今度のモモンガはどう戦うか?
カイトたちは急いで向います。
では始まります
モモンガがイニスと戦って数十分、周囲は凍りついていた。それはイニスの放った「絶対冷気」による影響である。
現在は撤退戦という名の時間稼ぎをしているため、モモンガはスケィスとの戦いの時よりも上手く戦っていた。しかし勝つことは不可能である。
なぜならモモンガは八相の破片データを取り込んだウィルスバグを倒す方法を持っていないからだ。
(カイトさんの言った通りでイニスは魔法耐性で魔法が効かないから接近戦が有利ではあるな。でも焼け石に水でオレの攻撃が効いていない……いや、プロテクトを破壊くらいはできると聞いたけどデータドレインを放てないオレにはダメだ)
相手はHPが∞。デーダドレインを放たないと倒すことはできない。さらにウィルスバグに感染してしまったら終わりである。
(感染の可能性があるから堂々と接近するのは危ない。接近戦が有利だけど危険って……だからセコイかもしれないが地味に攻撃していくしかない。ペロロンチーノさんの武器がとても役に立つよ)
ギルメンの仲間が使っていた武器であるゲイ・ボウでイニスに遠くから放つ。しかしイニスには効いているようで効いていない。しかも高速移動で全て当たっているわけではない。
それでも、モモンガは冷静に八相の破片データを取り込んだウィルスバグであるイニスをよく観察する。危険だろうが相手がウィルスバグと言う仕様外の存在をどう対抗するか考えていた。
そして1つの対抗手段として、ある武器を思い浮かべる。その武器はワールドアイテムの1つである。
聖者殺しの槍(ロンギヌス)。使用者とターゲットのデータを共に抹消する両刃のアイテムだ。
(でもロンギヌスは使用者もっていうのが難点すぎる。もしオレが使えば相打ちだ。それじゃダメだ)
カイトの持つ腕輪も使用する度に侵食するという難点はあるが聖者殺しの槍(ロンギヌス)よりもマシである。
(ロンギヌスはダメだな)
イニスが幻惑の能力を使う。するとシャルティアが幻として現れる。
幻とはいえ、また家族とも言えるNPCを敵に仕立てるイニスに怒りを覚える。相手は幻。そう自分に言い聞かせながらゲイ・ボウを射る。
「このウィルスバグが!!」
高速移動で近づいたイニスに建御雷八式という大太刀で斬りつける。そして離れる。
近づいてきたら離れて攻撃するのが今の戦い方だ。その状況でできる限り観察する。そして次の対策案を考える。
(リアルでウィルズバグを駆除するとしたならワクチンプログラムが有効だよな)
リアルの世界でウィルスバグに感染したらワクチンプログラムが有効というのはよく聞く。それをこの異世界で作成できないかと考える。
しかし、ワクチンプログラムを造りたくても造り方が分からない。この案は良いそうで却下である。
「難しいな。やっぱ一番現実的に考えて山河社稷図か」
山河社稷図。空間を隔離し、相手を丸ごとその空間に飲み込む能力のワールドアイテムである。
ウィルスバグを別空間に隔離すれば、ある意味有効かもしれない。だがモモンガは考えていた。山河社稷図がどれほど有効かをだ。
もしウィルスバグを空間ごと、どこかに飛ばせるならば最大の武器となる。しかしウィルスバグが空間を破ってくるなら時間稼ぎにしかならない。
「時間稼ぎになるならまだマシか。試してみるのも良いが山河社稷図は今アウラが持っている。それに危険だから撤退させてるからな」
ゲイ・ボウを射続ける。だがイニスは「鬼火乱舞」を発動した。業火の炎が乱舞する。
氷漬いたエリアが燃え盛る。氷と来て炎となる。高速で移動し、強力な魔法が放たれる。
「だけど時間稼ぎは出来たな」
モモンガの後ろから3人の人影が現れる。
「ゴメン。遅れた!!」
カイトがイニスに攻撃する。そして追撃にブラックローズが大剣で一閃。ミストラルはモモンガに回復魔法をかける。
「大丈夫ですよカイトさん。それにしてもまさかウィルスバグが出てくるとは思いませんでした」
まさか二度目の強襲を受けるとは思わなかったモモンガ。カイトも同じく自分より先にウィルスバグに出会うモモンガを心配してしまう。
カイトはモモンガのいつもとは違う白銀の鎧姿もカッコイイと感じた。接近戦での対応はイニスに対しては正解である。
「みんなでイニスを倒すよ!!」
ミストラルが援護をして、カイトたち3人がイニスを囲む。高速移動をしてようが包囲してしまえば意味は無い。
双剣、大剣、刀剣が構えられ、一斉に攻撃する。
「一双燕返し!!」
「奥義・甲冑割!!」
「建御雷八式!!」
強力な斬撃がイニスを襲った。そしてプロテクトが破壊される。
「いっけぇ!! データドレイン!!」
右腕をかざすと腕輪が展開され、蒼き閃光がイニスに放たれる。イニスはウィルスバグごと消滅した。
八相の破片データを取り込んだウィルスバグは残り6体となった。
side変更
ナザリック陣営。
階層守護者チーム。
アルベドたちは至高なる存在であるアインズと戦った人間達が分からないでいた。なぜアインズは下等な人間と一緒に戦っているのかと疑問を思っていた。
だがきっと至高なる御方ならば何か考えがあるのだろうと階層守護者たちは皆思う。それでも劣等種である人間がアインズと共に戦うのは不敬だと考える。
「アノ者達ハ一体何者ダ? アノ、モンスターを倒シタゾ」
「ふむ。アインズ様も知っているようでしたのでこの異世界で交流した人間かもしれませんね。しかし人間がアインズ様と共闘するなど……」
