影と現身のグリムガル~五つの欠片~   作:?BOX

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はい、更新です。

グリペディア更新ありがたいですね。でも、一本突き(ファストスラスト)単体でアトリに覚えさせちゃいました。まあ、単体だと二日でセットだと三日ということにしておきます。

オルタナニュースも是非更新して欲しいですね。

では、本文です。


第十五話 仲間

 

二日目も夕方近くなって背面打突(バックスタブ)はだいたい身に付いた。

 

「先生、ちょっと相談なんすけど…」

「なんだ?」

「盗賊のパーティーでの役割で目指すべきところってなんかあります?」

 

結局、修行しながら自分考えても分からなかった。

 

「お前はどんな盗賊が理想だと思う?お前にできるできないは関係なしに、だ」

 

理想の盗賊…か。

 

「音もなく忍び寄り、背後から一撃で敵を仕留めるとかすか?」

「その発想の時点で話にならないな。お前の理想には敵が一体しかいないのか?」

 

わかんねぇから聞いてんだよ。話になってないのは重々承知の上だ。

 

「じゃあ、なんだっていうんすか?」

「盗賊の基本は、偵察、工作だ。敵に気づかれないように潜伏し、敵情を把握する。さらにいえば、敵を自由にさせないための工作活動。例えば、罠だ。別に罠は狩人の専売特許ではない。盗賊にはスキルとしてはほとんど存在しないが、独学で修得すればいい話だ」

「でも、理想の盗賊がそれだっていうならなんでスキルとして確立されてないんすか?」

「その理由は至極簡単だ。この理想はあくまで俺の意見だからだ」

 

つーことは、先生が喧嘩殺法とかが苦手だからそういってるだけってことか?

 

「だが、お前にとってもこれは理想に近いものだと思うがな」

「俺にとっても?」

「ああ、お前に喧嘩殺法や奇襲戦法がマスターできると思うか?単騎でも背後から敵をすべて薙ぎ倒して生還できるか?できないだろう?そんなことは一部の頭のおかしい天才にやらせておけば十分だ」

 

先生はその頭のおかしいやつでも見てきたのか、いつもより言葉に感情がこもってる。とにかく、俺のこの小さな体では喧嘩殺法を習得したとしても、うまく使いこなせる自信がねぇ。早く動けたとしても結局はパワーがないこの体じゃどうしようもねぇ。

 

「凡人は凡人らしいやり方でってことすか?」

「そういえば聞こえがいいが、裏を返せば凡人はそれしかできないということだ」

「まあ、その通りっすよね」

 

俺にはカナやテルのような才能もねぇし、チハルみたいなひらめきもねぇ。シズクだって魔法の扱いは器用にこなせるし、努力もできる子だ。特に長所のない俺には小さな体を活かした偵察、工作の役割が一番性にあってそうだ。

 

「幸い、お前には盗賊作法の才能はあるようだからな。そこを伸ばしていくのがいいだろう」

「…なんか、今日の先生、変に優しいっすね。俺、先生ひ誉められたの初めてだと思うんすけど」

「ふん、少し昔を思い出しただけだ。いっておくがお前の技はまだまだだ。調子に乗るなよ?」

 

俺の技がまだまだなのはわかっている。とにかく、いまは俺にできることを考えないとな。工作か…。すぐには答えはでなそうだ。

 

 

      ──────────

 

 

「メリイ、分け前を渡す前に、ちょっと話があるんだけど」

 

ああ、やっぱりね。今日はいつになく静かで、暗い雰囲気だった。ときどき変な視線も感じた。喧嘩早くないパーティーとの別れはいつもこんな感じだ。こういう解雇のされ方はまだマシな方かもしれない。もっと酷いときは酷かった。

 

「…そう、早くすませて」

 

