影と現身のグリムガル~五つの欠片~   作:?BOX

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どうも、更新です。

遅くなりました。申し訳ないです。でも、これからも時間かかっちゃうかもしれないので、ご了承下さい。

今回はトッキーズ(一部)が登場します。トッキーズは筆者も大好きなパーティーなのでできたらもっと登場させたいなって思います。

あと、ブルーレイ三巻の特典小説読みました。ギルドのことが詳しくわかってよかったです。前回のと違って笑いながら読めましたし。

では、本文です!



第十六話 前進への下準備

 

「ヨォーヨォー!いつ振り?…えと、三日振り?けっこう会うねー!」

「キッくん!おっす!」

「なになにー?キッくんって俺ちゃんのあだ名?いいねー、カナち。イカしてるじゃん!」

「ん?キッカワ、知り合いか?…この前いってた同期のパーティーか?」

 

お、なんだあのイケメン。眩しー。歯がキラッってしてる。

 

「トキムネさん、こいつらは俺ちゃんよりあとにきた後輩っすよ。この前、ダムローのこと俺ちゃんがティーチングちゃったりした仲みたいな?」

「そうか。そんなのもいたな、あまり噂に聞かないが…。…いや、最近、うちのギルドのヨシゾウさんの弟子になった期待の新人がいると聞いたが、もしかしてお前か?」

「ああ、弟子入りしたというのは俺だ」

 

このイケメンの人も聖騎士の人なんだ。なんかキラキラしてるし似合いそうだなー。

 

「トキムネ、キッカワ、なにしてるデスネー?」

「アンナさん、ミモリ!俺ちゃんの後輩たちだヨォー!」

「どうも。…キッカワさん、失礼ですけどこの人たちはどういう方たちなんですか?」

「オッケー!俺ちゃんが紹介するよ!この人が我ら、トッキーズのリーダーの…」

 

キッくんによるとトキムネさんっていう人がチーム、トッキーズのリーダーで聖騎士をやっているみたい。あとは、カナと同じ金髪で青い目のアンナさんは元魔法使いの神官、カナよりもおっきい赤い髪のミモリさんは元戦士の魔法使いらしい。二人ともなんかすごい経歴だなー。…二人ともおっぱいでかい。分けて欲しい。

それに今日はきてないけど、元戦士で今は神官のタダさんと、盗賊から戦士になって今は狩人のイヌイさんもトッキーズのメンバーだっていってた。

キッくんが加入したことでみんなの職業(クラス)を変えたらしい。あれ?でも、以前は神官どうしてたんだろう?戦士ばっかりで誰も神官いなくないかな?

 

「…で、最後に僕がリーダーのチハルです。あと、ここにはいないんですけど、アトリっていう戦士の子もメンバーです」

「そんな子いたのぉ!俺もアトリちゃんに会ったことない!可愛い?どんな子?…あれ?でも、この前きたのって全部で五人じゃなかったっけ?俺ちゃん勘違いしちゃってたー?」

「あ、アトリはオルタナ出身の子なので、知らないのも無理ないと思いますよ?」

「オルタナ出身?!珍しいね!ゴイスーだね!いやー、会ってみたいね!ここにはあんまりこないの?きたら紹介して欲しいなーなんて。いや、狙ってる訳じゃないよ?純粋に興味あるだけだから!オルタナ出身の義勇兵なんてそうそういるもんじゃないからね!」

「うるさいデスヨー!キッカワはー、しゃべりすぎデスネー!少しはジチョウするデスネー!」

 

まだ会ったばっかりだけど、すごくおもしろそうなパーティーだなー。ミモリさんはチハルとコウタが同じ顔をしているのが気になるのか、チラチラ交互に見てる。まあ、初めてみたら気になるよねー。

コウタとシズクはテンションの高さに当てられたのか、お互い困ったように顔を見合わせている。テルはトキムネさんと話してるみたい。

 

