今回でやっとハルヒロたち、原作キャラクターが登場します。最後の方ですが。
では、本文です!
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ひよむーとやらに案内されてきたが、このレッドムーンとかいうとこは本当に事務所なのか?あのカウンターといい、どう見ても飲み屋だ。まあ、お世辞にも綺麗とはいえないし、俺だったらこんな店居着きたくはない。
「じゃあ、ブリちゃんあとはよろしくねー!!それではひよむー、ドロンでござる!!」
ひよむーはバタンと扉から出ていった。全くドロンじゃないな。
ひよむーがブリちゃんと呼んだ男…男としておこう。は、明らかに化粧をしている。髪の色もピンクだ。そんななりの野郎が、舐めるような目でこちらを眺めてくる。悪寒がする。
「あら、いらっしゃい、子猫ちゃん達。歓迎するわ」
声が低いのに口調が女々しい。耳にまとわりつくような感じでやはり、悪寒がする。
「アタシはブリトニー。このオルタナ辺境軍義勇兵団レッドムーン事務所の所長兼ホストよ」
ホストか。だから飲み屋に見えるのか。…ますますこんな店には居着きたくなくなった。もはや、ただだろうと来ない。
「所長って呼んでもいいけど、ブリちゃんでもオッケーよ。ただし、その場合は、親愛の情をたっぷり込めて呼ぶよの?いい?」
そろそろここを出たくなってきた。そんなことより早く辺境軍だの、義勇兵団だのの物騒な言葉の説明をして欲しい。それ次第で今後の振る舞いが決まる。他のやつらもみんな様子を伺っているようだ。そりゃ、積極的に話しかけたくはないだろう。
「今回は五人なのね。…まあ、悪くなさそうね。とりあえず、説明を始めるわね。簡単にいうとアタシはあなたたちをスカウトしたいの」
スカウト…?ということは義勇兵になれということか?
「あなたたちには私のオファーを受けるか断るか選ぶ権利はあるわ」
「つまり、僕たちに義勇兵になるかどうか選べってこと?」
前髪の男、チハルといったか。がオカマ野郎に問いかけた。よくそんなことができるものだ。
「ええ、そうよ。義勇兵になってくれたらそれなりの特典が付くわ。といっても最初は見習いから初めてもらうけどね」
「…ならなかったらどうなるんですか?」
シズクと名乗った女性が恐る恐る口に出した。それは俺も気になっていた。義勇兵などという危なっかしい職業はできれば避けたい。
「身分もなんにもないあなたたちに楽な下働きなんてあると思わないことね。いいとこ奴隷になるくらいね。まあ、野垂れ死ぬのが普通だと思いなさい」
そんな次元の話なのか?生きるか死ぬかの選択なのか?確かにここに来る途中にみすぼらしい姿の者を何度か見かけた。質問した本人はそんな現実を突きつけられ恐怖に怯えていた。まあ、無理もないだろう。俺だって怖い。
「じゃあ、義勇兵って具体的になにすんだ?」
「決まってるじゃない、戦うのよ。この辺りにはね、人類と敵対する種族やモンスターみたいなのがいるの。それを駆逐して制圧するのが義勇兵よ」
衝撃の事実だ。周りの空気が一気に固まった。質問したコウタの唾を飲む音がホールに響く。戦う?モンスター?なんだ、それは?こんな現実どうかしている。
「義勇兵になったって中途半端なことしてたら、どの道、死ぬわ。ここはそんな世界よ」
異常だ。尋常じゃない。結局は死ぬのか?おかしい。理不尽過ぎる。だが、死にたくないならやるしかないのか?
「じゃあ、そろそろ選んでもらうわね。義勇兵になるって子はこの団章と革袋を持っていきなさい。十シルバーが入ってるわよ。これがあれば当分は暮らせるはずだわ」
オカマ野郎がカウンターの奥からタグが二枚付いた紐と、革袋を五つずつ取り出した。どうする?いくか?いかないと野垂れ死ぬ、いってもいつか死ぬ。ならば、いった方がマシだ。俺は黙って歩き出し袋と団章を手に取った。手が震えている。止まらない。
「あら、あなた意外と勇気あるのね。外見もタイプだし、アタシのペットにでもならないかしら?不自由はさせないわよ?」
「いや、遠慮する」
絶対に嫌だ。断固拒否だ。別の意味で体が震え出した。
「つれないのねえ。でも、そういうのも好みよ」
ウインクされた。悪寒がする。身の毛がよだつ。だが、やるべきことを聞かねば。
「まず、なにから始めればいい?」
「己が才覚、独自の判断で情報を収集し、敵を叩く。これが義勇兵の流儀……といいたいところだけど、今回はあなたに免じて少しヒントをあげようかしら?それに今回は騒ぐやつもいなくてアタシも楽できた訳だし」
今回?ということは前回、前々回があるのか?
