えーと、先日タイトルを変更しました。理由としては前のが地味だったのと物語のテーマというか核心を匂わすようなタイトルにしたかったからです。
二・五話よかったです。特にメリイが。
では本文です。
☆
市場から慌てて戻ってくると、食事の準備はもう始まっていた。最初はうちのパーティーの男の子三人でやろうとしたみたいだけど、見ていられなくてモグゾーさんが手を貸してくれてるって状況らしい。
うちの男の子は料理とかできなさそうだよねー。そーいえば、カナは料理できるのかな?全然覚えてないや。でも、シズクはなんかできそうだな。
「モグゾーの料理はなあ、めっちゃ美味しいんよお」
「この前の朝いただいたスープもモグゾーさんが作ったんですか?」
「…たぶん、そうだと思う。いつも早起きして作ってくれるから」
「あれ、美味しかったなぁ。ね?カナちゃん」
「そーだね!もう一回食べたいなー」
今回はモグゾーさんはあくまでサポートみたいだから、そこまでの味にはならなさそう。キッチンは男の子たちでもういっぱいで邪魔になりそうだし、今回はカナたちの出番はないかな。それに、ハルヒロさんとマナトさんも手伝ってくれてるみたい。男の料理ってなんだか楽しみ。
「ランタさんは手伝わなくていいんですか?」
「オレか?何でオレが手伝わなきゃいけねぇーんだ。今日は当番じゃねぇし。それにお前らがやるっていったんだろうが」
「ランタはなあ、男の料理は豪快さが命だあー!とかゆうて野菜とか切らんでそのまま突っ込むからなあ。不味くて食材がかわいそうやねん」
「ああん?オレはな、皮まで使って全部残さず食べてやろうってんだよ。それに、あれだぞ、野菜の栄養は皮にあるんだぞ。狩人ならもっと食材を大切にしろや」
「おー、なるほど!ランタさんすごい!」
全部食べてもらえたら野菜も嬉しいよね。栄養もあるし一石二鳥だ!
「お、おう。カナだっけ?お前、わかってんじゃねぇか。やっぱりわかるやつにはわかるんだな、オレの…あーなんだ?…カリスマ性?ってやつがよ」
「シズクちゃん、ランタ誉めたらあかんよ。調子にのるからなあ」
「…うん、ランタくんは無視が一番だよ」
ふぇっ?!シホルさんって意外と毒舌?ビックリした。
「は?無視ってなんだよ。シホル、隠れ巨乳のくせに生意気だぞ。おいこら、揉むぞ、揉みしだくぞ」
「最低」
ランタさんが指をわしゃわしゃと動かしている。
…わしゃわしゃと言ったら、ランタさん髪の毛もわしゃわしゃしてる。触ってみたい。えい、触っちゃお。
うおぉ、柔らかくてもふもふだ。もふもふ、もふもふ。
「カ、カナちゃん?!なにしてるの?!」
「この天パがわしゃわしゃしてて、触ってみたくなったから触ってみた!」
「はっ?!ちょっ、やめろ!触ってみたじゃねぇよ!」
ユメさんもシホルさんもビックリしてる?ランタさんも慌ててるし。
「ランタさんの天パ、もじゃもじゃで可愛いし、もふもふで気持ちいいよ!」
「…あ、ありがとう?い、いや、何でオレがお礼いってんだよ。おかしいだろ!」
「あのランタくんが圧倒されてる…!」
ランタさんが紅くなって叫んでる。けっこう可愛い。
「カナちゃんは、ランタ対策にええかもなあ」
「んだよ、これ。全く、調子狂うぜ」
「…今から持っていくので、座って待ってて下さい」
お、やった!さっきからいい匂いしてたし、楽しみだなー。なにがくるかな…?きたきた!