「アンナさん、俺からこのトーク奪ったらなにも残らないよ!?」

「キッカワにアイデンティティーなんか必要ナイデス!」

「それってわざわざキャラ付けしなくても十分魅力的ってことだよね?!いやー、俺ちゃん感激!もう死んでもいい!いや、嘘。でも、アンナさんにそこまでいってもらえるなんて思ってなかった!あ、そうそう、聞いて聞いて!今日、サイリン鉱山でヤバいの見た!ちょーヤバいやつ!」

「やれやれ、デスネー」

 

お?サイリン鉱山のことなら大歓迎だ!そのために酒場に情報収集にきたんだしね。

 

「なにを見たんですか?」

「あれだよあれ。デドスポ!知ってる?デッドスポット、死の斑!ちょーでかいコボルドだった!あれはマジでヤバいね。武器もちょーでかいし。その武器、ガラガラ引きずって歩いてるんだけど、その音でさえヤバいね。威圧感って感じ?何人もの義勇兵殺ってるってのも納得するよね、うん」

 

確か、ハルヒロの話にもでてきたなー。デッドスポット。そんなにヤバいのかな?でも、なんかキッくんが話してるとあんまり恐く聞こえないんだよなー。

 

「…あれは可愛くない。もっと、小さければいいのに」

 

わー、ミモリさん意外と可愛い声!顔も可愛いし、いいなー。

 

「デッドスポットって可愛くないんだー」

「うん」

「コボルドは狼みたいな顔で二足歩行してるんだから、可愛くないに決まってるよ、カナちゃん。デッドスポットは今日初めて聞いたんですけど、そんなにヤバいんですか?そういえば、サイリン鉱山の話題自体もそこまで聞かないですね」

「デドスポはヤバいヤバい。ちょーヤバいね。間違いなく。サイリン鉱山の噂聞かないのもデドスポのせい。あんなのいる狩場の割りに稼げないからね。俺ちゃんの情報網によれば、今は攻略してるパーティーはいないはずだね!たまに気晴らしにいくやつはいるみたいだけど。俺らトッキーズも新編成に慣れてきたし、明日からはオーク狩りに戻るからね!俺ちゃんは初めてだけど!とうとう俺ちゃんも一人前の義勇兵になるときがきたって感じ?スーパーキッカワタイムってやつぅー?ワクワクするねー!」

 

うぉー、デッドスポットってそんなヤバいのか…。サイリン鉱山、カナたちじゃまだ早いかなー?

 

「サイリン鉱山で腕試ししてたってことですか?」

「そういう感じ?腕試しするにも、ダムローだと全然美味しくないからね。かといってデッドヘッドよりも遠いサイリン鉱山で狩りをするのも効率悪いから、そうそうに切り上げるってとこかな?」

「じゃあ、サイリン鉱山ってあんまりオススメの場所じゃない感じなんですか?」

「オススメというよりは定石って感じ?普通の義勇兵ならゴブリンからのコボルドってのが普通って聞くね。レッサーコボルドならゴブリンと似たようなもんだしね。まあ、レンジんとこみたいな特殊なとこもあるけどね。俺もあんな風になりたいわー。無理かな?無理か。俺ちゃんは俺ちゃんらしくやるっきゃないよね!アンナさん?」

「アンナさんに聞くナイ、デス!キッカワにはこれっぽちも興味ノァッシングデスネー」

 

キッくんって普段はチャラチャラしてるけど、意外と、色々と教えてくれるときは親切だよねー。うん、ありがたい。

 

「なるほど…。ところで、レンジさんって最近話題によく上がってる義勇兵ですか?」

「あ、やっぱり聞いたことある系のやつぅ?だよねー、最近のかなり注目されてるよね。トレンドってやつ?レンジのやつ、俺ちゃんと同期なんだけどね、義勇兵になってから一週間も経たないうちにオーク倒しちゃったらしい訳よ。そんなの話題にならない訳がないわー。あのデドスポもしっぽ巻いて逃げちゃうくらいの勢いしてるからね、レンジたち。マジリスペクト、同期とは思えないわー」

 

キッくんと同期ってことはハルヒロたちと同期ってこと?酒場にきたら毎回のように聞く名前だったけど、そんなにすごかったのか…!カナたち、義勇兵になってから何日経ったっけ…?もう二週間以上だったかな?でも、まだゴブリンしか倒してない…。レンジさんたちヤバいなー。