「…なにか、欲しい情報はあるかしら?ひとつだけなら質問に答えてあげるわ。特別よ?」
普通なら全く教えてもらえなかったのか?それはあまりに不親切過ぎるだろう。今回ばかりはこいつがオカマ野郎で助かった。
とにかく、なにがいい?チャンスを無駄にできない。金の稼ぎ方?いや、金はもらえた。焦って聞くことじゃない。じゃあ、戦い方か?この世界では戦うことは必要不可欠のようだ。だが、それはつまり知っているやつは他にもたくさんいるということだ。それに今すぐじゃなくていい。あとは、衣食住くらいか?服は間に合っているし、来る途中に露店はいくつもあった。金があれば食いつなげるだろう。じゃあ、宿か?今はもう夜だ。宿の確保ができないのはまずい。こんな世界で野宿するにもどんな危険があるかわからない。うん、宿について聞こう。
「…宿は?住むところについて教えて欲しい」
「ふぅん、賢い選択ね。いいわ、教えてあげる。西町の近くに義勇兵団の宿舎があるわ。そこならその団章があれば格安で泊まれるわ。今はあなたたちの先輩パーティーがひとつ泊まってるくらいだから、入れる余裕はあるはずよ。ただし、環境は最悪よ」
先輩パーティーか。情報をもらえるだろうか。とりあえず、そこへいこう。今は環境を気にしている場合ではない。オカマ野郎に背を向けて、扉の方を目指す。
「わかった」
「あら、もういっちゃうの?…いい忘れてたけど、二十シルバー貯まったらまたここへ来なさい。正式な団章と交換できるわ」
特典がどうとかいってたな。正直、またここへは来たくない。とにかく、今やらなくてはいけないのは情報収集だ。
「テル、ちょっと待って!そこ、僕も着いていっていいかな?」
チハルか。彼ならそこそこ頭も切れそうだし、一人でいるよりは頭数が多い方がなにかと都合がいいだろう。
「ああ、大丈夫だ」
「ありがとう」
そういうとチハルも団章と革袋を取ってきた。
「じゃあ、カナも」「俺も、頼む」
金髪のカナヒとヘアバンドのコウタも団章と革袋を持って立っていた。
「構わない」
やはり、人が多いに越したことはない。決して、善意でいっているのではない。彼らには悪いがいざというときには利用させてもらうことにはなるかもしれない。
「ほら、お前もこいよ。シズクだっけ?」
コウタがどうしたらいいか迷っていたシズクに声をかけた。結局、全員でいくことになるようだ。シズクも団章と革袋を取ってきた。
「おめでとう。あなたたちは今日から見習い義勇兵よ」
そんなオカマ野郎の声を背に外へ出る。そこには赤い月があった。
○
月が赤い。これって…おかしいよね?ここ、どこ?もういやだなぁ。泣きたい。言われるがままに団章とか貰って来ちゃったけど、ほんとによかったのかなぁ。戦わなきゃいけない…んだよね。怖いよ。私にそんなことできるの?無理、絶対。
「ねー、西町ってどっち?」
カナちゃんだ。こんな状況なのに明るく振る舞っててすごいなぁ。可愛いし。金髪も似合うなぁ。私、地味だからあんなの憧れちゃう。
「太陽が沈むのが西だから、あっちじゃないかな?確か、さっきあっちに夕日が見えた」
「ああ、間違いない。俺も見た」
チハルくんとテルくん。すごい行動力、どうしてあんなにすぐ行動できるんだろう。私は着いていくしかできない。ううん、私、声かけて貰ってなかったらそれもできてなかったかも。
「とにかく、いってみようぜ。わかんなくなったら誰かに聞けばいいだろ」
コウタくん。二回も私に声かけてくれた。態度とか言葉使いはちょっと刺々してるけど、優しい人なのかな?すごく助かった。
今回は声をかけられる前に黙ってみんなに着いていく。でも、何で太陽が沈むのが西なんだっけ?うーん、わかんない。ただ、ずっと前からそうだった気がする。