「えっと、今日はお礼の意味を込めて、鶏肉入りスープとサラダを作りました。一応、味見はしたので大丈夫だと思います…」
チハルがユメさんとシホルさんの前にスープを並べていく。サラダを乗せた大皿をテルくんが運んできた。
「ええ匂いやんなあ」
「…うん、普通に美味しそうだね」
男の子たちがどんどん配膳していく。手伝ってくれてたモグゾーさんたちも席についた。
ユメさんとチハルが狩人の儀式を済ませる。
「じゃあ、改めてというか…。なんかこんなに人いると緊張しますね」
「いいからさっさと済ませろ!」
「あ、そうですね。えっと、義勇兵になって右も左もわからない僕たちを助けてくれてありがとうございました。かなりみすぼらしいものですが、今日はそのお礼です」
チハルが頭を下げたので、みんなもつられて頭を下げる。けっこうバラバラだったけどね。
「俺たち、これからも仲良くしていけたらいいね。じゃあ、みんな、いただこうか!」
「いただきますっ!」
…熱っ!でも、火傷はしなかった、大丈夫。うーん、けっこう美味しい。この前食べたモグゾーさんのスープには負けるけど、普通に美味しい!
これは自分たちだけで料理するときも期待できるね!
「ごちそうさま!」
「相変わらず、はええなー」
「いや、早すぎんだろぉ!」
早いっていわれてもこれがカナの普通だからなー。あ、ユメさんもけっこう早い。でも、咳き込んでる、大丈夫かな?
「ユメさん、大丈夫?」
「ありがとなあ、ユメ、いっつも食べてるとき慌ててしまうねん。直さなあかんなあ」
「カナは早く食べてもあんまりむせないなー」
「食べるのが上手いんと違う?」
「そーなのかなー?」
「…ふふっ。なんか二人の会話、面白いね」
シホルさんがユメさんの隣で微笑んでいる。ユメさんはちょっとムッとしてシホルさんの方を向く。
「シホル、なんか馬鹿にしてへんかあ?」
「そ、そんなことないよ。なんかふわっとしてていいなって思って」
「ならええんやけどなあ」
男の子たちも仲良く喋ってるみたいだし、今日はやってよかったなー。シズクのおかげだ。
「提案してくれてありがとね、シズク」
「え?私結局なんにもしてないし、お礼ならチハルとかに…」
「シズクが提案したからできたんだよ」
「ま、まあ、そっか。…ありがとう」
「あ、そうや。シズクちゃん、カナちゃん、ユメのこと呼ぶとき、呼び捨てで呼んでもらえんかなあ。なんか、ユメさんってくすぐったいやんかあ」
「もし、よかったらあたしも呼び捨てで…。あと敬語とかもいいよ」
「うん、わかった!ユメ、シホル、改めてよろしくねっ」
「呼び捨てはちょっとハードル高いので、私はちゃん付けでもいいですか…?」
「ユメちゃんかあ。うん、だいじょぶ。まだちょっぴりだけくすぐったいけどなあ」
「あたしもそれでいいよ」
「ありがとう、ユメちゃん、シホルちゃん。うーん、まだちょっと違和感が…」
なんか、今日一日、色々あってかなり充実した日になったなー。最後にユメとシホルと仲良くなれてよかったな。あと、ランタさんとも少し仲良くなれたかな?
この調子で明日からも頑張るぞー!
「ふわぁあ、眠い…」
あくび出ちゃった。
□
今日は義勇兵として活動を始めて実質、二日目だ。昨日と同じく森に来ている。やはり、歩きにくかった。今日も昨日と同じく拠点を構えてからゴブリンを探す作戦となっている。今はその拠点にいる。荷物は茂みの中に隠した。準備完了だ。
「今日は昨日みたいにならないよう、決めた通りに周囲警戒を忘れないでね」
「ああ、わかってるぜ。今回は見逃す気はない」
今回は俺は隊列の一番後ろだ。歩きながら後ろを警戒するのは思っていたより難しい。だが、今のところは問題なさそうだ。
コウタだけが少し先へ進み、物陰に隠れながら偵察。そして安全が確認できたら合図をする、という流れでゆっくり河原を上流へと登っていく。
昨日、襲われたばかりだ、慎重すぎるくらいがちょうどいい。
うん?コウタの合図が変わった。…敵か。数は…二体。
振り向いたチハルと視線を交わす。やれる。
「わかった。テル、いって」
ルミアリスの紋章が刻まれた三叉槍を右手に握りしめて、できる限り音を立てないように、コウタのところまで進む。
「敵はゴブリン二体、一体は兜と短剣、もう一体はダガーだ。今は湖みたいなとこで水を飲んでる。周りにほとんど障害物がないからちょっと奇襲は難しそうだ」
物陰から覗き込むとゴブリンの姿が見えた。短剣持ちの方が心なしか体が大きい。
「わかった。短剣の方を引き付ける。ダガーの方は頼んだ」
「オーケー。好きなタイミングでいけ。合わせる」
コウタが後衛に向かって準備完了の合図を送る。よし、落ち着け。この前も一体なら抑えられた。いける。
…走る。気付かれないうちになるべく接近する。…気付かれた!