パーティーから抜けてくれ。それだけいってもらえればいい。悲しくは…ない。それよりも次のパーティーを見つける方が重要だ。だいぶ、悪評が広まってしまったから見つけにくくなってしまったと思う。別にそれが嫌だって訳じゃない。わたしがそうなるような態度をとってきたのだから当たり前だ。どのパーティーだってこんな性格の悪いやつを入れておきたくはない。でも、それでいい。わたしはそれを望んでるから。

 

「メリイ」

 

抜けてくれ。それだけ、それだけいってくれればいいから。早くして。早く。そんなに間を開けないで。視線が痛い。こんな空気に長くはいたくない。…この空気はいつになっても慣れるものじゃない。

 

「メリイ、おれたちのパーティーには、神官がいたんだ。マナトっていう名前だった。マナトは死んだんだ」

 

……。死んだって?

 

「死なせちゃったっていい方をしたほうが正しいのかもしれない。おれたちはあまりにもマナトに頼りすぎてた。完璧主義みたいなところがマナトにはあってさ。おれたちが怪我すると、かすり傷でもすぐに治してくれた。信頼できる治癒者(ヒーラー)で、盾役(タンク)でもあった。いつもモグゾーと二人で前衛を張ってたんだ。それに、おれたちのリーダーでもあったから、マナト一人で三役こなしてたってことになる。すごいやつだって、思ってたよ。でも、それが当たり前になってた。マナトは楽じゃなかったと思う。だけどそれを表面に出したりしなかったからさ。マナトの気持ちなんて想像もしなかった。いまも、想像することしかできない。マナトは死んじゃったから。もういないんだ」

 

そっか。わたしと同じだ。逆といえば逆かもしれないけど、このパーティーも大切な仲間を失ったんだ。そこは同じだ。わたしと変わらない。

…でも、そうだ、考えてみたら当たり前だ。義勇兵のパーティーに必須である神官を雇うってことは元いた神官になにかがあったってことだ。そんなこといままで一切考えようともしなかった。…いや、考えたくなかっただけなのかもしれない。

 

「マナトがいなくなって、正直、もうダメだと思った。マナトなしでやってくなんて無理だ。だけど、マナトが死んでも、おれたちは生きてる。生きてればなにもしないって訳にはいかない。とりあえず、義勇兵として食っていくしかない。おれたちはまだ見習いだけど。それでメリイを誘った。神官がいないと、どうにもならないからさ、ただそれだけの理由なんだ」

 

それだけの理由だとしてもわたしは選ばれた。またまたわたしの都合がよかっただけかもしれないけど、この人たちはわたしを選んだ。…大切な仲間がいなくなった穴を埋めるために。…なのに、わたし。

 

「でも、おれも、ランタも、ユメも、シホルも、もともとあぶれ者なんだ。モグゾーはクズオカって人のパーティーに入れてもらったけど、追い出されちゃって、金まで巻き上げられたんだ。マナトがおれたちをまとめてくれて、曲がりなりにもパーティーになった。仲間になった。それだけなんだ。でも、仲間になった。うまくいかないこともあるし、腹が立つことも、喧嘩することだってある。だけどやっぱり、みんな大切な仲間なんだ。なんで仲間になったのかよりも、今、仲間だってことが大事なんだ。おれは、メリイも仲間だと思ってる」

 

仲間…。パーティーに入るってことはそういうことなんだ。わたしの前にいた神官が無能だったから追い出されたにしろ、既に戦地に立てなくなってしまっていたにしろ、仲間、仲間なんだ。それなのに、わたしは自分勝手に、仲間を作るのが怖いからってあんな態度をとってた。わたしは穴を埋めてたんじゃない。わたしは、その穴をより広くて深い穴にしただけだ。

思えば、前に加入したあのパーティーだって、神官を亡くしていたのかもしれない。なんとなくは気づいてた。そして、あのパーティーはわたしが入ってしばらくしたあとすぐに分裂した。リーダーだった人にお前のせいだなんだと激昂されてそのパーティーを抜けた。そのときはわたしのせいだなんて思いもしなかった。元から火種は燻っていたし。…でも、でも、わたしがもし、あんな態度をとっていなかったらどうだっただろう。あんな風には、終わらなかったかもしれない。

