影と現身のグリムガル~五つの欠片~   作:?BOX

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どうも、更新です。

ブルーレイ二巻の特典小説読みました。あれは是非グリムガル好きの皆さんには読んでもらいたい内容です。マナトの知らなかったとこがたくさんみられます。
団欒室は忙しくて見れてません。ミニライブだけでも早くみたいです…。

あと、世界観ガイドブックに普通の宿に泊まるには最低でも一泊五十カパー(食事つき?)もするって書いてあってけっこう驚いてます。原作にあったっけ?
それに、原作ではお湯が溜まってるお風呂はなかったけど、アニメで豪華になったと原作者様がいっていましたが、そこはアニメ準拠でいきます。あった方が色々と幸せですよね。

では、本文です。


第十三話 一線

      ──────────

 

 

「おはよう」

「…おはよう」

 

今は八時少し前。オルタナの北門前にいる。ここ最近のパーティーとの集合場所。隣には今、アトリと呼ばれている戦士の女性がきたところだ。この子もわたしと同じく兵団の宿舎は使っていないみたい。どういう事情があるのかは知らない。最近、グリムガル(ここ)にきたのは五人だけって噂だからこの子だけ違う時期に義勇兵になっていたのかも。もしかしたら、わたしと似た境遇なのかもしれない。…とりあえず、挨拶をかわす程度であまり喋りかけてこないから気楽でいい。

 

「…あ、きた」

 

アトリが視線を移動させた方を向くと十人の人影が見えた。時間通りだ。

 

「おはよう!」

 

…今日に限って無駄に元気のこもった挨拶してどうしたいの?なにかあった?わたしはあなたたちと仲良くする気はないの。でも、まあ、挨拶くらいなら。

 

「…おはよう」

「メリイちゃーん!おっはよー!」

 

…はあ。めんどくさい子がきた。何でこの子はわたしにこんなに構うのか。

 

「……」

「何でカナは無視するのー!?」

 

しつこいからに決まってるじゃない。返したら返したで調子に乗るでしょう?

 

「むぅー」

「早くいきましょう」

「…ああ、うん。みんな、いこうか」

 

なんか、今日みんなそわそわしている。どういうこと?チラチラこっち見てくるし。

 

「メ、メリイさん、は、義勇兵になってどれくらいになるの?」

「さあ」

「さあって…」

「メリイちゃん、今日は朝ごはんなに食べたん?」

「適当に」

 

なに?この子たち、今まではほとんど目も合わそうとしなかったのに。何でこんな話しかけてくるの?そういうのほんといいから。

 

「あ、じゃあ、カナが当てる!…えっとねー、パン!」

「……」

「ご飯だった?」

「……」

「どっち?それともパスタとか?」

「…パンよ」

 

はあ、わたし何で答えてるんだろう。それに、朝からパスタは無理があるでしょ。

 

「パンだって!」

「どこのなん?おいしいん?ユメたちがいつも食べるやつ固いからなあ」

「どうだっていいでしょ」

 

もうこれ以上話しかけてこないで。わたしに興味持たれても困るから。

 

「……」

「あ、でも、今日のスープに入ってたモチモチのパンみたいな味のやつおいしかったよねー」

「そやったなあ、あれどこで買ったんやろ?」

「あ、あれ、ぼくが作ったんだ。ただ、あれは小麦粉練っただけなんだけど…」

「そーなの?!さすが、モグゾーだね!」

「あれは小麦粉練っただけだからそんなすごいものじゃないよ」

 

へえ、料理作れるんだ。意外。…そのまま、わたしから話題を逸らしていいから。

 

「そうなんや、ユメでもできるかなあ?」

「もちろん、できると思うよ」

「じゃあ、今度教えてなあ、モグゾー」

「う、うん」

「そうだ、メリイさん。今度よかったらあたしたちが作ったご飯食べにこないかな?」

「…は?」

 

わたしはあなたたちと馴れ合う気はないの。プライベートにまで踏み込まないで。わたしはただ神官として働くだけ。

 