…ヒュン
チハルの矢か?いや、石だ。コウタか。
「グギャァ!」
ダガー持ちに命中だ。ダガー持ちがコウタを目で追いながら武器を構え、短剣持ちと横並びになる。ダガー持ちの視線から察するにコウタは横に開きながら動いているようだ。
この距離なら…。短剣持ちに向けて槍を突き出す。
躱された。だが、これでダガー持ちと引き離すことができた。ダガー持ちもこちらに向き直る。
ヒュン
石だ。今度もダガー持ちに命中。ダガー持ちはコウタに向けて叫びながら駆けていく。うまく誘導してくれたようだ。これで集中できる。
カキンキュインカキン
短剣を狙って攻撃を仕掛ける。金属と金属がぶつかり合う音が響く。
この払い落としは矛先で敵の武器を間合いの外からはたくことが基本だ。ときには柄でもはたく、ときには矛先で引っ掻ける、ときには手首をひねって絡めとる。さまざまな技術を駆使して、敵に間合いに入られないようにする。武器を落とすのは二の次だ。
「グギギィ」
短剣持ちは間合いに入れず苛立っている。うまくいっている。後ろからはシズクの呪文が聞こえてきた。
…こっちもそろそろ仕掛けるか。相手が一人ならうまくいくはずだ。
ここで敢えて払い落としの勢いを弱める。きた、突っ込んでくる。短剣持ちは短剣を振り上げながら走っている。
ガイィン
槍を短く持ち替えてバックラーを押し出す。短剣持ちがバランスを崩した。
今だ!…槍を振り払う。…浅い。左肩を掠めただけだ。短剣持ちは敢えて後ろへ倒れ込むことで痛撃を避けたようだ。思ったより頭がいい。
槍を持ち直す。短剣持ちはこちらの間合いの外まで一度退避した。
ダガー持ちの方はどうだ?…どうやら順調のようだ。矢が一、二本刺さっているのが見えた。チハルの指示も聞こえてくる。
「…グギィ」
短剣持ちは様子を伺っているようだ。間合いはこっちが有利だ。攻めない手はない。
前進しながら突く、突く、突く。なるべく小さく速くだ。短剣持ちは避けるのではなく、短剣で弾く。強く弾かれないよう、細かく速く突く。短剣持ちはどんどん後退していく。
「テル、こっちはもうすぐ終わる!」
了解だ。声には出さずに心の中で返事をする。
短剣持ちが弾ききれずに三叉槍の穂先と穂先の間で受け止めた。
…今!手首をひねる。短剣が絡めとられるように短剣持ちの手から離れ、地面に落ちる。
うまくいった。だが、ここからだ。右足を踏み込み一気に槍を押し出すように突く。特にスキルという訳ではないが、けっこうな威力が出る。
ズブシュッ
短剣持ちの右肩を刺した。貫通はしていない。素早く引き抜く。けっこうな量の出血だ。短剣持ちが地面に膝をつく。
ザシュッ
いきなり飛び込んできた人影が短剣持ちの首元を掻き切った。短剣持ちはそのまま地面に倒れ、動かなくなった。どうやら終わったらしい。
振り返ってダガー持ちを確認すると、喉元を矢が貫通していた。だが、まだ苦しそうにもがいている。あれだと呼吸が出来ないのだろう。コウタが近づいて、同じようにダガーで首元を掻き切った。複雑な表情をしている。あれはつらいだろう。今のところとどめを刺しているのは全てコウタだ。
「テル、すごいね。僕たちがダガーの方やってる間に一人で倒しちゃいそうだったね」
「どうやら、一対一ならうまくやれそうだ。疲労もそこまでじゃない」
「みんな怪我もなかったし、カナの出番全くなしだねー」
「いいことだよ、カナちゃんの仕事がないのは。…ふぅ、前回の反省がうまくいったみたいだね」
「うんうん、そーだね!よかったー」
奇襲されなければこんなにうまくいくものか。なるほど、偵察は大事ということだな。
「まだまだ油断するなよ。どこにゴブリンいるかわかんねぇんだからな」
コウタは周りを警戒してくれていたようだ。俺もみんなも戦闘がうまくいって気が抜けていた。これはよくない。
「ごめん、コウタ。大丈夫そう?」
「ああ、今のところ増援はなさそうだ」
「ありがとう、そのまま警戒お願い。戦利品の回収は僕とカナちゃんでやろう」
「やっとお仕事だ!ゴブリン袋以外はどーするの?」
今回はゴブリンの持っていた武器も戦利品だ。だが、見たところかなり刃こぼれしているようだ。兜も何ヵ所も凹んでいる。これは、売れるのだろうか?