 

「すごいんですね、レンジさんたち。会ってみたいなー」

「そのうち会えるっしょ!ここにもくるみたいだからね!怖くて話しかけるのは俺ちゃんでもちょっと気が引けるけどねー」

「さすが、キッカワ、ビビりデスネー!」

「ちょ!俺これでも前衛張ったりとか頑張ってるじゃん!まあ、それもアンナさんの応援のおかげなんだけどね!」

「フンッ、キッカワのくせにわかってるじゃないデスカー。もっとアンナさんを褒めナサーイ!」

 

やっぱり、トッキーズは独特なパーティーだなー。あとの二人はどんな人たちなんだろう…?

 

 

      ──────────

 

 

「ゴブ三体いた。ちょっとがたいがいい短剣持ちが一体と弓矢持ち、あと小さめダガー持ちが一体。周りは静かだし他はいないと思う。ユメとおれで弓ゴブを最初に狙おう。シホルは魔法でサポートお願い」

「んにゃ!」

 

ユメは小声で返事を、シホルは無言で頷いた。

 

「よし、いこう!」

 

みんなで音を極力立てないように慎重に歩みを進める。途中でモグゾーとランタには合図を送って反対側に待機させる。

…見えた。ん?立ち上がった。移動しようとしてる?少し急いだ方がいいかもしれない。

 

「シホル、お願い!」

「うん。オーム・レル・エクト・ヴェル・ダーシュ…!」

 

ヴヲォォン

 

よし!当たった!

 

「ユメ、いくよ!」

 

背面打突(バックスタブ)は…ちょっと遠すぎる。間に合いそうにない。武器を落とすか。…あとは。

手打(スラップ)…!

 

「ギギィッ…!」

カッカラン

 

よし、落とせた。

 

バキィ

 

…矢も奪取できた。これで前みたいなヘマはしない。二度とごめんだ。

 

「ユメ!一気に…」

「うにゃぁ!斜め十字っ…!」

 

おれが声をかけると同時かそれよりも早くユメは弓矢ゴブの背後から斬りかかる。…かなり深く決まったみたいだ。ゴブリンがうつ伏せに倒れる。

…トドメだ!背面打突…?地面に伏したゴブリンにダガーを体重かけて突き立てただけだから、これは背面打突って呼べるのか?…いや、とにかく次だ。

モグゾーは得意の鍔迫り合い(バインド)状態まで持っていってる。あれは時間の問題、大丈夫だ。兜を手に入れてからモグゾーは、だいぶ積極的に攻めに転じられるようになった。メリイはちゃんとシホルについていてくれている。

 

「クッソ!こいつ、すばしっこ過ぎんだろ…!」

 

問題はランタだ。あのダガーゴブは厄介そうだ。全く足を止めずにランタを翻弄し続けている。ランタだって十分すばしっこいタイプだけど、それ以上みたいだ。

 

「シホル!魔法で動き止められる?」

「やってみる!…オーム・レル・エクト・ヴェル・ダーシュ…!」

「ギァ!」

「当たらないっ…。はぁ…はぁ」

 

ダガーゴブはシホルの影鳴り(シャドービート)さえも躱した。どうする?とにかく囲むか?

 

「ぐぁッ!…痛ってー!」

 

ランタが足をやられた。そこまで深くはなさそうだけど、動きが鈍る。

 

「引いちゃダメ!もうすぐモグゾーくんの方が片付くから!」

 

メリイだ。普段はまだそこまで喋ってはくれないけど、こういうときはしっかりいってくれるようになった。正直、かなり助かってる。

 

「うっせ!わかってんだよ…っ!」

 

ランタは防いだダガーを押し返す。それでもダガーゴブは体勢を崩さない。

おれもユメも回り込むように動いてはいるけど、すばしっこい動きについていけず、うまく後ろがとれない。

 

「どうもぉぉーっ!」

 

モグゾー必殺のどうも斬りが短剣ゴブに炸裂する。あれはもう起き上がっては来れないと思う。

 

「あと一体!四人で囲もう!」

 

モグゾーもすぐに駆けてきてダガーゴブを取り囲む状態になった。それでもダガーゴブは絶えず足を動かし続けている。

 

「四人で波状攻撃!少しでも当てれば動きが鈍るはずっ…」

「うりゃっ!」

 

ユメが先陣を切って攻撃を始める。足元を狙った刈り払いだ。

 

「グァッギァ!」

 

ダガーゴブはそれをジャンプして躱す。そこを狙えば…っ!逃げた?!いや、違う。あれは…!

