今回はナザリックに到着するまでの話です。
side変更が多く、短編的になっております。
では始まります。
.hackersの全員はモモンガに指定された場所に集まっていた。待つこと数分で豪華な馬車が数台現れる。
馬車の中からは執事と数人のメイドが現れた。メイドは合計で6人であり、執事を含めると7人だ。
「私はセバス・チャン。ナザリック地下大墳墓にて執事をしている者です。セバスとお呼びください。皆様はアインズ様のお客様と伺っております。ここからは私たちがナザリックまでご案内致します」
プレアデスという戦闘メイドチームも紹介してくれた。既にカイトたちが知っているナーベラル・ガンマの他もみんな美人であった。
まずはプレアデスの副リーダーであるユリ・アルファ。二房の赤く特徴的な三つ編みと浅黒い肌を持ったのがルプスレギナ・ベータ。
無感情なメカ少女と言ったキャラクターメイキングのシズ・デルタ。 金髪が目立ち、美しい姿のソリュシャン・イプシロン。和服調のメイド服を纏っているのがエントマ・ヴァシリッサ・ゼータ。
全員の紹介が終わり、馬車の中へとみんなが分かれて入る。そしてナザリック地下大墳墓へと出発した。
カイトが乗った馬車にはオルカとバルムンクが同乗し、セバスが案内中の相手をしてくれている。
「カイト様にオルカ様、バルムンク様ですね。よろしくお願いします」
「うん。よろしくセバスさん」
ナザリック地下大墳墓到着まで時間はある。それまでは談笑するに限るのだ。セバスは自分の創造主がリスペクトしていたカイトと話ができて満足している。
「それにしても異形種で構成されたギルドと聞いたが見た目はそうでもないな」
「オルカ様。確かに見た目は人間に近いですが全員が異形種であり、人間ではありません。ユリはデュラハンでありますし、ナーベラルはドッペルゲンガーです」
「ほー、そーかいそーかい。見かけによらないんだな」
見かけによらないのはどこの世界も同じである。そんな中バルムンクはセバスに気になることを聞いた。それはカルマ値についてだ。
「ギルドのメンバーはカルマ値が極悪と聞いていたがセバスは違うな。それにメガネのユリとシズとか言うメイドも違う感じがする。他は演技のように見えるな」
「バルムンク様は鋭いですね。実は私とユリたちはカルマ値が善なのです。しかし他は悪となっております。だがご安心してください。アインズ様のお客様を傷つけることはありえません」
「そうか……なら気にはしない。同盟の歓迎だから問題が起こっても嫌だからな。それにしてもセバスは強いだろう。一緒にいるだけでも分かる」
それはカイトたちも気付いていた。そして逆にセバスもカイトたちの実力を理解していた。アインズがレベル100と言っていた情報を基に談笑しながら観察してたが間違いなく強者と分かったのだ。
特にカイトからは何か絶対的な力を感じるのであった。アインズからは絶対にカイトに手を出すなと釘を刺されていたため、注意深く観察しているがその意味が分かるのであった。
そしてセバスはそんなカイトに聞いてみたいことがあったのだ。
「カイト様に聞きたいことがあるのですが、よろしいですかな?」
「いいよ」
「カイト様たちにとって正義とは何だと思いますか?」
セバスがカイトたちに一番聞きたかった質問である。それはセバスの創造主であるたっち・みーが正義にこだわったことから始まる。そんなたっち・みーがリスペクトしたカイトは正義についてどう思っているか聞いてみたかったのだ。
「これはまた難しい質問がきたな」
「私の創造主たるたっち・みー様が正義にこだわった御方であり、私はたっち・みー様の意志に影響しておるのです。その御方がリスペクトしたカイト様に聞いてみたいのです」
「ならカイトが代表して言うと良い」
「バルムンクの言う通りだ。カイト、バシッと決めろ」
オルカとバルムンクから難しい質問を押し付けられたカイトは苦笑いである。心の中ではバルムンクが一番上手く伝えられると思っているのであった。
「私の正義は誰かが困っていたら助けるのが当たり前というものです。これはたっち・みー様から教えられた正義です」
「なるほどね。ボクの場合は大層な正義じゃないよ。ボクの場合は良いと思える事をやっていくのが正義かな。そうする事でしか前に進めないから」
カイトの正義は良いと思える事をやっていく。どんな小さなことでも良いことをやっていく。そうすれば前に進めるのだ。それがどんなに小さな一歩でも構わない。最後まで諦めない。
前に進むことで未来を切り開けるのだ。カイトはそうしてきたことでThe Worldを救ったのだ。
「正義は全て同じじゃない。自分の信じる正義があるんだ。その正義を最後まで貫くのも大切だと思う」
「……ありがとうございますカイト様」
セバスは自分の創造主たるたっち・みーがカイトをリスペクトした理由が分かった気がした。カイトは人間であるが身体も心も強い人間である。そして芯の通った正義を持っていた。
正義とは何かと聞かれてもはっきりと答えられる者は少ない。しかしカイトはバシッと自分の正義を答えた。それだけでも強い証拠である。