…わたし、最低だ。身勝手にお金を稼ぐだけのためにパーティーに入っては、冷たい態度で向き合うことから逃げてた。義勇兵は死と隣り合わせの仕事だ。つらいのは、悲しいのは、わたしだけじゃないはずなのに、わたしは自分のことだけ考えてた。穴を広げるだけ広げて、深めるだけ深めて、パーティーを抜けることで、抜けさせられることで、放り出した。これじゃあ、わたし、本当にただの性悪じゃない。

 

「…あたしも、仲間だと、思ってる」

「そやなあ、メリイちゃん、めっさかわいいしなあ」

「ぼ、ぼくは、当然仲間だと思ってるし、メリイさんがいると、心強い」

「ふん、オレも、あれだ。ちょっとした傷で騒ぐのはな。反省してなくもねーよ。そのへんはな。……まあ、仲間なんじゃねーの?」

 

なんで…。なんで、この人たちはこんなに人に優しくできるんだろう。傷ついたのは自分たちも同じはずなのに。その傷だってまだついたばかりのはずなのに。わたしはなにも考えずに人の縄張りに踏み込んで悲しみも憎しみも全部、誰かに押しつけてただけなのに。

 

「明日あたり雪が降りそうだな、ランタが反省なんかしてるから。雪ぐらいですめばいいけど」

「オレだって反省することくらいあるっつーの!オレの学習能力はヤバいレベルなんだからな!つーか、この会話の流れ昨日の夜もやっただろーが!」

「それはいいとして」

「こらハルヒロ!堂々と流そうとするんじゃねえ!むなしくなるだろ!」

「そろそろ、目標をはっきりさせておいた方がいいと思うんだ。当面の目標ってことだけど…。今までどうも曖昧だったからさ。団章を買うためにがむしゃらに稼ぐって感じでもなかったし、なんとなく日々を生きてるみたいな。そういうのはやめて、進む方向だけはちゃんと決めたい」

「目標は億万長者だな!あと世界征服…!」

「おれは…あくまで個人的な意見なんだけど、ちゃんとけじめをつけてから団章を買いたい。頭に血が昇っていってるんじゃなくて、やっぱりマナトに成長したって証を見せたいっていうか。なんか、乗り越えないといけないんだと思うんだよね。まだあの場所にもほとんど近づいてないしさ」

 

わたしはずっと立ち止まっていたのに。こんなに早く、向き合えるものなの?…これも()()がいるから?

 

「…あたしは賛成。みんなで乗り越えたい…な」

「ぼくだって、やれるところ、見せたい…!」

「そやなあ、ユメも賛成かなあ。このままじゃやっぱり進めへんと思うし」

「オレは金と権力にしか興味がねーんだよ。女にもモテたいけどな。そこは金と権力さえありゃーどうにでもなんだろ。…まあ、その手前の手前の遥か手前の目標としては、いいんじゃねーの、別に」

「はあ、うだうだぐじゃぐじゃめんどっちいなあ」

「メリイの意見は?」

 

わたしの意見…。今のわたしに意見をいう資格なんてない。でも、その目標をわたしが邪魔をすることの方が許されない。結局、わたしには首を縦に振ることしかできない。

 

「そっか、ありがとう。メリイには関係ないことに付き合わせちゃうけど、ごめん。でも、メリイも今は大切な仲間だから、一緒に乗り越えて欲しい。……とりあえず、今日の分の分け前」

 

中身を確かめる気にもなれない。今のわたしにもらう資格があるのかさえ疑問なくらい。仲間、なかま。なんでそこまでいってくれるの?わからない。

 

「よかったらだけど、晩飯、一緒に食べてかない?」

「いい…」

 