「シズクちゃん、大丈夫?」
前にいたはずのカナちゃんが私の隣を歩いてた。私のペースに合わせてくれたみたい。ちょっとした優しさに胸が熱くなる。それだけ不安なのかな。
「うん、心配してくれてありがとう。少し怖いけど、大丈夫」
あんまり迷惑かけられないから、少し強がってしまった。ほんとはけっこう怖い。
「そー?泣きたいときは泣いていいんだよ?そのときはカナお姉さんが胸を貸してあげるからねっ」
逆に泣いちゃいそう。見ず知らずの人によくこんなに優しくできるなぁ。少し甘えたくなっちゃった。
「…じゃあ、ちょっとの間でいいから、手、繋いで貰ってもいいかな…?」
「…え?うん、いいよっ。ほら」
カナちゃんは手を差し出してくれた。恐る恐る私は手を重ねる。暖かい。やっぱり、人の温もりはいいなぁ。安心する。
「ありがとう。いやじゃなかった?」
「そんなことないよ。ちょっとびっくりしたけど、なんかホッとするねっ」
笑顔でそういってくれた。つい、私の顔も綻んでしまう。なんか私にもできることないかな?私だけなんにもできてないよね。
「そこそこ歩いてきたけど、それっぽい建物見つからないね。誰かに声かけてみる?」
チハルくんが歩くのを止めて振り返った。確かにこの辺りは露店が多い。私がやらなきゃ。そろそろみんなの役に立ちたい。辺りを見回すと、けっこう男の人が多い。あ、女の人がいた。カナちゃんの手を少し強く握る。
「あ、あの…。すみません!」
少し声が裏返ってしまった。恥ずかしい。女の人が振り返ってくれた。けっこう派手で露出度の高い服装をしている。ちょっと威圧感がある。声かける人間違えたかな…?
「あたしになにか用?…見たとこ、見習い義勇兵成り立てって感じかしら?」
「え?あ、はい、そうです。それで、あの、義勇兵団の宿舎の場所を教えて欲しくて…」
「ええと、確か、この先まっすぐいって橋を渡ったとこにあるわ」
思ってたよりすんなり答えてくれた。緊張して損したなぁ。あ、お礼いわなきゃ。
「ありがとうございました」
「じゃあ、あたしはいくわね」
女の人はさっさと歩いていってしまった。ほんと、助かったぁ。
「そのまままっすぐで合ってるって。あと、橋があるっていってたよー」
カナちゃんがみんなにいってくれた。正直、聞くので疲れちゃってたから助かった。
「オッケー。ありがとう、シズクちゃん」
私、やっと役に立てたかな?だといいけど。
「シズクちゃん、けっこう緊張してたでしょー?手繋いでたからわかっちゃった」
バレてた。なんか、恥ずかしい。みんなに着いて歩き出す。
「えへへ、バレてた?ずっと、手握ったままでごめんね。もう大丈夫だから離す?」
「ううん、まだこのままがいいかなー?…なんて」
「じゃあ、もうしばらくはこのままでいようか。ありがと」
今度はちゃんと笑顔でお礼が言えたと思う。だいぶ不安じゃなくなってきたし。あー、赤い月も綺麗だなぁ。
☆
すごい!可愛いよ、シズクちゃん!笑顔が素敵。いやー、これ男の子だったらイチコロだね。うん、間違いない。カナでさえキュンとしちゃったからね。あれは反則だよ。手も柔らかくてフニフニしてるし…ってカナはおっさんか!
それにしてもなんかお腹空いてきたなー。さっきからいい匂いいっぱいしてくるし。この暗さだともう7時くらいじゃない?ご飯時だよね?なんか食べたいなー。あ、あれ美味しそう!あ、あれも!ヨダレ出てないよね?うん、大丈夫。あー、あのお肉食べたい!うーん、我慢できない!
「ねーねー、みんな、お腹空かない?カナ、あのお肉食べたいんだけど!」
前にいた男の子たちがカナの指したとこを向いた。ほら、食い付け!男の子ならお肉好きでしょっ?!