 

「メリイっ!」

「大丈夫、任せて!」

 

ダガーゴブはユメとおれの間をすり抜けて一直線にシホルとメリイのいる方へ駆けていく。おれはすかさず、ダガーゴブを追いかける。

メリイはシホルを庇うように前に出る。

 

「ギャギャッ!」

「…ハッ!」

 

メリイの錫杖がダガーに弾かれたように見えたが、違った。反動を利用してそのままダガーゴブを突き返した。見事にカウンター技が決まった。確か、あれは神官の護身術の一つで突き返し(ヒットバック)だ。

動きが止まった。今だ…!背面打突ッ!

 

ドスッ

 

走ってきた勢いもあってだいぶ深く入った。手応えありだ。

ダガーゴブはダガーを落とす。どうやら、力尽きたようだ。

 

「おい、ハルヒロ!オレの悪徳(ヴァイス)!ぐっ…痛ってー!」

 

その足じゃどう考えても追い付けないだろ…。怪我してまで悪徳に拘るところはランタらしいけども。前みたいに騒がなくなっただけマシか。

 

「ランタ、座って。…光よ、ルミアリスの加護のもとに…癒し手(キュア)

 

メリイがすぐに治療するってことはけっこう深かったのか…?

とりあえず、周りにも異常はなさそうなので、おれはそのままゴブリン袋の回収へ移る。

 

「はい、終わり」

「あー、クソッ!悪徳集められなかったじゃねーか!」

「ランタはいちいち悪徳、悪徳うるさいなあ。そんな欲しいんやったら、その辺のネズミでも狩ってたらええやんなあ」

「んな細けーことやってられっかよ!…いや、待て、その手があったか…?」

 

ランタがまたぶつぶついいながら、よからぬことを考えているみたいだ。

 

「メリイ、突破されてごめん。あと、ありがとう。さっきの技、すごく綺麗だった」

「いえ、トドメを刺したのはあなたでしょ」

「まあ、そうだけど、メリイのおかげだし、お礼はいっとこうかなってさ」

「そう、わかった」

「…ん。それじゃ、今日はもう日も落ちてきたしオルタナに帰ろうか。今日も割りといい収穫だったし」

「うん、あたしもちょっと疲れたかな…、今日は」

「ごめん、ぼく、荷物まとめるからちょっと待ってて」

「オッケー、モグゾー。このゴブリン袋もお願い。…モグゾー、そんな焦らなくていいから」

 

この前、メリイとの対話──ほとんどおれが一方的に話してただけなんだけど──をしてから調子がだんだん上がってきてる。ここ三日間は六シルバー以上は安定して稼げるようになった。明確な目標を定めたからか、メリイとの連携が少しずつとれるようになってきたからなのかはわからないけど、いい傾向だと思う。

 

「お待たせ、ハルヒロくん」

「よし、いこう」

 

そのメリイはあの日の翌日から、目に見えてって程では全くないんだけど、少し態度が丸くなったと思う。相変わらず、クールで素っ気ない態度だけど、少なくとも前みたいに言葉も選ばず、ただ相手を拒絶するような感じではなくなった。話しかければある程度は答えてくれるし、目もたまにだけど合わせてくれるようになった。……あれ?考えてて思ったけど、これって普通じゃね?まあ、この際いいか。

特に、戦闘中のメリイは変わった。後ろから指示もしてくれるから、全体をよく見ていてくれることがちゃんと伝わってくる。モグゾーが積極的になったのは兜を買ったこともあると思うけど、メリイがいる、神官がいるっていう安心感も少なからずあるのかもしれない。