わたしにはまだ無理。わからないの。そんな優しくされる資格はない。今のわたしじゃ理解できない。

…このままじゃダメだ。()()()()に向き合う時間が欲しい。変わらなきゃ。今までやってきたことはどうしようもないけど、これからのことならまだ、なんとかできる。…いや、なんとかしないと。こんなんじゃ、ミチキとオグとムツミに顔向けできない。こんな身勝手許されるかどうかわからないけど…。やっぱり、わたしだってけじめをつけたい、()()()()とのけじめは。だから、今は…。

 

「…まだ」

「そっか」

「じゃ、また明日」

 

…ハルヒロ、少し笑ってる?わたしは、最後にいつ笑ったんだろう。思い出せない。わたしもあんな風に笑えるように、強くなりたい。昔みたいにって訳にはいかないかもしれない。でも、今の顔はミチキたち見せられない。見せたくない。

とにかく、今日はじっくり考えたい。だから、明日からは…。

 

 

──────          ──────

 

 

「ハルさんたちは先にダムローいるかなー?」

「多分いるだろ」

「だよね。…とりあえず、僕たちはいつもの拠点まで向かおうか」

 

二日間に渡るギルドでの修行を終えて、今日もダムローに出撃中。今回、私は凍てつく血(フリージングブラッド)を習ってきた。エレメンタルを射出して命中させたところを凍らせる魔法なんだけど、けっこう使い勝手がいいみたい。足を狙えば動きを封じられるし、熟練度が上がってくれば、心臓とか大きな動脈を狙うと一撃でダウンもできるらしい。氷結魔法(カノンマジック)使いには必須の魔法って先生がいってた。

ギルドでの修行を終えてから、チハルは新しい矢筒を、テルはこの前、掘り出した腰当てを装備してきていた。テルはまだ胴当てとか、胸当てがないから、なんか着替え途中のまま出てきちゃったみたいな感じで少し笑えちゃった。

 

「静かに!」

 

コウタが小さい声で周りに注意を促す。ゴブリンが近くに?確か、ここはそんなにゴブリンが出没しないところのはずなんだけど…。

 

「待ってろ。見てくる」

 

みんな、無言で頷いた。コウタは一切音を立てないで脇道に消えていく。私には全く物音聞こえないのに、よくわかるなぁ。

…あ、戻ってきた。あれ?違った。少し離れて、そこから手招きしてくる。コウタが帰ってきた方向の反対側。極力音を立てないようにそこに向かう。

 

「この辺りなら声出しても大丈夫だ。もちろん小さい声でな」

「で、ゴブリンは?」

「そこの建物の二階に三体。なんか会議みたいなのをしてるっぽい。一体ちょっとでかめのやつがいたけど、あれくらいなら問題なくいける。たぶん得物は側にあった片手剣。あれなら売り物にもなるレベルだと思う。あとは見えなかった」

 

あの建物は…確か…。地図で書いたから覚えてる。

 

「あの建物だとあんまり二階広くないよね?」

「うん、そこが問題だね、シズクちゃん。誘き寄せるか、一気に畳かけるか…。誘き寄せた方がいいかな」

「そうだな」

「あそこの中ってどうなってたっけ?」

「階段は使えたな。天井が抜けてて二階と一階が繋がってる部分がある。飛び降りるのは余裕でできると思うぞ」

「じゃあ、階段からアトリとコウタで奇襲をかけてゴブリンたちを飛び降りさせる。あ、カナちゃんも一応そっちで。で、飛び降りさせたところを僕とシズクちゃんで二体の動きを止める。残りの一体をテルが迎え討つ。こんな感じでどうかな?」

「悪くないんじゃないか?もし、ゴブリンが逃げださなくても、アトリとカナがいれば十分持ちこたえられるだろ」

「俺も賛成だ」

「オッケー!もしものときはカナ頑張るよー!」

「うん、私も頑張る」

「了解した。私は追い立てればいいんだな」

「じゃあ、配置について。荷物はとりあえずここに置いておこう。奇襲組は僕が合図したら階段昇ってね」

 

抜き足差し足、慎重な動きで配置につく。

 

「シズクちゃん、魔法の準備はいい?」

 

チハルがさっきよりもかなり小さな声で聞いてくる。その間に、チハルは矢を取り出して弓につがえてる。今日新しくつけてきた矢筒じゃなくて、いつも使ってる方の矢筒から取り出してる。毒矢は使わないのかな?