「さすがだなカイト」
「おう。感動したぜカイト」
「本当かなぁ?」
それからカイトたちはナザリック地下大墳墓に到着するまでセバスと正義について語ったのであった。
side変更
ミストラル、寺島良子、ユリチーム。
ミストラルたちは穏やかな会話をしていた。特に家族についてだ。ミストラルは自分の娘のことを話し、寺島良子はある意味心配性の父のことを話した。
そしてユリはプレアデスの妹について話していた。お互いに苦労すると気が合ったのだ。
「シズが妹の中で唯一の救いなんですよ。でも他が問題児ばかりで……」
「うんうん分かるよ。長女として当然の悩みだよね~(o-´ω`-)」
「苦労しているんですねユリさん」
会話もとっても人間らしい会話である。
「私の娘も素直なんだけどいつ反抗期がくるか分かったもんじゃないからビクビクだよ(´Д`;)」
「そうですね。反抗期とは違いますがうちのルプーは中々素直じゃないんですよ。いや、イタズラ好きでみんなを困らせてばっかりなんですよ」
お互いに苦労すると気持ちが合致する2人である。
「私の場合はお父様が心配性なんですよ。私は大丈夫と言っても聞かずに何かしようとするので困ってしまいます」
「それも分かる。親としては心配なんだよね~。でもいつかは子離れしないとね"p(・ω・*q」
「心配性ですか……それなら私も当てはまります。妹たちが問題を起こさないかどうかで心配です」
ナザリック地下大墳墓に到着するまで家族についての話は止まらない。
side変更
ニューク兎丸、レイチェル、ルプスレギナチーム。
この馬車内では漫才が始まっていた。芸人はニューク兎丸とレイチェルであり、客はルプスレギナ。
普通なら客であるレイチェルたちがルプスレギナから歓迎を受けるのだが、なぜか逆になっていた。事の発端はニューク兎丸が未来のNPCに自慢の芸がウケるかどうか試しているのだ。
意思を持ったとはいえ、NPCに漫才が分かるかどうか疑問だらけとレイチェルはツッコミを入れたがそれでも漫才を始めたのだ。
「城は白いから城良い!! 帽子を失くしてハットなる!!」
「それは面白くないで」
「よく分からないんすけど」
「ほら~分かってすらもらえてないやん!!」
リアルと違い、異世界では中々伝わらない。それでも人気芸人となったニューク兎丸とレイチェルは諦めずにルプスレギナを笑わせようと渾身の漫才を続けるのであった。
ナザリック地下大墳墓に到着するまで人気芸人はお客を笑わせるために本気を出す。
side変更
ブラックローズ、マーロー、砂嵐三十郎、ナーベラルチーム。
「あのねぇアタシたちはこれでもお客なのよ。その態度は無いと思うわよ!!」
「ふん。アインズ様にお客として認められたからと言ってアナタ方に忠誠を誓ったわけでは無い。それにナザリックに到着したらアインズ様には様付けをしなさい」
「おいおい、それがお客に接する態度かよ」
「マーローの言う通りよね」
この馬車内では普通に言い合っていた。もう歓迎やお客とか関係無くなっている。それでもナーベラルとしては下等な人間に対してマシな対応をしているので褒めてあげてほしいのだ。
ブラックローズたちも本音では設定としてカルマ値が悪だと既に知っているから仕方ないと思っている。しかし彼女の性格上、無視できなかった。
「まあまあ落ち着けみんな。せっかくの歓迎なんだ。いがみ合うのよそうじゃないか」
この馬車の中で唯一のストッパーは砂嵐三十郎である。
「止めるな砂嵐三十郎。こーいうヤツは何を言っても無駄だぜ」
「それにしてもアナタはデスナイトじゃないのですね。紛らわしい」
「あんだとコラ。人をデスナイトって……そんなにオレはデスナイトに似てんのかよ」
実はマーローは帝国でもデスナイトに間違われてちょっとしてイザコザがあったのだ。特に髭の長い老人に操られようとされた時は迷惑であった。
「あん時は面倒だったぜ」
「本物のデスナイトと偽者のデスナイト。どっちが強いのでしょうね」
「まだ言うかてめぇ」
ナーベラルはこれでも本当にマシな対応している。だから褒めてほしいのである。
「頼むから落ち着けお前ら」
砂嵐三十郎はナザリック地下大墳墓に到着するまで苦労するのであった。
side変更
ガルデニア、月長石、エンデュランス、シズチーム。
この馬車は全ての馬車の中で最も静かな馬車である。なぜならこの馬車内いる人物たち全員が口数が少ないのだ。彼らは会話が苦手なわけでは無い。
ただ無理に会話をするつもりは無いと思っているのだ。それに関しては意見が分かれるかもしれないが無理に会話をするのもおかしいのもある。
「……ふむ」
「……ん」
「……ふぅ」
「……」
全員が会話を始めない。それを気まずいと感じる人もいるが彼らは特に気にしていない。全員が全員とも別の事を考えている。
案内役であるシズは基本的に人間を無視するが話しかければ返事を返すくらいの社交性はある。しかしメンバーがメンバーである。
(異世界の花にはどんな花言葉があるんだろうな)
(…………)
(ハセヲもこの異世界に来るのかな?)
