影と現身のグリムガル~五つの欠片~   作:?BOX

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はい、更新です。

最近、小説を書いてるといつのまにか寝ちゃってることが多いです。はい、すみません、頑張って起きます。

では、毎度毎度うるさいですが、本文どうぞ!


第十二話 まざりかけの心

 

ふあぁ、いいお湯だったなあ。今日はランタもなんともなかったし、けっこう順調やった。昨日吐いたときはびっくりしたけどなあ。ゴブちんも逃げとったし。

…あ、ハルくん。

 

「あ、ユメ」

 

今日はハルくん宿舎におるんやな。最近いっつもユメたちおいてどっかいってしまうくせに。…むぅー。

 

「え、と……シホルは?」

「まだ、お風呂」

「そっか。あの……怒ってる?」

「怒ってない」

「ほんとに?でも、なんか」

「怒ってないゆうてるやろ。それとも、ハルくんはユメが怒るようなことしたん?」

「した、かも」

「何したん?」

「ユメとシホルに何もいわないで、メリイをパーティーに入れた。やっぱり、早まったかなって。おれが一人で決めた訳じゃないんだけど」

「そやったら、誰のせいなん?」

「…キッカワがメリイを紹介してくれて、決めたのはおれとランタとモグゾーだから…まあ、三人のせいってことかな」

「…ちがうやろ」

 

そうじゃないやろお、ハルくん。

 

「え?」

「ちがうやんかあ」

「…ユメ?痛っ、壁が…」

「ちがうやろお。そうじゃないやんかあ。ハルくんのばかあ」

「え、ちょっ、ど……え、ユメ、な、ど、どうし…たの?」

「ハルくんはなあんもわかってない。そんなんやから、ユメたち、こんな風になってしまったんやろお?」

「いや、だって……わかんねーよ!そりゃ。だってユメたち話してくれないしさ。いってくれなきゃわかんねーだろ」

「ユメ、自分の気持ちとか伝えるの苦手なんやもん。うまくできないもん。シホルやって溜め込むタイプやし、仕方ないやんかあ」

「お、おれだって!……おれだって、しゃべるのとか、別に得意じゃないし。ショックだって、受けてたし」

 

やっぱり、ハルくんは全然わかってない。

 

「そやから、みんなおんなじやろ?」

「…そうだよ。同じ…なんだよ、みんな」

「だったら、みんなのせいやんか。こんなんなってしまったのは、誰かのせいやなくて、みんなのせいやんか。ハルくんとランタとモグゾーのせいやないやろ。ユメとシホルのせいでもあるやんか。ちがう?だって、仲間やろ?マナト入れて、六人で仲間やったやんか。そう思ってるんはユメだけなん?ユメ間違ってる?」

「…間違って、ない。ごめん、ユメ、おれ……」

 

ユメのいったこと伝わってくれたんかなあ。ユメ、うまく伝えられた自信ないなあ。

 

「あいつ…っ…」

 

ハルくん?大丈夫?…泣いてる?そっかあ、ハルくんも不安だったんやなあ。寂しかったんやなあ。

 

「ハルくん…」

「おれ、おれは…」

「ハルくん」

 

ハルくん、震えてる。

 

ギュッ

 

「ユメ、おれは…おれ…」

「ハルくん…」

 

こうゆうときはぎゅっってするのがやっぱり一番。…のはずやのに、ユメも泣いもうてる?あれえ?涙止まらないよお。ユメ、こんなに泣くの初めてかもしれんなあ。マナトのときもシホルのことであんま泣けんかったし。

ふあぁ、胸の奥がきゅーっってする。…ハルくん、ユメ、寂しかったよお。つらかったよお。マナトが死んで悲しかったよお。誰にも相談できなくてつらかったよお。ユメ、頑張ってがまんできてたかなあ。ユメ、強い子だったかなあ。

 

「ごめんな、ユメ、ランタとモグゾーと三人で固まってるみたいにして。シホルと二人で寂しかったよな」

「ユメも、きっと、シホルも寂しかった。でも、今はなあ、めっちゃあったかいなあ」

 