 

「うん、大丈夫」

「じゃあ、いくよ」

 

その声と同時に奇襲組に合図を送る。私たちの斜め前方ではテルが三叉槍を構えて立っている。

 

「うらあぁぁぁ!」

「はあぁぁぁ!」

「いっけぇー!!」

 

コウタたちが声でゴブリンたちに威嚇してる。

 

「グギィ!グギャギャ!」

「「ギャァ!」」

 

ゴブリンたちの声も聞こえてきた。よし、魔法準備!絶対当てる!

 

「ジール・メア・グラム・フェル・カノン」

 

きた!ゴブリン!

 

「…凍てつく血(フリージングブラッド)ッ!」

 

やった!命中!ゴブリンの膝だ。チハルの矢も他のゴブリンの太ももに命中した。残ったのは片手剣をもった体格いいのゴブリンだけ。仲間をやられたことに怒ったのか、私たちに目をつけたそのゴブリンの前にすかさずテルが飛び出す。よし、追撃!

 

「マリク・エム・パルク…!」

 

私は二つの魔法の光弾(マジックミサイル)を飛ばして負傷で動きが鈍いゴブリンに追い討ちをかける。最近は複数飛ばすことにも慣れてきた。

チハルは角度をとりながら矢をつがえてる。今度は新しい矢筒の方だ。狙いはテルと打ち合っている片手剣ゴブリンみたい。これは脇腹に命中。いいペース。

 

「よっと」

ザシュッ

ザンッ

 

二階からコウタとアトリが飛び降りてきて、動けないゴブリンたちにそれぞれダガーで素早くトドメを刺した。カナちゃんも続いて降りてくる。これであと一体。しかも毒矢が刺さってる。

 

「あとは囲んで!慌てなくていいから!時間が経てば経つほど毒が回って動けなくなるから」

「グギャァー!」

 

ゴブリンは逃げ回る一方で攻撃を仕掛けられないみたい。時間をかけて倒せばいい。

…よし、壁際まで追い詰めた。テル、アトリ、コウタがジリジリと輪を詰めていく。ゴブリンは剣を振り回して威嚇してるけど、だんだん動きが鈍ってくる。毒が回ってきたのか。

 

カラン

 

ゴブリンが剣を落とした。拾おうとするも体がうまく動かないみたいで前のめりで転んだ。そこへすかさずテルとアトリが長いリーチを活かしてゴブリンに突きを見舞う。それぞれ首と心臓の辺りを抉る。…ゴブリンは動かなくなった。

 

「ふぅ、終わりだね。かなり安定して戦えたね。僕とシズクちゃんのスキルで敵の足止めを狙えるのはやっぱりけっこうでかいね」

「ああ、かなりありがたい。前で打ち合う方としてもだいぶ楽だ。アトリはどうだ?」

「毒で動きが鈍ってから攻撃できるのはいい。こちらはリーチが長い分、有利な状況で、より安全に確実にトドメをさせる」

「だな、これでだいぶ戦術の幅が広がったな。やっぱり、この剣割と良さげだな。売れそうだ」

 

話してる間にコウタがゴブリンからそれぞれゴブリン袋を回収してくれた。袋を持った手と反対の手には片手剣が握られてる。

 

「余計、カナの活躍がなくなりそーだけどねー。ぶーぶー」

「カナちゃんが活躍しないのはいいことだから、ね?」

「それくらいわかってるんだけどさー」

「カナちゃんはカナちゃんで、仕事はちゃんと果たしてるから大丈夫だよ。さっきの威嚇もカナちゃんが一番声大きかったし」

「カナは元気が取り柄だからねー」

「うん。だから、ありがとう」

「納得いかないけどわかったー」

「…よし、それじゃ、気を取り直して拠点に向かおうか!」

 

うん、この調子でどんどん新しい魔法に慣れていかないと。さあ、今日も気合い入れて頑張ろ!