(……何か話した方がいいのかな)
この馬車内は静かであり、ナザリック地下大墳墓に到着まで特に何かが起こることは無い。
side変更
ヘルバ、八咫、ソリュシャンチーム。
ソリュシャン・イプシロンはプレアデスの中で演技や潜入工作もでき、柔軟に対応する優秀極まりない存在である。だから彼女は人間相手にボロを出さずに演技で友好的に接することができるのだ。
しかし、そんな彼女でも目の前にいる2人の人間を相手にするのにとても苦労していた。表情を崩さずに対応しているが少しでも気を抜けばマズイ状態である。なぜならヘルバたちはソリュシャンに会話という名の情報収集をしているからだ。
普通に聞いていればただの会話なのだが、分かる者には組織の情報を抜き取ろうとしている狡猾な会話である。しかしヘルバと八咫が一方的に情報を抜き取ろうとしているわけでは無い。先に手を出したのはソリュシャンなのだ。
(アルベド様。こいつらから情報を奪うのは骨が折れますわ。……種族的に骨はありませんが)
ソリュシャンはアルベドより.hackersの情報収集を命じられていたのだ。簡単な仕事と思っていたのだが違ったのだ。逆にナザリックの情報を奪われそうになっているのだ。
(ふむ。なぜか彼女は私たちの情報を聞き出そうとしているな)
(そのようね。おそらく向こうのギルド内に頭の良い存在が居るんでしょう。相手のことを知る為の行為だわ)
ヘルバたちもソリュシャンの真意に気付いている。気付いていながら反撃しているのだ。お互いに同盟が悪くならない程度にだ。
「アインズさんとはそれほどに強いマジックキャスターなのかね」
「ええ勿論ですわ。アインズ様ほどのマジックキャスターはこの世界にいないでしょう」
「どんな魔法を使うのかね?」
「様々ありまして、メイドの私は全てを知っているわけではありません」
(魔法の下級から上級を聞いてみたいわね)
ナザリック地下大墳墓に到着まで気を抜けない空間になっていた。
side変更。
なつめ、ぴろし3、エントマチーム。
「ハーッハッハッハッハ!! いやー愉快愉快!!」
「うるさいですよぴろし3」
「うう~狭いですぅ。暑いですぅ」
この馬車内は主にぴろし3の巨漢さでギュウギュウになっていた。それにぴろし3の暑苦しさにエントマはダウンしていた。
なつめはもう慣れているので問題ないが、初めて会う者は疲れるだろう。エントマ以外のプレアデスすら暑苦しくてダウンするかもしれない。彼女はそう思った。
「こんなヤツは食べたら胃もたれ起こすかも」
「何か言いましたかエントマさん?」
「ううん。何も言ってないよぉ……危ない危ない。つい本音が出ちゃった」
本音が出てしまい危ないと思うエントマであった。そもそもぴろし3を食べることが可能か不可能か分からない。もし自分よりレベルが上ならば不可能である。
そして答えは不可能である。ぴろし3は間違いなくエントマよりレベルが上なので食う以前に勝負に勝つことすら不可能である。
「ぴろし3ってば小さくなることは不可能なんですか?」
「不可能だ!!」
堂々と言い放つ。それにしてもテンション高い。その理由はグラフィッカーとして未来のギルド拠点のグラフィックに興味があるからだ。
未来のグラフィックが異世界に転移してリアルとなった。それはぴろし3にとってワクワク以外のなにものでもなかった。
「まったく武者震いが止まらんぞー!!」
馬車の中で一番うるさくて暑苦しい馬車である。
ナザリック地下大墳墓に到着するまで暑苦しいのは収まらない。
読んでくれてありがとうございます。
感想があればください。お待ちしております。
今回から歓迎の話なのにメイドたちが歓迎してませんね(笑)
でも人間相手に歓迎しようと頑張っております。褒めてあげてください。
特にナーベラル。
プレアデス一同 「大丈夫かな?」
セバス 「普通にダメです」