ギューッ

 

…ハルくん、ありがとなあ。ハルくんが頑張って話しかけてくれへんかったらもっとずっと寂しかったやろなあ。がまんできへんなってたかもしれん。ハルくんも頑張ってくれたんやろなあ。ほんなら、ユメたちも頑張らんとなあ。

 

「ハルくん」

「う、うん?」

「ユメなあ」

「う、うん」

「ユメ、頑張ってみる」

「な、なにを…?」

「メリイちゃんのこと。仲よくなれるかわからんけどなあ、やってみる。メリイちゃんも一人じゃ寂しいやろうしなあ」

「あ、ああ。そ、それね。うん。それは…そうしてもらえると、助かる、かな」

「ユメにできるかなあ、ほんとはなあ、ちょっと不安やねん。メリイちゃん、ユメのこと嫌いやと思うねやんかあ」

「え?そう?そんなことはないと思うけど」

「たまにやけどなあ、目があうとな、すっごい冷たいねん。目つきとか表情とか」

 

メリイちゃん可愛いんやけどもったいないなあ。

 

「や、それ、ユメだけじゃないから。メリイは平等に冷たいし…」

「そうなん?それやったらだいじょぶかなあ。もっとむつかしい気もするねんけど」

「まあ…確かに、そうかも」

「ユメ、できるかなあ。頑張ってみるけど、ハルくんにお願いがあるやねんかあ」

「お願い?おれに?なに?」

「やっぱり、こうやってぎゅっってされてるとな、めっちゃ落ち着くねん。そやからなあ、もっとぎゅっってしてな、ユメのこと励ましてほしいねやんかあ」

「い、いいけど?…じゃあ」

 

ギューッ

 

「んっ……」

「頑張れ、ユメ。おれも…頑張るから」

 

少し苦しいけど、やっぱり落ち着くなあ。ほんとにありがとなあ、ハルくん。ユメ、頑張れる。

 

ガタッ

 

「ん?……あ」

「どうしたん、ハルくん?あ、シホル」

「え、え?あ、ご、ごごご、ごめんなさい!あ、あたし、ふ、太ってるし、に、鈍いから。い、今まで、そ、その全然気づかなくて。ほんとにごめんなさい!」

「ちょっ、ちがっ!」

「お、お邪魔しましたっ!」

 

バタン

 

「はあ…」

「……うわああぁぁ!」

「え?なに?!」

「そっかあ…」

「そっかじゃないよぉ!」

 

シホル、ユメたちのこと誤解したんかあ。そんなんやないのに、恥ずかしいなあ。

 

「シホルのことは部屋戻ってからでええかなあ?時間はたくさんあるしなあ」

「まあ、その辺は任せるけど…。ああ、あとチハルたちにも色々謝らないとな」

「そやんなあ、色々気を遣ってくれてたもんなあ」

「シズクちゃんとかユメたちのことすごい心配してくれてたし」

「そうだったんや、気づかんかった」

「明日、みんなで謝ろう。ランタたちにはおれが話しとくからさ」

「うん、わかった」

「じゃ、おれは先部屋戻っとくから。シホルのことは頼んだ」

「ほいにゃ」

「じゃ、おやすみ」

「また明日なあ」

 

ハルくんと久々にちゃんと会話できてよかったあ。シズクちゃんたちには感謝せんとなあ。

 

「シホルー、先、部屋戻ってるなあ」

 

 

「シホルー、先、部屋戻ってるなあ」

 

え?どういうこと?ユメとハルヒロくんができてるってこと?全然気づかなかった。確かに偵察も二人でやることけっこうあったし、そのとき仲良くなったとかはあるかも?ハルヒロくんのことだけ、ハルくんって呼んでるし。帰ってくるの遅かったりしたときもあったし、そのときあんなことやこんなことを……。

いやいやいや、なに想像してるの、あたし。うわー、顔熱いよー。ユメに限ってそんなことないって、うん、絶対ないって。だって、全然そういうことわかってないみたいだし。ユメがたまに際どい発言するのには苦労させられてるし…。

そんなユメをハルヒロくんがリードして…。ダメダメッ、ストップ!何であたしまたこんなこと考えてるの?