「ご、ごめんなさい。いきなり誘うなんて、し、失礼だったよね。ごめんなさい…」

「別に」

「……」

「……」

 

沈黙が続いた。これだけ冷たくすればしばらくは話しかけてこないはず。

今のわたしには仲間はいらない。同業者としての関係だけで十分。

 

「そろそろつきますけど、今日もパーティーごとで大丈夫ですか?」

「うん、それでいこうか」

 

ダムローに入れば無駄な会話をする必要もない。そういう意味では落ち着ける。あのカナという神官からも離れられる。

 

「ゴブ三体いた。移動しよう」

 

三体か。このパーティーでもよっぽど下手を打たない限り負けることはないはず。

 

「…モグゾー、ランタ、一匹ずつ頼む。おれとユメで一匹やるから。シホルとメリイはモグゾーとランタを援護して」

 

いつも思うけど、指示がアバウトすぎる。武器の相性とか考えればいいのに。

 

「オーム・レル・エクト・ヴェル・ダーシュ…!」

 

モグゾーは斧ゴブリンに、ランタは短剣ゴブリンと切り結ぶ。そこは普通逆じゃない?

影鳴り(シャドービート)は躱された。

 

「ユメ!」

「うなあっ!」

 

これも双剣ゴブリンに躱される。

 

「いだだだづぁっ!」

 

なに?!ランタ?…左手?なら、大丈夫。浅いし、問題ない。騒ぎすぎ。

 

ピッ

「うぐっ」

 

頭?!…ううん、浅い。あれは後で大丈夫。ビビったらダメ、今下がったら崩れる!

 

「たかがそれくらいで下がらないで、戦士でしょ!」

「クッソ、えっらそうに!おまえはなにもしてねーだろうがッ!」

 

ガッッ

憤慨突(アンガー)ァァ…!」

「グガ…ァァ」

 

蹴りって…。めちゃくちゃだけど、ゴブリンたちが怯んだ。流れがこっちに向いてきた。

 

「もぁーっ!」

ギンッ

「ふんがぁーっ!」

グシャァ

 

よし、あと一体。

 

「オーム・レル・エクト・ヴェル・ダーシュ…!」

 

当たった。これで終わるはず。

 

「…刈り払いっ!」

ザッ

「グッ!ギヤァ!」

背面打突(バックスタブ)!」

ドスッ

 

終わった。主な被害はモグゾーだけ。このパーティーの割には上出来かも。

 

「クハハハハッ!連係はクソミソだったけど、このオレの一撃が呼び水になっての大勝利!さすがオレ!もはや予定調和すぎてつまんねーけどな!つーか、手が痛ぇっ!メリイ、治せ!」

 

ランタには必要ない。モグゾーの処置が最優先。

 

「座って」

「…はい」

 

…思ってたより深かった。ダメだ、まだちゃんと見極めきれていない。

 

「…痛っ」

「ごめんなさい…。光よ、ルミアリスの加護のもとに、癒し手(キュア)

 

汗で流れて血が目に入ると危険かもしれない。拭いておくべきね。

 

「あ、ありがとう」

「おい、メリイ!モグゾーはもういいだろ!次はオレを治療しろ!」

「あんたは掠り傷でしょ」

「そんなことねーよ!ほら、血が出てるじゃねーか。止まりつつあるけども!」

「唾でもつけとけば。あと、あなたは呼び捨てにしないで。腸が煮えくり返るから」

「キィーッ!」

 

ほんと、無駄に絡んでこないで。特にランタ。あなたは本気でうざいから。

 

「あのさ、メリイって、おれが毒受けたときもだけど、戦闘終わったあとなら回復してるよね。カナちゃんもいってたけど、神官って普通はそんな感じなの?」

 

は?そんなの当たり前じゃない。よっぽどの怪我じゃない限り戦闘中に回復することなんてない。今までそんなことも知らないで義勇兵やってたの?