「あー、確かに腹空いてきたわー。食ってかね?」
ナイス、コウタ!さすが、ヘアバンドつけてるだけある!関係ないか。
「…うん、そうだね。お腹も空いたし、一シルバーの価値がどのくらいかも知っておきたいしね。テルはどう?」
「ああ、賛成だ」
よし、作戦成功っ。お肉で釣れた。じゅるり。
「じゃ、いこいこ!おじさん、お肉下さいっ」
一番乗りだー。うーん、めっちゃいい匂い。
「お、毎度あり。五人分でいいかい?」
おじさん気がきくねー。あ、シズクちゃんは食べるのかな?
「シズクちゃんもいる?」
「うん、食べる」
「じゃあ、五人分お願いします!」
「おう。五人分で二十カパーだ」
かぱー?かぱーってなに?お金?カナ、シルバーしか持ってないよ?
「あの、一シルバーでも大丈夫ですか?」
シズクちゃん、助かる。やっぱりできる子だ!
「お釣はあるが、八十カパーとなるとそこそこさかばるぞ?大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。…お願いします」
シズクちゃんは自分の革袋から銀貨を一枚取り出した。あ、手が離れちゃった。あったかかったのになー。
「ほい、先、お釣だ。ちょっと袋貸してくれな」
シズクちゃんが手渡した革袋におじさんが銅貨…なのかな?をたくさん入れていく。あれがカパーなんだ。袋がパンパンだ。今度お金渡さなきゃ。
「きっちり八十カパー入れといたぜ。不安なら確認していきな」
おじさんがシズクちゃんに袋を返す。大丈夫かな?ちょっと重そう。
「…大丈夫です」
あー、さすがに八十カパーを数えるのは大変だよね。あれだけパンパンだし大丈夫だよね、きっと。
「じゃあ、商品だ。ほら、受けとれ」
おじさんが目の前に串焼きを差し出してきた。美味しそう。早く食べたい。
「ありがとう!じゃあ、さっそくいただきますっ」
「熱いから気を付けろよー」
そんなの関係なしにかぶりつく。うーん、熱い。でも食べれないほどじゃないかな。口の中に肉汁と香ばしい匂いが広がる。すごいジューシー!気が付くと、みんなもお肉を受け取ってる。
「美味しいねー、これ」
「うん、そうだね。あ、おじさん、両替商って知ってる?」
「ああ、知ってるが、この時間だともう閉まってるぞ」
りょーがえしょー?あ、両替商か。そっか、シルバーじゃシズクちゃんにお金返せないもんね。さすが、チハルよく気が付くね。
「じゃあ、今日は無理か…。ごめんね、シズクちゃん。お金払わせちゃって。今度ちゃんと払うから」
「ううん、大丈夫。仕方ないよ」
「俺もちゃんと払うから」
「もちろん、カナも」
テルくんは頷いただけだった。あんまり喋らない人だなー。
「じゃあ、歩きながら食べようか」
「ふん!」
お肉を頬張ったまま返事をしたら変な感じになっちゃった。みんなもお肉を頬張ったままチハルに続く。やっぱりみんなもお腹空いてたんじゃん!
◆
この肉、けっこううまい。なんの肉だ?グルメじゃないから全然わからない。まあ、食えればいいか。
「色々、収穫あったね。食べ物ももちろんだけど、一シルバーが百カパーってのもわかったし、両替商もあるみたい」
「そうだな」
確かに。この串焼き一本で四カパーだから多めに見積もっても一食八カパーだ。十シルバーもあればかなり暮らせそうだな。これでけっこう安心できた。飯にありつけたのもけっこうでかい。腹が満たされれば心も少しは楽になる。
「昼間の方が行動しやすいだろうし、今日はとにかく宿舎を目指そう」
こうしてみると、やっぱりチハルは俺とそっくりだ。見てるとなんだか不思議な気分になる。
「お腹いっぱいになったし、早く宿舎で休みたいなー」
カナはもう串焼きを完食していた。あいつ早すぎるだろ。
「うん、私もなんだか疲れちゃった」
