では始まります。
カイト、アインズ、パンドラズチーム。
カイトたちの目の前には軍服を着たNPCがいる。彼の名前はパンドラズ・アクターだ。アインズ(モモンガ)が創り上げたNPCであり、黒歴史である。
その創造主であるアインズは心臓も無いのにバクバクしている感覚があってヤバァイ。恥ずかしい以外のなんでもないのだ。
「ど、どうだパンドラズ・アクターよ。お前も歓迎を楽しんでいるか?」
「はい。我が創造主アインズ様!!」
ビシっと敬礼するパンドラズ・アクター。そして壁ドンするアインズ。
「おい。確かオレの頼みで敬礼は止めてくれと言ったよな……!!」
「はい。しかし、これはアインズ様の設定であるため止めたくとも止められません」
(しまった!?)
もう条件反射のようにする敬礼は止められない。そしてアインズは過去に戻って自分自身をぶん殴りたい衝動に襲われる。
人間、過去に戻りたいと思うのは誰もが思う共通である。
(どうしよう……設定じゃ止めろと言っても厳しいよな。アルベドの時みたいにスタッフ使って変更できるかな)
敬礼が止められないのならば、ドイツ語も止められないだろう。頭を抱えて違う意味で悩むのであった。
「お願いだから我慢できるなら我慢してくれ」
「Wenn es meines Gottes Wille(我が神のお望みとあらば)!!」
(もうダメだ……(恥))
パンドラズ・アクターは決して悪いNPCでは無い。寧ろ有能な部下である。彼の忠誠心はナザリックの中で1番である。
それでも黒歴史なため、外に出すのを躊躇っているのだ。今回の歓迎でもすごく躊躇った程である。
「カイトさん。こいつはですね……(汗)」
「へえ、カッコイイNPCだね」
「マジすか!?」
意外に好感触のカイトにマジで驚いた。寧ろ同志を見つけたような感覚にも襲われる。
「ボクはカイト。よろしく」
「私はパンドラズ・アクターです。今後ともよろしくお願いしますカイト様」
派手なポーズをしながら握手をする。それでもカイトはカッコイイと思うのであった。
まさか黒歴史がカッコイイと思われたのが予想外だったのでフリーズしているアインズ。
(まさかカイトさんて中二病を患っている!? でもそんな感じじゃないし……まさか素でカッコイイと思っているのか)
どうしようとアインズは思っている。このまま会話に加わると間違いなく自分の中二病が再発しそうな気がするのだ。
しかしカイトとは話が盛り上がるような気がしてワクワクしているのもある。変な葛藤をしているのであった。
(でもカイトさんとパンドラズ・アクターが楽しく会話してる)
中二病が再発しようがもう気にしない。ダサイけど気にしない。好きだったものを話すのは楽しいものだ。
それが後でやはり恥ずかしくなって心から叫びたくなってもだ。
「私はアクター(役者)です。どんな役者にもなってみせましょう」
「パンドラズ・アクターはドッペルゲンガーでしてね。実はギルメン全てに変身できるんですよ。しかもギルメンの実力の80パーセントを発揮できます」
「おおー。メンバーに変身できて80パーセントも実力を真似られるんですね」
「そうなんですよ」
ここであること思い浮かべる。もし、パンドラズ・アクターにカイトのことをコピーさせたら腕輪の力も使えるのではないかということだ。
それが80パーセントでもナザリックの強化に繋がるのだ。
(できるだろうか?)
仕様外の力をコピーできるかは謎である。しかし試すことはできる。もし、時間があれば相談して試そうと思うのであった。
「それにしても、Wenn es meines Gottes Willeだっけ? カッコイイセリフだよね」
「分かりますかカイト様。このセリフはアインズ様のためのセリフなのです!!」
発音も意味もカッコイイセリフにカイトは子供に戻ったみたいに楽しくなる。それはアインズも同じであり、恥ずかしくてもカッコイイと思う。
「ドイツ語ってなんかカッコイイよね。軍服とかも一度は着てみたいね」
「そうですよね。軍服はリアルでも着てみたいです。男の憧れですよ」
「ならば着てみますかアインズ様、カイト様!!」
創造主が自分と同じ服を着てくれるかもしれない。それは興奮による興奮だ。顔の表情は分からないが、それは笑顔だろう。
きっとアルベドなら羨ましがるだろう。ペアルックというやつだ。
「着れるなら着てみたいねアインズさん」
「そ、そうだな。今度時間がある時に試すのも良いだろう」
「おお!! アインズ様とカイト様の分を用意しておきます!!」
着たらきっと興奮するだろう。しかし後々、ボディブロー並みにジワジワと羞恥心がくるだろう。それがアインズの気持ち。
着てくれたら感動で胸がいっぱいだろう。それはきっと忘れられない一時となるだろう。それがパンドラズ・アクターの気持ち。
「ねえパンドラズ・アクター。さっきのセリフをボクも言っていいかな?」
「もちろんです。みんなで言いましょう!!」
「え、言うの?」
3人があのセリフを言う。
「「「Wenn es meines Gottes Wille!!」」」
アインズは今晩1人で今日のことを思い出して、ベッドで悶えるのであった。
side変更
カイト、アインズチーム。
全員の歓迎会話を回ってカイトとアインズは一息ついていた。グループの所々で少し不安なところあったがなんとか上手くやっていけるだろう。
もし何かあればリーダーとしてフォローはしていく。それは絶対だ。
今回のウィルスバグとの戦いは楽ではない。力を合わさないと勝てない相手だ。仲良くしていきたいのだ。
「カイトさん。これからよろしくお願いします」
「こっちこそよろしくお願いするよモモンガさん」