 

「なにいってるの?」

「や、メリイはメリイでやり方を決めてるっていうかさ。こうしようみたいなのがあるのかなって」

「……」

 

逆にないと思ってるの?神官がそんな適当にやってたらパーティーなんてあっという間に崩壊するじゃない。昔のわたしのパーティーみたいに。

 

「できたらさ、そういうの教えてくれないかな?おれ、盗賊だから神官のこととかわからないし。このままじゃあんまりよくないと思うからさ」

「それはそっちの意見でしょ。わたしは別にこのままでいいと思ってるから」

 

教えたところでわたしのやることは変わらない。そんなこと、話したって仕方ない。

 

「いや、でもっ!…やっぱり、連係とかって大事だと思うから。チハルのパーティーとか連係すごいし。プライベートとかは干渉しないからさ、少しでも教えてもらえないかな?」

「…なに?わたしの仕事が気に入らないの?それなら今すぐ抜けるから」

 

どっちにしろ一つのパーティーに長居するつもりはない。変に馴れ合うくらいなら抜けた方がマシだ。

 

「いや、そういうことじゃなくて」

「だったらなんの問題はないでしょ。この話は終わり」

 

わたしは黙って稼げればいいの。別に多くは求めない。今はそれなりに生きていければいい。

 

 

──────          ──────

 

 

「回収終わったし、今日はそろそろ上がろうか」

「テルの装備見に行くんだっけか?」

「そうなのか?」

「あ、アトリにはいってなかったね。ついてきてもらえる?」

「…ああ、構わない」

 

太陽の位置的に今はだいたい二時前くらいかな?まだまだ早い時間だけど、僕の見立てからして今日は丸一日狩りをしたときぐらいは稼げたと思う。調子がよかった。

 

「じゃあ、さっさと帰ろうか」

「はーい!」

 

一時間ほど歩いてオルタナへ戻る。話題はもっぱらメリイさんのことだった。みんな心配していたみたいだ。アトリも少し気にかけてたみたいだ。

 

「ジードさん、今日もお願いします!」

「お?今日は早いじゃねえか」

「このあとちょっと買い物があるんですよ」

「おお、そうか」

「だから、今日は買い取り価格に期待してますよ?」

「よろしくね、ジードのおっちゃん!期待してるよー?」

「可愛い娘にいわれちゃなあ。ま、とりあえず、物を見てからだ」

「ふむ、中々いいもんが揃ってるじゃねえか!そうだな、五シルバー八十カパーといいたいところだが、期待されちまったし、今日は気分がいい。六シルバーにしてやるよ」

 

おお、一人一シルバーか。ゴブリンが持ってた銀貨も七枚あったから割といい稼ぎになった。

 

「いつもありがとうございます、ジードさん」

「いいってことよ!」

「じゃあ、買い物いってきますね」

「おう、いい買い物ができるといいな!」

 

とりあえず、ヨハネスさんのお店にいってみるか。どこで防具買えばいいかなんてわかんないし。

 

「まずはウィンドザール鋼材問屋にいこうか」

「それがいいな」

「ウィンドザール…?」

「アトリ、知ってるの?」

「い、いや、少し聞いたことがあるだけだ」

「ならいいけど。じゃあ、いこうか」

 

…多分、僕らの貯金じゃ一つぐらいしか防具は買えないよなー。買うなら腰当てが一番必要かな?

 

「着いたぞ」

 

意外と遠かったなー。ヨハネスさんいるかな?

 

ギイィ

 

「失礼しまーす」

「あら、いらっしゃい。どなた?」

 

あれ?初めて見る人?ブロンドヘアーの女性だ。二十代前半といったところか。

 

「あの、ヨハネスさんはいらっしゃいます?」

「今はいないの。多分、もうすぐ帰ってくると思うんだけど…。もしかして紹介受けたお客さん?」

「あ、一応そうです。この前も一回きたんですけど…」

「そうなの?ごめんなさいね、私たまにしか手伝いしないからわからなくて。兄が帰ってくるまではしばらく待っててちょうだい」

「お兄さん…?てことは兄弟なんですか?」

「ええ、私は次女のダニエラよ」

 

次女ってことはお姉さんもいるのか。けっこう兄弟多いんだなー。

 