でも、これくらいはあたしぐらいの女の子なら普通なのかな?ユメがちょっとそういうの知らないだけで…。シズクちゃんとかカナちゃんとはそういう話しないからなぁ。ユメともする訳じゃないけど。メリイさんとかアトリさんは真面目そうだしなさそうだなぁ。

男の子はどうなんだろう…。あんなお風呂上がりであんな薄着なのに抱き合ったりしたら普通の男の子のなら、そういう気分になったりしないのかな?ユメ、あたしと違って可愛いし。ハルヒロくんもそういうのに疎いとか?でも、覗きには加担してたみたいだし…。男の子のことはよくわからない。

 

「…ふあぁ、ユメが恋かぁ」

 

あたしはしばらくはできそうにないなぁ。したくないってことはないけど、やっぱり今は誰かを好きにはなれなさそうかも。それに、あたしのことを好きになってくれる人なんていないだろうし。

 

「…羨ましいなぁ」

 

好きな人が近くにいて抱きしめ合える。ずるいよ、ユメ。ハルヒロくんも。ほんとに。妬ましいって訳じゃないけど、素直には応援できそうにない。やっぱり、あたしって嫌な女だ。

 

「はぁ…」

 

そろそろ上がろ。のぼせちゃいそうだし。

部屋戻ったらユメになんて話そうか…。部屋戻りたくないなぁ。どっかで時間潰そ…。

 

「…あ」

「……」

「……」

「…どうした?」

「い、いや、なんでもないよ!お風呂ならもう空いてるから。お、おやすみなさい、テルくん」

「ああ、おやすみ」

 

どうもあたしはテルくんのことが苦手だ。真面目だし、盾役(タンク)としてもすごく安定していてパーティーのみんなからも信頼されてるみたい。そんな人なのになんで苦手なのかっていわれたら、なにを考えてるのかわからないとこ。威圧感って感じはないけど、表情がほとんど変わらないからなんか怖い。悪い人じゃないのはわかるけど、それとこれとは別。

あ、結局部屋まで戻ってきちゃった。

 

「あ、おかえりー。長かったなあ、お風呂」

「う、うん」

「シホルは勘違いしてたみたいやけど、さっきのなあ、ちがうんよ?あのときは、ただハルくんにぎゅっってしてもらってただけなんよ?」

 

あのときは…?ってことは普段はもっと…?もしかして、これからだったってこと?

 

「え?あ、うん、邪魔してごめんなさい」

「邪魔?…シホル、めっちゃ顔赤ない?」

「え、だって、そういうことでしょ?」

「そうゆうこと?」

「つ、付き合ってるってことじゃないの…?」

「ほえ?ユメとハルくんが?ちがうってゆうたやん」

「じゃ、じゃあ、抱き合ってたのは?」

「あれはなあ、ハルくんもユメも泣いちゃったからかなあ。やっぱり、ぎゅっとされると落ち着くやんかあ」

「だから、あんなに抱きしめ合ってたの?」

「うん、ユメがハルくんに頼んだんよ。ぎゅっってしてってなあ」

 

頼むって…。でも、あれ完全に恋人同士の抱き合い方だったよ。絡み合ってたもん。

…とりあえず、ユメにいわせれば付き合ってないってことでいいんだよね?ハルヒロくんには色々聞きたいことあるけど…。

 

「ほんとにそれだけ?」

「うん、それだけやよお?それでそんときなあ、色々話したんやけど、メリイちゃんのこととか色々頑張ろってことになったんよ」

 

ほんとにそれだけっぽい。微塵も意識してる感じじゃない。でも…

 

「頑張るって?」

「メリイちゃんと仲良くしよってこと。ユメたちはメリイちゃんも会わせて六人のパーティーなんやから。もちろん、ハルくんたちとも仲良くしよな?ユメたちもすぐ部屋戻ったり、よくなかったやんかあ」

 