今は2人きりだからカイトはアインズをモモンガと呼ぶ。それによってアインズはギルメンのことを思い出す。
今はモモンガと呼ぶのはカイトくらいだ。部下はもうアインズと呼んでいる。それはアインズ自身がそう呼べと命令したからだ。
「モモンガ……か」
「自分のHNがどうかしたの?」
「ああ、実はギルメンを思い出してました。今居ないメンバーですよ」
少し悲しみを含んでいる。ついにアインズはカイトに愚痴を話してしまう。それは納得できなくて仕方無い仲間の引退話。
「カイトさん……カイトさんは仲間がリアルで理由があって引退することになっても納得はできますか?」
信頼できる仲間たちと創り上げた大切で思い出のギルドを、リアルで理由があるから引退してしまう。
そんなの誰だって悪くない。人それぞれ理由はあるし、自分のワガママで仲間を縛り上げるわけにはいかない。
分かっているけどアインズはどこか納得できないのだ。それが自分のワガママであることも分かっているし、仕方ないことも分かっている。自分だって同じ立場になっていたかもしれない。それでも葛藤があるのだ。
「そうだね。まだ一緒に冒険したいけどできなくなる。仲間が理由があって引退するのは悲しいかな」
カイトもアインズの気持ちを理解できる。彼も似たような出来事があったからだ。それはミストラルの件だ。
八相との戦いの中で彼女は身篭っていた。そんな中で未帰還者になってしまう危険な事件から抜けるのは誰だって責めることはしない。だから責めることなくカイトはミストラルの離脱を認めた。
それは仕方ないし、彼女のためでもある。それでも信頼できる仲間が離脱した時は悲しい気持ちがあった。でもミストラルが戻ってきた時は凄く嬉しかったのは本当であった。
「でもやっぱり、仲間には仲間の理由がある。それを認めるのも仲間だと思う」
「やっぱりそうですかね」
アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーは今やモモンガだけである。そして.hackersは全員では無いが主要メンバーはそろっている。
その違いは今はある。仲間がいるから言えるセリフでは無いかと思うアインズであった。
「でもカイトさんは今は仲間がいる。でもオレには今仲間がいません」
言うつもりは無かったが、ついに言ってしまった。それは嫉妬や妬み、羨ましさが含まれていたかもしれない。でもアインズは言ってしまった。
「アインズさん。ボクの時にはCC社で火災事件が起きてThe Worldのサーバーに多大なダメージを受けたんだ。それでボクはカイトとして冒険できなくなったし、仲間とも会えなくなったんだ」
もちろん、普通に引退した仲間もいたし、火災事故のきっかけで引退した仲間だっていた。なれば、毎日のように会えなくなる。
そして女神アウラにだって会えなくなった。
「カイトさんにはそんなことがあったんですね」
「うん。だから仕方ないって思ってたよ。でも心のどこかで全員とまた冒険したいとも思ってた」
何年も仲間と冒険できなくなった。リアルで交友はあるが、The Worldでしか会えない仲間もいた。会えない気持ちは分かる。
「カイトさん……」
「でもね、現実はどうなるか分からないものなんだ。ボクがこうしてこの異世界に来る前はCC社からサーバーの復旧が成功してまたカイトとして冒険できるようになったんだよ」
だからカイトは.hackersのメンバーとまた会えたのだ。それが異世界に送り込まれたとしてもまたみんなに会えたのは嬉しいものだ。
「モモンガさんだって、もしかしたら仲間がこの異世界に転移しているかもしれないと思ったからアインズと名乗って異世界を旅しているんでしょ」
「そうですね」
仲間が引退してもどうなるか分からない。もしかしたら復帰してくれるかもしれないこともある。出会えば別れがあるの当たり前だ。だが、別れで終わるわけではない。
別れからの再会につながることもあるのだ。人との縁はどこでどうなるか分からないものだ。
「二度と出会えないなんてことはないよ。また出会えるかもしれないんだ。だって仲間が死んだ訳じゃないでしょ?」
「はい。引退と聞きましたけど、死んだなんてことは聞いてませんね」
「なら会える可能性はあるよ。もう会えないなんてことはない。だってどうなるか分からないんだから。その体現者がボクだしね」
穏やかな笑顔でアインズを見る。顔の表情は分からないが彼も何か思い浮かんだ顔しているように見えた。
「そうですね。会えるかもしれませんね。それにそう思うのは自由ですし」
もしギルメンに再会できたら夜まで語り明かしたい。.hackersを混ぜて会話したい。そんな願望を思い浮かべながら再会を予想してしまう。
「ボクはモモンガさんのメンバーの代わりにはなれないけど、新たな仲間としてなれる」
「あの有名なカイトさんと仲間になれたなんて、ギルメンに自慢できますよ」
「よろしくモモンガさん」
「はい。よろしくカイトさん」
握手をする2人であった。その握手は強く硬い。それが同盟に表れるように2人はしっかりと握手した。<input name="nid" value="77987" type="hidden"><input name="volume" value="20" type="hidden"><input name="mode" value="correct_end" type="hidden">
読んでくれてありがとうございました。
次回もゆっくりとお待ちください。
カイトとアインズの絆的な話となりました。
・・・なったかな?
カイト 「これからよろしくね」
アインズ 「はい。よろしく!!」