つまり、メリイが本当の仲間になってくれたってことなんだろう。おれはそう思うし、みんなも感じてると思う。まだみんなで一緒にご飯はいってないけど。今日はいけるかな?…誘ってみる?いや……まだ早いか?……いや、うん、誘ってみよう。

 

「あのさ、メリイ…」

「ちょっと待って。今、買い取り中」

 

…あれ?いつの間にオルタナに?ダムロー出たところまでは覚えてるけど…。おれ、そんなに悩んでた?ていうか、ここ、いつもの買い取り商と違わない?日もだいぶ落ちて暗くなってきてるし。

 

「あれ?ここって…?」

「メリイちゃんがよく使ってた買い取り商なんやってなあ。ハルくんちゃんと聞いてた?」

「…あ、うん、聞いてた聞いてた」

「はいよ、おまけ付きで七シルバーと三十カパーだ。メリイちゃん、またひいきにしてくれよな」

「はい、ありがとうございます。ジードさん」

 

七シルバーとちょっとくらかと思ってたから、思ってたより二十カパーぐらい高い。ここの方が買い取り価格いいのかな?

 

「で、なに?」

 

メリイはおれに銀貨の入った袋を渡しながら問いかけてくる。なんだっけ?…あ、そうだった。

 

「…今日さ、このあとみんなで酒場いかない?だいぶ、お金もたまってきたし、スキルとか装備とかのことみんなで相談したいしさ。…どうかな?」

 

……。いや、そんな無言で見つめないで?気まずいから。なんかあれじゃん?告白したみたいな空気?いや、全然そんなんじゃないけど。確かにメリイは綺麗だし、美人だとは思うけど、そういうのとは違うっていうか…。

 

「…わかった。そういうことなら」

「へ?」

 

あ、びっくりして変な声出た。ヤバい。今の聞こえた?聞こえたよね?

 

「ご、ごめん。ありがとう。…とりあえず、いこうか。あ、場所はシェリーの酒場ね」

 

とにかく、一旦落ち着こう。おれ、絶対挙動不審だったよね。でも、メリイがくるっていってくれてよかった。なんだろう、この達成感。みんな、おれ、ついにやってやったぞ!…あれ?ユメとシホルはメリイに話しかけてるし、モグゾーはランタに悪徳の話で振り回されてる。最近、割りとよくある光景だ。もしかして、舞い上がってるのおれだけ?これは多分あれだ。初めてリーダーらしいことしたって達成感だ。あれだけ悩んで苦労したんだからそれくらいの達成感があってもおかしくない。

 

「しゃーっ!悪徳の量産方法も見つかったことだしパーッと飲むぞォー!」

「話し合いもするんだからほどほどにしとけよ」

「はいはい、わかったわかった。ハルヒロ、オカンか、お前は」

 

席についてそれぞれ飲み物と食べ物を頼む。メリイはビールを頼んでた。メリイはそういうものを飲まなさそうだったからかなんとなく意外だ。

 

「じゃあ、とりあえず、始めようか。お金もだいぶたまってきたと思うし、お金の使い道決めたいと思うんだけど。具体的にはスキル習いにいくか装備を新調するかってとこね」

「金は自分のもんだろ。好きに使えばいいじゃねーか」

「装備ならそれぞれ好きに買えばいいと思うけど、スキル習いにいくならタイミング合わせないと狩りにいけないだろ。それくらい少し考えたらわかるだろ。おれらにはスキルも装備も一気に揃えられる金なんてないんだから順番くらいは決めないと」

「あー、わかったわかった」

 

ランタは相変わらずめんどくさい。だけど、相手にしてたらキリがない。

 

「それで、みんなはどっちを揃えたいかなってのを聞きたくてさ。メリイには先輩としてのアドバイスとかしてもらえれば、なんて」

「ユメはなあ、前もゆうたけど鎧が欲しいなあ。ちょっとしたもんでええからなあ」

「ぼくはどっちでもいいかな。兜が手に入ってだいぶ安心できるようになったけど、防具が多くて損することないし。…スキルも気になるのはある…かな」

「あたしはローブとか新調したい…。だいぶ、解れてきちゃって…」

「ランタは?」

「オレか?今のところは装備だな。オレもかっけー兜が欲しいぜ。モグゾーのいう通り防御力はあって損はねーからな」

「そっか、意外だな」

「は?なんだとコラ!オレだってちゃんと考えてんだよ!」

 