確かにそうだ。あたしたちは気まずさからいつも自分たちの部屋にすぐ戻ってた。逃げるみたいに。

 

「うん、そうだよね。あたしたちからハルヒロくんたちに話しかけようともしなかったし」

「今日、ハルくんがなんかいっぱい話しかけてきたけど、あんまちゃんと応えなかったしなあ」

 

あたしたちは寂しかったけど、態度とかも色々よくなかったかもしれない。

…一人でいるメリイさんはもっと寂しいのかも。

 

「あたしもメリイさんのこと頑張る。ちょっと難しいかもしれないけど、メリイさん、悪い人じゃなさそうだし」

「そやんなあ。ユメたちもあんま関わろうとしなかったからなあ。ユメたちからも歩み寄らんとあかんよなあ」

 

あたしたちは二対三だったけど、メリイさんは一対五。こっちから歩み寄らないと仲良くなろうにも難しいよね。ただでさえあたしたちのパーティーはいい状態じゃなかったのに仲良くしようとなんてできなかったと思う。だから、あたしたちからいかないと。

 

「うん、頑張ろうね、ユメ」

 

でも、まずはハルヒロくんたちともちゃんと仲直りしないとね。あとはチハルくんたちにも感謝しないとだ。チハルくんたちがいなかったら多分もっと寂しかったと思うし、頑張れなかったと思う。やっぱり、話してくれる人がいるって大事だ。

 

「ほいにゃ!」

 

あ、ハルヒロくんにも誤解したこと謝らないと。

 

 

──────          ──────

 

 

この時間なら、風呂、空いてるだろうか…。今日もギルドで個人的な修行をしてきた。今日の師匠は特に激しかった。汗もかいたし、早めに風呂に入りたい。

 

「ハルくん」

「う、うん?」

 

ハルヒロとユメの声か。声が震えている。泣いているのか?……っ?!あれは抱き合ってる?!どうする?とにかくここにいるのはよくないな。…いこう。

 

「ユメなあ」

「う、うん」

「ユメ、頑張ってみる」

 

…頑張る?あの状況で?何を?……いやいや、そんな無粋なことを考えるのはやめよう。俺はなにも見ていない。気にするな。

 

「おう、テル。帰ってたのか。お疲れ」

「おかえりなさい。修行、お疲れ様」

「あ、ああ」

 

いつの間にか中庭まできてしまっていた。テーブルの上には地図がある。書いてくれていたのか。

 

「テル、なんか顔赤くないか?」

「あ、確かにそうだね」

「い、いや、何でもない。気にしないでくれ」

「…?そうか、ならいいけどな」

 

あのことは黙っておく方がいいだろう。無駄にいいふらしたっていいことはない。

 

「いつも、遅くまで地図作り、ありがとう。感謝している」

「いいよいいよ。私にできるのこれくらいだし。もっとスキル覚えられたら、戦闘でも役に立てると思うんだけど…」

 

シズクは十分役に立っているのだが。補助(サポート)が中心だからか、実感がないのだろうか。

 

「また、貯金も貯まってきたし、スキル覚えにいくのもいいかもな」

「私は装備はそこまでいらないからスキルにお金かけたいけど、テルとかは防具がしっかりしてた方が安心じゃない?」

「そうだな、確かに脚甲とかの足回りの防具が少し心許ないな。防具で動きにくくなるのはよくないが、怪我をするともっと動けなくなるからな」

「そういえば、テルは怪我するときはだいたいが足だよな」

「ああ、防具がないからよく狙われるらしい。深手は負わないように回避はしているが…」

「うーん、やっぱり防具は必要か。今度チハルとかと相談だな」

 

装備が重要なのは俺くらいか。アトリはけっこう揃ってるし、他のメンバーで必要なのはコウタくらいか。

 

「スキル習いにいくならいってもいいんじゃないか?俺はその間ギルドで修行つけてもらえるし問題はない」

「ああ、そうか。時間が無駄になるってことはないのか。とにかくパーティーみんなで相談だな」

「そうだな」

 

