスタイルええからなあ。すらいだーいうんやっけ?」
「…ユメ、スレンダーね」
「ほにゃ?そうやっけ?…とにかく、ユメはちっぱいのくせに足とかお尻とかぷにぷにやからなあ。羨ましいなあ、すれんだー」
「それはそれでいいじゃんかー。でも、いいもんっ!カナはとっくにおっぱいは諦めてるから!カナはカナの魅了で勝負する!」
「ふぇ?なにと?」
「うーん、わかんない?」
「ふふ、なにそれ…」
「なんか、おもしろいね。…カナちゃん、さすがにそろそろ上がらない?私ちょっとのぼせそうかも」
「そーだね。けっこう入ってたもんね。じゃあ、先上がるね、ユメ、シズク」
「うん、おやすみ」
「また明日なあ」
「ユメちゃん、シホルちゃん、おやすみなさい」
両手を合わせたまま、湯船から上がって振り返る。
「ぴゅー!」
すぐに脱衣場へ向けて走りだす。今日のお風呂はいつもより何倍も楽しかったなー。
「うなぁっ!…カナちゃん、今度絶対仕返しするからなあ!」
「えへへ、おやすみなさーい」
──────────
Δ
「…ただいま」
「あ、お姉ちゃん!やっと帰ってきた!…その格好、すごいカッコいい!」
「ごめんね、シエル。しばらく家空けちゃって」
「大丈夫だよ、ちゃんといい子にしてたから。お姉ちゃんも頑張ってたんでしょ?なでなでしてあげる」
あたしはシエルが撫でやすいように屈む。シエルはその小さい手であたしの頭を撫でる。
「もう、ありがと…」
「お姉ちゃんは甘えん坊さんだもんね。…それで、どうだったの?」
「正規軍はダメだったけど、義勇兵にはなれたよ。いいパーティーにも入れてもらえそうだし。まだ仮のメンバーだからいらないっていったのに、今日もちゃんと分け前もらえたから。ほら」
「ほんとだ。銀貨も入ってる。でも、義勇兵の人たちって記憶がなかったり、よくわかんない人たちなんじゃないの?」
「そういわれてるけど、あたしのパーティーの人は悪い人たちじゃなさそうだったよ。ちょっと怖い人もいるみたいだけど、それは王国民だって同じだしね」
「そっかぁ。でも、気をつけてね?」
「うん、ありがと。…ママは大丈夫?」
「…うん、大丈夫。今日、少しだけどご飯食べてくれたし」
「そっか、ちょっと見てくるね」
あたしは奥の部屋の扉を開く。ママはベッドの上で寝ていた。
「…アトリね。おかえりなさい」
「ママ、ただいま」
ママがベッドから弱々しい動きで体を起こす。
「ママっ、無理しないで!」
「大丈夫よ、今日は調子がいいから」
「わかった。…ママ、正規軍は無理だったけど、義勇兵にはなれたよ。ちゃんとお金も稼げた」
「…そっか、ごめんね。ママがこんな体になったせいであなたに無理させちゃって」
ママはあたしの頭を優しく撫でる。やっぱりこれが一番安心する。
「あたしが今までママに無理させちゃってたから、今度はあたしが頑張る番だよ。もっとお金貯めてママを元気にしてみせるから」
「そんな、無理しなくていいのよ」
「いや、いやだ。あたしママがいなくなったらあたし…」
「ごめんなさい。大丈夫、いなくならないから」
ママは静かにあたしのことを抱き寄せてくれる。あたしもママを抱き返す。また、細くなってる…。あたしが頑張らないと。頑張って稼がないと。
今日、あたし舐められなかったかな。舐められたらどうしよう。こき使われて分け前とか貰えなかったり、お金とか奪われたりするかもしれない。女だしチビだし舐められたらダメだ。あたしいいとこなんてどこにもないから。口調はパパとママの友達の女戦士の人の物真似しただけだし。装備だって、売ってもたいしたお金にならない、パパの昔の装備をギルドで私に合うサイズのものと無理いって交換してもらっただけの安物だし。メンタルだって、ママのためだと思わないとなんにもできない小心者だし。剣の腕だって、なかなか会えないパパが稽古なら喜んであたしにかまってくれるから、少し頑張ってただけだし…。
ああ、ダメだ。ママに抱き締められるとつい弱音ばかり浮かんじゃう。でも、今日は会うの久しぶりだから仕方ないよね。うん、今日だけ、今日だけは許してもらおう。ああ、このままずっとこの腕の中に包まれていたいな…。
読んでいただきありがとうございます。
今回、五人以外の視点が入りましたが、原作キャラの視点も入る予定です。チハルたちのパーティーが関わることで変化していったところなどを主に書いていきたいと思ってます。ていうか、次回にあります。
ということでまた次回(* ̄∇ ̄)ノ