デミウルゴスがメガネをクイっと上げる。そしてアルベドを見るとプルプルと震えていた。
「下等な人間如きがアインズ様と共闘ですって!? なんて羨ま……なんて不敬な!!」
本音が少し滲み出ていた。アルベドの愛は深く重い。
(アインズ様のことでしょうから……あの人間達は何か利用ができるから接触しているのでしょうね。しかしさすがアインズ様。人間達と友好的に話している)
映像に映る3人の人間達はアインズにとって利用価値が相当あるとデミウルゴスは考えた。なぜならアインズがオーバーロードとしての姿を見せているからだ。
普段ならば人間社会に溶け込むためにモモンの姿をしているはずだが、今はアインズの姿で接している。
「どう利用するのか。あの薬師のように使えるのでしょうかね?」
「サアナ。アインズ様ノオ考エは天ヨリモ高ク、地獄ヨリモフカイ。ソレニ、アインズ様ガジキジキニ話シテクレルダロウ」
「もしかして……」
「ん? 何か知っているのですかアルベド?」
先ほどまでアインズと3人の人間たちが仲良く話しているのに嫉妬と殺気を込めながら映像を見ていたが急に何かを思い出したかのように呟く。
その思い出しとはアインズから言われた歓迎の準備ということだ。歓迎ならば誰かを歓迎する。その誰かが気になるのだ。
シャルティアの件が片付けば話してくれると言っていた。その誰かについてだ。
「なるほど。アインズ様はそんなことを言っていたのですね。しかし人間を歓迎するのですか……」
「まだ人間とは決まってないわ。まずはシャルティアを復活させる準備をしましょう」
金貨5億枚を用意する。その後にアインズがナザリック地下大墳墓に帰ってくる。我が家に帰ってくる約束を果したのだ。
各階層守護者がアインズの周りに集まる。シャルティアが復活した時にまだ洗脳状態だった時に守るためにだ。
「シャルティアよ。復活せよ!!」
5億枚の金貨がドロドロに溶けて1人の形へと集まる。シャルティア・ブラットフォールンの復活だ。
生まれたままの姿で復活するのに少しドキドキしたアインズであったが特に異常が無いようで安心する。しかし記憶障害があるようでシャルティアの記憶に一部分が抜けているのだ。
今回の件は情報としてジェミニという奴だけだ。しかしアウラから更なる情報が追加される。そのジェミニについてだ。
「ジェミニとかいうヤツに会ったのかアウラ、マーレ!?」
「はい。そのジェミニって奴は太陽をイメージした仮面でデミウルゴスみたいな赤黒いスーツを着た人間の男でした」
「アウラ、マーレ。その人間を殺さなかったのですか?」
デミウルゴスがさも当然のように言っている。だがアウラたちはその男を殺せなかったのだ。殺したくとも殺せない相手だったのだ。
「殺せなかっただと?」
「はい。アタシの鞭で首元を狙ったんですけど……鞭が千切れたんです」
「相手の首じゃなくてアウラの鞭が千切れたのか?」
「そうです。恐らく何かスキルだと思います」
「そうか……助かるぞアウラ。情報は多いにこしたことは無い」
太陽をイメージした仮面をつけた男。アインズはしかと頭に叩き込んだ。
この異世界にいたら必ずどこかでぶつかるであろうワールドアイテムを持つ相手。ウィルスバグとは関係無い敵。
必ず決着をつけてやる誓うのであった。
(でも今は大事な家族を取り戻せて良かった)
アインズは階層守護者たちのしゃれ合い見ているとギルメンの影が見えた。ついて片手を伸ばしそうになるが止まる。
.hackersのカイトたちを思い出す。まだ何人メンバーがいるか詳しく聞いていないがアインズと違って仲間NPCでは無い。仲間PCなのだ。それを羨ましく思う。
(もちらんアルベドたちに不満は無いよ。でもリアルで話ができる仲間が欲しいってところかな)
苦笑しながらかつての仲間を思い出すのであった。
「ところでアインズ様。歓迎の準備について聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」
アルベドが大事なことを聞いてくる。忘れてはならない.hackersをナザリック地下大墳墓に招待する話だ。
「うむ……そうだな。皆に聞いてほしいことがある」
アインズはカルマ値の低い面々に説明を始める。
side変更
???陣営。
???
「イニスが消されてしまいましたねぇ」
「そうですねぇ」
「しかも誰1人女神の部隊を消してませんねぇ」
「そうですねぇ」
太陽をイメージした仮面をつけた男と月をイメージした仮面をつけた男は暗い部屋にてワインを飲みながら今日の1日について話していた。
「あの双子のダークエルフはどうしました?」
「少し会話をしただけですよ」
不気味な笑い声が響く。
「同胞が消されたのは悲しいですが策の種はばら撒けましたね」
「そうですねぇ。イニスを使った策は潰れましたが、その策1つだけでは無いですからねぇ」
策とは何重にも構えるものである。
「次は……八本指の動きを加速させますか」
「竜王国やビーストマンの国にウィルスバグを侵食させるのも良いですねぇ」
ワインを飲み干す2人。そしてまた不気味な笑い声が響くのであった。
読んでくれてありがとうございます。
今回はモモンガがイリーガルな相手にどう戦っていくかと考えながら観察していた描写にしました。残念ながらまだモモンガは勝てませんから・・・。
そしてイニス戦いは短かったかな。
モモンガ 「まだ勝てないか・・・活躍が」
カイト 「それは・・・」