そろそろ、風呂いっても大丈夫だろうか…?とりあえず、いってみるか。

 

「俺は風呂にいってくる。地図、頑張ってくれ」

「オッケー、いってら」

「うん、ありがとね」

 

さすがにもういないだろう。

…よし、誰もいないようだ。いや、シホルが出てきた。

 

「…あ」

「……」

「……」

「どうした?」

「い、いや、なんでもないよ!お風呂ならもう空いてるから。お、おやすみなさい、テルくん」

「ああ、おやすみ」

 

シホルはなにを慌てていたんだ?普段から目が合うと逸らされるし。俺が怖かったのか?確かに、俺は強面かもしれないが…。

 

「ふぅ」

 

今日も疲れたな。だが、まだまだだ。トリストラムの扱いがうまくいかない。重さには慣れてきたが、長さに慣れるのに苦労している。それに、特に厄介なのは盾の方だ。バックラーと違って足元まで覆っている。そのため、足運びがかなり難しくなっているのだ。今までできていたことができなくなるというのは戦闘において、かなり大きな弱点となる。だからこそ、なんとしても克服できなくてはならない。

…そうか、防具をつけたらさらに動きにくくなるのか。これはかなり練習が必要かもしれない。

 

「やるしかないな」

 

 

「あら、今日もきてたのね」

「あ、こんばんは、サクラさん」

「今日も毒草の勉強みたいね。勉強熱心なのはいいことよ」

「はい、そうです。もう、帰るところですけど」

「そう。でも、なんだか妬けちゃうわね」

「どうしてですか?」

「あなた、私の専門分野の狼犬に全く興味持ってくれないじゃない」

「あ、いや、興味ないことはないんですけど、お金という現実的な問題が立ちはだかっていてですね…」

「なるほどね、確かにまだ見習い義勇兵のあなたには子犬に一ゴールドは無理よね」

「そうですね」

 

装備も整えたいし、もっとスキルも覚えたい。あとは、正式な団章も買わないと。

 

「そこであなたに相談なんだけど、うちの狼犬()たちの子どもを育ててみる気ない?」

 

うちの子たちの子ども?って孫?…いや、まず師匠に子どもがいる訳ない。狼犬のことか。…先越されちゃいましたね。こんなこと口に出したら殺されそうだ。

 

「子ども産んだんですか?」

「いいえ、まだよ。最近妊娠したみたいなの。今回が初めてって訳じゃないんだけどね。産まれるまであと六十日ってところね」

「六十日…二ヶ月ですか…。それまでに一ゴールド貯まりますかね?」

「それはあなたたち次第ね。それに師弟関係のよしみで五十シルバーにまけてあげるつもりよ。それに子犬のときに必要な道具も私のお古でよければあげるわ。どう悪くないでしょう?」

「確かにそうですけど。なんですか、その悪徳商法みたいな感じは。安すぎません?」

「そ、そんなことないわよ。別に、裏なんてないわ。純粋な善意よ。善意」

 

これは裏しかなさそうだ。でも、師匠のことだからそんな賢しいことはできそうもない。弓の腕とか、狼犬のブリーダーとしては優れてるけど、頭はけっこうポンコツだし。悪巧みはしてないと思う。

 

「…なら、いいんですけどね。とりあえず、その頃になるまでに考えておきますね。お金も貯まってるかどうかわかりませんし」

「わかったわ、いい返事を待ってる。…いきなりでなんだけど、今日これから二人で飲みにでもいかない?」

「あー、誘ってもらえたのは嬉しいんですけど、今日これからいくとこあって…。ごめんなさい。また誘ってくださいね」

「そ、そう。こんな遅くに出掛けるのね」

「ちょっとブリちゃんのとこまで」

「女のとこではないのね。でも、ブリちゃんって女といえば女なのかしら?」

「つまり、なにがいいたいんです?」

「い、いえ。なんでもないわ。あんまり遅くならないようにね」

「はい、ありがとうございましたー」

「気をつけていってらっしゃい」

「はーい。では、また」

 