「とりあえず、全部回収してから一旦、拠点まで戻ろう。そこに置いておけば邪魔にはならないし。ついでにもうすぐお昼だし、交代でちょっと休憩しよう」
チハルがゴブリン袋や装備を拾いあげていく。けっこう嵩張りそうだ。
カナは額にルミアリスの六芒を示し、祈りを捧げてから戦利品を回収しているようだ。義勇兵は神官でも祈りを捧げない場合も多いと聞いていたが、カナはしっかりやるようだ。
聖騎士にも祈りを捧げる掟があるのだが、師匠に一切祈りのことについては学ばなかった。師匠は「祈る暇があるなら仲間を守るために己を磨け、掟などより命を重んじろ」といっていた。聖騎士や神官のギルドの祈りに関する掟は形骸化していてそこまで厳しいものではないので、ギルドを追放されたりすることはない。
「よし、回収は終わったね。じゃあ、戻ろうか」
チハルの一言で撤収が始まる。行きがけと同じように慎重に進みながら川を下り拠点を目指した。
◆
今日は昼休憩のあとも日が傾くまで狩りを続けたから、今はもうすっかり夜だ。今日の成果はゴブリン八体。チハルは目がいいのか、遠くにいるゴブリンもよく見つけてくれた。ここまでの成果が出たのはチハルが発見してくれたおかげだろう。
基本は二人組のゴブリンを狙ったが、途中で一体乱入してきたときもあった。そのときはカナがうまく対応してくれたので、なんとか乗り切れたが正直ヒヤッとした。当然無傷という訳にもいかず、俺とチハルは軽くだが、ゴブリンの攻撃で怪我をした。俺は利き腕じゃない左腕を切られたので、なんとかとどめを刺すことはできた。痛みはそこまでじゃなかったが、戦闘終了後に見ると、思ったより出血が多くて少し焦った。動けなくなっている敵にも油断はできないということを身を持って学んだ。
今日、とどめを刺したゴブリンは六体。…少しゴブリンの命を奪うことには慣れてきているようだった。これは果たしていいのか悪いのか。
「それにしても今日はけっこう稼げたな。これで少しは生活に余裕ができる」
「そうだね、一人一シルバー以上の収入は大きいよね」
今日の戦利品はきれいな石や、破損した銀貨、銅貨そのもの、動物の牙とかだった。今回は間違いなく黒狼の牙があった。ジードの店で鑑定してもらったところ、銅貨を合わせて全部で六シルバーと十八カパーになった。今日はオマケはなかったが。ケチというか商売がうまいというか…。
宿代と端数を引いて一人当たり、一シルバーと十九カパーの収入だ。端数はチハルが管理することになった。
ほんとにかなり稼げたと思う。これで懐にも心にも余裕ができた。
ちなみにゴブリンの武器はみんなで手分けして運んだもののほとんどの価値がなかった。無駄な体力を消費しただけだった。これからはよっぽど状態がいいの以外は持って帰らないことになった。
「そこで提案なんだけど、今日みんなでシェリーの酒場いってみない?色々情報収集もできるかもしれないし」
「私は遠慮したいなぁ。今日はもう疲れちゃったし。みんなでいってきていいよ」
「じゃあ、シズク一人置いてけないからカナも宿戻る!」
「俺はどちらでも構わない」
「コウタはどうする?」
シズクは荷物を運んだのもあってかなり疲れてるみたいだったからな。無理もない。
シェリーの酒場か…。一度くらいはいってみるべきか?義勇兵がたくさん集まる場所みたいだし。酒かー。飲めるのか、俺って。
「じゃあ、とりあえず、いってみるか」
「男三人だね。女の子たちはまた今度一緒にいこうね」
「うん、ごめんね。次いくときは私もいくから」
「そのときはカナもいくよ!みんなで外食も楽しそうだしねっ」
「うん、楽しみにしてる。じゃあ、コウタ案内お願い」
自分でいっといて道わかってないのかよ。えーと、確か、天空横町にあったよな。
「…わかった。こっちからいこう」