ランタだってバカじゃない。それくらいは考えてるのか。

 

「ごめんごめん、悪かった。おれもどっちかというと防具が欲しい。おれって割りと怪我する方だし。今のところ忍び歩き(スニーキング)がないとヤバいってこともないしさ。そりゃ、あるに越したことはないんだろうけど。…メリイはどう思う?」

「わたしも装備がいいと思う。今の戦術は十分はまってるし、それの確実性を上げていく方がいい…はず」

「ありがとう。じゃあ、今後は装備を優先的に集めていくってことで。明日、ちょっと市場に見にいってみようか。…なんか、思いの外早く終わったよね。まあ、ゆっくり雑談でもしながらご飯食べよう。メリイもきてくれたことだし」

 

タイミングよく最後の料理が運ばれてきた。ユメはいつもの儀式、他のみんなもいただきますの掛け声で夕飯をとり始める。

…ふと、二階席に目を向けると、ハヤシさんとシノハラさんがほっとした表情でこちらを見ていた。軽く会釈をするとシノハラさんたちも会釈を返してくれた。そして、そのまま自分たちの席へ戻っていった。

おれたち、少しずつ前に進めてるのかな…?

 

 

──────          ──────

 

 

「…というところかな?三日間だけじゃ五層らへんまでしか情報集められなかったよ。それ以降は噂程度って感じだったなー。そもそも、サイリン鉱山で五層以降までいったことのある義勇兵がいなくてさ。あ、アトリ、今日はわざわざごめんね。ありがとう」

「いや、大丈夫だ」

 

今日はサイリン鉱山の情報を共有するために狩りが終わったあと、会議みたいなのを開くことになった。アトリは酒場は苦手らしいので宿舎で夕飯を食べながら話すことになった。

 

「俺の師匠は五層以降にいったことあるらしいから聞いてみたんだが、まだ早いといって教えてもらえなかったな」

「そっかー。じゃあ、攻略するにしても、とりあえずは五層までになるかな?他のみんなはなにか情報あった?」

「俺のとこもチハルと同じようなもんだぜ。各層の特徴も知らない義勇兵も多いのな。サイリン鉱山を少し攻略したら、すぐデッドヘッドまでいくとこばかりみたいだな」

「カナもダメだったー。修師(マスター)も情報は自分たちで集めるもんだってあんまり教えてくれなかったし。オススメしたんだから最後まで責任持ってくれればいいのにねー」

「私はサイリン()()だし、鋼材店のヨハネスさんがなんか知ってるかな?って思って聞きにいってみたけど、五層以降では貴重な鉱石の鉱脈があるっていうことしか聞けなかったな。コボルドのこととかはほとんど知らないみたいだった。今は天竜山脈での採掘が中心らしいからあんまり詳しい人いないかもともいってたよ。知っててもヨシゾウさんくらいって」

 

テルの師匠に聞くしかなさそうだなー。でも、まだ早いっていうなら絶対教えてもらえなさそうだな。とりあえずはやっぱり五層まで…?

 

「アトリはなにか知ってる?」

「オルタナの中では、サイリン鉱山はコボルドに乗っ取られた敵地という認識しかないな。詳しいことを知っていても職人街の人間かと思っていたが、それも無理だったようだな」

「うーん、今は手詰まりって感じかなー」

 

あと宛てがあるとしたらブリちゃんからの情報ぐらいかなー?まだ見習い義勇兵だし、教えてくれないか。

 