帰り際の師匠はなんだか元気がなさそうに見えた。狼犬のことかな?まあ、いいか。

レッドムーン事務所は南区かー。遠いなー。仕方ないけど。

 

…着いた。なんかこの看板を見るのも久しぶりな気がする。まだそんなに経ってないはずなのに。

 

「お邪魔しまーす」

「…あら、いらっしゃい。珍しいわね、あなたなのね」

「どうも、お世話になってます」

「ちょうどいいタイミングね。いま書類が片付いたところよ。なにか用かしら?」

「用ってほどのことじゃないんですけどね」

「もしかして、あの子のことかしら?」

「そうですね。まあ、結果的には助かったんで文句って訳じゃないですけど、僕たちの情報だだ漏れすぎじゃないですか?」

「あら、助かったならいいじゃない?」

「それはそれですよ。やっぱり、そういうのは重要じゃないですか?」

 

始めにここに連れてこられたとき、義勇兵は己の力で情報収集するものだといっていた。情報はそれほど大切なことだということはわかる。僕たちにはほとんど基本の情報しか教えてくれなかったし。ただ、個人情報がポロポロ漏れるならそれは問題だ。

 

「ふーん。で、どうして欲しいの?」

「漏れちゃったものは仕方ないので、要望というよりは確認がしたいんですけど…」

「確認?」

「はい。漏らせるってことは情報を持ってるってことですよね?」

「そんなの当たり前じゃない」

「もちろん、他のパーティーに関することも?」

「そりゃ、あなたたちの情報だけを集めてる訳がないじゃない」

「ってことは、表に出てない情報も持ってます?」

「その質問はずるいわね。あなた、わかってて聞いてるでしょう?」

「まあ、持ってない方がおかしいとは思ってますけどね。確信がある訳じゃありません。でも、今ので確信が持てました」

 

義勇兵を管理する事務所が義勇兵になるときくらいしか機能してない方がおかしい。ただ、それだけの考えだ。それに、ブリちゃんみたいな手練れっぽい人が所長をやってる時点で、他にも色々仕事があるだろうってことは少し考えただけでわかった。

 

「その質問をする時点で確信を得てるようなものよ」

「まあ、そうかもしれないですね」

「それで?」

「いや、まだ続きがあるんですけど、もしかして、監視部隊とかに監視させてます?」

「あら?何でそう思うのかしら?」

「今度こそただの推測なんですけどね。こういう組織が噂に流されるってことはさすがにないはずなので、裏付けとかするにはそういう部隊とか必要かなと思って。あとはやっぱり、自分で見た情報の方が信用できますし。それに狩りの途中に何回か人の気配がしたこともありますし」

「それは嘘ね」

「あ、わかります?」

 

バレちゃった。さすがに嘘は見抜かれちゃうか。

 

「それくらいわかるわよ。でも、まあ、正解よ。監視部隊みたいな部署はあるわ。あなたみたいな素人には見つけられっこないプロ中のプロのね」

「ですよねー」

「まあ、別に隠してる訳じゃないの。そういう情報をアタシたちが持っているって気づけた人は利用できるし、気づけないバカはその程度ってこと」

「どうやったらその情報はもらえるんです?」

「お金はとらないわ。アタシたちがその情報をあげることが義勇兵団にとって有益だと判断することが条件ね。つまりは強いパーティーにはいい情報が入るってこと。だから、あなたたちにあげる情報は一つもないわよ」

「それくらいはわかってますよ。僕たちまだ見習いですし。だから、確認にきたっていったんです」

「ふーん、意外と考えてるのね。見直したわ。可愛い顔してあざといのね。いや、可愛い顔してるからあざといのかしら」

「そんな人聞きの悪いこといわないでくださいよー。あ、一つ疑問に思ったんですけど、まだギルドにも通ってないアトリになんであんなに丁寧に情報を教えたんですか?」

「いったでしょう?義勇兵団に有益かどうかって。オルタナ出身の人で義勇兵になってくれる人は貴重なの。いわば、お客様よ。丁寧な対応をするのは当たり前よ。あなたたちみたいな記憶のない人は選択肢があるようで、実際はないも同然だから適当でいいのよ」