「よろしくお願いします」

「よろしくね。…ただ待ってるだけってのも暇よね。なにか世間話でもしない?」

「いいですけど…」

「うーん、そういえば、あなたたちって誰の紹介を受けたの?見たところまだまだ初心者っぽい装備してるけど」

「あ、それは…」

 

テルと目が合う。正確には僕が合わせたんだけどね。

 

「俺の師匠のヨシゾウさんだ」

「あのヨシゾウさんが師匠なの?!すごいわね!」

「…あの、テル、僕たちにはヨシゾウさんって人のすごさがわかんないんだけど」

「ああ、俺もさっぱりわかんねぇ」

「カナもー」

「師匠は現役時代、人間族の神官とドワーフの四人でパーティーを組んでいたらしい。並み外れた力を持つ種族であるドワーフたちの中に混じって前衛の頭を張っていたらしい」

 

ドワーフに混じって?あの戦いの中で死ぬのが誇りだっていうあの種族の?それってかなりヤバいじゃん。

 

「それで、採掘とかが得意なドワーフたちと一緒に取ってきた鋼材をうちに売ってくれていたのよ。うちの店がここまで繁盛したのはヨシゾウさんたちのおかげなのよ。私がまだ小さい頃の話なんだけどね」

 

ギイィ

 

「…お?にぎやかだな。この前の…。今日はなんの用だ?」

 

ヨハネスさんが帰ってきた。この前のときと違って、フォーマルな格好をしている。取り引きでもあったのかな?

 

「…ん?ちょっと待て。お前、もしかしてアトリちゃんか?」

「…え?い、いや」

「アトリちゃん?…あ、ほんとだ!でっかい子の影で見えなかったけど、アトリちゃんじゃない。久しぶりねー。髪切ったんだ」

「…あ、はいぃ」

「そうだ、最近、お母さんが倒れたらしいじゃないか。大丈夫なのか?」

「あ、それは…。今は全然大丈夫です。だいぶ落ち着いてます」

 

お母さんが倒れた?もしかしてそれが義勇兵になった理由?ていうか、アトリ、動揺しすぎじゃない?涙目になってるし。なんか小動物みたいで可愛いなー。僕より身長低い子なんて珍しいし、余計そう思うのかも。

 

「それよりその格好、もしかして戦士になったのか?」

「あ、はい、一応…」

「まさか、そこまでしないと…」

「あ!ちょっと!…今ここではぁ」

「ああ、そういうことか。悪かった」

 

やっぱり、そうなのか。家のことが原因なのか。とりあえず、今は突っ込むべきじゃない。

 

「…それでなんの用だ?」

「あ、えっと、今日はテルの防具、特に腰当てが欲しくてきました」

「腰当てかあ。今、うちの在庫にはないな。うちはどっちかというと武器が主流だしな」

「じゃあ、どっかにいい店とかは…?」

「それなら大丈夫だ。どこがいいか…。その体つきだと少なくとも、鍛治屋に手直ししてもらわないと使えそうにないな。んじゃ、あそこだ。ディクソンのとこいってこい。あそこならよくしてくれるだろ」

 

ディクソンさん?どんな人なんだろう…。

 

「どこにあるんですか?」

「この通りの奥だ。この時間だと…。奥で作業してるか。おい、ダニエラ、こいつら案内してやってくれないか?」

「いいわよー。もう店番はいらないみたいだしね」

「おう、よろしく頼むわ」

「おっけー、みんなついておいで!」

 

ギイィ

 

「ディクソンさんはね、職人の割には、かなり個性が強いから覚悟してね。いや、個性とはあんまりいわないかも」

「そうなんですか」

 

確かに職人ってだいたい寡黙なイメージがあるよね。どんな人なのか楽しみだ。

 

「ディクソンさーん、お邪魔しまーす!」

「その声はダニエラか?なんの用だ?」

 

店頭には鎧や兜、その他の防具がところ狭しと置かれている。中にはよくわからない形のものまである。その山の奥の方から女性の声が聞こえてきた。ディクソンさんってまさか女性?