シズクはまだ三分の一くらいしか食べていない。こっちはちょっと遅い。まあ、普通女子ならそんなもんか。シズクの表情はだいぶ和らいでいる。さっきカナと手繋いだりしてたしな。雰囲気は全体的に明るくなっている。さっきより全然居心地がいい。会話も増えてきた。
「ん?それっぽい橋が見えてきたぞ」
「あ、あれかな?」
思ってたより小さいが橋は橋だ。渡ってからしばらく歩くと〈義勇兵団宿舎〉という看板が見えてきた。けっこう汚い。というか、ボロい。まあ、ブリちゃんもそういってたよな。ああ、串焼きうまかった。ごちそうさまでした。
「中、入ってみようか」
全員が頷いた。しばらくいくと、中庭のようなところが見える。人影だ。二つある。ブリちゃんがいってた先輩パーティーか?内容は聞き取れないがなにか話している。
「…うん?マナト、あれ」
一人の男がこちらに気がついたらしい。なんというか少し気の抜けた声だ。焚き火の音がパチパチとなっている。温かい。
「すいません、義勇兵の方たちですか?」
チハルが彼らの前で立ち止まる。こういうときいつもこいつが話しかけている気がする。意外とすごいよな、そういうの。
「うん、そうだよ。…もしかして君たち今日義勇兵になったばかり?」
「はい、そうです」
マナトと呼ばれた男は物腰柔らかそうな雰囲気で話しやすい感じだ。色々、聞けることに期待してみる。
「そっか、色々大変だったよね。よかったらその辺座って。俺はマナト。で、こっちがハルヒロ。まだまだ俺らも見習いなんだけど、それでもよかったら力になるよ」
「ありがとうございます、是非お願いします」
よかった。優しい先輩に巡り会えたらしい。みんな、緊張がゆるんだのかそれぞれベンチに腰掛ける。俺もなんだか安心する。
「多分まだ、なにを質問していいかもわからないよね?とりあえず、義勇兵の基本から説明しようと思うんだけど、いいかな?」
「はい、お願いします」
「うん、わかった。まずはパーティーを組むのが基本だね。だいたい三人から六人らしい。君たちの同期は五人だけ?」
「同期…。はい、そうだと思います」
同期とはこのグリムガルに来た時期が同じ人たちのことなのか?まあ、多分そうだろ。だからチハルも肯定したんだろう。
「じゃあ、その五人で組むのがおすすめかな。義勇兵もいい人ばかりじゃない」
「クズオカのやつか…」
「ああ、うちのパーティーにも被害者がいてね。あ、もちろん俺たちのことが信用できないならそれでいいよ。こんな世界だ、信用しろって方が難しい」
確かに、こんなに殺伐としていたら悪いやつの一人や二人、そこら辺にいるだろう。ただ、マナトさんのパーティーは信頼しても良さそうだ。なんとなくだが、そう思える。
「いえ、マナトさんたちは信用できると思います」
「そういってくれると嬉しいよ」
「大丈夫だ、マナトは嘘付くようなやつじゃない」
「はは、やめてくれよ、ハルヒロ」
ハルヒロさんもマナトさんのことを信頼しているようだ。信じても大丈夫そうだ。
「じゃ、続けるよ。それでパーティーを組んだらそれぞれ役割を決めて、ギルドに入って七日間修行する」
「ギルド?修行?」
思わず口を挟んでしまった。修行?七日間も?だけど、モンスターと戦うのか。それなら短いのかもしれない。
「うん、戦うためのスキルを色々教えてくれる。最初に義勇兵がお世話になるのは基本的に七種類あるかな?重要なのはこれに八シルバーもかかること」
八シルバーも?!ということは残るのは二シルバー。それはヤバイ。死活問題だ。
「…その後ってどうするんですか?」
「自分たちで稼ぐしかない。具体的には狩り。いや、どっちかというと…追い剥ぎっていった方が正しいかもしれない」
追い剥ぎ?それは物騒すぎるだろ。やっぱりこの世界はおかしい。
「もちろん、相手は人間じゃないよ。ゴブリンとかの敵対種族だ。恐ろしいかもしれないけど、やるしかない。
「生きるため…」
そうだ、生きるため。生きるために義勇兵になる道を選んだ。これが現実だ。戦うということだ。だから、仕方ない…のか?