「じゃあ、またあとでねーっ!」
カナが元気よく手を振ってくれた。シズクも振ってくれている。なので、手を振り返してから別れた。
天空横町は北区にある飲み屋街だ。ここからはそれほど遠くない。
天空横町までたどり着くと、かなり賑わっていた。多くの労働者が仕事を終えて飲みにくる時間帯なんだろう。
あった、シェリーの酒場だ。中に入ると武器や防具を装備した人が多い。義勇兵だらけだ。二階建てになっていてかなり席も埋まっているようだ。
「あ、あれ。マナトさんじゃない?」
チハルが指差す方をみると、神官服を着たマナトさんがいた。なんか戦士っぽいヘラヘラした男とテーブルで向かい合って話している。
あ、ちょうど会話が終わったみたいだ。男は他の客に声を掛けにいったみたいだ。
「声掛けてみるか?」
「うん、いってみよう」
チハルに続いてマナトさん──いや、さん付けとか敬語はなしにしてくれっていわれたんだった。チハルはやめないみたいだけど。──マナトに近づいてみると向こうも気がついたみたいで、笑顔で手を軽くあげてくれた。
「やぁ、君たちも飲みにきたの?」
「情報収集も兼ねてですけどね」
「俺もそんなとこだよ。よかったら座りなよ」
三人ともその言葉に従う。四人掛けのテーブルだからちょうどいい。マナトの隣はチハルが座った。
「注文はどうなさいますか?」
給仕の女が注文を取りきた。なに頼めばいいんだ?
「特に頼むものなかったらビールでいいんじゃないかな?」
「じゃあ、ビール三つお願いします」
なんかそれが定番なような気がした。でも、飲めるのか?
「チハルたちの二日目の調子はどうだったの?」
「今日はかなり調子よく稼げましたよ。みんな喜んでました」
「そっか、それはよかったね。…でも、あんまり調子に乗りすぎない方がいいよ。油断が生まれちゃうから」
油断か…。確かに今日はかなり稼げたから調子に乗ってたかもしれない。明日からも気を引き締めないと。
「マナトのパーティーでもそういうことあるのか?」
「そりゃ、もちろんあるよ。特にランタとかはね。盛り上げてくれるのはありがたいんだけどね」
「確かにランタさんは騒がしそうですね。…なんていうかマナトさんのパーティーは個性が強いですよね」
「はは、それは否定できないかも。リーダーやってる身としては一苦労だね。ランタとユメはよく喧嘩するし、ランタはハルヒロともあんまり反りがあってないみたいだしね。…あ、なんか変なこと聞かせちゃったね、ごめん」
「なんかマナトさんがそういう話するの意外です」
「そりゃ、俺も人間だからね。お酒も入れば愚痴の一つや二つ溢したくもなるよ。…あ、でも後輩にこんなカッコ悪い姿を見せるのはよくなかったよね」
「僕たちでよければ聞きますよ。それにカッコ悪いなんた思わないです。なんかマナトさんってもっと完璧な人だと思ってたから、逆に親しみを感じられます」
チハルは笑いながらそういった。確かにマナトが愚痴を溢す姿は想像できなかった。パーティーメンバー以外の人だからこそこういう話ができるのかもしれない。
「そういってくれるとありがたいよ」
そこにさっきの給仕がビールを運んできた。それぞれ四カパーずつ支払う。
…一口飲んでみるか。苦い。でも、嫌いじゃない。疲れた体に染み渡っていく感じがする。なんか癖になりそうだ。他の二人はまだ口をつけていないようだ。
「マナトたちは今はどこで狩りをしているんだ?」
「今はダムローの旧市街だよ。森よりゴブリンが集団でいることが多いけど、やっぱりいいもの持ってることも多いから稼ぎやすいよ」
「ダムローか…。聞いたことはあるけど、僕たちにはまだ早いかな」
「どうだろうね。でも、少し稼いで新しいスキルを覚えてからいく方が安全かもしれないね」
新しいスキルか…。俺が次覚えるなら何だ?