 

「お客さんの紹介よ」

「そうか。よし、今いくぞ」

 

そういって出てきた女性は大きかった。身長は多分百七十センチぐらいだけど、肩幅とか筋肉がすごい。間違いなく僕の三倍くらいの筋肉量があると思う。髪はショートカット、下半身はだぼっとした作業着にさまざまな工具がつけられている。そして、なんといっても目を惹くのがその上半身。胸のところに布を巻いているだけで白い肌が眩しいくらいに露出している。胸の膨らみはそこまでじゃないけど。

確かに女性の鍛治職人ってあまりイメージにない。個性とはいわないかもしれないけど。

 

「この人が三代目ディクソンさん。本名は教えてくれないの」

「オレの本名は誰にもいわんぞ。この名を引き継いだからには墓場まで持っていくからな。で、客はこいつらか?」

「そうよ」

「そうか、なにが欲しいんだ?」

「俺の防具、特に腰当てが欲しい。太もも辺りまで守れるとなおいい」

「ふん、その体格だと既製品をそのまま使うのは無理だな」

「それはわかっている」

「ならいい。欲しい腰当てがあったらもってこい、手直ししてから売ってやる」

「この山の中からですか?」

「ああ。オレはどうも整理が苦手でな。気分で作ったらだいたいそこいらに放置だ」

 

そんなんでよく売れるなー。商売適当すぎない?

 

「ディクソンさんはねー、全然売ること考えられないのよ。収入はだいたいオーダーメイド商品で得てるみたいだけど、暇なら適当に鎧とかを作り始める人だから、店頭もこんなことになってるみたい」

「もちろん、職人として作った作品のことを忘れるようねことはしないぞ。ただ、どこにあるかはわからんがな。品質の方もあまり問題ないはずだ。最低限、気温や湿度の管理はしている。悪くなってたとしても手直しはこちらでちゃんとする」

 

確かに、ものが多い割には風通しがよくてなんか、過ごしやすい気温だ。

 

「つい最近、そこそこ出来の良い腰当てを作った。それが見つかるといいな」

「らしいわよ」

「ってことは上の方にあるんですか?」

「いや、昨日、過去に作った鎧を探すために色々ひっくり返したからな、多分ごっちゃになってるな」

「それは…大変そうですね」

「なんか宝探しみたいだね!」

「そうだな」

「とにかく、みんなで腰当てを探そうか」

「うん、それがいいと思う」

 

腰当てならまだ大きいはずだし、少しは見つけやすいよね?

 

ガシャン

 

「うわー!びっくりしたー」

「落とした程度で壊れるようには作っていない。多少、雑に扱っても構わんよ」

 

とにかく手当たり次第探そう。でも、値段いくらになるのかなー?

 

「テルー?これは?」

「それだと少し守れる場所が少ないな」

「だよねー」

 

防具の山の向こう側でのやりとりなので全然見えない。けど、テルがダメっていうならダメなんだろう。

 

ガラガラガラガラ

 

「うわっ!」

 

板金鎧の胴の部分を持ち上げたら中から手甲とか脚甲がたくさんでてきた。ほんと、整理できてないなー。

 

「これは…どう見てもダメだよね」

「どれ?…ぶっ、それは完全に女ものじゃねぇか。テルが装備したらどうなるか…」

 

女もの?装飾ついてたりピンクとかだったりするのかな?…ヤバい、テルが装備してる姿想像したら笑えてきた。髪下ろしたらそれっぽくなりそうなのがまた…。

 

「これはどうだ?」

「見せてみろ、アトリ」

「悪くはないと思うが…」

「…確かに。ディクソン、これいくらだ?」

 

うん、見た目もしっかりしてるし悪くなさそうだ。

 

「それだと、手直し代込みで三十シルバーだ。それも悪くない出来の作品だ」

「高いな。いや、それが普通か…」

 

三十シルバーかー。覚悟はしていたけど、やっぱり高い。テル一人じゃ絶対払えないよね。僕でも貯金二十数シルバーしかないし。

 

「それ買うなら僕もお金出すよ。さすがに足りないでしょ?」

「カナも出すー!」

「私も出すよ」

「俺もだ」

「みんな、すまない。ありがとう」

「あ、アトリは無理しなくていいからね」

 