「実感は湧かないと思う。けど、俺たちもそれくらい必死だったんだ。…今日はこのくらいにしておこう。考える時間も必要だろうし、…彼女も疲れてるみたいだ」
マナトさんが苦笑いして見つめる先には口元を手で押さえているカナがいた。こいつ、余裕だな。どういう神経してんだ、一体。カナがえへへとかいいながら頭をかく。なんか、腹が立つ。俺が考えすぎなのか?いや、それはない。これが普通なはずだ。
「あはは、そうですね。今日はありがとうございました」
「かまわないよ。俺らは明日、昼間は稼ぎにいってるから、夜またここで話そうよ。自己紹介はそのとき改めて。うちのパーティーメンバーも紹介したいし」
「本当に助かります。よろしくお願いします」
こんな先輩に巡り会えた俺らはまだ幸せな部類なのかもしれない。感謝しないといけないな。
「俺からもお礼言わせて下さい。ありがとうございました」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう、助かった。本当に」
シズクとテルが俺に続いた。カナは伸びをしている。ほんとにあいつは能天気すぎる。
「いいよいいよ。俺がやりたくてやってるんだ。…明日はヨロズ預かり商会にいくといいんじゃないかな?地図は朝ここに置いておくから、色々オルタナを回ってみるといいよ。あ、ハルヒロ?」
「…うん?」
「彼らに宿の中を軽く案内してあげてくれるかな?」
「いいけど、マナトは?」
「俺はちょっと今日もシェリーの酒場に。あと、ここの管理人にも話つけないとね」
ほんと至れり尽くせりだ。マナトさんがいい人過ぎて、もはや怖い。俺が女子なら間違いなく惚れてる。
「うん、わかった。じゃあ、気をつけて」
「じゃあ、あとはよろしく。みんなもおやすみ」
そういってマナトさんは歩いていった。くそ、挨拶返すの忘れてしまった。おやすみなさい。
「じゃあ、みんな、こっち来てもらえる?」
「はい」
ハルヒロさんとチハルが立ち上がった。俺たちもそれに続く。
「あ、そっちにあるのが沐浴部屋ね、近くにトイレもある。で、ちょっとこっちの奥いくとキッチンがある。全部共用だから、お風呂は男女で交代してはいってる」
ハルヒロさんもけっこう優しい人だ。でも、少し緊張してるみたいだ。まあ、初対面の五人相手なら無理もないよな。住居スペースに移動する。
「部屋は四人部屋か六人部屋があるけど、広さは同じ。鍵はない。…あと、料金は一部屋十カパー」
それだと男女別々で二部屋借りる感じか。一人当たり一日四カパーか…。かなり安い方か。
「おれたちが使ってる部屋以外ならどこ使っても大丈夫だと思う。多分。男子はそこ、女子はちょっと奥のを使ってる。案内するとこはこんなもんかな」
「じゃあ、男子はそこ使わせてもらっても大丈夫ですか?」
チハルがハルヒロさんが指した部屋の隣を指差す。確かに隣の方が安心するよな。
「うん、俺は構わないよ」
「じゃあ、それでいこう。大丈夫だよね?」
俺は構わないので頷いた。テルも遅れて頷く。
「じゃあ、私たちも奥の方にしますね。あと、いまからお風呂使っても大丈夫ですか?」
シズクがハルヒロさんに尋ねる。女子は風呂入りたいよな。
「うちはもうみんな入ったから大丈夫かな」
「じゃあ、部屋いってからいきますね。今日はありがとうございました」
「うん。なんかあったらいってね。マナトには及ばないけど、おれで良ければ力になるから。じゃあ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
カナは相変わらず眠そうだ。もうちょい感謝なりなんなりしろよ。
「お風呂終わったら教えてね、男子も後で入るから」
「うん、わかった」
シズクはカナを連れていく。正直、俺は風呂より寝たい。かなり疲れた。
「じゃあ、僕らも部屋いきますね。ありがとうございました」
「うん、おやすみ」
ハルヒロさんは片手をあげて見送ってくれた。ハルヒロさんもこのあとなにかするのか?まあ、それは俺の知るところではない。
部屋に入ると思わず声をあげたくなった。ベッドが藁だ。ブリちゃんがいってたように最悪の環境だ。でも、我慢するしかない。…それにしてもこれからどうなるんだろうか。寝れんのかな、これ。
読んでいただきありがとうございました!
原作キャラクターの出番がまだまだ少なくてごめんなさい。次回はハルヒロのパーティー全員出ます!
今回女の子同士で手を繋ぐシーンがあったとおもいますが、警告タグにガールズラブがないように百合展開はありません。女の子は友達同士でも手を繋いだり抱き合ったりするものです(断言)
ガールズラブが苦手な方は安心して下さい、好きな方はごめんなさい。
ハルヒロたちがいたところはアニメでの二話の冒頭のところを想定してます。でも、時系列は原作でのダムロー出陣前日のふて寝している日となっているので注意して下さい。
誤字脱字などその他指摘する箇所があったら是非お願いします。
ではまた次回(* ̄∇ ̄)ノ