 

 

「……という訳なんだ。だからってのもなんか違う気がするけど、メリイのこと嫌いにならないで欲しいなって。こんなことおれがいうのもおかしいか。…メリイ、あんな態度とってたけどさ。…なんか、おれたちと似てる気がして」

 

二日ぶりの狩りを終えて宿舎に戻ると、ハルヒロたちが夕飯の支度をして待っていた。ハルヒロが「メリイのことで話したいことがある」というから、食事をとりながら話を聞いた。なんでも、メリイは以前、三人の仲間を一気に失ったらしい。当時は優しく笑顔を絶やさない人だったらしいのだが、それが原因で今のように心を閉ざしてしまったという訳だ。

 

「それで昨日、メリイにおれたちの、マナトのことを話したんだ。そしたら、おれたちのこと、仲間だって思ってくれたのかな?まあ、そんな単純な話じゃないとは思うんだけど、今日のメリイはなんか前みたいに尖ってなかったかな」

「そやなあ、今日のメリイちゃん、めっちゃかわいかったなあ」

 

なるほど。ハルヒロの話にどこか心を動かす言葉があったのかもしれない。

 

「うわー!ハルヒロにメリイちゃん盗られたー!この盗賊、侮れない!カナがデレさせるって決めてたのにー!」

「いやいや、別にデレたとかじゃないから。今日も夕飯誘ってみたんだけど、まだ無理みたいだったし」

「まあ、いきなりご飯はハードル高いんじゃないですか?」

「でも、そのうち、あたしたちみんなで一緒にご飯食べにいけたらいいよね。もちろん、チハルくんたちのパーティーも一緒に」

「そのときはカナがメリイちゃんの隣ね!」

「ぼくの作った料理も食べてもらいたいなあ」

「モグゾーさんが作った料理ならメリイさんでも美味しいって笑顔で食べてくれるんじゃないですか?」

「い、いや、ぼくの腕じゃ、どうかな…?」

 

カナはいったいどれだけメリイのことを気に入っているのだろう。同じ神官だからか?

というか、なぜモグゾーは食事中までずっと兜を懐に抱えている?あの兜、初めて見るな。買ったばかりなのか?

 

「あ、そうだ。メリイはおれたちが昔のこと知ってるの知らないはずだからカナちゃんたちも内緒にしといて」

「オッケー!カナこう見えて口堅いから大丈夫だよ!」

「うん、ありがとう。…今日話したかったのはこれくらいかな。わざわざ集めちゃってごめん」

「全然そんな、謝る必要なんてないですよ。メリイさんのこと知れたのはすごくよかったです」

「ならいいんだけどね…」

「そうだ、チハル!さっきの話で思い出したんだけど、サイリン鉱山って知ってる?」

「一応知ってるよ。コボルドの棲み家だよね。それもさっきハルさんがいってたけど」

 

サイリン鉱山か…。確か師匠も昔はよく狩り場にしていたといっていた気がする。

 

「うん、それ!この前修師(マスター)にカナがすることないーって相談したら、サイリン鉱山までいってみたら?っていわれたの」

「なるほどねー。狩り場を変えるか…。あんまり考えてなかったな。みんなはどう思う?」

「…狩り場を変える…か。となるとゴブリン以外を相手にするのか…。冒険らしくていいとは思うぜ。でも、結局は冒険だからな。情報もないし俺はまだはっきりしたことはいえないな」