出そうかどうか迷ってそうだったから声をかけといた。あの話から察するにお金に困ってるんだろうし。こんな女の子が義勇兵なんて危ない仕事やるんだし、それくらいの事情があってもおかしくない。

 

「い、いや、私も数シルバーくらいなら…」

「話し合ってるとこ悪いが別に一気に払ってもらう必要はないぞ。ウィンドザールの紹介だ。前金として十シルバーもらえればいい」

「…え?たった十シルバーでいいんですか?」

 

前金っていってもさすがに安すぎる気がする。

 

「そうだ。なんといっても、ウィンドザールからの紹介だからな。それくらい信用度は高い」

「それがうちの兄がこの店を紹介した理由よ。これで安く手に入るでしょう?」

 

安い前金で装備が手に入るのか。ヨハネスさん、ナイス采配。

 

「ありがとうございます」

「それだけお前たちが信頼されてるってことだ。ヨハネスを疑う訳じゃないんだが、こいつらのどこを見てオレの店に紹介するに足る信頼があると思ったんだ?」

「それは多分、あの背の高い子がヨシゾウさんの弟子だからじゃないのかしら?」

「…?!…ヨシゾウの弟子だと?」

 

ディクソンさんがテルの方を睨むように見つめている。ディクソンさんも知っているのか。

 

「ああ。かなりよくしてもらっている」

「そうか…。よし、前金は五シルバーでもいいぞ。聖騎士ならルミアリスの紋章も彫っておこうか?」

「それで頼む」

 

…え?五シルバー?前金とはいえ三十シルバーが五シルバー?安すぎない?

それだけヨシゾウさんが信頼されてるってこと?

 

「無理にとはいわないが、オーダーメイドで胴当て作ってやろうか?その装備じゃまだ心許ないだろう。さすがに腰当ての料金を払い終わってからになるが」

「それは願ってもない申し出だ。是非お願いしたい」 

「ならば、このあと全身の採寸をさせてくれないか?」

「わかった」

「さっそく取りかかるぞ。腰当ては明日取りにくればいい。料金はそのときで構わんぞ」

 

テルすごい…。そんなすごい師匠のところに弟子入りしてたなんて…。

 

「そうか、色々と感謝する」

「気にするな、オレがやりたくてやっているだけだ。とりあえず、奥についてこい、採寸だ」

 

テルが奥に連れられていった。

 

「ヨシゾウさんってほんとすごいみたいだね」

「だな、その名前だけであそこまで融通効くようになるとはな」

「この職人街でヨシゾウさんのことを知らない人なんていないわよ。ここを盛り上げてくれた人なんだから。それに鍛治ギルドの掟の一つに信頼第一ってのがあるの。信頼がなかったら売らないし、信頼のある人にはちゃんとしたものを売るし、色々融通を効かせる。だから、この辺りの店はうちみたいにほとんど紹介制なのよ」

「そういうことなんですね」

「どっちにしろ、テルがいてくれてすごく助かったね。他の装備も安く手に入りそうだし」

「うん、そうだね」

「待たせたな」

 

テルが奥から戻ってきた。ディクソンさんの姿はない。さっそく作業でも始めたのかな?

 

「お疲れー!」

「ありがとう。…突然だが、皆、明日からスキル習いにいったらどうだ?」

「え?なんでいきなり?」

「腰当てをつけた状態での戦闘に慣れるために、俺もギルドで修行をつけてもらいたい。実戦でいざってときにうまく動けなくて皆に迷惑かける訳にもいかないからな」

「そっか、やっぱり慣れは必要か…。どう?みんなはスキル習いにいきたい?」

「うん、私はいきたい」

「俺も背面打突を…」

「カナも強くなりたいけど次はなにがいいかなー?強打(スマッシュ)?」

「私も一本突き(ファストスラスト)を覚えたい」

 

アトリまで?お金とか家のこととか大丈夫なのかな?…でも、それは本人が一番わかってるか。

 

「カナちゃんには、浄化の光(ピューリファイ)を覚えて欲しいかな。スキルなくても接近戦は安定してるし」

「わかった!浄化の光ね」

 