「スキル…。俺も師匠に勧められて覚えたいものがある」
「じゃあ、最初の目標としてはスキルを覚えるお金を貯めることだね」
「いいね、目標を立てるのは大事だと思うよ」
「僕たちも少しずつグリムガルの生活に慣れてきたかもしれないです」
「それはよかった。でも、慣れ始めが一番怖いっていうから気をつけてね。俺たちも地図とか作ったりしてダムローに慣れてきたところだから、調子に乗らないようにしないとね」
「地図か…。コウタは書けたりしないの?道覚えたりするの得意でしょ。今日とか拠点から森を出るまですぐだったし」
確かに道を覚えたりするのは得意だ。森も一度通ったところなら今どこにいるのかだいたいわかる。でも、俺に絵なんか書けるのか?やってみなきゃわからないけど、自信はない。
「今度やってみるか」
「うん、お願いね」
「なんか君たちを見てるといつも思うんだけど、不思議なくらいパーティーの仲がいいよね。羨ましい信頼関係だよ。俺たちはかなり雰囲気悪くなることもあったし」
確かに不思議と信頼できる仲間たちだ。記憶はないはずなのに。どこかで繋がっていたのかもしれない。チハルとは瓜二つだし。いや、それだと繋がりがない方がおかしいのか?
「確かになんかすんなりと仲間になれました。でも、何か思い出しそうになるってこともないんですよね」
チハルのいう通りだ。繋がりがあったならなにか少しぐらい思い出しそうな気がする。少なくとも引っ掛かることぐらいあってもいいんじゃないか?
「そっか、不思議なものだね。不思議といったら、そもそもこのグリムガルにいること自体なのかもしれないけどね。とにかく、その中の良さは大切にした方がいいと思うよ」
仲が良くて悪いことはないし、その方が楽しい。理由がわからなくてもそれでいい。十分だ。
「ああ、いわれなくてもこの絆は大切にする」
「テルのいう通りだな」
「僕も賛成だよ」
「はは、やっぱり羨ましいよ。…じゃあ、俺はそろそろいくね。情報収集も済んだし。なんか愚痴っぽくなっちゃってごめんね。でも、少しスッキリしたかも」
「大丈夫です。よかったらまた今度一緒に飲みましょうね」
「うん、楽しみにしておくよ。…そうだ、一つアドバイス。覗きだけは絶対にしないようにね」
マナトはすっと立ち上がってそのまま酒場から出ていった。
…覗き?覗きといったら風呂?なんかあったのか?まあ、とりあえずそんなことはしない。いわれなくてもしない。…興味がないことはないけどしない。
……シズクはいい体してそ…いや、ダメだ想像したら負けだ。やめよう。
俺はビールを煽るようにして一気に飲んだ。
読んでいただきありがとうございます。
戦闘センスに関してはカナ>>>>>>テル>>>シズク>チハル>コウタくらいなイメージを持ってます。原作キャラと比較するとテル=マナトくらいです。参考程度ですが。
カナはけっこうというかかなり天才です。神官にしとくのはもったいないレベル。
次回はそろそろあれですね。
ではまた次回で(* ̄∇ ̄)ノ