「そうだな。でも、とりあえず今は五層まで情報があれば十分なんじゃねぇか?」

「それもそうかな。まだいくと決まった訳じゃないし。今日はそれを決めるための会議でもあるんだけどね。で、調べてみてどう思う?僕たちでもいけそうかな?」

「私は大丈夫だと思う。この三日間で新しいスキルにもだいぶ慣れたし。情報もあるし問題はないかなって」

「カナもいけると思う!カナたちだいぶ強くなったし、ゴブリンだけじゃ物足りないかなー」

「俺も同じ意見だ。色々な敵と戦ってみたい」

「まあ、いけんじゃねぇの?冷静に考えてもその実力はあると思う。でも、デッドスポットは見つけたら間違いなく逃げないとヤバいな。傷つけば傷つくほど強くななるとか、ほんとにヤバい噂しか聞かない」

「うん、それは僕も聞いた。デッドスポットには絶対手を出しちゃいけないと思う」

「あとは、今買えるだけでもいいから装備を少しは新調すべきじゃねぇか?団章を急いで買うつもりないなら貯めといても仕方ないしな」

「あ、私、コウタに賛成。職人街いったときに良さげな杖も見つけてきたから買いたいなぁって思ってたし」

 

知らない狩り場にいくならやっぱり、気休めでも装備の新調をしといた方が安心だよね…。団章はサイリン鉱山で稼いでからでも遅くないか。五層まで到達する頃には十分貯まってるだろうし。

 

「カナは特に欲しい装備ないなー。メイスはこれで十分だし、神官服も綺麗なままだしなー。よかったらみんなに寄付するよー!」

「寄付するならアトリとかテルにしてあげて。やっぱり前衛はお金かかると思うから」

「いいのか?」

「もちろん!なんか欲しいものあったらいってね、アトリ!テルも大歓迎だからね?」

「ああ、すごく助かる」

「じゃあ、明日は狩りを早めに切り上げて、みんなで職人街まで装備を見にいこうか。そして明後日からはサイリン鉱山へ出陣だ!」

「賛成ー!」

 

みんなも異論はないようだ。ここで感じるのもおかしい気がするけど、だんだんと前に進んでいるのがわかる。なんだろう?この高揚感。冒険ってこういうものなのかな?

 

「ちょっと早いけど、あれ、やっとこうか」

 

みんなの手が無言で重ねられていく。もちろん、アトリの手もだ。

 

「みんな、気合い入れていくよっ!」

「「「「「「……おーっ!!」」」」」」

 

六人の声が拳が掲げられた夕暮れの空へ消えていく。気付けば、東の空からは赤い月が顔を出している。

あの赤い月にももうだいぶ慣れてきたな。でも、僕たちはまだまだ見習いのままだし、やることはたくさんだ。明日からも頑張らないと!

 

 

~ 第一章 オルタナ近郊攻略編 完 ~




読んでいただきありがとうございます。

十六話にして第一章が完結となりました。打ち切りエンドっぽいですがちゃんと続きますので、安心して下さい。
この章はオリジナルパーティーの他にもメリイに焦点を当てたものとなりました。正直なところ、原作やアニメのときにはメリイのことがあんまり好きではなかったのですが、この小説を書いててメリイの気持ちを色々と想像していたらいつの間にか好きになっていました。
読者の方にもそんな気持ちになっていただけたら筆者冥利に尽きます。もともと好きならもっと好きになって下さい。

オリジナルキャラクター紹介第五弾!

☆カナヒ
性別 女
身長 一六一・七
外見 金髪碧眼。肌の色は健康的な小麦色。地黒ではない。髪は高い位置で結んだサイドテール。癖はほとんどなし。降ろすとだいたい肩甲骨ぐらいまでの長さ。目が大きくて、歯並びがいい。顔の印象としては爽やかなタイプ。無乳。つるぺた。まな板。絶壁。嘆きの平原。体も全体的に引き締まっていて足が長い。細い割りには腰はしっかりしていて安産体型。
性格 一言でいうと天真爛漫。人の機敏には意外と敏感。ただ感覚がずれていることもあるので、ときどき全く気づかない。割りと一途で優しい。気を使うのは案外得意。
その他 寝起きが悪い。人のぬくもりが好きで眠いと自制が効かなくなって抱きつく。可愛いものが好き。お酒はかなり強い。酒豪。戦い方は理論とかではなく本能やセンスで動く。力や知恵は及ばないがセンス的なところではレンジ以上。

それではまた次回で(* ̄∇ ̄)ノ
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