一番の理由としては僕が毒矢を使うからその保険だ。もし万が一、味方に誤射してしまったときのためにないと危険だ。解毒薬も作っておくけど。とにかくスキルを習わないとできない。

 

「じゃあ、明日は各自ギルドに向かうってことで。…けっこう早く終わったし、宿舎に戻ってハルさんたちの分も夕食作っておこうか。アトリはどうする?」

「すまないが、今日も…」

「わかった。気にしなくていいからね!じゃあ、今日は解散で!」

 

 

      ──────────

 

Δ

 

…はあ、ヨハネスさんたち余計なことを。絶対あたしの家のことバレたよね。チハルくん、気を使ってくれてたみたいだし。ああ、どうしよう。…どうにもならないか。

チハルくんたち普通にいい人だし、家のことバレちゃったし、この際もう強がって演技する必要ないんじゃないかな?けっこう疲れるし。でも、いきなりこんな弱々しくなってもおかしいか。

 

「…ただいま」

「あ、おかえりお姉ちゃん。早かったね!」

「そうだね。でも、ちゃんと稼いできたから大丈夫」

「いつもありがと。…お姉ちゃん、今日は一緒にご飯作らない?疲れてるならいいけど…」

「うん、いいよ。一緒に料理するの久しぶりにだね」

「うん!カレー作ろ!」

 

カレーかぁ。シエルの大好物。あたしも好きだけど。

 

「材料はある?」

「うん、大丈夫!お姉ちゃんは野菜切って」

「わかった」

 

シエルは小さい体を鼻歌を歌いながら、せっせと動かして鍋やハーブ、それとスパイスを取り出す。シエルは料理が得意で毎回ハーブとスパイスの分量を変えていろんな味を作ってくれる。料理人とかになれるんじゃないかってぐらい料理がうまい。

 

「…そうだ、お姉ちゃんね、明日からまた二日くらい家空けるけど、大丈夫?」

「え?うん、ママも落ち着いてるし大丈夫だよ。シエルに任せて!」

 

シエル寂しいよね。ごめん。でも、あたしも強くなってもっと稼がなきゃ。そうしたらママをもっと楽にしてあげられる。

 

「ありがとう、シエル。いい子ね」

「もう、子ども扱いしないでよっ!」

 

頭を撫でるとシエルは満更でもなさそう。ほんといい妹を持ったなぁ。あたしにはもったいないくらいだよ。

 

「じゃあ、続きやろうか」

「うん!」

 

家の外からはみゃーとミルミの鳴き声が、中ではあたしが包丁でとんとんと野菜を切る音だけが響いている。…ママがこの音を出してた頃に戻りたいなぁ。ううん、あたしが戻すんだ。ママに元気になってもらわないと。




読んでいただきありがとうございます。

今回はメリイの心情に焦点を当てました。この頃のメリイはなにを思ってあんなきつい言葉で話しているのか、その辺りを表現するのはとても大変でした。読者さんが考えてるものと違うものになっているかもしれないですが、これが筆者なりのメリイです。

オリジナルキャラクター紹介第二弾!

○シズク
性別 女
身長 一五六・七
外見 髪はこげ茶色でストレートで肩に届くか届かないかぐらいの長さ。前髪は降ろしていて目にかからないように分けてる。顔は少し困り顔。目は大きめで少しタレ目。シホルには劣るけど、巨乳。肌は色白。少しだけ猫背。指が細くて綺麗。
性格 穏やかそうに見えて実は強気なところがある。けっこう抱え込むタイプで元気溌剌でなんでも面に出すカナを羨ましく思うこともある。意外と論理的に動くことが多い。さばさばしたことをすることがある。
その他 手先が器用で絵がうまい。方向音痴。料理はできるけど、経験が浅いから普通のものしか作れない。直感で動くことは少なく、素早い行動は苦手。お酒は弱くないけど、アルコールの味が苦手であまり飲まない。

今回はこれくらいで。
また、次回でお会いしましょう(* ̄∇ ̄)ノ
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