「ああ、納得しました」

 

っていうか、やっぱり選ばせる気なかったんだ。だから、どうこうしたいということはないんだけどね。

 

「他には何かあるのかしら?」

「いえ、今はもう大丈夫です」

「そう」

「じゃあ、また来ます。今度は正式な団章を買いに」

「待ってるわ。あなたたちには正直あまり期待していなかったけど、少し期待できそうね」

「ありがとうございます。では…」

 

…今後のこと、色々考えないとな。

 

 

「えっと、みんな、色々と心配とか迷惑かけたと思う。ほんとごめん」

「ハルさん?!そんな頭下げなくても」

「そうですよ!仲直りできたならそれでいいですから。よかったねユメちゃん、シホルちゃん」

「心配してくれてたんやってなあ。ありがとなあ」

「うん、ありがとう、シズクちゃん」

 

うーん?今、どーいう状況なの?それより眠いー。朝ごはんはー?

 

「ほら、カナちゃん!起きて!ユメちゃんたちが仲直りしたんだって。カナちゃんも心配してたでしょ?」

「んー?仲直り?…よかったねー」

「カナちゃん!まだ起きてないでしょ?!」

「起きてるよー」

「はは。…とにかく迷惑かけてごめん。まだメリイのことは全然解決できてないけど、これから頑張るから。できたら、チハルたちも協力して欲しい…かな?」

「もちろんですよ!」

 

メリイ…ちゃん…。

 

「それにしてもどうすんだよ。あんな女どうやってデレさせればいいんだよ」

「それはこれから…」

「メリイちゃんはカナがデレさせるっ!」

「うっせ、カナ!いきなりでかい声出すんじゃねぇよ!」

「ランタも十分うるせぇよ」

「コウタ、お前は黙ってろ!」

「はいはい」

「ケンカしないっ!とにかくメリイちゃんはカナが攻略するのだーっ!」

「どうするん?メリイちゃん、みんなに冷たいやんかあ」

「うーん、頑張る?」

「カナちゃん一人で頑張ってもどうにもならないよ。まずは話しやすいように女の子同士で話したらいいんじゃないかな?」

「…そうだね。あたし頑張ってみる」

「ユメも頑張るで!」

「カナも頑張る!」

「カナちゃんはほどほどにね。まずはパーティー内で仲良くなってもらわないと」

「うん、悪いけど、カナちゃんは少し我慢して欲しいかな。なるべく、ユメとシホルに話させてあげて欲しい」

 

そんなー。カナが今まで一番話してたのにー。ちゃんと返してくれたことはないけど。

 

「…はーい、わかりましたー」

「あたしとユメだけじゃちょっと不安だから、カナちゃんは困ったときに助けてくれると嬉しいかも」

「わかったよ、シホル!カナに任せとけ!」

「はは。ありがとう、カナちゃん。…じゃあ、朝飯食べてから北門に向かおう。モグゾー、ご飯の準備はできてる?」

「うん、大丈夫だよ」

「いつもありがとうございます、モグゾーさん。じゃ、みんな配膳とか手伝ってあげて!」

 

やったー!朝ごはんー!




読んでいただきありがとうございます。

これからどんどんハルヒロパーティーとチハルパーティーを絡ませていきたいと思ってます。人数多いと会話が大変。テルとかほとんど喋ってない。

今さらですが、本作のオリジナルキャラクターの紹介第一弾!

◇チハル
性別 男
身長 一五五・四センチ
外見 少し茶色がかった黒髪。後ろ髪はうなじくらいまで。前髪は右目の上辺りで分けていて左目は隠れている。
顔は幼め。
性格 あざとい。少し毒舌。物怖じしない。世渡り上手。人をからかうのはけっこう好き。
その他 非力。ゆっくり考えるタイプ、戦闘中は咄嗟の判断が多いので少し苦手。年上キラー。お酒はそこまで強くない。目がいい。

とりあえず、こんなところで!
それではまた次回で(* ̄∇ ̄)ノ
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