「俺は賛成だ。どうせなら強い敵と戦いたい。装備を整える金も欲しいからな」

「私は…まだちょっと早いと思うかな。スキル習ったばっかりで慣れてないし」

「カナはもちろん賛成だよっ」

「僕もなんともいえないかなー?とりあえず、今慌てて決めることはないし、情報集めないとかな?」

 

アトリにも確認をとらなくてはならないしな。

 

「おいおいおい!さっきから黙って聴いてりゃーな。何で後輩のお前らがオレ様より先進もうとしてんだよ!」

「は?いやいや、ランタ変ないいがかりつけんなよ」

「黙ってろ!ハルヒロ!お前はいいのかよ、こいつらに先越されて!」

「別にいいも悪いもないだろ。チハルたちだって仲間なんだからさ」

 

仲間か…。そういうことをすんなりいえるからこそハルヒロはメリイを説得できたのかもしれないな。

 

「仲間だぁ?こいつらはチーム違うだろ?!義勇兵である以上、こいつらも競争相手(ライバル)だろーが!」

「だとしても、おれたちには目標があるだろ?昨日決めたろ?」

「…クソッ!それくらいわかってんだよ…!」

 

目標…?どんな目標を立てたんだ?

 

「ハルさん、目標ってなにか聞いてもいいですか?」

「これもちゃんとチハルたちに話しておくべきだったかも。あのときはさんざん迷惑かけたと思うし。…おれたち、マナトのことについてけじめをつけることにしたんだ。団章もそれまで買わないってことになった」

「けじめって…?」

「マナトを…殺したゴブリンを倒す」

「それって復讐ですか?」

「そういう気持ちが全くないっていったら嘘になるし、復讐ってのは間違ってはないと思うけど、なんていうか倒すべき目標っていうかさ。やっぱり、あいつらを倒すことでおれたちは前に進めるようになるんじゃないかなって」

 

ハルヒロ、すごいな、色々考えてるのか。無理せず頑張って欲しいものだ。

 

「そうですか、応援してますね。でも、無理はしないでください」

「うん、カナも応援してる!だから、絶対みんなで帰ってきてね」

「私も応援してます」

「ありがとう。これから、装備とかスキルとかを整えてからいくつもりだから、時間はかかると思うけど。まだまだ連携もしっかりしないとだし」

「僕たちもしっかり目標とか定めないとね。とりあえずはサイリン鉱山にいくかどうかってとこから話し合わないと!」

 

俺たちは俺たち、ハルヒロたちはハルヒロ、それぞれやるべきことをやっていけばいい。この稼業では目標はいくらでも上に定められる。ソウマのような生ける伝説の義勇兵までいかなくとも、義勇兵をやるならば上を目指したいものだ。師匠やトリストラムの名に泥を塗らないように努力は欠かさず、堅実に進めたらいい。皆と一緒にな。




読んでいただきありがとうございます。

今回もメリイを中心に書かせてもらいました。あの話を聞いてメリイがどう感じたかを妄想してみた感じですが。
メリイの過去についてはアニメや原作で十分描写されてると思い、あまり触れませんでした。

オリジナルキャラクター紹介第四弾!

□テル
性別 男
身長 一九○・五
外見 綺麗な黒髪をポニーテールのように纏めている。眼光は鋭く、人を寄せ付けない雰囲気をまとっている。顔のパーツはシャープでバランスが整っている。ブリちゃんが狙うくらいのイケメン。どっちかというと男前。
性格 外見に反して優しく、仲間のことになると情熱的。それ以外は論理的な判断もできる。無口なのは人見知りとかではなく、聞き手にまわることが多いだけ。頭の中では色々と考えている。実はかなりウブ。
その他 苦い食べ物は基本苦手で甘いものが好き。肉より魚派。猫舌。身体能力は高いが技術に関してはそこまで秀でている訳ではない。真面目な努力の賜物。ヨシゾウ師匠をかなり慕っている。敬語は苦手。硬派な人に好かれやすい。

以上です!
ではまた次回にー(* ̄∇ ̄)ノ
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